働き世代に直撃!30年後には年金が20%目減りする ? (年金#6)
「人生100年時代」
今後の人生設計を考え直さなければいけないかもしれません。
国民年金の納付期間を5年延長し、65歳未満まで納める案が検討されています。
現行の納付額で計算すると「年間約20万円」、5年間で「約100万円」負担が増えることになります。
負担が増えてもリターンはあまり期待できず、これでは実質的な「大増税」ではないでしょうか。
厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会「年金部会」は、10月25日に議論を始め、24年までには結論を出し、25年には国会での改正法案提出を目指すとしています。
この記事は、今回の年金制度の「検討案」の概要について解説していきます。※現時点の内容のため今後変更になることがあります
年金制度見直しへ
2024年(5年に1度)に行われる「財政検証」に向けて、「年金制度改革」について議論が始まっています。
検討案の議論は、
納付期間の延長は24年までに結論を出し、25年の通常国会での法改正を目指すとされてます。
仮に納付期間が延長になれば、これからの「生活設計」「家計の運営」方針も大きく変わってくると思います。
つまり、今後の「人生設計」が変わる可能性があります。
そして、国民年金の支払いは、60歳を過ぎると1人分じゃなくて妻のも含めて2人分(33,180円)になるため家計負担は大きくのしかかります。
財政検証とは
公的年金制度には、少子高齢化に伴う「公的年金加入者の減少」や「平均寿命の延び」など、社会の人口・経済全体の状況を考慮して将来の給付と負担のバランスを自動的に調整する仕組み(マクロ経済スライド)があります。
これらのバランスがとれているかどうか確認するため、少なくとも5年に1度、最新の人口や経済の状況を反映した、長期にわたる財政収支の見通し(試算する)するものです。
つまり財政検証とは、年金制度の健全性を点検するいわば「定期健康診断」に当たるものです。
肩車社会へ突入
内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」から、高齢者1人を現役世代が何人で支えるかを20年単位でみると、
2010年には、現役世代2.8人が1人の高齢者を支える「騎馬戦型」となり、このまま出生率上昇に打つ手がないままだと、2055年には人口が1億人を切るとされ、現役世代1.4人で高齢者1人を支える「肩車社会」に突入することになります。
肩車社会では、ほぼ1対1で高齢者を支えなければいけなく、社会保障費の増加を避けることはできません。今後ますます現役世代の負担は重くのしかかってきます。
令和4年度、月259円・年3,108円減
令和4年度の年金支給額は、昨年度に比べて1ヶ月259円(0.4%)減の月額6万4,816円です。年間で3,108円の減額となります。
自分が年金をもらえる頃には「受給額はいくらになっているか」、これから「どんな準備をすればいいのか」、人生設計に不安を抱える方は今後ますます増えてくるのではないでしょうか。
納付期間を65歳未満までに
検討案の納付期間は、20歳から65歳未満までの45年間です。
では、実際5年延長でどれくらい負担が増えるのでしょうか。
国民年金保険料は月額1万6,590円です。これを5年(60ヶ月)延長するので、
5年間の納付額が99万5,400円です。
つまり、約100万円負担が増えるという計算になります。
なぜ納付期間を延長するのか
延長を検討する背景には、基礎年金の水準が今後、大きく低下する課題があるためです。
2019年に年金の将来の見通しを示す「財政検証」を行った結果、約30年後の2047年には、現役世代の平均手取り収入に対するモデル世帯(※)の年金額の割合(所得代替率)が落ち込むことがわかりました。
※夫が40年間厚生年金に加入し平均的な収入を得ており、妻が40年間専業主婦の二人からなる世帯
この課題を解決するために、年金制度を支える現役世代の減少にともなう「財源不足を補う」こと、そして「受給水準の低下」を防ぐために納付期間を5年延長するというわけです。
5年延長で受給額は増えるか
将来受け取る年金は、保険料を納めた期間の長さによって変動します。
現在と検討案の「納付総額」と「年間受給額」を比較すると、
納付総額は、5年延長で99万5,400円増で、約100万円負担が増える計算になります。
一方、年金受給額は、5年延長で9万7,200円/年(8,100円/月)増えます。年間だと87万5,000円となります。
納付期間が延長すれば当然のことながら受給額は増えます。
ですが、元を取るには10年以上かかります。
つまり、保険料(12.5%増:99万5,400円)を余分に払った約100万円を回収するためには、65歳から年金をもらい始めて、75歳以上まで生きないと元は取れないということです。
影響を受ける職業
とくに影響を受ける方は、60歳までに退職した元会社員の方やその妻、 自営業やフリーランスの方は負担は大きいです。
一方、影響を受けない方は、企業の雇用延長などで65歳まで会社員として働き、さらに70歳まで働く方は負担はありません。
まとめ
今後、ますます少子高齢化が進行すると予想されます。
年金を受給する高齢者は増え、社会保障を支える現役世代が減り続けていくと、受け取る年金水準は今後さらに下がる恐れがあります。
そのために、納付期間を延長することで年金水準を維持する狙いがありますが、延長により保険料を多く納付しても受給額は多少増額する程度です。
さらに今後、支給開始年齢の引き上げや、納付開始年齢の引き下げなどもありうるのではないでしょうか。
これからは、今までのように60歳になったら「老後資金は年金生活で」というわけにはいかなくなり、最低65歳までは働く、もしくは元気のうちは働き続ける方が増えていきそうです。
ゆとりある老後生活を迎えるためにも公的年金だけに頼るのではなく、資産運用(形成)で自らで財産を増やしていくなどの自助努力が必要になってきます。
老後資金について真剣に考える時代に入ってきたのではないでしょうか。