不正疑惑で株価急落!インドの「アダニ・ショック」で金融市場が大荒れに!?
国民の平均年齢が28.7歳!若い労働人口が多くIT大国でもあるインドは、市場規模からしても無視できない存在です。今回はそんなインドの話です。
インドの大富豪ゴータム・アダニ氏は、大学中退後に家族経営の繊維店を日用品輸出会社に育て上げ、今やインド国内の高速道路や空港などのインフラ整備を進める巨大コングロマリット「アダニ・グループ」を創り上げました。現在、彼の名がつくインドの上場企業は7社にものぼります。
そのアダニ氏の華麗なるサクセスストーリーをお伝えしようというものではありません。その逆です。世界の金融市場に多大な影響を及ぼしかねないこの巨大企業の失墜の恐れについてです。
最近、このアダニ・グループ企業の株価が暴落し、時価総額が約2週間で半分以下になりました。フォーブスのビリオネアランキングで、一時は番付3位につけていた大富豪に何があったのでしょう。
実は、1月24日にアダニ氏の不正行為が告発された!?不正疑惑の報告書を発表したのは、NYに本社があるヒンデンブルグ・リサーチ。保険会社クローバー・ヘルス(CLOV)の問題を指摘し、株価を1日で約12%も急落させた米投資調査会社です。
創設者のネイサン・アンダーソン氏は、物言う投資家として注目されている人物で、ウォール街では企業の虚飾を暴露することで、株価下落を招く分析者として知られています。いわば、不正を暴く正義の空売り仕掛け人!
2020年のEVメーカーのニコラ(NKLA)に対する批判的リポートが引き金となった株価急落時にはショートで莫大な利益を得て話題になりました。
悪情報を流して儲ける手口って、風説の流布?そんなイメージを持つ人がいるかもしれませんね。※風説の流布・・・株価を意図的に変動させる目的で虚偽の情報を流すこと
ところが、彼らのリサーチは非常に綿密で正確だと著名投資家の間でも信頼性が高いと評価されています。つまり、これまでのヒンデンブルグの告発は、虚偽の情報ではなかったということ。
事実、これまでターゲットになった企業もはじめは疑惑に対して反論したり、法的手段を含めた対抗措置を講じるものの結果的にSEC(米国証券取引委員会)が調査に乗り出たことで不正が明らかとなり、制裁金の支払いやCEOの辞任などで終結しているのです。すなわちリサーチ内容は真実であることが、当局によって正式に証明されてきました。
そして、このたび空売りの標的となっているのが、インドの新興財閥アダニ・グループなのです。ヒンデンブルグが調査結果を公表したリポートによると、アダニ氏は何十年にわたり株価操作や不正会計をしており、「企業の歴史で最大の詐欺」と結論付けています。
この疑惑告発により、すでに株価は大暴落。時価総額約2230億ドル(約30兆円)は半減し、アダニ氏の個人資産も大幅に減少したことで、世界富豪ランキングは一気に19位にまで落ち込みました。
クレディ・スイスやシティなどの金融機関は、アダニ・グループ企業の社債をローン担保とすることを拒否。米格付け会社S&Pグローバル・レーティングは、グループ傘下2社の見通しを「ネガティブ」に引き下げ。
その他にも資金調達力が一気に弱まると指摘されたり、インデックスから除外されたり、インド国立証券取引所ではグループ3社の株式が追加監視銘柄に指定されるなど厳しい状況です。
ただ、アダニ・グループはこの疑惑の一切を否定し、法的措置を警告しています。また、傘下企業の事業は、インドが国策として取り組んでいるものが多く、モディ首相との関係も緊密です。インドの政財界に圧倒的に顔が利くであろう人物に何らか政治的忖度が働くことも有り得るかもしれません。
もはやアダニの問題は国家レベルといっていいでしょう。2023年中にインドは中国を抜いて、世界最大の人口国になると試算されているだけでなく、GDPは2030年までに日本を抜いて世界3位になる見込みです。その将来性に巨額マネーをBETしているグローバル投資家たちが、この問題について今後どのような行動を取るかによって、世界の金融市場に大きな影響を与えることになるでしょう。
ちなみに2020年以降にヒンデンブルグが狙った約30社について、ブルームバーグが算出したデータによると、リポート公表の翌営業日の株価は平均で約15%下落し、半年後には平均26%下落しているとのこと。
ただ、今回の相手は世界的ビリオネアが率いる超巨大企業です。社員10人ほどの小さな会社ヒンデンブルグに勝ち目があるのか見ものです。「詐欺を見つけること」に情熱をかけていると語るアンダーソン氏のジャイアントキリングとなるか!?後年、映画制作されるかもしれないほどの衝撃的な展開が待っているような気がします。