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【資産運用】iDeCoで退職一時金を準備することについて

こんにちは。FPひろき(@FP_Hiroki)です。

本日のテーマはiDeCo(個人型確定拠出年金)についてです。
特に新NISAが来年から始まることから、それと比較して退職一時金をiDeCoで準備することが果たして最善の方策なのかを考えてみたいと思います。

結論から申しますと、場合によってはiDeCoで退職一時金を準備することについては、あなたが思ってるほど優位なものとは言い切れない、ということです。

なのでその点を新NISAによる資産形成で補えないかを考察してみます。

どうぞお付き合いください。


そもそもiDeCoとはなにか

iDeCoによる老後の資産形成は、税制面で3度の旨みがある。

まずはiDeCoの仕組みを詳しく見ていきます。

iDeCoの特徴としては端的にいうと、公的年金の3階部分を税制優遇を活用しながら作っていくものということです。

メリット・デメリットを理解整理することで、大変心強いものになるのは確かでしょう。

iDeCoの仕組み

この3過程それぞれに税制優遇が施されている

iDeCoは職業や立場によって拠出できる掛金上限額が決まっているのも特徴です。ある意味職業差別にもなりえそうなものですが、その点に関しては、経済発展の観点や社会的弱者とされる立場の方々を優遇する措置である点も考慮に入れなくてはなりません。

掛金上限額の違いは経済政策的観点や社会的立場の考慮があるから 出典:三菱UFJ銀行

個人事業主や専業主婦(夫)の所得控除にも直結する掛金上限額が、比較的大きいのもそのためといえます。

iDeCoのメリット

iDeCoのメリットは何と言っても、フェーズごとに非課税の恩恵を受けられる点にある

iDeCoの最大のメリットは、以下のようにライフステージ上で3度におよぶ税的優遇の恩恵が受けられる点にあります。

出典:マネックス証券
  1. 積立時
    iDeCoを活用した老後生活資金の準備に向けた積立の掛金は、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象になります。
    所得税および住民税は、所得が多ければ多いほど納税額が増えるわけですが、iDeCoの掛金を全額差し引けることで、課税所得金額が小さくなり、納税額も少なく済みます。
    個人事業主であれば、1ヶ月に68,000円(年間816,000円)も圧縮できることから、節税効果も抜群です。

  2. 運用時
    iDeCo
    運用時の運用益も非課税となります。
    通常は運用益に対して所得税および住民税20.315%が課税されます。

  3. 受取時
    65歳前後で公的年金等控除の違いから、税体系は大きく異なります。
    一例を出して端的に申し上げますと、65歳以上で公的年金とiDeCoを合算して110万円以下であれば税金はかかりません。

    またiDeCoを一時金で受け取るか年金形式で受け取るかで課税納税額が異なってきますが、退職所得控除が大きく関係してくる一時金における課税関係は後ほど解説します。

iDeCoのデメリット

iDeCoには払戻制限があることを覚えておくべき

iDeCoのデメリットとして真っ先にあがってくるのが、ジュニアNISAにも見られる「払戻制限」です。
一定年齢にならなくては基本的にお金を下ろすことはできません。
これに不安を覚える人は、同じ非課税運用制度を活用するのであれば、NISA制度の活用をお勧めします。

但しこれはデメリットにも見えてメリットにもなることへの理解が必要といえるでしょう。
あくまでも老後生活資金の資産形成目的であることを考えれば、途中で下ろすことなどはナンセンスであるからです。老後資金のための資産形成ニーズによる制度利用であると整理できているのであれば、そのあたりは容易に克服できる課題と考えます。

もし途中で下ろす可能性が少しでもあると考えているのであれば、iDeCoによる資産形成は避けた方がいいと言えるでしょう。


またiDeCoにはNISAとは異なり、「口座管理手数料」というコストがかかってきます。
これに対する理解が無ければ、運用商品によっては手数料負け(手数料コストが運用益を上回る状態)を起こしかねません。
せっかくのiDeCoによる運用も、その効能も限定的に狭めてしまいかねないことから、そこへの注意が必要となります。

また勤め先企業から多くの退職一時金をもらう人が、iDeCoの受取りを一時金で選択した場合にも注意が必要です。

老後生活資金のための資産形成をどうするか

新NISAを活用した老後生活試験の資産形成も検討しよう

老後生活資金の準備を、iDeCoで節税効果を活かしながら資産形成していくのも良い選択肢であると思います。

しかし一時金方式年金形式かで選択できるiDeCoの受取方式によっては注意が必要になってきます。

下記ではその注意点とその回避方法をご紹介します。

iDeCoによる資産形成の盲点

iDeCoによる退職一時金を受取りは、思いのほか税金がかかってしまうケースもある

iDeCoは受取方法によって所得が変わります。
一時金で受け取る場合は「退職所得」であり、年金形式で受取る場合は「公的年金等雑所得」となります。

よくインターネット上で「iDeCoは一時金で受けとるべき」という論調が多くありました。それは前述したとおり、一時金として受け取れば、退職所得控除があるので、かなりの節税効果が見込める…という論調でした。

ところがその論調を繰り広げてた人たちの一部には、iDeCoの年金原資の一時金受取りが企業からの退職一時金と合算されるという盲点が抜け落ちていたことに気付かされたという人もいるはずです。


どのようなことかを以下で具体例を挙げて解説します。

まず退職所得の計算式ですが以下のとおりになります。

退職所得控除(20年以上勤務)=800万円+{70万円×(勤務年数-20)}退職所得=(退職一時金[iDeCoの年金原資含む]-退職所得控除)×1/2
*×1/2しない例外もあり


この場合、勤務年数40年、企業からの退職一時金を2,500万円そしてiDeCoの年金原資を500万円とすると、退職所得だけの基本的な納税額は以下のようになります。

退職所得控除=800万円+{70万円×(40年-20)}=2,200万円
退職所得=(2,500万円+500万円-2,200万円)×1/2=500万円
①所得税=500万円×20%-427,500円=572,500円
②住民税=500万円×10%+5千円(均等割は自治体で異なる)=505,000円
①+②=1,077,500円

つまりiDeCoによる年金原資一括受取りは、企業から出る退職一時金と合算されることから、いくら退職所得控除があったとしても、それが思いのほか機能しないことを意味します。

現に上記のケースでは税金だけでも100万円以上支払うことになります(損益通算を加味しない場合)。

このように企業からの退職一時金が多く見込まれる人は、iDeCoによる一時金での受取りは、むしろ納税額を増やしかねない現状にあることに注意しておく必要があります。

新NISA活用のメリット・デメリット

iDeCoではなく新NISAを活用して老後生活資金作りをすることも考慮にいれるべき

iDeCoによる受取時の恩恵が思いのほか限定的になってしまうのであれば、やはりそこはNISA制度を活用して資産形成することも念頭に入れておくのも一つとなります。

ましてや2024年からはじまる新NISA制度は、非課税枠が大きく拡充されます。その大きく拡充されたNISA枠に従来のiDeCoをも包括してみてもよろしいかと思いますがいかがでしょうか。

また新NISAでは非課税運用期間が無期限となります。
運用益がすべて非課税になるのであれば、iDeCoによる資産形成に拘らず、新NISA活用を模索する道もできたと考えます。

とはいえ、iDeCoならではの恩恵でもある現役時の所得控除の累計の節税額がどれだけ効果があるかも考慮しながら、冷静に検討する必要があるでしょう。

なぜかについては次章に譲ります。

「退職所得控除」の改悪議論

退職一時金受取り時に納税額を抑えてくれることで大きく貢献している「退職所得控除」ですが、現在見直し議論が進められています。

そうしますとiDeCoで退職後生活資金にと資産形成をしたものを、一時金として受け取ることを選択するのであれば、さらに増税になりやしないかと心配になるのは当然でしょう。

そのようなこともあり、今後の議論の行方をしっかりと見届ける必要があります。



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Hiroki S,CFP®
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