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”改正民法”で変わる、贈与と相続。そして。

4月1日に”改正民法”が施行されます

 4月に施行される改正民法では、成人となる年齢が20歳から18歳に引き下げられ、女性が結婚できる年齢は、これまでの16歳から18歳に引き上げられ、男性と同じになります。その他、贈与や相続についても、注意すべき変更点があります。大切なことがたくさんあります。

いくつかの特例は”1月1日時点で18歳以上”

いつ、18歳なのか?

 贈与や相続で20歳以上であった各種特例の対象が18歳以上に変更されますが、ここで注意したいのが、一部の特例では基準日が1月1日であるということです。4月以降の特例行為であっても、1月1日時点で18歳未満であると特例は適用できません。1月2日~3月31日生まれの受贈者は注意が必要ですね。

❶特例贈与財産の税率(1月1日時点)

 平成27年以降の贈与税の税率は、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区分されました。

<一般贈与財産用>(一般税率)
「特例贈与財産用」に該当しない場合の贈与税の計算に使用します。兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などです。

<特例贈与財産用>(特例税率)
直系尊属(祖父母や父母など)から、贈与を受けた年の1月1日現在で18歳以上の者(子・孫など)への贈与税の計算に使用します。祖父から孫への贈与、父から子への贈与などに使用します。

❷未成年者控除(相続/遺贈時点)

 相続人が未成年者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引きます。これを未成年者控除と言います。
 未成年者控除の適用を受けることができる要件のひとつが「相続や遺贈で財産を取得したときに18歳未満である人」です。日付についての要件はありません。

❸相続時精算課税制度(1月1日時点)

 相続時精算課税制度は、60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子または孫に対し財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。一定額までは贈与税を支払わないという”当面の税負担を抑えた”子孫への資金援助”できる仕組みです。この制度の贈与者である父母または祖父母が亡くなった時の相続税の計算する際には、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。

 贈与税・相続税を一体として考える仕組みで、適用を受けるには税務署に申告が必要なことから「特例」と考えましょう。だとすれば、贈与者(父母・祖父母)、受贈者(子・孫)には1月1日時点という日付要件が求められることも理解できますね。

※暦年課税が良いのか、精算課税が有効か、家族の事情により異なるので、各制度を十分に理解したうえで選択することが必要です。

❹遺産分割協議(開催時点)

 未成年者は遺産分割協議に参加できません。 相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議では法定代理人である親権者(父母等)が未成年者に代わって参加することになります。

4月1日以降は、法定代理人(通常は親)が代理して進める必要がなくなります。

❺養子縁組【変更なし】

 普通養子縁組とは、通常の養子縁組のことで、特別養子縁組と区別するために、普通養子縁組とよばれます。 普通養子縁組では、養親との間に法律上の親子関係が成立しますが、実親との親子関係が解消されるわけではなく、普通養子縁組によって養子となった人は、2組の親を持つことになります。
 一方、特別養子縁組は、実親との親子関係を解消され、養親のみが法律上の親となります。 実親の財産を相続する権利や、実親から扶養を受ける権利は無くなります。

 養子縁組が認められるための要件は、普通養子縁組よりも特別養子縁組の方が厳しく定められています。 普通養子縁組と特別養子縁組、それぞれが認められるための要件には「成年者」という文言がたびたび登場します。※詳細略。

普通養子縁組は、20歳以上です。 婚姻歴があれば、20歳未満でも構いません。 ただし、養子の方が年上の場合や、おじ・おば等の世代が上の親戚を養子にすることはできません。 特別養子縁組の場合は、夫婦の一方が25歳以上、もう一方が20歳以上です。 

厚生労働省webサイトより

 ここでいう成年者とは、20歳以上、または結婚歴のある人のことです。この20歳以上という年齢要件については、変更がありません

❻事業用資産や非上場株式についての贈与税や相続税の納付を猶予・免除(贈与時点)

後継者の選定が早くなる

 後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けて いる非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株 式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の 死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。

 4月1日以降が後継者側の年齢要件「18歳以上」に引き下げられます。(贈与時に18歳以上)そのため、後継者の候補が18歳に達していれば、承継の判断ができるということになります。

思うこと

 成年年齢を18歳に引き下げることは18~19歳の若者の自己決定権を尊重するものということですが、どうもしっくりきません。積極的な社会参加を促すことが目的にあるようですが、成年年齢の引下げが、さまざまな契約ごとにもつながるので、トラブルが増えることも予想されます。
 選挙との兼ね合いではないか?とか、少年法への対応という考えもあります(法律の対象年齢は変わりませんが)。もっともらしい見解は、男女とも18歳(=成人)で婚姻できるという点でしょうか。男女間の不平等という話に押されての決断ですね。私にはそれほど響く内容ではありませんが。

税と景気・経済の効果

 贈与税の目玉特例と言われるのが「教育資金の一括贈与」「住宅取得等資金の特例」「結婚・子育て資金の贈与の特例」の3つで、看板政策とも言われます。
 なかなかお金を使わない(資産の防衛体制)世代から、子ども、孫たちへ資産を移転させることによって、経済効果が生まれるとされています。たしかに、各特例が施行されてから贈与が積極的に行われています。

経済効果は未知数

 いかほどの経済効果を生んだのかは未知数です。今回の改正で景気循環が良くなるか?と聞かれれば「NO!」と即答します。もともとの政策が、イマイチだからです。経済効果を生むようにするには、資産の防衛体制世代から直接、お金を動かしてもらうほうがはるかに効果が高いからです。

 微修正の連続は、煩雑さを生むだけです。
 「時のひと」が誰とは言いませんが、15年ほど前に決断し、所得税・住民税の大改正を行ったときのような大胆な政策(改正)が求められる時期です。

いま必要なこと

 新たに成年となる若者を含め

  • 日本の将来をどうしたいのか?を積極的に考える

  • 行動方法が分からなかったり危険だとされるときは、大人たちがレクチャーする

くらいがちょうど良い。若者たちの意見を尊重し、先に大人になった人たちとの議論が闊達になることを望みます。

#日経COMEMO #NIKKEI

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