第27話 いよいよ売買契約へ。その後の金銭消費貸借契約含めた住宅購入にかかる諸費用のまとめ
【登場人物】
〇藤堂さおり(32歳)・・主人公
大学職員として勤務している。夫の啓補は警視庁勤務。
気が強く、はっきりと言うタイプ。地図が好き。初めての住宅購入に向けて、不動産業者だけの話では納得いかず、FP事務所に相談へ行くが・・。
〇神崎勘太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所所長
CFP認定者、1級FP技能士、宅建士。「脱カモ」サポートをモットーに、龍太と二人でFP事務所を切り盛りしている。
〇藤堂啓補(34歳)・・さおりの夫。
警視庁勤務。素直で人を信じやすく、そのせいで営業マンのトークに乗せられやすい。基本的におっとりした性格。
〇神崎龍太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所 勤務 宅建士。
不動産業界での経験を活かしながら、勘太のサポートをしている。無口で勘太とは体型含めて正反対。
〇G不動産 花積亮介(36歳)・・勘太の高校の同級生、親友。 勘太のFP事務所と連携して、不動産事業を行っている。
前回までのあらすじ。
主人公の藤堂さおりと、夫の啓補。ある日夫の啓補が気に入って一気に購入しようとしていた建設予定のマンションがあった。そんな展開に不安なさおりはFP(ファイナンシャルプランナー)の無料相談をきっかけに、その物件の調査依頼をした。災害に弱い危険な立地であることを理由に購入をやめるように勧められ、実際にその建設予定地は後日台風で冠水してしまった。それがきっかけで、2人はここのFP事務所の住宅購入サポートプランを申し込む。それから、様々なレクチャーをしてもらいながら物件探しをするが、気に入った物件は、再建築不可だったり、FP事務所の龍太同行で他社不動産紹介物件も回ったが、と中々うまくいかない。しかし、やっととある中古戸建て物件を気に入り、申込むこととなった。銀行の仮審査や、住宅診断、契約までの準備は整い、不安になった二人は勘太の事務所を訪ね、売買契約の意味などレクチャーを受ける。そしていよいよ売買契約へ!
第27話 いよいよ売買契約へ。その後の金銭消費貸借契約含めた住宅購入にかかる諸費用のまとめ
売買契約日の当日、私たちは手付金の300万他を緊張しながら持参し、売主の仲介会社のある東急東横線学芸大学駅近くの不動産事務所にて重要事項説明のうえ売買契約書を取り交わした。売主さんは温厚な雰囲気の老夫婦で、偶然にも私の出身大学と奥様の方の出身大学が同じだった。契約後はそこの話でも少し盛り上がった。
当然なのかもしれないけれど、花積も私たち側の方に立ってちゃんと丁寧に対応してくれたと思う。
契約の取り交わしは無事に終了した。少しホッとしたけれど、先日勘太が言った通り、銀行との金銭消費貸借契約(金消契約)と、抵当権設定契約を済ませなければならない。改めて気を引き締めていくことにした。
数日後、準大手銀行Rより、フラット35の審査が通過した旨連絡がきた。私たちは、トータルで金利が安い今回この準大手銀行Rが取り扱うフラット35で借り入れすることに決めた。その旨をM不動産の花積に伝えると、花積がR銀行の担当者と、売主さん側の不動産会社とも連絡を取り、日程の調整をはじめてくれた。
そして、さらに数日後花積から連絡があり、2週間後の朝一にR銀行内で契約の取り交わしを行うことになった。
日程が決まったころで、勘太から連絡があり、火災保険のことなど、契約の最終確認も含めて、事前に打ち合わせすることになった。
そのころ、啓補からこの中古物件のリフォームについて相談があった。職場の先輩がリフォーム会社を紹介してくれるそうだ。そこから見積もり等をもらって、良ければそこでお願いしていこうと思う、とのことだった。
正直、住宅ローンの借入のことなど、私が中心に動いてきたこともあったから、リフォームについては、知り合いに頼むという判断が良いのかわからないけれど、悪質業者にあたるということはない気はする。。
リフォームについては、業者対応など啓補にある程度お願いすることにした。
売買契約の取り交わしでも、緊張したし、相当なエネルギーを使った感じだったけれど、
まだ、金銭消費貸借契約(金消契約)と、抵当権設定契約を交わすことが待ち受けている。それに伴って様々な諸費用がかかってくる。
もう勢いで、細かなところはどうでもよくなりそうだけれど、今回FP事務所に色々サポートしてもらっているおかげで、一つ一つ立ち止まって確認できてるところはある。
金額も大きい分、どこかマヒしやすいからこの点は本当に助かっているように感じた。
リフォームのことについても勘太に相談するべきか・・・? と少し迷ったが、とりあえず、今は他のことで余裕がないから啓補に任せてみよう。
それから1週間後、
啓補とFP事務所を訪ねると、勘太が他のお客の対応が延びているとかで、龍太が入り口で対応してくれた。
「無事に売買契約は終えたみたいですね。あと少し頑張ってください。」
「物件の内見の時は、お世話になりました。おかげさまで話が進んでいますよ」
勘太が応接室から出てきた。もう1つの応接室にて打ち合わせすることになった。
「お待たせしてすみません。銀行の融資も無事に決まってよかったね。次でいよいよ物件の引き渡し」
「これまで、色々サポートありがとうございます。あと少しね。今回の金銭消費貸借契約(金消契約)と、抵当権設定契約を交わすにあたって何か気をつけておいたほうが良いことなんかありますか?あと、資金的に結構これからリフォームのこととかも考えてくるとコストがかさんできているわ。これからの費用のことも整理したいと思って。」
「売買契約が無事に終了すると、こんどは物件引き渡しに向けて動いていくこの流れやけど、内容は、住宅ローンの借り入れの手続きと、この前手付金を支払ったと思うけれど、その残りの残金を売主に支払うこと。まずは」
「残金の支払いは、今回住宅ローンを借り入れするR銀行が代わりに行うということね。」
「そう、これまで融資の承認がおりるまで、審査にあたり様々な書類を提出したでしょ。銀行は貸したお金を金利含めて返済し続ける能力があるかを審査していたわけやね。そして、無事に審査が通った、そして金銭消費貸借契約(金消契約)にすすむことになる。
これが終わったらローンの実行、つまり残金の支払いね。普通の買い物やったらここで終わりやけれども、不動産は書いて字のごとく「動かすことができない」ものになるから、代金の支払いと同時に「所有権移転登記」という手続きが必要になる。これが抵当権設定契約のことね、それをすることで、やっと不動産の売買が完了する仕組みとなるわけ。流れとしては大まかには・・こんな感じかな」
1.売買契約の取り交わし(買主、売主)
2.金銭消費賃借契約と抵当権設定契約の取り交わし (銀行と住宅ローン借りる人)※司法書士が仲介
3.契約後、借り入れ残金を銀行が売主に支払う。
「なるほどね、今回最初に取り交わす金銭消費貸借契約(金消契約)は融資する銀行と借主である私たちと交わす契約ということね」
「そう、金銭消費貸借契約(金消契約)とは融資をする金融機関と借主が、借入金額、返済年数、金利や担保等を取り決めし、約定するために交わす契約のこと。この「金銭消費貸借契約書」には実印で記名押印することになる。」
「実印ってたしかええっと・・」
「今まで、こういう機会じゃないと中々使う場面ないよね。実印は、自分の自治体の役所窓口へ行って、印鑑登録手続きをして、印鑑登録証明書を提出したりする必要があるよ」
「うん、確かに今まで実印を作る機会とかなかったかも」
「金消契約は、ローン借主と金融機関との契約になるから、花積の仲介不動産会社は基本的に関与せずに、借主本人が出向いて契約手続きをおこなうのが原則。ただ実際はその契約後、すぐに抵当権設定契約にうつっていくから、まとめるかたちで今回みたいに不動産会社が日程調整してくれるってわけ。」
「抵当権設定契約は、さっき言われたみたいに、「所有権の移転」と「抵当権設定」の契約を取り交わすってことと考えて間違いはない?」
「そう、いわゆる残金の支払い(決済)のことね。ここでいう決済とは、ローンの実行、手付金で支払った以外の残金の支払い、ここは銀行が売主さんの口座に一気に残金を振り込むかたちとなるよ。そして、抵当権設定契約交わしてから登記申請、諸経費の精算となる」
「登記申請自体は、司法書士さんがするってことなのよね」
「そう、これは司法書士の独占業務の一つだからね。つまりその資格を保持していないとできない業務ということね」
「その司法書士さんへの報酬とまでなると、本当に色々費用が発生するのね」
「そう。金消契約と合わせて、団信の申込をすることになるだろうし、銀行への事務手数料、保証料、契約にあたっての印紙代、花積への不動産仲介料、あと抵当権設定などの登記費用(司法書士報酬含む)、固定資産税とほんと色々お金かかってくるよ」
勘太は以前にも渡したが、あらためて、かかる費用をまとめた資料を2人の前に出した。
「前、もらったときは、ふーん、くらいな感じでちゃんと意識していなかったけど、いざ目の前となると、本当に費用がかさむなぁ」
啓補も思わずため息まじりでつぶやいた。
お金が色々かかるとは聞いていたが、リフォームの費用のことも考えていかないといけないし、なんとなくわかってはいたけれど、本当にお金かかるんだな。
「あっ、あと火災保険、地震保険ね。これは何か考えていますか?」
「いやいや、銀行回りやらで、とてもそこまで選ぶ余裕がないというか、まだ動けていないわよ」
私たちは契約にかかわる様々な費用で火災保険、地震保険のことまで頭が回っていなかったというのが正直なところだ。
(第27話終わり) 次回は12月20日(日)に更新予定です。
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※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。