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スターバックスジャパン初代社長から学んだ経営概念 ~ファイナンシャルプランナー進化論②~

2015年、起業1年目で見事に大失敗して、お金も信用も、なにより仕事人間の自分にとって、一番失いたくない「ビジネスで成果を出すことが出来る」という自信を失って、まさに失意のどん底を経験した。
もともとチームを作る仕事が多かったので、仲間がいない、たった一人という状況が、メンタル的なしんどさに輪をかけていた。

そんな状況の中、今思えば幾つかの幸運により、立て直すことが出来たように思う。
一つ目の幸運は、つらい時に精神的な支えになってくれる家族、嫁と娘と息子の3人が親子スペイン留学でちょうど丸々1年「不在」にしていたこと。
??!

いや、いないのは、ほんときつかった、ですよ・・。
支えてくれたのは、精神的にではなく収益の方です。
売上が立たない本業の中、私の会社を支えてくれたのが嫁が勝手に登録した自宅のAirbnb(民泊)。私一人では広すぎた逗子駅近くの自宅を登録したら毎日のように借りてくれる人がいて、売上を作ってくれた。

二つ目の幸運は神奈川県逗子市(鎌倉と葉山の間にある海と山に囲まれた人口5万人の街)というちょうど良いサイズ感の街に住んでいたこと。

起業するまでは、長らく会社員として「業界」や「会社」という枠組みの中で仕事をしてきた。そして私のような会社が与えてくれた目標に向かって頑張る猛進型にとっては、枠組みや目標や評価が明確であればあるほど、成果も出しやすかった。
ところが、起業するとその枠組みも評価制度も与えられる目標もない。社会や日本、というような大きすぎる枠組みの中では、誰の評価を気にして、どんな具体的な目標をもって仕事を組み立てていくのか分からず、迷走というか、迷子になっていた。
独立起業とは自由で「なんでもできる」からこそ、難しさがある。

だからこそ、子どもたちが育つこの逗子という小さな街を一つの枠ととらえ、この中で自分はどのように貢献していくのか、どう付加価値を出せるのか、というマインドセットが出来たことは大きかった。
最初はファイナンシャルプランナーというより保険の代理店としてスタートしていたのだが、逗子にも沢山の保険営業の方が活躍していて、30年以上の業歴のある保険代理店も存在していた。
その中で自分が付加価値を訴求したり差別化をするには、出来たとしても相当な時間がかかると感じた。
では、この街でどうやって付加価値を出せるのか考えた時に出てきたのが、自分の特技。つまり何がやりたいか、というより、「どうやったら」「何であれば」地域の役に立てるか、という視点。(別な記事でも記載するが当社のValueに繋がってくる部分でもある。)
保険会社時代にずっと新人の育成ばかりやってきたので、教えることは得意だった。特に金融や資産運用や保険といった、一般の方が小難しく感じることを分かりやすく伝えることには自信があった。
だから、保険の営業ではなく、ファイナンシャルプランナーで付加価値を出していきたい、ファイナンシャルプランナーとして金融教育で逗子の街に貢献したい、と思えるようになった。

三つ目の幸運は青年会議所(JC)との出会い。
青年会議所は世界的な青年団体で、各市町村に組織され、40歳未満の主に事業者で組織された一般社団法人(地域によっては公益社団法人や任意団体)。年齢的に3年半しか所属できなったが、この組織で学んだこと、経験したことで、私の経営者としての核となるMissionを気付かせてくれるきっかけをつかめた。
ただし、このあたりは長くなってしまうので、別記事で触れたいと思う。

四つ目の幸運はまさに今日の本題であるスターバックスコーヒージャパンの初代社長、角田雄二(つのだゆうじ)さんとの出会い。
所属していた逗子葉山青年会議所の大先輩ということでご縁を頂いた。
角田先輩は葉山の老舗料亭である「日影茶屋」の跡取り(婿養子)であったが、単身アメリカに渡り、スターバックスに出会い、惚れ込んでしまった。そして、創業者のハワード・シュルツ氏に何度も手紙を書き、口説き落とした「このCaféは雰囲気もコーヒーも素晴らしい!、しいて言えば飯は不味いけどね。必ず成功させるから、是非私に日本でやらせてくれ。」(本人談)と。
何のつてのないところから、ダイレクトに手紙でアプローチしたり、しっかり欠点を指摘して、口説くエピソードは、とても引き込まれたのを今でも覚えている。(余談だが、逗子駅前のスターバックスの店内には日影茶屋の和菓子店が入っている。Caféの世界的チェーン店の店内に和菓子店が同居している、というとても珍しい現象は、この日本進出の経緯が影響しているらしい。)

角田さんと出会った当時も、スターバックスはブームと言っていいぐらい流行っていた。ただし、私はあまり興味はなかった。エスプレッソの苦味が好きでもなかったし、私の口に合ってコスパの良いコンビニコーヒーの何倍も払う価値を理解していなかって。

角田さんから様々な話を聞いて、さらに何冊かスターバックスに関わる本も読んで、私のようにあまり好きでないユーザーがいるのに、このコーヒーショップが何故、世界的な企業になれたのか、私なりに理解することが出来た。

(下記は私の理解)
・スターバックスはコーヒーショップであるが、コーヒーを売る為にお店を出しているわけではない。「サードプレイス」=家でも職場でもない心地よい第三の居場所を人々に提供したい。という企業理念とコンセプトがあり、そこからスタートして、内装・接客・食事、そしてコーヒーも作られていいる。つまり企業としてのMission(動機)が明確でかつ分かりやすく、多くのスタッフとユーザーの共感を得ることができた。
そして、内装も接客も食事もコーヒーも一貫した軸が通ってるからこそリピーターになるファンがいて、ブランドになることができた。
・宣伝や広告はほとんどしない。コアなファンのリピートと、クチコミでの広がりで拡大していった。つまり、不特定多数ではなく、スターバックスが大好きで、企業理念に共感してくれる少数のユーザーでビジネスを成立させることを意識している。

この学びは経営者として転換点になったと言っても過言ではない。
当社(FP Office 株式会社)が2018年に逗子に最初の事務所を構えた時、このスターバックスの経営概念をそのままトレースしている。

FP Office は投資信託や保険や不動産を提供することは出来るが、それらを売る為に存在しているわけではない。クライアントにライフプランニングを通して豊かで明るい人生に進化するようサポートしたい、ファイナンシャルプランナーの進化を通して顧客と社会に貢献したい、そして・金融教育の力で社会に進化をもたらしたい、という明確なMission(動機)があり、そこから人材の採用や育成も、コンサルティング手法もソリューションも組み立てている。
もちろん、このスタンス、特にライフプランニングを緻密に作りこんでいくスタイルについては、クライアント側にも時間と労力が必要なので、全ての方に「良いね」と言って頂けるわけではない。
それでも、しっかりお話する機会を頂ければ、一定のクライアントには、「すごく良い」と思って頂ける。
結果的に、当社もスターバックスと同じように、当社や担当FPを信頼して頂き5年10年と長いお付き合いをして頂けるクライアントと、そのクライアントからのご紹介で成り立っている。

もちろん、まだまだこれからの会社なので、この概念のトレースが正解だったかは、当然もっと先の判断になると思う。

ただし、一つ言えることは、当社と担当FPを信頼して頂くクライアントと、このスタイルでファイナンシャルプランナーとして働きたいという採用候補者の方が確実に増えている「手応え」があること。

そして、日々の悪戦苦闘があったとしても、Missionと志を共に出来る仲間と働ける「充足感」は何物にも代えがたい。



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