知っておいてほしい「お金の知識」 Vol.5 ~確定申告~
*2024.1.27の投稿を2024.5.3に必要に応じて加筆修正しました。
しばらくぶりの投稿となってしまいました。
原因は、嬉しいことと残念なことが立て続けに起きてしまったことなのですが、それについては↓の投稿で。
今回は、何について書こうかと思っていたのですが、自分は先日(1月24日)、ようやく終わったので、それをきっかけとして、会社員以外の方々の冬の風物詩、「確定申告」について、書いてみたいと思います。
会社員の方々だと、「家を買った最初の年」の方とか「投資で儲けが出た」方、あとは「医療費控除を受けようとしている」方ぐらいしか馴染みがないものかもしれませんが、実は毎年、会社員の方でも確定申告をしている?!ということを理解していただくことで、何とな~くされている方もいらっしゃる「アレ」との関係性なども知っていただきたく、書いてみようと思います。
確定申告って、何?
名前はよく聞く「確定申告」。
先に書いたように、会社員の方にはあまり馴染みがなく、名前は聞くけどどんなもの?と思っていらっしゃる方も多いかもしれません。そのため、経済雑誌などを中心に、年明けに発刊されるものは毎年のように特集として組まれる内容ですね。
ですが、何で”毎年のように”特集になるのでしょう?
それは、「確定申告」の仕方がけっこう複雑で(というより、会社員の方々がかなり簡素化されているせいで相対的にそう思えてしまうのかも?)、いろいろな資料は必要になりますし、もし間違えてしまうと、修正などは出来るのですが、何かと手間がかかるので、手順を追っていけば何とか出来るのですが、間違わずにやろうとすると、どうしても時間がかかるものだからです。(それを生業としていらっしゃるのが、税理士さんです。他人の申告をしていらっしゃると思うと、本当に頭が下がりますし、国家資格として確固たる地位が保障されているのもうなづけます。)
では、「確定申告」とは、何なんでしょう?
文字通り、何かを「確定」させて、それをどこかに「申告」することなのですが、それが何なのか?
まずは「確定」ですが、これは
その年のその人の、”所得額”を正確に算出する
ということです。
なぜ、そのようなことが必要なのかというと、この”所得額”を基に、ある税金額を計算して、徴収するからです。そのある税金額とは、皆さんご存じの「所得税」になります。
ここで、「所得」とは何なのか?
簡単に言ってしまえば
もらった(稼いだ)お金から、必要経費(生活する上で払わざるを得ない出費)を差し引いた正味の手取り額
になります。会社員の方々なら、これらは給与明細で確認できます。会社員の方々の”必要経費”は、社会保険(雇用保険や年金)など、いわゆる「天引き」されているものだと考えて下さい。
つまり、給料として実際に支払われる金額のことになります。ですが、会社員の方でも、収入先が給与だけではない方もいらっしゃいますよね。代表的なのが「投資による儲け」です。
「投資による儲け」とは、
株式などの金融商品や資産の売却益(これを「譲渡所得」と言います。)
貸し付けた不動産から得られる利益(売った時の利益ではありません。持っていてそこから得られる利益なので、代表的なのは不動産投資による家賃収入などです。これを「不動産所得」と言います。)
金融商品などを所有していることで得られる配当(これを「配当所得」と言います。)
などがありますよね。所得の種類としてはそのほかにも
一時所得(突発的な所得。保険の解約金や公営競技の払戻金など)
利子所得(国債や社債などから発生する利子による所得。)
退職所得(退職金による所得。)
山林所得(山林資源の売却から得られる所得。)
事業所得(会社や商店、個人事業主などが営んでいる事業による所得。確定申告に一番馴染みがある所得かもしれませんね。)
雑所得(上記以外の所得。)
があり、これらに最初から触れている会社員の方々の給与による所得(これを「給与所得」と言います。)の計10種類が「所得」の対象であり、その全てが所得税計算の対象となります。
ということは、会社員の方であっても、他の所得がある方は原則、「確定申告」をしなくてはならないということになります。(厳密には、各所得ごとに対象となる条件などがあるため、その条件に当てはまらない所得額だったりすれば、申告の対象外となる場合もあります。)
これらの該当する所得を全て合算し、各種控除(扶養控除や基礎控除、配偶者控除などの人的控除)を差し引いて所得額を算出するのが「確定」の作業になります。
*人的控除とは、所得者からみたご家族(その方の収入で生活をされているとみなせる方)がいることで、ご家族の生活費を”必要経費”とみなして、所得計算上、収入額から差し引ける額のことです。そのうちの「扶養控除」に関しては、以前の投稿をご参照ください。
では次に「申告」ですが、これは「どこに」ということになります。どこかと言えば、ご存じの方も多いと思いますが、「税務署」です。正確には
確定申告書を作成して、それを管轄の税務署へ提出する
というのが「申告」になります。
税金って、自己申告制?
でもここで、1つ気になる点がありませんか?
「税金」と言ってもいろいろあるけど、この所得税のように、税金額の基となるもの(これを課税対象額と言います。)をわざわざ計算して、しかも自己申告して払う税金って他にもあったかなぁ~?って。
実は意外とあります。所得税のほかには、
消費税 *一般消費者ではなく、事業者が申告します。
相続税(お亡くなりになった方から財産を相続した際に、その財産に対して係る税金)
法人税(会社などの法人対象の所得税みたいなものです。)
などがあります。これらのように”自ら納税額を計算して納税する”方式を「申告納税方式」と言います。
対して、住民税や固定資産税、自動車税などは”国などが納税額を計算し、通知された額を納税する”方式で、これは「賦課課税方式」と言います。毎年決まった時期に納付書や通知書が届くものはこちらのタイプです。これらが来ると「あぁ~、払わないとなぁ~・・・」と言って、コンビニなどで支払ったり、口座振替で引き落とされたりしているかと思います。
ですので、方式名からも分かるように、所得税は申告して納税するものなので、「確定申告」が必要になるのです。
「確定申告」と「年末調整」
ここでもう1つ、会社員の方々などいわゆる「給与所得」のみの方々は、先に挙げた住宅購入や医療費控除の適用などがない限り、「確定申告」をしたことがないという方が大半だと思います。
「申告納税なのに申告しなくていいの?」と思われた方(いないかもしれませんが)・・・
安心して下さい! 払ってますから!!
どういうことかというと、会社員の方々の所得税は、前年の給与額を基にして、概算額(今年はこれくらい給与を払いそうだから、これくらいの所得税額になるだろうと会社側が算出した予想額)を算出し、その分を毎月の支給額から予め差し引いています。これが「源泉徴収」です。つまり、「所得税の先取り」がされているということです。
*余談ですが、この「源泉徴収制度」は、第二次世界大戦中のドイツで戦費調達の安定化のために出来た制度が基になっているそうです。
この「源泉徴収」、前年実績を基にした概算額なので、実際の支給額が変われば所得額も変わり、会社側で把握できない”必要経費”があれば、その分も差し引かなければならないので、所得額が減ります。つまり、税額計算の基礎となる所得額自体が変わってしまうので、当然「源泉徴収」で差し引いていた額と、本来の税額とでは差が生じてしまいます。
それらを反映して、正しい所得額を再計算し、正確な税額を割り出すのが「年末調整」という作業になります。(冒頭で触れた「アレ」です。)ですので、ご自分で入られている各種の保険の証明書を使って保険料控除を適用したり、iDeCoなどをされている方は、その控除を適用したりするため、会社へ申告書を提出するのはこの差額を調整するためなのです。
そこでよく、「期限厳守」と言われることがあるかと思いますが、それは所得税の申告期限と納付期限がそれぞれしっかり決まっているからです。ですが、税金としては源泉徴収により既に納付済みですので、未納付にはなりませんが、間に合わなければ戻っても来ないという事態になるため、期限には厳しいのです。公は、こちらから訴え出ないと、決して動きません。
世の会社員の方々、くれぐれもその時期になったら速やかに申告書を提出して、会社の担当の方の負担を出来るだけ軽減できるように協力してあげて下さいね!
まとめ
こうしてみると、会社員の方々でも、会社側がしているとはいえ、ちゃんと「確定」して「申告」の上、納税しているので、大きい意味で「確定申告」をしている・・・と言えませんかね?(無理やりですみません。)
これからの時代、収入が多岐にわたることが当たり前になってくるでしょう。特に投資による収入や保険の解約による返戻金、退職金などは、割と身近で誰にでも有りうることです。
その際に、「確定申告」が必要なものだということを知っておかないと、あとで思いがけないしっぺ返しを食らってしまうかもしれません。(いわゆる税務調査や加算税、過怠税の課税など)そうならないためにも、申告の必要性を知り、その流れを理解し、必要な時には正しく申告してしっかり納税しましょう!
自分には「確定申告」が必要なのか?どんな流れなのか?ぐらいでしたらFPでも相談に乗れますし、具体的な申告書の作成などでしたら税理士さんへ相談してみて下さい。
その他に、税金や「確定申告」について知りたい方や相談したい方は、お近くの税務署、もしくは国税庁のHP(←リンク)を確認してみて下さい。(管轄税務署が分からない方は、HP内に所在地と管轄地域が分かるページがありますので、こちらをご確認ください。)
今回も最後までお読みいただき、有難うございました。