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相続:すべてを遺せない?!遺留分について。~遺言~

おひとりさま・LGBTsの方向けのお話しです。

【シリーズ 相続】
親とは違うということ。
最高の相続対策とは。
親子になるか、他人のままか。
親子になる。~養子縁組~
子が先に旅立つとき。~養子縁組~
子が親を見送るとき。~養子縁組~
すべてを遺せない?!遺留分について。~遺言~
最後のラブレターを書こう。~遺言~



遺言書ってドラマとかではよく聞くけど、周りで書いている人聞いたことないっていう方も多いんじゃないでしょうか。

遺言書って簡単にいうと、「私が亡くなった時に、私のこの財産をこの人にあげるよ」っていう、財産を持っている人が、あげる財産や全財産に占めるあげる割合とあげる人を生きている間に指定して書いておくものです。

例えば、ABC銀行の預金全額を長男にあげるよ、土地と建物を次男にあげるよ、所持している株券の全てを○○大学にあげるよ(寄付する)という具合です。

遺言は同性パートナー間はもちろん、全くの他人や人ではなく会社・団体などにも財産を譲り渡すことが可能です。ようは財産をあげる人の自由、あげる先は誰でもどこでもよいわけです。


遺言書は法定相続よりも強く、たとえ、法定相続人として兄弟がいたとしても、遺言書の内容通りに遺産を相続します。

遺言書に「同性パートナーにすべて相続させるよ」と書かれていれば、基本はその通りに同性パートナーにすべての財産を遺し、相続させることが可能です。

ただし、すべてを相続させると書いていても、すべてを遺せない、相続できないケースがあります。それには「遺留分」というものが大きく関わってきます。



遺留分とは?


遺留分とは、遺言の内容に関係なく、一定の相続人に認められた最低限保障される相続分のことです。

なので、「同性パートナーにすべての財産をあげる」という遺言書があっても、遺留分が発生した場合、一定の相続人は保証された相続分を相続することができます。ようは、遺留分は遺言書よりも強く最優先されるというわけです。


一定の相続人とは?

法定相続人の内、配偶者1位の子2位の親が遺留分が認められた一定の相続人となります。そう、3位の兄弟は遺留分は認められていません

私たちの場合、配偶者と1位の子はほぼいないので、2位の親(親がいない場合でも祖父母やそれ以上の直系尊属の方が居たら、2位に該当します)が存命の場合、親は遺留分を主張できる一定の相続人になります。

養子縁組のところでもお話ししましたが、いくら疎遠でも、何十年と連絡を取っていなくても関係ありません。法律上親なら遺留分は認められます。


遺留分は請求されることによって発生

じゃあ、遺留分は確実に持っていかれるの?というとそうではありません。遺留分の請求権を持つ人が、「遺留分をくれ!!」と請求することで有効となります。ちなみにこの請求のことを「遺留分侵害額請求」といいます。

なお、遺留分は一定の相続人ごとに遺産に対する割合が決まっており、親の場合は全財産の1/3になります。(両親が健在の場合は、父1/6、母1/6ずつ合計で1/3)

仮に同性パートナーが1億円相当の土地建物、6000万円の預貯金、2000万円分相当の株券を持っていて、遺言で全部あなたにあげるよと書いていたとしましょう。

この時、亡くなった同性パートナーの両親が健在で、その両親が遺留分侵害額請求を行った場合、あなたはパートナーの両親に6000万円(1億8000万円の1/3)の現金を支払わなければなりません。


遺留分は金銭で支払う

上記例で、土地建物とありましたが、遺留分侵害請求を受けた場合、遺留分は基本的に金銭で支払います。

そのため、遺留分損害額請求を受けた場合でも、一緒に住んでいた土地建物を分割させられるのではなく、相続した遺産の1/3相当額の現金を支払うことになります。



どうする?遺留分対策


まず、以下の場合は遺留分が発生しないため、遺留分対策不要です。
・ご自身やパートナーに配偶者、子や孫、親や祖父母が居ない
 ※上述している通り兄弟は遺留分の権利がありません。
・一定の相続人が遺留分の権利放棄をした場合
 ※請求しないではなく放棄の場合、放棄と同時に遺留分の権利が消滅します。

なお、遺留分の請求には時効があり、例えば、遺留分権利保有者が被相続人(ここでいう亡くなった同性パートナー)が亡くなったことを知った時から1年間、亡くなったことを知らなくても、亡くなった時から10年間経過すると、請求権が消滅します。

パートナの両親とお互いが良好な関係を築いていたら、生前の遺留分放棄も期待できますが、良好な関係を築くのは厳しいと思われます。では、遺留分を請求されたときに備えはどうすればよいのでしょうか。


財産額を把握する

遺産の1/3(親からの請求の場合)が遺留分になります。当たり前ですが、全財産額が分からなければ、遺留分の額も分からず準備のしようがありません。まずは、全財産額を把握しましょう。

生命保険などかけている場合は、これらの死亡保険金も財産となります。ようは、今自分が亡くなったらいくらの現金が手に入るのか(死亡保険金や死亡退職金など)、いくらの現金が残るのか(預貯金など)、現金以外のもの(不動産など)は換金するといくらになるのかの総額を考えます。

なお、不動産は評価額が計算方法によって大きく異なる可能性があります。そのため、高額な不動産を持っている場合は、プロに評価額を試算してもらうのもよいかもしれません。

最後に、負債(ローンなど)があった場合は、全財産額から差し引きます。


全財産に占める現金の割合が1/3以上の場合

財産額を把握した結果、全財産に占める現金や現金化し易いもの(株券や動産など)が1/3を超えている場合、遺留分侵害額請求があっても、請求額を現金を支払えば終了です。もちろん話し合いで遺留分の棄権や減額の余地があれば行いましょう。


全財産に占める現金の割合が1/3未満の場合

遺留分侵害額請求があった時に支払える現金が足りない場合はどうすればいいでしょうか。おおよそ次の順序で対応してきます。

1.遺留分侵害額請求が正当なものであるかを確認
2.話し合いで、遺留分放棄や請求額減額のお願いをする
3.遺留分放棄や請求額減額について調停・訴訟を行う
4.支払期限の延期を裁判所に訴える
5.不動産など資産を売却して現金化し支払う

遺留分の額が確定したら、払わないわけにはいきません。当たり前ですが、無視したり踏み倒したりはできません。

そのため、最終的に遺留分請求額の現金が用意できない場合は、パートナーと一緒に住んでいた土地建物を手放し支払わないといけなくなります…

なお、3・4は裁判所が関わり、時間やお金の負担が大きくなります。そのため、なるべくなら2.までで決着をつけたいところです。



遺留分は遺産額の多寡に関係なく発生する可能性がある

相続税の場合、基礎控除が3000万円あるので、遺産が3000万円以下なら相続税はかかりませんが、遺留分は遺産の1/3(親の場合)なので、たとえ遺産が1000万円でも333万円発生します。

たいした財産ないし関係ないや~ではありません。たいしてなくても1/3は相続できない可能性があることを覚えておいてください。


遺留分が発生する確率は高くない

ただ、上述した通り、遺留分は配偶者・子・親にしか認められていません。(兄弟には遺留分が認められていない)

そのため、命の順番として親より後に亡くなる可能性が高いため、遺留分の発生確率は低いです。が、こんなことがあるんだな~と覚えておいて、準備しておいて損はないです。



大切な人との思い出をなくなく手放すことのないように…遺したい方と話し合いを進めていただければ幸いです。今の自分が将来のパートナーを助ける愛情と思いやりをもって話し合いや準備を進めていってもらえたら嬉しいです。



最後まで読んでいただき、まことにありがとうございます。もし何かご質問等ありましたら、お気軽にコメントくださいね!!

快惺事務所では、同性パートナーや法定相続人以外に財産を遺すことについて、ご相談を承っております。ご興味ある方は以下のリンクから快惺事務所WEBまでお越しくださいますと幸いです。






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