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定石を踏む

以前もどこかに書き留めた覚えがありますが、わたしは自身で原稿を書き上げる際に、いくつかの手順を踏まえています。

たまーに書くお仕事がピタッと止んでしまって、次の仕事のオファーまでちょっと時間が空いちゃった場合など、突然「アレレ?」っていうくらい書けなくなることがあるんですよね。
一応、そういったスランプから抜け出すフローとして、システマチックに一つひとつの手順を追っていく作業は有効だと思っています。


1.いきなり書き始めない。〆切や他業務の詰まり具合にもよるが、取材で得た情報や調べた要素を2〜3日は寝かせ、まずはあれこれ、練る、考える。

2.書き出し(枕)と、ランディング(締め)をなんとなく見極めておいたうえでスタート。

3.書き始めたら、とにかく最後まで書ききる、走りきること。誤字脱字や納得いかない表現のチェックは後回し。

4.ストーリーに矛盾がないか、論旨に一貫性が保たれているか、誤字脱字がないかをまずは校閲さん目線でチェック。

5.さらに読者目線で、読みやすいか、話に起伏があって面白く感じるか、テンポやリズムが損なわれていないか、適材適所の表現がされているか、などなどをチェック。

6.それでもなんとなく面白みに欠けて仕方ない場合は、段落を入れ替えてみたり、時間軸をズラしてみたり。具体的にいうと、一番盛り上がる部分を掴みに持ってくる、結論を先に述べてみるなど。


ちょっとした小冊子に匹敵するような長尺な書き仕事だと、あらかじめ目次めいたものを作ってみたり、プロットを立ててみたり、もっと複雑なあれこれを書き出してペラ1枚に設計図としてまとめておいたりするんですけれど。だいたい8000字程度の特集企画ならこんな感じで進めています。

1.は、このnoteにもたびたび登場する元ボスから、口が酸っぱくなるほど云われてきたことです。必ず「すぐに書くな、何日か寝かせろよ」って。
経験則的に考えると、おそらくそれはカクテルパーティ効果を味方につけるってことなのかしらと思ったりするんですよ。取材後、あるいはインタビュー後、頭の中にパーティションを切って、四六時中そのことを思い出したり、なんとなく考え続けたりしていると、不意に別の場面で関連する話題やキーワードに出喰わすことがあるんです。例えば、インタビューで飛び出したエピソードに似たような話が、夜のニュースで語られていたり、新聞に書かれてあったり。そうすると、記事としてまとめる際に引用できたり、重ね合わせてストーリーを展開できたり、より深く思考できるじゃないですか。
わりと、この「寝かせる」というのは大事な行為な気がしていて、いつも時間が許される限り、実践していますね。

2.は、さほど重要ではないかもしれませんが、まぁ、ある程度は落とし所をイメージしながら書き進める際に役立っています。結局、何かを提示して、それを補完する情報を連ね、最終的な結論に持っていくような記事の場合、ただ闇雲に書き始めるよりは終わりが見えていて、袋小路に迷い込んだり、ブレることが少ないです。

一方、3.はわたしにとって、かなり外せないステップです。昔は、伝えたいことをどう伝えるかに執着しすぎて、それこそ最適解と思える言葉や表現が降りてくるまで「神恃み」なライティングばかりしていました。ずーっと机に向かってキーボードを叩き、モニターとにらめっこしながら、ああでもないこうでもないという時間を過ごしてたんです。
いつからか、これがホントに無為な時間だったと猛省するようになって。とりあえず言いたい事を言いたいママに書き連ねていくようになりました。そうすると、その後の筆の「しなり」や「うなり」が全然違ってくるんですよね。スピード感を保ちながら書くことで、徐々にギアがあがり、鋭さが増していきます。文芸作品ならともかく、(言い方は悪いですが)売文業の端くれとして目の前の仕事を完遂させるのなら、ダラダラさせずに一気に書き切ることをお勧めします。

後の4〜6.は、まぁ皆さんそれぞれのお好みで。ただ、書き手としての立場で自分の文章を読み直した時と、イチ読者としてまっさらな気持ちで推敲した時とでは、その文章に対する感じ方や捉え方が微妙に変化する気がしています。取材に協力してくださった皆さんの思いを少しでも届けたいという気持ちが強すぎて、もしかしたら読者にとっては蛇足でしかないエピソードや情報が綴られているかもしれません。そこに紙幅を割くぐらいなら、もっと他に伝えなければならない何かを書くべきかもしれません。読者目線での推敲は、誰か第三者に読んでいただくのと同様か、それ以上に得るものが大きいと思います。

尤も、これとて、ただのわたしの個人的なスタイル。書く人皆さんに、それぞれの「型」があるはずですので、あくまでもご参考までに。
いまだにモノやテーマによっては試行錯誤の連続ですが、自分の勝ちパターンを見つけておくのもスランプを防ぐ手段になろうかと思います。

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