忘れられていた原作。それなのに今日も愛される作品になった理由とは?? 『ラ・シルフィード』
こんにちは。
ただのバレエ好きのあゆみです。
昨日の雷、突然の豪雨、みなさんは大丈夫でしたか??
私は、自転車乗ってた時に見事に豪雨にやられました。
Tシャツもズボンもびしゃびしゃでした💦笑
風邪引かなくてよかった。
今年の夏は、結構わがまま気候というか、
そんな日々が続いている気がします。
さて、前回のnoteでは、
『ラ・シルフィード』のあらすじと見どころ紹介
をしました。
割とボリュームたっぷりの内容になっておりますのでよければご覧ください☺️
今日は、現在も上演されている
タリオーニ/ラコット版、ブルノンヴィル版のそれぞれの特徴と違い
について触れていきます!
バレエ作品『ラシルフィード』の作曲家は、
実は2人います。
ん???????
ちょっと待ってくださいね????
大体、どの作品も作曲家って1人だったよね??
しかも、現在上演されてるバージョンもなんだか2つあるらしい!!
ということは…?☺️
それでは、スタート!!
✔️2つのバージョン、それぞれの概要
タリオーニ/ラコット版
初演:1832年@パリ・オペラ座🇫🇷
振付家:フィリッポ・タリオーニ
作曲家:ジャン・シュナイツホーファ
※1972年蘇演@パリ・オペラ座(振付:ピエール・ラコット)
世界初のロマンティックバレエ作品と言われている『ラ・シルフィード』を完成させたフィリポ・タリオーニ。
しかし、その振付の記録はどこにも残ってなかったので、
初演から約1.5世紀後にピエール・ラコットによって蘇演が行われました!
そのため、連名によって表記されることが多いです。
(バレエ団によって表記のされ方は違く、
タリオーニ版、ラコット版 などと表記されている場合も多いみたいです。)
ブルノンヴィル版
初演:1836年@デンマーク王立劇場🇩🇰
振付家:オーギュスト・ブルノンヴィル
作曲家:ベルマン・ロヴィンシュルド
ブルノンヴィルはデンマークで活躍した、
ロマンティックバレエを代表するダンサー兼振付家の1人です。
今でもブルノンヴィルメソッドが残るほど、
自分の踊りのスタイルをしっかり確立しました。
ブルノンヴィル本人に関してはまた、後日noteでまとめますね!
しっかり説明したいので☺️
✔️1つの作品に作曲家が2人??
バレエ作品において、
ほとんどの作品が1人の作曲家によって作られます。
(1つのスコアを数名で作られていることはありますが、スコアが2つあることは稀れ。)
その背景にはどんなことがあったのでしょうか??
ブルノンヴィル、パリで『ラ・シルフィード』を見る
当時、デンマーク王立バレエ団のバレエマスターをしていたブルノンヴィルは、
フランスのパリでフィリッポ・タリオーニが振り付けた『ラ・シルフィード』をみて衝撃を受けた。
自国のデンマークでも上演させてほしいと思い、お願いするが、
著作権の関係で上演するためには莫大な金額が必要だった。
諦めきれないブルノンヴィル
どうしても自国で『ラ・シルフィード』を上演したかったブルノンヴィルは、
別の音楽家に作曲を依頼し、自分で手掛けることを決意した。
上演台本(物語のあらすじ)はほとんど同じことから、
利用料として莫大なお金を請求されたのは、
音楽
ということがわかります。
そのため『ラ・シルフィード』には2つの音楽(スコア)が存在しているのです。
忘れられていた原作
今でこそ、『ラ・シルフィード』はバレエ団によって上演するバージョンが選ばれていますが、
ピエール・ラコットが蘇演する1972年まで、
原作のタリオーニ版は忘れられていたと言われています。
それに対し、ブルノンヴィル版はデンマークで初演を迎えてから、
今日まで継続的に上演されてきたのです。
ブルノンヴィルが生涯振り付けた作品の中で、『ラ・シルフィード』は彼の代名詞と呼ばれるほど有名な作品なったので、
わざわざパリまで見にいき、感激し、最終的に自分で作ったことが功を奏したのかもしれないですね。
✔️それぞれのバージョンの特徴
項目に分けて、2つのバージョンを比較していきます。
1. 振付、構成
■ラコット版=タリオーニ版 + 見せ場
ラコット版は、現存していないタリオーニ版にダンサーの見せ場となるシーンを足したものです。
例えば、
・1幕のパ・ド・トロワ(3人の踊り=ジェームズ、エフィー、シルフィード)
・1幕のジェームズの友人のパ・ド・ドゥ(2人の踊り)
⇩この動画の0:30~ジェームズ友人のパ・ド・ドゥ
12:00ごろ〜パ・ド・トロワ
■ブルノンヴィル版=有名なシーンが多い
ガラやコンクールで見ることが多いのは、ブルノンヴィル版の方かなと思います。
例えば、
・1幕のジェームズのVa.(ヴァリエーション=ソリストが1人で踊ること)
↑ブルノンヴィルメソッドを今も教えているニコライ・ヒュッぺのダンサー時代の動画
・2幕のジェームズとシルフィードのシーン
↑世界バレエ・フェスティバルで上演された2幕の抜粋より。
シルフィード役:タマラ・ロホ
ジェームズ役:スティーブン・マックレー
2. 上演時間
■タリオーニ/ラコット版
上演時間 約100分
先述の通り、タリオーニ版に見せ場のシーンが足されたので、このぐらいの時間。
■ブルノンヴィル版
上演時間 約60分
タリオーニ版(初演の方)と台本が同じのため。
他の音楽家に作曲を依頼して、大体原作と同じぐらいの長さにできるのすごい。
『ラ・シルフィード』は全体的に上演時間があまり長くないといえます。
クラシックバレエの時代の作品に比べると、だいぶ短く感じます。
(クラシックバレエの時代のものは、幕間の休憩とかを含めると3時間ぐらいになるものもある。)
3. 衣裳、シューズ
衣裳自体はどちらも大差がないと言えます。
スコットランド地方の伝統が作品内に現れていて、
タータンチェック
ダンサーがスカートを履くこと
は特に変わりはありません。
しかし、特筆すべきなのは、
1幕で女性が履いているシューズ(エフィーと友人たち)
でしょう。
■タリオーニ/ラコット版
トゥシューズ
■ブルノンヴィル版
キャラクターシューズ※
※バレエの作品内などで、キャラクターダンスと呼ばれる「民族舞踊」を踊る際にはく、ヒールがあるシューズのこと。
ラコットが蘇演時に、なぜトゥシューズにしたのかは定かではありませんが、
より作品の舞台であるスコットランドの民族的な雰囲気を意識しているのは
ブルノンヴィル版といえると思います。
フィリッポ・タリオーニが作ってた原作でどっちを履いていたのかも定かではありませんが、個人的な見解では、もしかしたらキャラクターシューズを履いていたのではないかなぁと思ってます。
・初演で主演のシルフィードを務めたマリー・タリオーニのライバルのファニー・エルスラーは当時からキャラクターシューズのようなものを履いていたと思うの
・マリー以外にトゥシューズを履き続けられるダンサーがあまり多くなかった思う
・フィリッポは娘マリーがトゥシューズを履いて踊るのを目立たせたかったのではないか
などと考えたからです。
でもトゥシューズを履いていた可能性もあると思うので、
もし知ってる方いたら教えてください🙇♀️
4. 魔女マッジを演じるひと
■タリオーニ/ラコット版
男性
■ブルノンヴィル版
女性
本などに明確に書き記されていることではないですが、
2つのバージョンの動画を見比べていると、
大体ラコット版は男性、
ブルノンヴィル版では女性
が魔女マッジ役を演じていることが多かったです。
バレエでは、変な人、異世界の人を表すために、
女性の役を男性が演じることもよくあります。
ex)『シンデレラ』の継母、意地悪姉さん役
『眠れる森の美女』のカラボス役
✔️まとめ
2つのバージョンの全幕の動画
先述したいろいろなことを踏まえて、
お時間のある方はぜひ全幕の『ラ・シルフィード』を見てみてください!
※あ!その前にこのnoteの「スキ」もお忘れなくお願いします。
■タリオーニ/ラコット版
パリ・オペラ座バレエ団
・シルフィード役:オレリー・デュポン
・ジェームズ役:マチュー・ガニオ
※4本に分かれてるうちの1本目です(同じ投稿者さんが残り3本も載せてますので、よければそちらもぜひ!)
■ブルノンヴィル版
デンマーク王立バレエ団
・シルフィード役:リス・イェペセン?
・ジェームズ役:ニコライ・ヒュッぺ
最後に
バレエには作品がたくさんありますが、多くの作品にいくつかのバージョンが存在していることが多いです。
人が変われば感性が変わり、それによって作品の解釈が変わってくるので、
バージョンが作品あるほどより多くのバレエ団にて上演されてる証ともいえるかと思います。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございました!
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よければ覗いてみてください☺️
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それではまた〜