警察で取り調べを受けた経験と既視感
昔、とある警察署で取り調べ室に通されて、刑事さんの事情聴取を受けたことがあります。
わたしが何か悪事を働いたわけではないっすよ。
当時、住んでいた賃貸マンションにドロボーさんが入ったからです。
事件が発覚したのは、目撃者の方がいらしたから。
ウチの部屋のベランダからは、目の前にある舗装路を挟んで、向こう側に小高い丘がありまして。そこに社用車を駐停車してお昼休憩を取っていらした男性が、雨戸をカチ割って部屋の中に侵入する不審者を見かけ、110番通報してくださったのです。
取り調べの詳細は、いろいろ障りもあろうかと思うので省きますが。
取り調べ室って独特の雰囲気があるんですよね。
窓がない。事務机がたった一つドンっと置かれて、椅子もそんなに座り心地のよくないものが一つ。
まぁ、すべての警察署のすべての取り調べ室がそうだとは言えないでしょうが、あの圧迫感は刑事ドラマなどでよく見る殺風景な空間のそれでした。なんか威圧的。なんか恐い。
「つまりは、こういうことですね。○○時に仕事から帰ってきたら、ホニャララがホニャララで、ホニャララになっていたと…」
「えぇ。そうですねー。それで間違いないと思います」
刑事さんもノーパソで調書を打ち込みながらなんで、わりかし何度もおんなじことを聞くんですよ。そのたびに「先ほども申し上げましたが…」と前置きをしながら、答えるんですけどね。1時間が2時間、2時間が3時間、いつ終わるともわからない時間がズーッと続いて。あれこれ状況を思い出して答えて、また思い出して答えてを繰り返していると、刑事さんが「つまりはこういうことですね」と念押ししてくる段になると、ぶっちゃけ面倒くさくなってきて「そうそう。そうです」と返してしまうんですよ。
あぁ、こういうことかもしれないなぁ。
容疑者がついつい自供してしまう空気感って。なんて思ったわけです。
昨日、フジテレビの記者会見を見ていて、なんとなく、その取り調べの現場に遭遇するという貴重な体験を思い出しました。
社長の港さん、会長の嘉納さん、副会長の遠藤さんもきっと気分はそんな感じ。あんだけの長時間をダラダラ質問され続けて、うっかりミスを犯してしまうのは仕方がない。
あ、別にわたしは彼らを擁護したいわけじゃありません。港さんなんて、いわゆる往年のテレビマンの代表格で、嫌なテレビマン選手権があったら、わたしの中でダントツ優勝しちゃうくらい好きじゃない。わたしはテレビのPとかDとかADとかが嫌いです。なぜなら、お店や施設に取材に行くと対象者さんからは碌な話を聞きませんし、テレビの取材に対する不平不満ばかり聞かされてきました。場合によっては同類に思われて取材拒否をされることさえあったからです。
今はコンプライアンスが改善されて、だいぶ素行がよろしくなったようですが、10年20年前ははた迷惑な存在だったんですよ。
また、あの会見に関して言えば、ジャーナリストの質の低さにも目がいきます。
立場上言えないって云ってるのに、一致か不一致かに殊更こだわって、30分間以上あの場をシラケさせたフリーの人はなんなんですかね。ユニクロに潜入取材したご高名な記者さんらしいですが、あんなに陰湿で、話の通じない人も珍しい。また、そのあとにも長々と持論を述べて、お気持ち表明されていたジャーナリストさんも酷かった。
たまーに「なるほど! いい質問だ!」と、記者さんの慧眼に膝ポンさせられちゃう場面もあるにはありましたが、最終盤で総務省からの天下り(フジの役員に元総務省職員がいる)を徹底追求している記者さんなどは、天下りそのものの線引きを完全に見誤っていて、勉強不足が否めない印象でした。
やたらと数字にこだわって、嫌がらせのように後でいいから開示しろ、約束しろと迫る記者さんにも虫唾が走りました。
ひたすらノーガードで、拙い応答ながらも、漏らさず話を聞こう、投げ出さずに答えようとしているフジ側のほうに誠意を感じました。
こう言っちゃなんですが、どいつもこいつもアプローチがド下手だし、喋りもダメダメ。ジャーナリストが批判される理由が凝縮されていました。淡々と疑問を投げかける若い人たちの方がよっぽど優秀に見えましたよ。
世の中の大人って、もっとずっと賢いもんだと思っていましたが、なんだか残念でした。幻想でした。