vol.24「株価は上がっても所得は上がらない現実」
日本の平均株価は、最近大きく上昇しました(2024年5月時点)。都心では不動産価格も上昇し、景気のよい話も聞こえてきますが、日本全体で見ると状況は決してよいとはいえません。そこで、日本の世帯あたりの所得金額を昔と比べて、日本の現状を確認してみました。
厚生労働省の国民生活基礎調査で日本の世帯所得を確認し、1985年からの推移を世帯構造別にグラフにしてみました。2019年(2020年調査)は新型コロナウイルス感染症の影響で調査中止となっています。
所得とは、稼働所得(税金や社会保険料を含む給与や賞与、仕入原価や必要経費等を差し引いた事業収入等)だけでなく公的年金や個人年金、財産取得等の所得も含みます。子は未婚の子のことです。
グラフは1985年(昭和60年)から2021年(令和3年)までの36年間(2019年を除く)なので、不動産バブルより前からの推移となります。6つのグラフのうち総数(黒い線)の世帯所得を見ると、1990年代のほうが今より多いのは一目瞭然です。
2021年の総数の世帯所得545万7000円に対し1994年は664万2000円なので、所得差は実に118万5000円にもなります。月々でいえば約10万円も減っていることになるので、生活が苦しい世帯はかなり多いはずです。
世帯構造別でみても、高齢者以外の世帯は2021年の665万円に対し1996年は713万9000円、ひとり親+子世帯も2021年の416万4000円に対し1993年は489万6000円で、1990年代のピークを超えられずにいます。
一方で、女性単独世帯は2016年の237万6000円が1985年以降では最も多く、2021年は若干下がってはいますが227万5000円で近い水準にあります。男性単独世帯とはまだ大きな差がありますが、女性単独世帯の所得は増加傾向にあります。
夫婦+子世帯(いわゆるファミリー世帯)は1997年が814万9000円で最も多いですが、2021年は803万3000円でほぼ変わらない水準まで戻ってきています。総数との差が1997年の157万2000円から2021年の257万6000円へ100万円も開いています。
教育費のために一生懸命働いて所得を増やしている(増やさないと生活できない)のか、それとも所得の多い世帯しか子育てができなくなっているのでしょうか。
同じく厚生労働省の国民生活基礎調査で、世帯所得の中央値も確認してみました。平均値は一部の高所得世帯の影響を大きく受けるので、中央値のほうがより実態を表しているともいえます。グラフは1985年から2021年までの推移です。2019年(2020年調査)は新型コロナウイルス感染症の影響で調査していません。
※中央値…所得を低いほうから高いほうへ順に並べて2等分する境界の値