第24話 借り入れ金利による住宅ローン総支払額の違い
【登場人物】
〇藤堂さおり(32歳)・・主人公
大学職員として勤務している。夫の啓補は警視庁勤務。
気が強く、はっきりと言うタイプ。地図が好き。初めての住宅購入に向けて、不動産業者だけの話では納得いかず、FP事務所に相談へ行くが・・。
〇神崎勘太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所所長
CFP認定者、1級FP技能士、宅建士。「脱カモ」サポートをモットーに、龍太と二人でFP事務所を切り盛りしている。
〇藤堂啓補(34歳)・・さおりの夫。
警視庁勤務。素直で人を信じやすく、そのせいで営業マンのトークに乗せられやすい。基本的におっとりした性格。
〇神崎龍太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所 勤務 宅建士。
不動産業界での経験を活かしながら、勘太のサポートをしている。無口で勘太とは体型含めて正反対。
〇G不動産 花積亮介(36歳)・・勘太の高校の同級生、親友。 勘太のFP事務所と連携して、不動産事業を行っている。
前回までのあらすじ。
主人公の藤堂さおりと、夫の啓補。ある日夫の啓補が気に入って一気に購入しようとしていた建設予定のマンションがあった。そんな展開に不安なさおりはFP(ファイナンシャルプランナー)の無料相談をきっかけに、その物件の調査依頼をした。災害に弱い危険な立地であることを理由に購入をやめるように勧められ、実際にその建設予定地は後日台風で冠水してしまった。それがきっかけで、2人はここのFP事務所の住宅購入サポートプランを申し込む。それから、様々なレクチャーをしてもらいながら物件探しをするが、気に入った物件は、再建築不可だったり、FP事務所の龍太同行で他社不動産紹介物件も回ったが、と中々うまくいかない。しかし、やっととある中古戸建て物件を気に入り、申込むこととなった。銀行への借入れ含めて、不動産契約にあたって準備すべきことはどんなこと?
第24話 借り入れ金利による住宅ローン総支払額の違い
数日後、2つめに仮審査を申し込んだ大手S銀行から仮審査通過の連絡がきた。翌日すぐに私は仮審査通過の用紙を受け取りにいった。固定金利で金利は2%と少し高めだけれど、売買契約の際に、仮審査が通ったことがまず重要だと勘太は言っていたから、勘太にすぐ電話で報告した。
「とりあえずは良かったですね。ただ、実際の借り入れのためには、ここで安心せずにいくつか銀行を回ってもっと金利の安い銀行を見つけていかないとね」
「そ、そうですね。どこも仮審査通りそうだから、少し安心していたけれど、もっと安い金利を探していかなきゃですよね」
「もちろん。金利によって総支払額は全然変わってくるから、妥協してはだめですよ。
たとえば、4,000万円を元利均等返済で35年ローンで借入した場合
〇金利3% → 総支払額:64,654,496円
〇金利2% → 総支払額:55,651,862円
〇金利1% → 総支払額:47,423,753円
これくらい違ってくるからね。3%だと2,500万円近く金利を支払うことになる。」
「うわー、金額で知ると実感湧きますね。1%違うだけでも800万円以上違うし・・」
「だから繰り返しになるけれども妥協せずに、銀行選びをしてくださいね」
「うん、ネットで調べたり、もらった用紙を参考に銀行訪問継続しますよ」
正直、仮審査が通ってから、あとは売買契約だ、と考えていたけれど、勘太から金利の話をされたことで、改めて気を引き締めて銀行回りを続けることにした。
「あと、住宅診断でやけど、先日住宅診断する旨、先方の不動産通して、売主さんにも許可が下りたので、本日、業者に診断してもらって、問題はなさそう。報告書できたら、後日お渡ししますね」
「ああ、それは良かったわ。金額はこの前おっしゃってた6万円でいいのかしら。」
「実際は、オプション付けて、機械でも計測してもらったけど、その分はこちらもちでいいですよ。だから見積書通り6万円で大丈夫」
「あら、何か悪いわ。うーんでも助かる!ありがとう。」
「これから諸費用色々かかってきますからね。リフォームもするとでしょ」
「ええ、リフォームは旦那が業者探すつもりみたいだから今は任せてあるわ」
「また何かあればいつでも相談してな。では銀行回り頑張って!」
翌日、私から話を聞いた啓補は、仕事が休みだったこともあり、一人でもう一つの大手銀行の審査申込へ行ったそうだ。しかし、啓補の年収からだと収入合算でないと申込ができない旨いわれ、申込用紙だけ持ち帰ることにしたとのこと。収入合算でないと厳しい旨言われたのは初めてだったため、啓補は少しがっかりしたようだけど、2人で後日気を取り直して、ネットで色々調べたところ大手信託銀行の固定金利プランと準大手銀行の扱うフラット35が金利が安かったので、2人で伺うことにした。
どちらも審査結果は不動産の売買契約後になりそうだだけど、とにかく金利が安い。特に準大手の扱うフラット35は、通常金利は1.54%(団信なし)だけど、当初5年間はマイナス0.6%が適用されることもあり、その場合金利は0.94%になる。ここがこれまで回った中では一番金利が安いかたちにはなりそうだ。
そうしているうちに、不動産の売買契約日を4日後に迎えた。
花積から事前に準備するものをいくつか連絡受けていたが、その中で、手付金として現金300万円を用意するようにと言われていたため、銀行の窓口へ行き啓補はその金額をおろしにいった。
自宅に帰ると、私も啓補も手付金の札束を見て、実感がわいてきたのか、急にこのままでいいのか不安になってきた。花積が送ってくれた売買契約書の写しや重要事項説明書の写しにも目を通すが、なんとなく大きな問題はなさそう、ということくらいしか判断できない。
これまでサポートしてくれた勘太のところへ電話をかけ、明日平日だが、仕事後夜に時間をもらう依頼をした。勘太も二人の不安を察したのか、すぐに時間をとってくれた。
(第24話終わり) 次回は11月15日(日)に更新予定です。
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※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
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