vol.12「財政検証スタート」
厚生労働省、社会保障審議会年金部会において、「年金将来の公的年金の財政見直し(財政検証)」がスタートしました。2024年は私たちの年金の財政を検証する重要な年で(前回は2019年)、今回はその中でも、遺族年金の見直しが高い確率で行われると言われています。この部会における財政検証結果は今年の夏あたりで公表され、必要な改革案を年末にかけて詰めるという流れです。
年金の財政検証とは、公的年金の「財政」の定期健康診断にあたるものですね。日本の公的年金制度には、少子高齢化に伴う公的年金加入者の減少や平均寿命の延びなど、社会の人口・経済全体の状況を考慮して、給付と負担のバランスを自動的に調整する仕組みがあります。そして、これらのバランスがとれているかどうか確認するため、少なくとも5年ごとに、最新の人口や経済の状況を反映した、長期にわたる財政収支の見通しを作成しています。
この財政検証ではいくつか(5パターンくらい)の経済シナリオの中で、年金財政がどうなるかが公表されていくのですが、そもそも年金財政は、人口の観点からしても万全というものではなく、いくつか改革案もセットで話し合わせていきます。今回2024年で議論されていくテーマはいくつかあると思いますが、以下とされています。
・基礎年金の納付期間を40年→45年に
・基礎年金の給付抑制を早期に停止(マクロ経済スライドのこと)
・パート労働者への厚生年金の適用拡大
・在職老齢年金制度の見直し
・遺族厚生年金の見直し
それぞれに触れてもいいのですが、これらは「議論」されているだけで、どうなるかはまだ分からないということもあるので、1番大事な「遺族年金」についてみていきます。
遺族基礎の目的は、「主たる生計維持者である国民年金の被保険者等が死亡した場合に、子を抱えている配偶者や自らの生計を維持することができない子に対し、生活の安定を図ること」と整理されています。国民年金の被保険者等が要件(ここでは割愛)を満たしている場合、「子のある配偶者」または、「子」が受給することができます。
子のある配偶者、もしくは子というのがポイントです。子とは、18歳の年度末までの間にある、または、20歳未満であって障害等級に該当する障害の状態にあり、かつ、婚姻をしていないというのが条件です。
次に遺族厚生年金です。遺族厚生の目的は、「主たる生計維持者である厚生年金の被保険者等が死亡した場合に、その遺族に対し、従前の生活を保障すること」と整理されています。厚生年金保険の被保険者等が要件(ここでは割愛)を満たしている場合、生計維持要件を満たす遺族が受給できます。
遺族の範囲と優先順位は、①配偶者または子、②父母、③孫、④祖父母です。先順位の者が受給権を取得した場合、後順位の者は受給を受ける遺族とはされません。配偶者と子は同順位ですが、配偶者が支給停止とならない限り、子の遺族厚生は原則として支給停止されます。
このように、遺族基礎と、遺族厚生は、その目的に違いがあるのです。遺族基礎は「子のある配偶者、もしくは子の生活の安定を図る」が目的であり、遺族厚生は「遺族の生活を保障する」ことなのです。
遺族基礎年金は、明確に、「子のあるは配偶者(ここでは夫も妻も)」もしくは「子」と表現されていますが、遺族厚生は「遺族」となっていますね。なので、遺族の順位というのがあるのですが、夫なのか妻なのかで違いがあります。まず夫が死亡した場合です。夫の死亡当時、遺族厚生は、妻は何歳であっても遺族厚生の受給資格を得られます(子のない 30 歳未満の妻の場合には5年間の有期給付)。
次に、妻が死亡した場合です。妻死亡時は、夫(や父母または祖父母)が遺族厚生の受給資格を得るには、妻の死亡当時の夫(や父母または祖父母)の年齢が55 歳以上でなければなりません。55歳以上であっても60歳になるまでは支給停止されることが原則となっていて、ここが「男女差」という部分です。
妻が850万円以上の年収があると生計維持関係ではなく、ストップすると言われますが、死亡当時に年収850万円以上であっても、おおむね5年以内に年収が850万円未満となると認められる事由(退職または廃業など)がある方は遺族年金を受け取ることができるということも押さえておくといいかもですね!