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2025年に下請法が変わり、調達業務は激変する
私が14年前にテレビに出演しはじめたときのことです。番組自体は毎週やっていましたが、いつまで私が出演するかわかりません。スケジュールをいつまで押さえればいいのか不明です。テレビ局の偉いひとに訊いてみました。
すると「安心してください。ご出演をやめてもらう際には3ヶ月前に連絡します」と教えてくれました。私は本業があるので、テレビの仕事がなくなっても問題ありません。さらに3ヶ月前にわかれば支障はありませんでした。
しかし、そのうちテレビ業界全体が「2ヶ月前の通知」に変化していきました。予算もないし、視聴率をあげるために何でもやる必要があるため、長期間にわたって出演者を確保できないんでしょう。もうお金がない業界になってしまいました。
テレビ専業でやっているひとは、たった2ヶ月前に仕事がなくなると知らされたら大変だろうな、と思いました。またその通知の期間については、過去も現在もそもそも契約書がありません。だから、契約違反ですらありません。
下請法の書籍を出している出版社ですら、原稿依頼時に執筆者への発注書を用意していないのが現状です。例外は日本経済新聞社で、さすがに彼らグループはしっかりとした注文書を出してきます。なお出版社が注文書を出さないのは、下請法における「書面の交付義務違反」じゃないかと思ったんですが、原稿を書く能力を出版社が有していないので業の委託に当てはまらないようです。その意味で日経グループは多くの記者を有しており、ちゃんと注文書を提示するのは当然かもしれません。
さて、現在、話題になっているのは下請法の改正です。時期は不明ですが2025年には改正案が国会に提出されます。各政党の反応は多様でしょうが、中小零細企業を救う方向性なので、大きな反対がないと予想されます。
知っておくべきは次の改正ポイントです。
・資本金を減資しても従業員300人超の企業は親事業者になる
・市況価格より著しく低い調達価格かは別に、一方的に調達価格を決めると買いたたきとする
・荷主と運送事業者の取引にも下請法を適用する
なお「下請け」っていう言葉も変わるみたいです。「パートナー」とかになるのかな? またこの通りに改正するかはわかりません。これから正式案を待ちましょう。
ちなみに、三つあるうちのニ番目は、現実的にはすでにそう運用をされています。また三つ目の荷主と運送事業者に下請法を適用する流れについても予想できました。これわかりにくいんですが荷主は荷物を運ぶ行為は業じゃないから下請法の範囲外だったんですね。
目玉は一つ目ですよね。「資本金を減資しても従業員300人超の企業は親事業者になる」。少なくとも「なりうる」のです。企業は規模が大きくなれば、新たな株主を探して増資を繰り返し、どんどん資本が増えます。さらに銀行からの信頼度も増すために、一般的に大企業は資本金が3億円を超えていきます。
いっぽうで、資本金が小さいと、税金の優遇措置が受けられます。そこで見た目を気にせずに、意図的に資本金を減らす企業が現在は増えてきました。これは現行法では違反行為ではありません。だからこそ今回の下請法の改正では、減資に網をかけました。概算なんですが、けっこうな大きさの企業であれば従業員の一人あたり売上高は3000万円くらいでしょう。だからこの300人分なら90億円くらいの企業なのに資本金を減資している場合は、新たに下請法の親事業者になるわけです。
そしてもう一つ。行政からの明確なメッセージは「下請中小企業のために何でもやらなければならない」ことです。今回、新たに対象となる企業だけではなく、全調達部門にたいするメッセージとしてこれからもサプライヤへの値上げをサポートしてくれと行政は強く印象づけたいわけです。
行政がサプライヤの値上げを推進するのは2025年も続きます。原材料だけではなく、労務費、エネルギー価格も何もかも調達部門はサプライヤに”協力”せねばなりません。
かつて「下請法を守るためには、下請中小企業と付き合わないのが最善だ」とか「下請けイジメじゃなくて、大企業の調達部門イジメだよね」とか心情を吐露するひとがいました。これまでそんな発言は半ばジョークだったのですが、冗談ではなくなっています。
そこで重要となってくるのは、どこまでもクールで定量的かつ統計を前提とした価格交渉です。だって私たち調達部門だって株主への説明責任がありますから、値上げを認めるときも値下げのときでも適切な調達価格を決定していると証明する必要があります。
調達部門にとっては逆風が吹いています。しかし、ぜひ逆風こそが自らの足腰を鍛えてくれると思ってがんばりましょう!
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<以下、追伸です>
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