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調達人材が不足しているのに、なぜ人が余るのか?

12年前に富山県の有名企業を取材して驚愕しました。その企業はどんどんBPOを進めていたので話を聞きにいきました。BPOがわからなければ「業務外注」と思ってください。


その内容は先進的でした。自社の調達業務どころかグループ会社の調達業務も統合して集中・効率的な調達組織を作りました。これはいま考えても優れた取り組みだったと思います。


そこで私は「効果額はどれくらい」か質問しました。答えが意外で「ほとんどない」でした。「調達人材の働く場所が集約されたのであえていうと賃料が下がったくらいかな」とのことでした。


つまり人材が減るわけではないから、全体の固定費は減りません。だから目に見える効果額はない、と。私は衝撃を受けました。


経営者は認めないでしょうが、日本で新しいシステムの導入が遅れ経営の大改革が起きなかった理由は、雇用制度ゆえです。システムを導入しても人が減らないから、大きな改革ができませんでした。


もっとも私がさまざまな解雇関連の論文を読む限り、日本が世界のなかで解雇しにくい国ではありません。日本の中小企業ではひどい解雇が横行しています。例外的に米国は解雇しやすい国です。日本は世界のなかで解雇のしやすさは、真ん中くらいでしょう。


「失われた30年」といいますが、あれは嘘ですね。日本は成長をあきらめて、「雇用」と「安定」と「横ばい」を手に入れたのだと考えればスッキリします。


そして現在。


とても奇妙なことが起きています。企業の部長や役員の相談を内容は決まって「人が足りない」でも同時に「人が余っている」というのですね。実際の調達業務をまわす人が絶対的に足りない。


ちゃんと現場で働いてくれる「土方ホワイトカラー」ともいうべき方々が足りないわけです。その一方、中途半端な働かないシニアは増えているんだけれど、現場の業務に戻せない。


これまでは全体的に余っていた。だけれど、このところ業務が多忙になって現場の「土方ホワイトカラー」が猫の手も借りたいくらい人が足りない。人が足りないから、省力化のため何でもやる。


おそらく、これが「日本企業がシステムやITツール、AIなどを積極的に導入しはじめた理由」だと私は思います。いまさら、ではあるんですがね。


ところで、「これまでは野球のマンガを漫画家が描いていた。ただこれからはプロ野球選手がAIツールを使ってマンガを描くはず」といわれます。ここにAI革命の本質があります。当事者がマンガを描いたほうがリアリティがあって面白いに決まっている。


つまり労働の補完としてのAIと新たな仕事をしてくれるAIとの二つがあります。だから調達部門としても「人材を補完する」施策と「これまで調達人材ができなかった」施策の二本立てを考えたらいいと思うんですね。


その意味で、私が実際に試みている例を紹介します。


一つ目は仕様書の条件を生成AIに与えます。そして仕様書の不備について質問すると問題点を非常に多く教えてくれます。ぜひ実験してください。


二つ目は、議事録の作成です。サプライヤと打ち合わせをした録音データを生成AIに食わせてください。即時に文字起こしするだけではなく議事録を作成してくれます。


三つ目はコスト削減のサポートです。ぜひ、これまでのコスト削減施策の資料を生成AIに入力してください。すると驚くべき長老が誕生します。つまり、これまでの調達品のコスト削減履歴をすべて知っている「AI長老」です。


新規の調達品を買う際に「コスト削減のヒントをください」と質問すれば、なんでも答えてくれます。最高です。これこそAIを最大に活用した事例ではないかと思います。


余っている調達シニア人材も知識や経験はあります。ぜひ暗黙知をデータに変換し、それを生成AIに整理してもらって若手社員にも使えるようにしていく。これがこれからの調達施策でしょう。


どうしようもない時代とは、むしろ調達改革の時代なわけです。


<以下、追伸です>

そろそろ全講座やセミナーとも定員間近です。とくに交渉力の講座はお急ぎください。

↓イベントを紹介します。

●交渉力基礎徹底習得講座
2024年11月7日(木)10時00分~12時00分
https://www.future-procurement.com/event/negoprocurement2/

●調達業務基礎を一日で徹底的に学ぶセミナー
2024年12月4日(水)13時00分~17時00分
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https://www.future-procurement.com/event/procurementteacher/


今後のセミナー予定については表にまとめました。
https://www.future-procurement.com/2024semi.pdf

また下はお申し込み後すぐにご覧いただける教材も多数あります。

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●CO?排出量の算定を取引先に指導できるようになるセミナー
●「労務費の適切な転嫁のための価格交渉」対策セミナー
●ChatGPTの調達業務への活用
……などなど。下のURLからご確認いただけます。
https://www.future-procurement.com/product/

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