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大麻の効能:人体編 エンド・カンナビノイド・システム

こんにちは!

カンナビスの効能について、【人体編】と【カンナビス編】に分けて取り上げていきたいと思います。

今回はその【人体編】、体内に存在する「エンド・カンナビノイド・システム(Endocannabinoid System)」について解説します。このエンド・カンナビノイド・システムはカンナビスの効能を語る上で欠かせない要素になりますので是非一読していただければと思います。

本稿を読まれる前に予備知識として「基礎編】 — アメリカの大麻業界を理解する上で欠かせない5つのキーワード」に目を通しておくことをおすすめ致します。

*本ノートは日本語で詳細なカンナビスの情報を少しでも多くの方にお届けしたいがために、無料で掲載しております。少しでも「チップ」という形でご支援頂けるのであれば本ノートを続けるモチベーションにも繋がりますので、サポートが可能な方は是非よろしくお願い致します。

まずはじめに、カンナビスの効能について様々な情報が飛び交っているかと思います。カンナビス推進派は様々な医療目的、安眠、痛み止め、リラックス効果などを訴えており、反対派は不安促進、精神崩壊、などを訴えています。

どれも断片的に事実ではありますが、カンナビスの効能の本質を突くところがこのエンド・カンナビノイド・システムになります。

まずエンド・カンナビノイド・システムを説明する前にカンナビスの研究の歴史を一部ご紹介します。

カンナビス研究の父

カンナビスの研究は何と言っても「カンナビス研究の父」と呼ばれるイスラエル人のラファエル・ミシューラム博士の功績がとてつもなく大きいです。ミシューラム博士は1960年代から半世紀以上に渡りカンナビスの研究を重ねてきました。イスラエルはアメリカや欧米各国と比べ、研究の予算やリソースが限られているため、当時世界的に規制されていることでほとんど誰も研究しておらず、ライバルの少なかったカンナビスの研究に取り組みます。ミシューラム博士は様々な研究者が150年以上前にアヘンからモルヒネを分離し、100年以上前にコカの葉からコカインを分離できたにも関わらず、1万年以上前に人類と共存するカンナビスの精神活性成分と非精神活性成分を分離できていないことが分かり、その研究に努めます。1964年に世界で初めて精神活性成分であるTHCというカンナビノイド(カンナビスに含まれる化学物質)を分離することに成功し、様々なカンナビノイドの発見や人体に潜むエンド・カンナビノイド・システムの発見に貢献します。(1963年にはCBDもミシューラム博士らによって発見されております)

【参照:NCBIProject CBD

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半世紀以上カンナビスの研究を重ねてきた、ラファエル・ミシューラム博士(High Timesより)

ミシューラム博士の研究内容を追ったドキュメンタリー「The Scientist」

カンナビスには発見されただけでも100種類以上のカンナビノイドがあり、体内にある受容体のCB1やCB2に反応します。
CB1とCB2が体内のどこに潜んでいるか分かりやすくした図がCBDオイルなどを販売するSATIMED USAのサイトにありましたのでご紹介します。

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カンナビノイドに反応する受容体が体内に存在するということは、体内にもカンナビノイドに似た物質が存在するのではないか、とミシューラム博士らは仮説を立てます。そこでミシューラム博士は国際的な研究チームを結成し、この神経伝達物質を探すため人間の脳に似た豚の脳の研究を始めます。

やがて1992年にCB1の受容体に反応する体内の神経伝達物質を発見し、それをアナンダミド(Anandamide)と名付けます。その後、もう一方の代表的な神経伝達物質である2-AG(2-Arachidonoyl Glycerolの略)などが発見され、これらは「体内で生産されるカンナビノイド」という事でEndogenous Cannabinoid(内因性カンナビノイド。通称: Endocannabinoid)と括られます。
Endogenous Cannabinoidからなる複雑な体内の生態系のシステムのことをEndogenous Cannabinoid System(内因性カンナビノイドシステム)と名付けられ、その通称がEndocannabinoid System(エンド・カンナビノイド・システム)になります。

【参照:NCBINORMLMassrootsUTT Bio Pharma

エンド・カンナビノイド・システムはなぜ重要か

1990年代に発見されたエンド・カンナビノイド・システムは人間が生活していく上で欠かせない、感じる事、動作、反応、食欲、睡眠、不安コントロール、認知、など基本的な生態系機能の恒常性(バランス)を保つ非常に重要な役割を担っています。また、メリーランド大学のBradley E. Alger博士がNCBIに掲載した論文の一部を下記の通り引用します。

【原文】
“The endogenous cannabinoid system—named for the plant that led to its discovery—is one of the most important physiologic systems involved in establishing and maintaining human health. Endocannabinoids and their receptors are found throughout the body: in the brain, organs, connective tissues, glands, and immune cells. With its complex actions in our immune system, nervous system, and virtually all of the body’s organs, the endocannabinoids are literally a bridge between body and mind. By understanding this system, we begin to see a mechanism that could connect brain activity and states of physical health and disease.”

【和訳】
「発見につながった植物にちなんで名付けられた内因性カンナビノイドシステムは、人間の健康の確立と維持に関わる最も重要な生理学的システムの1つです。 内因性カンナビノイドとその受容体は、脳、臓器、結合組織、腺、免疫細胞など、全身に見られます。 私たちの免疫系、神経系、そして事実上すべての体の臓器におけるその複雑な作用により、内因性カンナビノイドは文字通り体と心の間の橋渡しです。このシステムを理解することによって、私たちは脳の活動と身体の健康や病気の状態を結びつけることができるメカニズムを見ることができます。」

さらにミシューラム博士も驚きのハンガリーのPál Pacher博士とGeorge Kunos博士らがNCBIに掲載した論文については下記の記載がございます。

【原文】
"The results of these studies have implicated the Endocannabinoid System (ECS) in a variety of physiopathological processes, both in the peripheral and central nervous systems and in various peripheral organs. They further suggested that modulating ECS activity may have therapeutic potential in almost all diseases affecting humans, including obesity/metabolic syndrome, diabetes and diabetic complications, neurodegenerative, inflammatory, cardiovascular, liver, gastrointestinal, skin diseases, pain, psychiatric disorders, cachexia, cancer, chemotherapy-induced nausea, and vomiting, among many others."

【和訳】
「これらの研究の結果では、末梢神経系と中枢神経系の両方、及び様々な末梢臓器で、内因性カンナビノイドシステムがさまざまな生理病理学的過程に関与していることを示唆している。 さらに、内因性カンナビノイドシステムの活性を調節することで、人間のほとんどすべての疾患を治療できるポテンシャルがあります。その治療の可能性は肥満/メタボリックシンドローム、糖尿病および糖尿病性合併症、神経変性、炎症性、心血管、肝臓、消化管、皮膚病、精神障害、悪液質、癌、化学療法による吐き気と嘔吐、などを含む。」

とても興味深いのがカンナビスを研究することによって、人間の根幹にある生態系のシステムが発見されたという事実です。エンド・カンナビノイド・システムのバランスの崩れは様々な病気を引き起こすため、カンナビノイドを摂取することによってそれらのバランスを保つことが可能になります。カンナビスが様々な病気や治療(慢性疼痛、悪心、食欲、喘息、緑内障、腫瘍増殖の抑制、炎症、糖尿病、PTSD、統合失調症、慢性関節リウマチ、てんかん、パーキンソン病、心血管疾患、抗精神病、抗不安、さらには筋痙攣または神経因性疼痛に対する鎮痛剤、など)に効果があるとされる根本の理由はこのエンド・カンナビノイド・システムを刺激し、恒常性を保つ効果があることにあります。また、加齢によるエンド・カンナビノイド・システムのバランスの乱れによって引き起こされる病気に対してもポテンシャルがあるという研究結果もあります。また、脊椎動物と無脊椎動物にもエンド・カンナビノイド・システムが存在していることが分かり(ほとんど全ての動物)、ジョン・マクパートランド博士によると生物が誕生した初期段階の6億年前に形成されたと言われています。

【参照:NCBINCBINCBILeaflyThe Journal of the American Osteopathic AssociationPure SpectrumRoyal Queen Seeds

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原始生物のホヤにもカンナビノイドの受容体が確認され、6億年前にエンド・カンナビノイド・システムが様々な生物で進化されたと言われています。(RDB Phylum & CO.より)

カンナビス投与の課題

エンド・カンナビノイド・システムは人それぞれ構造が異なるため、カンナビスの効能は人によって異なります。 同じカンナビスでも人によって効能が全く異なるケースもあり(特に難病患者)、テルアビブ大学のDedi Meiri博士がカンナビスの効能の再現性の難しさについてTed Talkで痛切に訴えています。

カンナビスの効能はまさに人々のエンド・カンナビノイド・システムによって左右されますので、当然、中にはTHCなどの割合が高いカンナビスが合わず、いわゆる「バッドトリップ」という一時的な精神不安の状態が出てしまう人がいます。しかし逆に、人によっては自分に合ったカンナビスの配合を見つけることで、様々な病状を軽減・解消し、その人の生活を劇的に改善することも可能です。カンナビスの効能について様々な情報が飛び交っているのはこれらが根本にあります。
これらの理由により、カンナビスは試さないとその人にどのような効果が出るのかはわかりません(特にTHCなどの割合が高いカンナビスを摂取する場合)。エンド・カンナビノイド・システムが発見されたのが1990年代ということもあり、研究はまだ初期段階にありますのでこれからまだまだ研究は続くかと思います。

カンナビスに対する筆者の意見

私個人的な意見としてはカンナビスを服用されるのであれば THCが少ない種類から始め、徐々に自分に合った配合を見つけることだと思っております。しかし、日本国籍者は海外でも大麻取締法が適用されるケースがあると、政府が発表しております。
海外で日本の大麻取締法がどのように適用されるか様々な記事がありますので、一部ご紹介させていただきます。

「カナダで大麻を使用して帰国した日本人旅行者や留学生は大麻取締法によって処罰されるのだろうか」https://news.yahoo.co.jp/byline/sonodahisashi/20181018-00100964/

「海外在住または旅行者の日本人は大麻に手を出したらダメ!|特集「カナダ・マリファナ合法化」
http://torja.ca/pot-kajimoto/

「大麻にまつわる噂「海外で合法的に使えば大丈夫」はホント? 法的な問題を分析」
https://www.bengo4.com/c_1009/c_1202/n_4690/

「大麻が合法の国で大麻をやったら日本の法律ではどうなるか?」
https://note.mu/o2441/n/n444e258613b2

*私自身はアメリカ国籍・カリフォルニア在住であり、現地の法律を守って生活していますが、日本国籍の場合は大麻取締法が適用される可能性がありますのでご注意ください。

尚、カンナビスが違法な国や地域では、闇市場でカンナビスが売買されますので、THCやCBDの配合や、カンナビスの種類であるインディカやサティバの配合バランスなどが全く不透明の中試すことになりますので、 自分に合ったカンナビスを探すことは非常に困難です。また、ディーラー(密売人)などがカンナビスに危険で中毒性のあるケミカルなどの異物を混入することもありますので、その分リスクもあります。

アメリカではカンナビスは1937年に連邦法で規制されたが(前稿の人種差別的に規制された背景もあり)、THCを分離する技術やエンド・カンナビノイド・システムが発見された今、科学的根拠に基づいた法改正に期待していきたいと思います。


本日はカンナビスの効能の【人体編】をご紹介しました。

また次回のノートをお楽しみに!

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