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知っておいてほしい「お金の知識」 Vol.4 ~日経平均とTOPIX~

いつも聞く、あの「言葉」

 先日、知人からこんな問いかけをされました。

「そういえばさぁ~、ニュースでよく聴く”日経平均”と”TOPIX”って、何なの?」

 その知人は、今年から始まった新NISAをきっかけに、資産形成に興味が出たそうで、自分なりにいろいろと見聞きしているうちに、

「普段から耳にはしてるけど、具体的にはどういうものなんだろう?」
「何で、ニュース番組の終わり際に必ず”今日の日経平均、終値は~”とか”今日のTOPIXは~って言ってるんだろう?」

と、ふと疑問に思ったそうです。

 嬉しい・・・お金で分からないことを聞いてもらえた・・・FP冥利に尽きます!しばらく感慨にふけった後、自分なりに説明してみて、分かってもらえました。

 そんなことを先日の「日経平均終値がバブル期以降最高値更新」というニュースを聞いて思い出しました。

 こう考えると、けっこう毎日のように聴く言葉なのに、意外とその意味や本質を知らないということに気付いてもらえたり、疑問を解決しようと聞いたりしてくれるのは、教えたりアドバイスする事を生業としている身としては、とても嬉しくなりますね。

 お金のことで少しでも疑問に思うことがあったら、是非身近なFPを活用してくださいね!

 というわけで今回は、新NISAも始まり、金融投資に興味を持たれたり、実際に取り組む方が増えるであろうことから、「日経平均」と「TOPIX」について、その違いなども含めて取り上げたいと思います。
*いつものように、内容のファクトチェックは行いますが、万が一間違いなどがありましたら、遠慮なくご指摘下さい。


「日経平均」って、何?

 「日経平均」とは、「日経平均株価」のことで、日本の株式指標として最も有名で、代表とされる指数のことです。

 株式指標というのは、ある条件を満たしている株式会社の株価の合計額やその平均額などを指数化することで、過去からの変遷や他の指標との比較、分析ができるようにし、上げ下げやトレンド(今後の展開を感じ取る大まかな流れのこと)などを可視化して、その国や地域の株式市場の動向を表したものだと思って下さい。

 ”代表とされる”と書いたように、日経平均以外にもたくさんの株式指標があります。その中でもニュースでよく聴くのは「TOPIX(トピックス)」でしょうか。

 何でそんなにいろいろあるかというと、ひとくくりに「株式会社」といっても、企業の規模(株式の時価総額)や歴史(老舗からスタートアップまで)、ジャンル(製造業や金融業、サービス業とか)などから見ても実に多種多様なので、指標が1つだけだとそこからはみ出してしまう会社は評価されず、その会社が持つ影響力(ポテンシャル)が経済動向に反映されなくなってしまいます。それでは、指標から読み取れる経済動向と実態とが一致しないため、投資や事業戦略などに悪影響を及ぼしてしまいます。

 そのため、様々なアプローチでの指標を設け、その各指標ごとに一定の条件を設定して、それに当てはまる会社をピックアップし、該当の会社だけで指数化することで、各アプローチから見た経済動向や株式投資の指標として利用したり、各指標ごとの動き方や差などを比較して、今後の推移を予測判断したりするのに利用することができるようになります。

 例えていうなら、相撲のように大きくても小さくても同じ土俵に立つのが、日本では「TOPIX」であり、柔道やレスリング、ボクシングのように体重などで階級別に区切った上で競い合うのが「日経平均」だと思ってもらえると分かりやすい・・・ですかね?

 その中でも「日経平均」がなぜ、日本の株式市場を代表する指標なのか?
それは、条件に該当する会社が日本を代表するような会社ばかりだからです。

 会社はおおまかに「大企業」「中小企業」というように、規模によって括られます。皆さんもご存じかと思いますが、多くの中小企業は大企業の傘下にあったり、大企業から仕事を受注して生業としています。つまり、大企業の動向が同時に中小企業の動向へとつながり、ひいては日本経済の動向へつながるとみなせるので、「日経平均」が代表的な指標とされています。

 では、その採用条件ですが、

  1. 東証プライム市場(旧:東証一部)に上場している銘柄

  2. 市場流動性(過去の売買代金などから、どれぐらい取引が活発に行われているか)が高い

  3. 業種間のバランス(会社の業種から判断して、偏りが出ないように)

を考慮して、日本経済新聞社が選定した225銘柄が対象です。(構成銘柄はこちら➡リンク *日本経済新聞社のHP)

 見てもらうとお分かりかと思いますが、各分野ごとに1度は聞いたことがある企業が多く、またその規模も大きい会社が多いです。これを見ただけでも、日経平均が日本の株式指標として代表的であるということがお分かりいただけるかと思います。

 また、その算出方法も独特で、「修正平均株価」というものになります。
これは、採用銘柄の株価合計を銘柄数(225)で割るのではなく、除数(指数の連続性を確保するために、市場要因以外の要素によって修正される数値)で割ることで求められます。(要はちょっと複雑な計算だと思って下さい。)

「日経平均」の注意点

 このように、日経平均は株価指標として代表的ではあるのですが、注意しなくてはならない点があります。

 指標の算出上の問題なのですが、構成比率の違いという点が挙げられます。 構成比率とは、その銘柄が日経平均に与える影響力の大きさのことで、大きければ日経平均の変動幅に大きく影響します。

 つまり、構成比率の大きい銘柄で株価の上昇(あるいは下落)があると、それだけで日経平均が大きく変動してしまうということであり、仮にほかの多数の銘柄には変化がなかったり、大きい銘柄とは逆の動きをしたとしても、構成比率が小さいとその変化は日経平均に反映されず、結果として実態とはかけ離れた株価になってしまうという弱点があります。

 つまり、構成比率の大きい銘柄1社だけで、日経平均が振り回されてしまう場合があるということです。そのため、一部の投資家(特に海外)には、日経平均をあまり重要視していない人もいるそうです。

 そのような点から、年2回(4月と10月)に定期的に銘柄見直しが行われ、2022年の10月からは、構成比率の上限を設けたりもしているようですが、やはり1つの指標だけで判断するのは難しいですし、多角的な見方は必要ですよね。(詳細についてはこちらもどうぞ)

 そこでもう1つの代表的指標として取り上げられているのが「TOPIX」になります。

「TOPIX」って、何?

 「TOPIX」とは、「東証株価指数」のことで、旧東証一部上場の全銘柄を対象として、その全銘柄の時価総額(発行済みの株式数×株価)合計を基準となる1968年1月4日時点の時価総額で割り、100を掛けた数値を指数としてものです。

 よくニュースなどで「本日のTOPIXは~」といった具合に発表されています。現在はだいたい2,500前後といったところですが、これは

1968.1.4時点の時価総額を”100”とした場合の現在値

という意味になりますので、現在は基準時より時価総額が25倍前後なんだということになります。
 こう見ると、約55年ほどで25倍の規模になったと取れますが、この指数にも注意点があります。

「TOPIX」の注意点

 日経平均より計算は単純なのですが、時価総額の大きい銘柄の影響が大きく反映してしまうという点では注意が必要です。

 つまり、時価総額の大きい銘柄1社だけの株価の上下が、TOPIXに大きく反映されてしまうため、日経平均と同様に実態にそぐわない場合もあるということです。ただ、日経平均に比べ、対象銘柄数が多い(日経=225銘柄 TOPIX=約2,000銘柄)ので、日本経済全体の潮流を見るうえでは、日経平均より実態に即した指数だと言えるでしょう。

「日経平均」と「TOPIX」の活用

 では、この2つの指数をどのように読み取って活用していけるのか?
1番のポイントは「採用銘柄数の違い」という点ではないかと思っています。

 「日経平均」は、225銘柄と限られた企業数ですが、どれも各業種の代表的な企業から構成されていますので、これらの企業の株価の変動=日経平均の変動は、経済や景気の先行きを示す指数と言えるのではないでしょうか。

 対して「TOPIX」は、旧東証一部上場の全銘柄である約2,000銘柄が対象ですので、日本経済全体の動きや今後の予測トレンドを表していると言えると思います。

 この点から、「日経平均」と「TOPIX」の動き方の違いなどから、現在がどうであり、この先がどうなるかをある程度予測、読み取ることが出来ると言えるのではないでしょうか。

 大事なのは、指数や指標は単独で用いるのではなく、様々な側面から多角的に組み合わせて分析、活用するものなんだということを忘れないでいただきたいです。

最後にちょこっと

 今回は指標について書いてみましたが、「株式」の本質を理解していただいた上での話になりますので、締めの文として、その点について書きたいと思います。

 「株式」は、株式会社が事業運営のための資金調達の手段として発行するもので、投資家が購入した代金を企業は運営資金として、設備投資や開発費用などに充てて企業活動を活発にし、そこから得た利益を投資家へ還元(=配当)するというのが、基本的な流れです。

 この「株式」は原則として、自由に売買が出来(一部、定款などで定めたり、市場側からの規制により売買を制限された株式というのも存在します。)、その価格(=株価)は、需要と供給のバランスによって決まります。

 需要と供給のバランスとは、モノの価格は「需要=買いたい人 が増える」もしくは「供給=売りたい人 が減る」ことで市場に出回る数量(ここでは株式数)が少なくなるので、その価値が増し、その結果価格が上昇する(=高くなっても買いたい人が増える)というもので、逆だと下降するというものです。

 つまり、「買われれば高くなり、売られれば安くなる」ということです。

この辺はスーパーでの生鮮食品の価格変動と似た感じですよね。天候不順などで不作となることで収穫量が減る(=供給が減る)ので、相対的に需要が高まり価格が上がる。そういうことです。

 買われる=需要が増す=みんなが欲しがる ということは、「将来的に高くなることが見込めそう」と思った人が多いということになります。例えば「前期の業績が良かった」とか「新しいプロジェクトを始めた」などの点から、「福利厚生が充実した」とか「新規雇用が増大した」なんてことなどでも将来性を感じられると好材料をみなされ、買われたりします。

 ですが、ここで注意してほしいのは「将来的に~見込めそう」という点だということです。これはあくまで予測であり、現実にはそうならない場合もあるということです。つまり「株価」には”将来の期待値”が含まれて構成されているというのが特徴であり、「株価」の注意点になります。要するに

株価 = 現在の企業価値 +(あるいは-)将来の期待値

であることを念頭に入れておかなければならないということです。

 みんなが欲しがっている(=株価が上がっている)からと言って、この先も必ず上がっていくとは限らないのです。

 この”将来の期待値”が実は厄介で、実態を伴っている(=将来性が裏打ちされている)ものならば、それは「成長余地」と言えるので、企業は大きく成長し、その将来性も増すために、株価が上昇することになります。

 ですが、これが実態を伴っておらず、期待ばかりが風船のようにみるみる膨らんでいる状態だとすると、その株価は実体経済(=本当の企業価値)より過大評価されていることになります。
 にも関わらず、この期待値を「成長余地」と捉え、この株は成長株だと皆がこぞって買ってしまうことでさらに株価が釣り上がり、ますます実体とかけ離れてしまった末に、何かのきっかけで実態通りもしくは実態以上に下がってしまう(=弾けてしまう)のがいわゆる「バブル」と言われる現象になります。

 ということは、「日経平均」や「TOPIX」の動きが上がり続けているときに、過度な期待が盛り込まれていないか?という点に気を付けて確認する必要があるということになります。

 個人的には、今(2024年1月)がまさにその確認時ではないかと思っています。
 連日のように記録を更新している日経平均に対し、

・実体経済との乖離カイリ(離れ具合のこと)があるのか、ないのか?
・あるならどれぐらいなのか?
・果たして実体経済と将来見込みを正しく反映しているのだろうか?

今がその見極め時ではないかと感じています。

 もちろん、実態を伴った上での上昇なら何ら問題はなく、むしろ今後の日本経済にとって「デフレ脱却」「失われた30年からの解放」という明るい兆しとなることでしょう。

 ですが、コロナ禍からの脱却による企業業績の上向きやそれに伴う価格転嫁の推進、インバウンドの回復、来年度の春闘での賃金上昇などの期待感は既に盛り込まれているのではないかと思えますし(昨年後半から見られた動き)、むしろ年明け早々の災害発生や諸外国の重要な選挙予定などを考えると、「決して楽観視できるものではないのでは?」「にも関わらず何故上がっているんだろう?」というのが自分の考えです。(疑いだせばキリがないのですが・・・)
 さらに付け加えれば、過去の動向から、今回のように連日高水準で上がり続けた後の下げは、急降下となることが多いので、その辺も気掛かりです。
 全て、杞憂で済めば良いのですが・・・

 そういう意味でも、普段から「日経平均」と「TOPIX」の動き方に気を付けてもらうのは、家計をひいては経済を考える上でも、必要なんじゃないかと思います。
 せっかくニュースのたびに教えてくれるんですから、これからの時代、ちょっとでも目を向けておいて、せめて「昨日より上がったな」とか「午前中は良かったのに、午後になったら下がり始めたな」ぐらいは気付けるようになっておかないと、もったいないですよ!
 肩肘張らずに、まずは身近なところから、投資や経済について関心をもってもらえればと思います。

 今回も長々と書いてしまいましたが、いかがだったでしょうか?

 指標については、今回の2つ以外にもたくさんあります。また、海外市場に目を向ければ、その国ならではの指標もたくさんあります。まずはその国を代表する指標を確認することで、国全体の流れ(トレンド)を感じてもらい、買いたい企業が関連する指標を確認することでその違いや連動性などを確認し、さらにその企業の詳細を確認して、最終的に売買を決める。こんな感じの流れを掴んでもらえればと思います。

 最後までお読みいただき有難うございました。

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