ミラーレスカメラはレンジファインダーレンズの夢を見るか?
フィルム用レンズと言えば、100年近い歴史があるわけですが、
昨今のミラーレスカメラはフランジバックが短く、
多くの古いフィルムカメラ用レンズが、ショートフランジバックの
ミラーレスカメラではアダプターを介し使用可能になっています。
では、その最近のミラーレスカメラでフィルム用レンズの性能は活かせるのか?
しばしば「フィルム用のレンズは性能が低い」ようなことが言われますが、
実写で使う分には、十分優れたレンズは沢山あります。
特に、90年代銀塩末期とも言える時代に出た望遠単焦点なんかは実に優秀で、
デジタル用にも光学系はそのままに、AFモーターやLSIの更新のみに
とどまったものも数多くあります。
高画素が当たり前となり性能の基準は確かに引き上げられたのでしょうが、
特にレフ機用レンズでは、今の4000〜5000万画素クラスの高画素機でも
十分以上の性能を発揮する古いレンズはたくさんあります
(それこそ60〜70年代設計でも)
話はそれましたが、デジカメの撮像素子の手前には色々ありますね。
ローパスフィルターやカバーガラス。
ローパスフィルターは、それがないことによる解像の向上や、
逆にモアレ抑制のためにそれを残すなど、ローパスフィルターの有無は
それ自体がカメラの売り文句の一つとなる部分です。
で、本題のカバーガラスの影響ですが、こちらの記事が大変参考になります。
まさに光学設計をやっている専門の方による解説で必見です。
ではタイトルにあるレンジファインダーレンズのミラーレスカメラでの
実写での影響はどうなのか?
今回試したレンズはコシナ製造のBiogon T* 2/35 ZM。
ライカMマウントですが、発売は2005年。コシナがZEISSとの協業にて
リリースしたZEISS Ikon ZM向けのレンズ群の一つです。
Leica M8は当時存在しておらず、R-D1はありましたが、銀塩用設計と見て
間違いないでしょう。
レンズ名の通り対照型のビオゴンタイプで、後玉がマウント面より大きく後ろに
飛び出している構造になっています。
ちなみに筆者の大変お気に入りの一本です。ZEISSは全てを救済するので
銀塩用とはいえ2000年代の設計。
これをLeica M (Typ240)とNikon Z fで比べてみました。
センサー前カバーガラスは、ライカは1mm未満、ニコンZは1.1mm、
ソニーα7系は2mm前後、キャノンEOS Rは1.6mm程だそうです。
Leica MとNikon Z fでの結果は……
雲泥の差でしたw
わかりやすくするために、右下を拡大してみましょう。
撮影日も天候も異なるので、コントラストや色は参考になりませんが、
見ての通り、Nikon Z fでは像面湾曲により隅のピント位置が
大きく倒れてしまっています。
ちなみに、他に所有している現行モデルのSummicron-M 50mm f/2 11826でも、
Nikon Z 9とLeica Mで同じ比較をやってみましたが、
後玉がマウント面より大分引っ込んでいるダブルガウスタイプのこのレンズでは、
上記のBiogonと比べ差はかなり小さく収まっていました。
ズミクロンの方はニコンZカメラでも十分許容範囲で使えるかなと思います。
しばしば、「ニコンZはカバーガラスが薄くオールドレンズ向き!」という
言説は見かけますが、あくまで相対的な話で、ソニーやキヤノン等の
他ミラーレス機と比較してのことであり、やはり、下記マップカメラの
インタビュー記事の通り特別な配慮がされているM型デジタルカメラとの
比較では、レンズタイプ次第ではこういう悲惨な結果差となってしまうようです。
https://news.mapcamera.com/k4l/ピーター・カルベ氏-ライカslレンズ-インタビュー-vol-2/
M型以外に、ライカではSL/CL/TLシリーズのミラーレスカメラがありますが、
下記デジカメWatchのQ&Aレポートによれば、レンジファインダー用である
Mレンズを使うにはM型がベストだとライカカメラAGも回答しています
Lマウントでは専用設計のLレンズ以外にも、シグマやパナソニック製のレンズとの
互換性への配慮を考えると、多少やむを得ない部分があるのでしょう。
ということで、結論、レンジファインダー用レンズ(特に後玉が出ているもの)を
しっかり活かすには、ちゃんと配慮されているデジタルライカMを使いましょう
(PIXII MAXは大丈夫なんでしょうか…)