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2022年改正 iDeCoの仕組みを解説(資産運用)
老後の計画を立てるうえで、受取れる年金額はとても重要です。
年金は大きく分けて「公的年金」と「私的年金」があります。
公的年金:国民年金や厚生年金
私的年金:個人型確定拠出年金(iDeCo)や国民年金基金など任意加入の年金制度
私的年金とは、公的年金の上乗せで給付され民間の保険会社などの組織が運営している年金制度のことです。
この年金制度は、老後の豊かな生活を送るための重要な役割を果たしています。
個人年金保険や確定拠出年金などを活用することで、将来受取る年金額を増やすことができます。
加入は任意であり、様々な制度・商品の中から自身のニーズに合うものを選択できます。
この記事は、たくさんの私的年金があるなかで多くの方が加入されているiDeCo(個人)の仕組みについて簡単に解説していきます。
1.私的年金とは
1階・2階部分は「公的年金」、3階部分は被保険者が任意で加入し公的年金に上乗せする「私的年金」です。
■私的年金は2種類
「企業年金」:企業が従業員のために資金を拠出
「個人年金」:個人が自らの老後資金を準備するために利用する
企業年金とは、企業が社員に対して年金を支給する仕組みです。
「確定給付年金型」「確定拠出型」があります。
個人年金とは、個人が任意で加入します。
「個人型確定拠出年金(iDeCo)」「国民年金基金など」があり種類もさまざまです。
将来、公的年金だけでは不安の方は、私的年金に加入します。
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2.iDeCo(個人):確定拠出年金
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、その言葉が示す通り「個人」が「掛金を自分で決め(確定拠出)」、自分で運用する「私的年金制度」です。
原則60歳まで引き出せず、途中解約もできないため、iDeCoは、わかりやすく言うと「自分で老後資金を作るための年金制度」です。
iDeCoは加入者の自助努力をサポートするために、次のような税制優遇があります。
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掛金が全額所得控除、運用中の利益は非課税の対象になる点は、iDeCoの強みです。
ただし、手厚い税制優遇がある反面、原則として「60歳まで引き出せない」など注意が必要です。
後々後悔しないように、iDeCoを始める前にメリット・デメリットしっかり押さえておく必要があります。
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3.2022年 iDeCo改正
2020年6月に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が公布されました。
その一環として確定拠出年金法の一部が2022年から制度が改正されます。
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2022年の改正は、より多くの方が、より柔軟にiDeCoを活用して老後のための資産形成ができるように大きく改正されます。
「加入年齢の拡大」「受取開始年齢の拡大」「企業型DCとの併用の緩和」により、加入者の多様なニーズに対応できる制度となります。
これまで企業型DCとの兼ね合いでiDeCoの利用を諦めていた方も、改正後は併用しやすくなるので、これを機に老後のための資産運用の1つとして検討されてみてはいかがでしょうか。
4.加入可能年齢の拡大(改正)
iDeCoの加入条件は、20歳以上65歳未満で国民年金保険料を払っている方なら、ぼぼ全員加入できます。
■2022年5月1日から
iDeCoに加入できる年齢の要件などが拡大されました。
2022年5月からiDeCoの加入可能年齢が5年延長になり、「65歳未満」なら加入できるようになります。
ただし、60歳以上で加入できるのは、第2号被保険者である会社員・公務員または国民年金の任意加入者です。
※基本的に第1号被保険者である自営業やフリーランス、第3号被保険者である専業主婦(夫)などは、従来通り60歳未満となります。
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そして、年齢条件を満たしていても、誰でも加入できる訳ではではありません。
■以下の方は加入できません
20歳未満、または65歳以上
現時点で国民年金保険料を支払っていない(支払いを免除されている方も含む)
農業者年金に加入している
65歳前に、iDeCoの給付金を受給したり、公的年金を繰上受給した場合
これらに該当する場合は加入できないので注意が必要です。
5.金融機関と運用商品を選ぶ
iDeCoは1人1口座しか開設できませんので、数ある金融機関の中から1つを選ばなければなりません。
金融商品を選んで毎月一定の金額を積み立てていきます。
あらかじめ用意された元本確保型の「定期預金」「生命保険」、そして運用性を重視した「投資信託」といった金融商品を運用します。
金融商品は、口座を開いた金融機関の商品から選びます。他の金融機関の商品は選べません。
つまり、選んだ金融機関の商品しか買えないため金融機関選びはとても重要になってきます。
■金融商品は,「元本確保型商品」「投資信託」の2つに大別
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「定期預金」「保険商品」は、満期まで保有すれば元本割れすることはありませんが、その分リターンは少なめです。
「投資信託」を選択して運用した場合、市場の動きや経済の状況など、さまざまな要因により積み立てたお金が変動(価格変動リスク)します。
そのため、運用結果により将来受取れる金額が決まります。
(注)元本割れリスクあり
■運用で得た利益が全額非課税
預金や投資信託などの運用で利息や利益を得た場合、通常であれば税金(20.315%)がかかりますが、iDeCoならこれらの税金が非課税になります。
参考元:iDeCo公式サイト 【ステップ4】 運用商品を選ぶ!
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6.掛金を決める
職業等に応じて、拠出可能な掛金(上限)が決まります。
■掛金が全額所得控除の対象
掛金は、拠出限度の範囲内で月額5,000円以上からはじめられ、1,000円単位で決められます。
掛金の金額がすべて全額所得控除の対象になります。
■掛金は誰が支払うのか
企業型DCの掛金:会社が支払う(管理手数料も会社が負担)
個人型DC(iDeCo)の掛金:加入者本人が支払う
掛金を決めるにあたっては、基本的に60歳にならないと引き出せない資産であることを考慮し、無理なく継続して拠出できる掛金を設定しましょう。
■掛け金は変更可能か
60歳になるまで引き出しができないので、柔軟な対応になっています。
掛金拠出の休止・再開はいつでも可能。
平成30年1月から、掛金の拠出を1年単位で考え、加入者が年1回以上任意に決めた月にまとめて拠出(年単位拠出)できるようになりました。
掛金の変更は、毎年1月~12月(引落しベース)までの間に1回だけ可能です。
納付方法は、ご本人口座から「引落し」または「給与天引き」が選べますが、口座引落し日に残高不足の場合、その月は「未納」となるため注意が必要です(追納は不可)。
参考元:iDeCo公式サイト 【ステップ2】 掛金を決める!
下記は、加入者のご職業等によって上限金額をまとめた表になります。
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6-1.「iDeCo」と「企業型DC」併用の条件緩和(改正)
■2022年10月1日から
iDeCoと企業型DCを併用の条件緩和
現在、ルール上は企業型DCの加入者でもiDeCoに加入できます。しかし、事業主掛金の上限引き下げの労使合意や規約の変更が必要です。
そのため、実際には企業型DC加入者で、iDeCoにも加入できる人はほとんどいませんでした。
企業型年金規約の定めによりiDeCoに加入できなかった企業型DC加入者の方も、「以下の条件を満たす」ことで10月1日から原則、本人の意思だけでiDeCoに加入できるようになります。
各月の企業型DCの事業主掛金額と合算して月額5.5万円を超えていない
掛金(企業型の事業主掛金・iDeCo)が各月拠出であること
企業型DCのマッチング拠出※(利用していないこと)
参考元:Rakutenn楽天証券
参考元:厚生労働省 確定拠出年金の拠出限度額
7.運用したお金の受け取り方
老後の資産作りを目的としています。そのため、原則60歳になるまで受け取りはできず、途中での引き出しや途中解約も原則できません。
■受取方法は、以下の3つ
1. 一時金として一括で受け取る
受給権が発生する年齢(原則60歳)に到達したら、70歳になるまでの間に、一時金として一括で受け取れます。
2. 年金として受け取る
受給権が発生する年齢(原則60歳)に到達したら、有期年金(5年以上20年以下)の期間で、運営管理機関が定める方法で支給されます。
3.一時金と年金を組み合わせて受け取る
受給権が発生する年齢(原則60歳)に到達した時点で一部の年金資産を一時金で受け取り、残りの年金資産を年金で受け取る支給方法を取り扱っている運営管理機関もあります。
■受取時に一定額が非課税(控除の対象)
一定額までは税金がかからないよう控除が適用されます。
一時金として一括で受け取る:退職所得控除
年金として受け取れる:公的年金等控除
一時金+年金:退職所得控除+公的年金等控除
なお、万が一60歳より前に高度の障害になってしまった場合や、死亡してしまった場合には、その時点でもらうことができます(死亡の場合は遺族がもらいます)。
8.受給開始時期の選択肢の拡大(改正)
2022年4月からiDeCoの受取り開始年齢時期が75歳まで延長され、老齢給付金を受取れる選択肢が広がりました。
■2022年4月1日から
iDeCoの老齢給付金の受給開始時期の選択肢が広がります。
受給開始時期の上限が70歳 ⇒ 75歳に延長
iDeCoの老齢給付金の受給開始時期を60歳(加入者資格喪失後)から75歳までの間で、ご自身で選択することができるようになります。
■加入年齢により受取開始時期がかわる
確定拠出年金の老齢給付金は最初の掛金を拠出してから10年以上経過していれば60歳から受け取ることができます(通算加入者等期間)。
50歳以上で加入した場合など通算加入者等期間が10年に満たない場合は、受け取りできる年齢が繰り下がります。
60歳以降に新たに加入者となった場合は、通算加入者等期間がありませんが、その場合は加入者資格取得日から5年経過した時から請求可能となります。
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9.各種手数料がかかる
加入時、拠出時、給付を受ける時、移管をする時など、さまざまな場面で事務手数料が必要となります。
■国民年金基金連合会の手数料
iDeCoの実施者である国民年金基金連合会へ事務費用として、加入者(または運用指図者)が負担する手数料は下記のとおりです。
加入時または企業型DCからの移換時:2,829円
掛金納付の都度:105円
還付する必要が生じた場合の還付手数料:1,048円
■運営商品の手数料
事務手数料の他に、選んだ商品によって、手数料がかかる場合があります。
投資信託の場合、信託報酬などの手数料がかかり、手数料率はそれぞれの商品によって異なります。
手数料はほとんどの金融機関で同じ金額に設定されています。ただ、運用期間中にかかる費用については金融機関によって金額が異なります。
例)口座管理手数料(掛金を払って運用している間:毎月)
105円+0円+66円=171円/月(一番安い)
105円+440円+66円=611円/月(一番高い)
年間にすると5,000円以上の差があります。
金融機関を選ぶ際はなるべく手数料が少ない金融機関を選ぶことをお勧めします。
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10.まとめ
iDeCoは、将来確実にまとまった「老後資産の受け取り」、そして「豊かな老後生活をおくる」ための新しい年金制度です。
掛金は比較的少額からスタートでき、運用益の非課税、受取時には一定額が非課税のメリットがあるので、効率的に老後資金の準備ができる魅力的な制度です。
ただし、原則60歳まで引き出せず、手数料がかかります。また、運用成績に直結する金融機関や運用商品の選択がとても重要になります。
メリット・デメリットのまとめ
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このように、iDeCoにはメリットとデメリットがあるため自分に合っているのか一度よく検討してみてください。
明確に老後の備えと決めていれば、途中で引き出し等できなくてもデメリットとして感じないはずです。
とくに若い時から始めれば、運用期間も長くなるので、リスクを軽減することができ、また節税メリットを受けながら老後の資産づくりができます。
高齢化が進行する中、iDeCoは公的年金を補助する役割もあり、より豊かな老後生活を送るための資産運用の1つとして検討されてみてはいかがでしょうか。
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