調達担当者 約2万人に聞いたハニートラップ経験率
エグゼクティブ・サマリー
未来調達研究所(https://www.future-procurement.com/)は、全国の調達担当者23,138人を対象に「ハニートラップに巻き込まれた経験」についての実態調査を実施しました。有効回答数2,749人(2,749人÷23,138人≒12%)。その結果を発表しました。今回の調査により、調達人材の5%が実際にハニートラップに巻き込まれ、不適切な関係を持った経験があることが判明。特に、海外取引や国際商談の際にリスクが高まり、調達業界における倫理リスクの深刻さが浮き彫りとなりました。
*調達担当者とは、企業が購買する材料や部材、材料、サービス等のサプライヤーを決定する仕事を担っています。
ハニートラップとは、取引先との関係を不正に強化するため、性的な誘惑を利用して不利な立場に追い込む手法です。このリスクは特に海外取引や大規模な契約を結ぶ際に増加する傾向にあり、多くの企業が対応に苦慮しています。
調査結果
産業分野ごとのハニートラップの関与比率
調査によれば、全体の5%がハニートラップに巻き込まれた経験があると回答しましたが、この5%に含まれる人々の多くが特定の産業に集中していることが明らかになりました。特に、グローバルに展開する企業や、国家戦略に関わる重要産業が影響を受けやすい傾向があります。
以下は、ハニートラップに巻き込まれた経験があると回答した人々の産業分野ごとの比率です。
エネルギー産業(石油・ガス、再生可能エネルギーなど):35%
エネルギー産業は、特に国家間の競争が激しい分野であり、戦略的に重要な情報を狙ったハニートラップが仕掛けられることが多いです。特に中東やロシア、中国など、エネルギー資源が豊富な地域ではハニートラップの標的になるケースが多く報告されています。
具体例: 「エネルギー交渉のために海外出張中、現地の取引先と接触し、そこで知り合った人物から不適切な関係を迫られた。」(50代・石油産業)
製造業(自動車、重工業など):25%
特に自動車や航空機、半導体など、ハイテク技術を持つ製造業の企業もハニートラップの対象になりやすい傾向があります。国家間の技術競争や、先端技術の漏洩が懸念される中、製造業の幹部が取引先との不適切な関係を持ち、機密情報が漏洩したケースが報告されています。
具体例: 「海外の展示会で新規サプライヤーを開拓しようとしていたが、そこで知り合った人物と不適切な関係を持ってしまい、重要な技術情報が流出した。」(40代・自動車業界)
金融業(銀行、投資、証券など):20%
金融業界の調達担当者においても、特に大規模な金融商品や技術導入に関する取引を行う際にハニートラップが利用されるケースがあります。特に新興市場や国際的な調達において、仲介者を通じた非公式な接触がリスクを高めています。
具体例: 「アジアのサプライヤーとの商談中、現地の仲介者を介して不適切な誘いを受けました。商談が順調に進むと思われましたが、最終的には不利な条件で取引が進み、後になってその影響が出ました。」(30代・金融業界調達担当者)
通信・IT産業:15%
通信やIT分野の調達担当者もまた、特にサイバーセキュリティやデータ管理に関する調達業務においてハニートラップのリスクにさらされています。システムへのアクセス権限やデータベース情報を狙った攻撃が増加しており、特にクラウドサービスやAI技術を持つ企業の調達担当者が標的にされやすいようです。
具体例: 「海外のIT関連のサプライヤーとの調達交渉中、現地で知り合った仲介者と不適切な接触を持ってしまいました。数週間後、企業のシステムに対するサイバー攻撃が急増し、情報が外部に流出した可能性が指摘されました。」(40代・通信業界調達担当者)
その他(インフラ、医療、物流など):5%
医療業界や物流業界でも、特定の国や地域における取引の際にハニートラップが仕掛けられることがあります。特に医療技術や物流ネットワークに関する情報が高値で取引されることから、これらの分野でもリスクが存在します。
具体例: 「海外の医療関連の展示会で、地元の企業関係者と接触し、商談中に不適切な関係を持ってしまった。」(50代・医療機器業界)
ハニートラップのシチュエーション
ケース1: 海外出張先でのディナー
「海外出張でエネルギー関連の商談をしていた際、現地のサプライヤーと接触し、カジュアルなディナーの後、バーでの軽い飲み会がありました。現地スタッフがあたかも偶然を装って接近してきて、次第に個人的な誘いに発展しました。」(50代・エネルギー業界)
ケース2: 展示会後の懇親会
「国際的な展示会で新規サプライヤーと接触した後、懇親会で現地スタッフと話をすることになりました。フレンドリーな態度が印象的で、個人的な会話に発展しました。」(40代・製造業)
ケース3: 海外出張先でのカジュアルな食事
「アジアのサプライヤーとの商談が終わり、現地の仲介者から夕食に誘われました。初めはビジネスの話をしていましたが、ディナーが進むにつれて個人的な話題に移り、特定の女性が同席する形となりました。」(40代・製造業)
ケース4: 国際展示会でのブース訪問後の接触
「ヨーロッパの国際展示会で新規サプライヤーとブースで商談をした後、展示会終了後にサプライヤーの代表が現地のバーで軽く飲もうと誘ってきました。カジュアルな場の雰囲気が作られ、周りにいた人々が個人的な話題に引き込んできました。」(30代・通信業)
ケース5: ビジネスセミナー後のパーティー
「海外のITセミナーに出席した際、セミナー終了後のネットワーキングイベントで現地の業界関係者と知り合いました。最初はビジネスの話をしていましたが、その後、プライベートなイベントへの誘いを受け、その場に別の女性が紹介されました。」(40代・IT業界)
ケース6: ホテルのロビーでの偶然の出会い
「海外出張中、商談の合間にホテルのロビーで休んでいたところ、現地のビジネス関係者と偶然出会いました。会話が自然に進み、そのままカフェでコーヒーを飲もうという流れになり、別の人物が途中から参加してきました。」(50代・エネルギー業界)
ケース7: 商談後のナイトクラブへの誘い
「中東のサプライヤーとの交渉が終わった後、現地の取引先が夜にナイトクラブでの接待を提案してきました。はじめは気軽な娯楽と感じましたが、同行していた現地スタッフから次第にプライベートな話が持ちかけられました。」(40代・建設業)
ケース8: 取引先のプライベートパーティーに招待
「アフリカのサプライヤーとの契約を進めている中で、現地でプライベートなパーティーがあると言われて招待されました。ビジネス関係者が集まるカジュアルな場だと思っていたのですが、個人的な会話が中心となり、周りの人が急に親密な態度を取ってきました。」(30代・自動車業界)
ケース9: ゴルフコンペでの接触
「東南アジアでのゴルフコンペに参加した際、ラウンド終了後に取引先の担当者とディナーを共にしました。その際、偶然を装って別のビジネスパートナーが同席し、プライベートな話題に発展しました。」(50代・金融業)
ケース10: 空港ラウンジでの接触
「海外出張の帰り、空港ラウンジで休んでいる際に、偶然にも同じ取引先の担当者がそこにいました。軽く話しているうちに、彼の友人という女性が合流し、3人で話す流れに変わっていきました。」(40代・製造業)
ケース11: 現地の文化イベントでの偶然の接触
「海外の取引先とのミーティングが終わった後、現地で行われていた文化イベントに誘われ、軽い気持ちで参加しました。イベント終了後、会場近くのバーで現地の関係者と飲むことになり、そこで個人的な話に発展しました。」(30代・通信業)
ケース12: サプライヤー主催のリゾート施設での休暇
「ヨーロッパのサプライヤーが主催するリゾート施設での休暇に招待され、業務を離れた雰囲気の中で数日を過ごしました。リゾート内で出会った現地スタッフが、業務とは関係のない個人的な接触を試みてきました。」(40代・製造業)
ハニートラップに注意を心がけている企業の声
企業のリスク管理がまだ十分でないと感じている回答者も多く、その改善を求める声が寄せられています。
「接待の場でハニートラップに遭遇したという話を聞きました。特に海外出張時は気をつけています。海外の取引は、想定外のリスクが多いですね。」(40代・自動車業界)
「実際にハニートラップに引っかかった人を知っています。特に新興国との取引では、そういったリスクが高いように感じます。企業のリスク管理がまだ甘い部分がありますね。」(30代・金融業界)
「ハニートラップの話は都市伝説かと思っていましたが、実際にそういうリスクは存在します。特に、大規模な契約交渉時には、こうしたリスクが本当にあると感じました。」(50代・製造業)
「ハニートラップは本当に危険です。接待が表向き減っても、こうしたリスクがあることを忘れてはいけません。リスク管理の徹底が求められますね。」(50代・物流業界)
ハニートラップと地政学
調達担当者のハニートラップが現実的なリスクとして存在していることが明らかになりました。この割合は、特にエネルギー、製造、金融など、国家戦略に深く関わる産業に集中していることが分かっており、地政学的リスクが高まる地域での活動がハニートラップの温床となっていることが示唆されます。
ハニートラップのリスクはなぜ増加したのか?
ハニートラップは、取引の裏で秘密裏に行われるため、表沙汰になることは少ないものの、その影響力は非常に大きいと言われています。2019年のコロナ禍前に比べ、2024年にはハニートラップの事例が増加しているという声も多く聞かれます。その背景には、コロナ禍での対面接待が減少したことに伴い、オンラインでは把握しにくい非公式な接触が増えたことが挙げられます。特に、海外出張時や外国企業との取引において、ハニートラップのリスクが高まっているとの報告が多く、各企業がリスク管理を強化しているものの、対応が追いついていない現状も浮き彫りになりました。
ハニートラップを警戒する企業の動向
アンケートの回答者の多くは、ハニートラップに対する意識が高まっていると感じており、特に大手企業やグローバルに展開する企業では、このリスクに対する警戒心が増しています。例えば、取引先の選定や契約の交渉プロセスにおいて、担当者の行動や接触履歴を厳しくチェックするなどの対策が取られていることが確認されました。しかし、実際にどのようにしてハニートラップのリスクが発生するのかについては、依然として不透明な部分が多く、予防策の確立にはまだ課題が残っています。
ハニートラップのリスク管理が難しい理由
ハニートラップのリスク管理が難しい理由として、第一にその「不透明性」が挙げられます。多くの場合、ハニートラップは取引の一部として表には出ない形で行われ、企業内部でも認識されにくい状況にあります。これに加え、関係者が個人的に巻き込まれているケースが多いため、企業が関知できる範囲を超えてしまうことがしばしばあります。さらに、海外取引の場合、文化や商慣習の違いから、どこまでが通常の接待であり、どこからが不適切な行動なのかの判断が曖昧になるケースも少なくありません。
実際のケースから学ぶハニートラップの危険性
過去に起こったハニートラップの事例からも、企業にとってのリスクの大きさが伺えます。例えば、ある製造業の幹部が、海外出張中に取引先の主催するイベントに参加し、そこで知り合った女性と不適切な関係を持った結果、企業の機密情報が漏洩し、大規模な契約が不利な条件で結ばれたという事件がありました。このようなケースでは、関与した幹部個人の責任も問われますが、企業全体に大きな損失をもたらすリスクもあり、重大な問題として認識されています。
地政学リスクとの密接な関係
今回の調査で浮き彫りになったのは、ハニートラップが特定の地政学的リスクと密接に結びついている点です。特に、国家間の競争が激化している地域や、政治的に不安定な国々では、サプライチェーンを通じての情報漏洩や不正な取引が発生しやすくなっています。調達担当者がこうした地域で活動する際には、ハニートラップが意図的に仕掛けられるケースが多く、国家レベルでのスパイ活動の一環として利用されることもあります。
地政学リスクが高い地域や国においては、政府やその他の権力機関が外国企業やその幹部をターゲットにしたスパイ活動を行うことがあります。このような活動の一環として、ハニートラップが利用され、企業の機密情報や戦略的な決定が外部に漏洩するリスクが高まります。特に、地政学的に重要な資源や技術を持つ企業が狙われやすく、その背後には国家レベルでの意図的な関与が疑われるケースも存在します。
企業が取るべき対策
このような地政学リスクとハニートラップの密接な関係を考えると、企業は地政学リスクに対する対応を強化する必要があります。具体的には、以下のような対策が考えられます。
リスク認識の徹底
企業全体で地政学リスクやハニートラップの危険性についての認識を高めるための教育プログラムを導入し、全社員がそのリスクを理解し、適切な対策を取ることができるようにすることが求められます。安全な取引環境の確立
地政学リスクが高い地域での取引や出張においては、取引先の信頼性を徹底的に確認し、リスクが高い状況では非公式な接触を避けることが重要です。また、取引先との関係構築においては、透明性の高い手続きを採用し、不透明な形での接触を避けることが推奨されます。外交的リスクの管理
地政学的に不安定な地域での活動においては、現地の政治情勢や法制度を正確に把握し、ハニートラップを含むリスクが高まる時期や状況を予見する能力を持つことが重要です。また、現地政府との適切なコミュニケーションを維持し、外交的なトラブルに巻き込まれないように配慮することも求められます。
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