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コタツ記事なんぞAIに駆逐されてしまえと思いつつ、そんなこともなさそうだとふと思う今日この頃

こないだ仕事のオファーがありまして。

まぁ、お仕事というものは、過去の実績なら多少は脚色を入れつつもペラペラとお話できるんですけれど。現在進行形でアレコレ企画を進めている案件に関しては、どうしてもディテールを伏せたり、内容を何か別のものに置き換えないと語れません。守秘義務というものがありますし。

というわけで、仮に「海外留学を目指す学生さんたちのためのハウツー記事」を書かなきゃいけないという設定にさせていただきましょうか。
実際はジャンルもタスクの中身も全然違うんだけど。

メディアは某留学エージェントが立ち上げたばかりのウェブサイト(あくまでも架空の設定です)。留学の意義や心構え、準備、費用感、タイムテーブル、具体的なサービス内容といった基本情報はアナウンスされているものの、初動期にありがちな、ガワだけできてて中身スカスカ感がやたらと目立つというアレ。
そこに、留学にまつわるA to Zを1,500字程度のコラム風記事にして、プルダウンメニューかなんかでテーマ分けさせながら、大量に投下しなければならないのです。

むろん、バジェットが潤沢なら、コンテンツメイクは自由自在です。
例えば、「留学先として人気の国や都市」「目的別、留学先の選び方」「奨学金制度の活用方法」などなど、いろんな角度から創作アイデアが浮かんできます。実際に留学経験のある先輩社会人たちに取材して「体験談」をシリーズ化してもいいですし、海外主要都市在住のライターさんやコーディネーターさんに近隣の大学を取材してもらってキャンパスライフをレポートするのもいいでしょう。

ところが、蓋をあけてみたら、潤沢なバジェットなどというものはなかったのです。予算は1本あたり数万円程度。お金をかけたゼロベースからの取材や撮影なんて到底ムリ。有識者の方々にご登場いただきたくとも、たいした謝礼はご用意できそうにありません。そんな状況であるにも関わらず、短期間で大量にコラムを作らねばならないという腹立たしさ満々のオファーだったんです。

あとは収益性の懸念もありました。こういう突貫業務は、外部スタッフさんを総動員すれば一気にできないこともないんですが、外注ばかりしてたら会社に利益が残りません。
となると、もはや打開策は、家内制手工業によるネットニュース方式のコタツ記事の濫造。お役立ち情報となり得そうなネタを調べまくって、書きまくって、複雑な手作業を経ず、工数をとことん削って絞って、編集力でなんとかしなければ、ということになります。

もうね。断っちまおうかとも思ったんです。
ネットを漁って、拾い集めた情報をいくら再編集したって、結局どっかで読んだことがあるような記事しか作れない。そのクライアントさんがご用意された資料だって、結局はどっかの何かを取りまとめただけのものでしかない。
こういうのこそ、チャットGPTとやらにやらせればいいじゃない。少なくとも、わたしのやる仕事ではないわ、なんて思ってたんです。傲慢でしょうか? そんなことないよね。

ところが、この案件を持ち帰って、身内のスタッフに伝えたら、ぜひやりましょうということになりまして。
そういえば学生時代に留学していた子が何人かいるし、その子の周りにも経験者が多数おります。振り返ったらわたし自身も、過去に留学関連のムックを何冊か担当したことがありました。(これらはホントの話)。

また、ソースとなる数字の部分は、文科省などの官公庁、学生支援機関、各国の交流センターなどのデータをお借りして詳らかにすることができますし、関係各所に企画書を送ってお願いすれば、もっと込み入った業界事情や動向が窺い知れる資料、写真素材なんかがご提供いただけるかも。
結局はコタツ記事となんら変わらんのですが、知見を集めて、あとは発想勝負。留学を志す人が「俄然これは気なるわぁ」ってな惹句をタイトルに付け、留学によって得られるもの、留学生活を有意義にするアレコレ、留学志望者が携えておくべき心得などなど、みんなでブレストしてみたら、案外いろいろやれそうな気がしてきたんです。

それに、こういうふうにトントントンと話が前へ進む時は、成功の予感しかしません。ネガティブな気分に引っ張られて、ムリに流れを止めちゃいけないのは経験則でわかってます。
オッケー、じゃあ今回は完全出来高制にしちゃってさぁ、お給金とは別のボーナスステージを楽しもうぜ!ってな具合に、売上をみんなで山分けしちゃうという話になりました。

一応、チームで話し合った決め事は「自分なりの経験や見聞を必ず差し込むこと」。経験のない人は、そのクライアントさんのサービスを活用して留学した方々などに「リアルな声を聞きまくって記事に反映させること」。一般論として語るベーシックな情報はともかく、エピソードや具体例はネットで拾った他人様のものをパクってもトラブルの種にしかならんので、それだけは絶対やめてよねということにしました。当たり前ですけどね。

で、考えてみたら、これならチャットGPTには真似のできない芸当。わたしたちだからできる、やる意味がある仕事として、なんとなく消化できたわけです。

まぁでも、クライアントには「それなりのモノを作りたいなら、それなりの対価をお考えくださいね」と申し入れをいたしましたし、キチンと人並みに取材を重ねないと「いいモノは作れませんよ」とお話したんですけどね。どこまで伝わったか怪しいところですが、少なくともウチだからやれるんだぞアピールだけはしておきたい。そこはできあがりのテキストワークをご覧いただいて切実に感じていただきましょう。
2〜3本はそこのクライアント企業さんのご担当者がやるらしいんですが、プロの仕事というものを見せつけてやるつもりです。

というわけでコタツ記事、書きまくっています。あーしんど。

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