見出し画像

Burberryと、Schottと、オジサンのお洒落道

「あ、そう言えばコレあったんだ!」。
衣替えをして、最近クローゼットの奥から引っ張り出したモノが2つあります。

バーバリーのトレンチコートと、schottのライダース・613ワンスター。

どっちも若い頃から憧れのワードローブで、まぁまぁお高かったですからね。
昔は服に何マンも出せるご身分じゃなかった(あ、今もか)からホイホイとは買えず(そして出会いというご縁がなく)、どっちも手に入れたのはほんの数年前でした。40代の終わり頃。

トレンチコートはご存じの通り、第一次大戦で英国の兵士が着ていた外套に由来します。それゆえに戦争映画なんかでよく出てきますね。近年リメイクされた『西部戦線異常なし』では緊迫する塹壕戦で見かけました。『クレイマークレイマー』ではメリル・ストリープ? 女性がカッコよく着こなしていました。ハンフリー・ボガードの『カサブランカ』とかも鉄板っすね。

まぁ、言うなれば、オトナのマスターピース。わかっていても、なかなか手が出なかったんですよ。学生時代、ファッション科や、スタイリスト科のオシャレな友人なんかは、ひと夏ガッツリバイトして、秋にはコレを買って颯爽と着てました。そういう、ちょっとしたファッションに対する執着が保てないと無理だったなぁ。

一方、schottのライダースは、学生時代にシングルを着ていました。詰め襟のカフェレーサーっぽいアレ。
デザイン学校の女友達が、休憩ルームの喫煙所で、咥えタバコで言ったんです。コレ、こないだ買ったんだけど大き過ぎてさぁ、わざわざお風呂場の浴槽に水溜めて、洗濯して縮ませて着てんだけど、それでもデカいのよ。よかったらわたしくん2万で買わない? うんバイト代入ったばっかだから買うよ買う!

でも、実はもっと欲しかったのがダブルのライダースでした。
往時はチーマー全盛期。周囲にはそれ系の友人がいっぱいいて、schottのダブルブレストにリーバイスの501、レッドウイングのエンジニアブーツが、まるで制服みたいな時代でした。同世代には東幹久さんや男闘呼組の高橋和也さんなんかがいて、さらにその上に唐沢寿明さんがいましたっけ。それこそ、センター街や東急ハンズあたりに行くとウジャウジャ。
わたし、バイクに乗ってたんですけど、なんか皆んなと同じ格好をするのがイヤで。カッコよく着こなす自信もなくて、あえて避けていた面がありました。
結構な値段もしてましたし、貧乏学生にはやっぱハードル高かったんですよ。
ちなみに、そういう仲間とつるむときのわたし出立ちは、ドカジャン(アルプス工業のアレと言えばイメージしやすいかしら)にブーツカット、足元はブーツじゃなくて雪駄でした。


話は変わりますが。
わたしは子どもの頃から母親にキツく躾られていて。
「何か欲しいと思っても、とりあえず一週間はガマンしなさい」。

これはとても理に適っていると思っていて、子どもが無遠慮に発する「アレほしい、コレほしい」は一週間も経てばたいていはやみます。
なんだったら、次の(別の)興味に意識が移って、忘れちゃったりなんかしちゃったりして。ホントに欲しいモノ以外はどうでもよくなっちゃいます。

上述したバーバリーのトレンチと、schottのワンスターは、かれこれ足掛け20年以上「欲しいなぁ」が続いてきたんでね。
母親の教えにも適っている。そしてその時、目の前にそのチャンスがあった。行ってしまえ〜。購入当時は、まぁそうなっちゃいました。

でも、いざ手に入れたら、そこで満足しちゃってしまっていたフシもないわけではない。憧れが強かっただけに、袖を通す場面を選んでしまったんですよ。

ちょっとそこまで、そんなお出かけには勿体無い。かと言って、仕事でトレンチは狙い過ぎ? 中に纏うジャケット&パンツがわりとトラディショナルじゃないと、コートだけ浮いちゃいますし。一方、ライダースはオフタイムの散歩にはハード過ぎる。

でも最近、街を歩いているとたまに見かけます。
シンプルなタートルネックに、トレンチをサラッと羽織っているオジサン。
コワモテになりがちなライダースを、キレイめのシャツや折り目正しいチノパンと合わせて、上品にまとめていらっしゃるオジサン。
なんか、若い子じゃなくて、オジサンだからこそな醸せる味わいコーディネートで、颯爽と歩いていらっしゃる。
あー、アレでいいんじゃんね、って、なんだか勇気が湧いてきました。

ついこないだ「パーカーおじさん論争」なんてのがありましたけれども、わたしも実は「それってオジサン弄りが酷くないか?」と考えるより先に、「何でもかんでも好きな服を着ればいいってもんじゃない。T.P.Oを弁えないオジサンのほうが悪い」と薄っすら思っていました。でも、それもちょっと違うかなぁと、考えをあらためるようになって。

そもそも、あの論争をおっ始めた若い脚本家さんは、別に、すべてのオジサンを敵に回したいわけではなかったんですよね。若ぶってて、令和世代の若者の感性わかってますアピールが強めで、それでいて偉そうに振る舞う大人が、仕事の現場には多いってことなんすよ、たぶん。ちゃんとリスペクトできるとこがあって、キャラが確立されていれば、何着てたって、あそこまでディスられるはずはないんです。

わたしら50代だって、若い頃は上の世代の方々をダセェと思ってたじゃないですか。往時のオジサンたちがスナック行ってカラオケで演歌を歌うのを、なんだかなぁ、さえないなぁと思っていた年頃があったじゃないですか。でも、かつてのオジサンたちは、だからどうした、文句があるかと大きく構えていましたよ。
んで、自分らがいざその世代になった今、顔を真っ赤にして、炎上に薪を焚べているという矛盾。カッコ悪いったらありゃしない。
若い子にダセェと思われたってかまやしねぇ、くらいの気分でいいんです。若い子がどう思おうが、流行に阿らず、好きなスタイルで通せばいいんです。

そういうわけで、トレンチとライダース、今後は好きなだけ着倒す予定です。
あ、トレンチはこうまで寒くなっちゃうともう無理かな。いや、インナーをあったかくすればまだイケる! 
オジサンだって堂々と、これまでの生き方を引っ提げて、オシャレを楽しめばいいんです。

いいなと思ったら応援しよう!