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偏屈なレンズ選び② 〜「コスパ」の先の「究極」へ ZEISS Otus 1.4/28 ZF.2〜


1.「コスパがいい」


「コスパがいい」

安易に使うには嫌いなフレーズです。

「コスト」のみに目を向けがちなケースがよく見られます。

写真用レンズでも同じで、「表面上のスペック」をなぞり、
「価格だけ」を見て「このレンズはコスパ最高!」などと見かけてしまうと、
バカバカしくて笑えてくるんですよね。

2.コス「パ」

ZEISS Otus 1.4/28 ZF.2。重要な仕様は以下の通り。

  • 焦点距離:28mm

  • 開放F値:1.4

  • 最短撮影距離:0.3m

  • 最大撮影倍率:0.18倍

  • 重量:1.32kg(ニコン用)

  • 全長:127mm

  • 鏡筒最大径:109mm

  • フィルター径:95mm

  • 価格:588,150円(24年9月20日時点マップカメラ価格)

ゴリラみたいでしょう。
この凄まじい巨体でオートフォーカスもなく60万円ですから、
逆にこんな鈍重なレンズからどんな絵が出てくるのか、ワクワクします。

方や、Leica Summilux-M 28mm f/1.4 ASPHは、これを書いている
現在の価格は1,107,700円(マップカメラ)です。
同じドイツブランドです。どうです?安いでしょう、半額ですよOtus。
買いませんか?

そしてこのレンズ構成。
多くのレンズが異常部分分散レンズで、非球面も2枚使われており、
まさに「贅沢」。ちゃんと60万円分のコストがしっかり反映されています。
激安です。
(下記ZEISSサイトより引用)

ZEISSサイトより

他にも似たようなカタログスペックのレンズは他社製でありますが、
Otusでしか摂取できない必須栄養素があるので、60万でも自信を持って
勧められます。
実際、後述しますが、28mm F1.4のNikon NIKKORと比較しても
圧倒的パフォーマンスでした。

ZEISS Otusは、「パフォーマンス」のためだけに、
重量、サイズ、値段、オートフォーカスも全てを犠牲に「コスト」を払う、
コスパの壁を超えた先にしか見えない贅沢な世界なのです

3.サンプルショット

原則開放のみです。このレンズを絞って使うのはもったいない。
被写界深度のコントロール以外で、このレンズで絞る必要はありません。
Capture One Proで仕上げています。

Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/28 ZF.2
Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/28 ZF.2
Nikon D3, ZEISS Otus 1.4/28 ZF.2
Nikon Z 9,  ZEISS Otus 1.4/28 ZF.2
Nikon Z 9,  ZEISS Otus 1.4/28 ZF.2
Nikon Z 9,  ZEISS Otus 1.4/28 ZF.2

4.「究極」

設計したZEISSが「まさに世界最高の広角レンズ」と、
製造したコシナが「一切の妥協と制約を排した最高級の画像品質」と
言い切るレンズ。

開放F1.4に置いて、中央と周辺部は画質に差が出がちです。
しかしOtus 1.4/28は周辺部まで非常に平坦かつ高いコントラスを維持しつつ、
四隅でも画質差が最小限に抑えられています。

ここで2枚の写真を並べます。

Nikon D850, Otus 1.4/28 ZF.2
Nikon D850, AF-S NIKKOR 28mm f/1.4E ED

ZEISS Otus 1.4/28 ZF.2と、Nikon AF-S NIKKOR 28mm f/1.4E ED。
一時期、同じ28mm F1.4を2本あるイカれたラインナップでしたので、
D850で少し比較をしてみました。四隅で差は歴然としています。

左からAF-S 28/1.4E ED F1.4、F2、F2.8、Otus 1.4/28 F1.4

NIKKORも間違いなく良いレンズです。
NIKKORの方が大きくボケを取ったときは柔らかく、大口径らしい寄りで
大きいボケを活かす場合はNIKKORの方が適している場合もあります。
何よりOtusの半額未満でオートフォーカスもあります。
ただ、それでもこういう見方で比較をしてみると、こうも極端な差が
出てしまいました。

また、ZEISS自身も自慢していますが色収差の少なさ。
自信を持って「Apo-Distagon」と銘打つ程のアポクロマート設計で、
近接でも色収差はないに等しい。
ZEISS銘の写真レンズは数あれど、Apoはそうありません。
Distagon銘でApoなのはOtus 55と28だけじゃないかな

5.コシナのZEISS

コシナが製造・発売しているZEISSスチルレンズは、現在、ZM(ライカM)、
Otus/Milvus/Classic(ニコンF/キヤノンEF)のラインナップです。

下記デジカメWatchのインタビューによれば、
ZEISSが光学の基礎を設計し、コシナが量産に向け修正しつつZEISSと折衝し、
コシナが製造…といった体制のようです。

個人的に、コシナZEISSを大変推せる理由がここ。

多品種少量を得意とするコシナをして「難易度が高すぎる」と言わしめる
ZEISSの基礎設計に、コシナの高い製造品質。良くないはずがない。

Summaronの記事でも書きましたが、これがLeicaになると、
写りは良くとも製造品質がザル。
最近のLeicaは、日本メーカーではありえないほど、レンズの中に平気で
ゴミが入っていたり、ハズレ個体では線傷のようなものすらあります。
「ドイツ品質」とは何なんでしょうね。なお、ライカカメラジャパンでは、
新品のレンズであっても、ゴミが大量に入っていようが原則初期不良等の扱いで
交換を認めません。

これがコシナZEISSだと、設計はZEISSで製造品質は定評のコシナですから、
コラボとしてはこの上ない最高なのです。
Otusという「究極のレンズ」を作るには、まさに「最強タッグ」なわけです

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