TSMCの強さと調達力の異常な関係
TSMCのことはご存知でしょうか。半導体のファウンドリ企業で有名です。簡単にいえば半導体の受託生産屋さんですね。最先端のチップの多くがTSMCで生産されています。
TSMCが止まると世界の経済も止まるといわれるほどです。
私はTSMCに関する記事や書籍を読み漁りました。ただそれでもなぜ同社がそれほどまでに強いのかわからない。なぜ技術的に卓越しているのか。他社がなぜできないのか。はっきりしない。
そこでTSMCに製品を供給している企業や、TSMCから直接的に製品を調達している企業にインタビューしてみました。すると、表現は違うのですが、共通の意見が出てきました。
「あそこはね、昔の日本企業みたいだよ」。え? どういうこと?
教えてくれた人が続けます。「つまり、猛烈に働いている。そして結果を出すために全力でやっている。精神論かもしれないけれど、あそこには勝てませんよ。だって優秀な人が7時間だけ働く企業と優秀な人が14時間働く企業では違うもん」。なるほど。
難しく、高いレベルの仕事であっても、とにかく一心不乱に頑張る姿が印象的だった、とのことです。
その直後に朝日新聞で<TSMCの「鬼指導」>という記事を読み驚愕しました(2024年6月18日)。台湾のクリーニング会社のインタビューが載っています。クリーンルーム作業着を洗濯する会社です。
<他の顧客と比べても、TSMCの要求レベルは群を抜く>
<怒られてばっかりだった>
<厳しいお父さんのようです>
しかし指導は「ボランティア」で行い、調達網全体でのレベル向上を目指している……という内容です。
壮絶な記事ですので、よかったら読んでみてください。
これまで技術的な観点からTSMCの凄さを語った記事はたくさんありました。私も書きました。しかしモーレツな企業文化から説明したものはありませんでしたのでご紹介しました。
ところで、話は某超有名企業の調達執行役員との会話に移ります。
先日、その方から会食に呼ばれて行ってきました。とても印象的な話でした。いわく「これから部長職は他社からヘッドハンティングしてくるしかないよ」とおっしゃっていた点です。理由は「働き方改革」で厳しい働き方の経験がないから。
「圧倒的な調達スキルというのは、やっぱりギリギリの状態で経験を積んでからこそ身につくよ」と。調達力って努力だよ、と。
ところで誤解しないでください。これは「最近の若い奴らはダメ」という意味じゃありません。また「昔が良かった」という懐古主義とも違います。嘆いているのではなく、事実として適任者がいない点を説明なさっていました。「時代だからしかたがない」とも。
もはやモーレツに働こうと思っても、日本では大企業では難しく、中小がベンチャーくらいでしょう。実際に、先にあげた執行役員は「外資系経験者からヘッドハンティングする予定」とのこと。
若いときに極限まで努力すると、輝かしい未来が待っていますが、まあこんあ内容はおっさんのボヤきにすぎません。必死で働こう、ということ自体がハラスメントになりますからね。
ただTSMCの例で示したように、世界では圧倒的な努力を重ねている人たちがいるのも忘れてはなりません。
競争力は圧倒的な努力から。重要なのでもう一度。
競争力は圧倒的な努力から。
長時間は働けなくても、一日一時間一分を大切にしましょう!