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今後のアメリカの医療大麻について

こんにちは!

本日は今後のアメリカの医療大麻について話していきたいと思います。バイデン大統領が選挙時から掲げていた大麻のSchedule 変更がされた場合、どういう事が起きるのかを考察していきたいと思います。

*本ノートは日本語で詳細な大麻の情報を少しでも多くの方にお届けしたいがために、無料で掲載しております。少しでも「チップ」という形でご支援頂けるのであれば本ノートを続けるモチベーションにも繋がりますので、サポートが可能な方は是非よろしくお願い致します。

Schedule 分類とは

アメリカでは36の州では医療大麻が合法ですが、連邦(国)としては違法のままです。大麻はControlled Substance Act の5段階のSchedule 分類で最も厳しいSchedule 1 に指定されている薬物です。規制薬物であるSchedule 1 のカテゴリーにはヘロイン、LSD、シロシビン(マジックマッシュルームの成分)、MDMA(エクスタシー)などがあります。

Schedule 1 の薬物が他のカテゴリーと大きく異なるところは「医学的価値が無い」とされている点です。そのため、医者はSchedule 1の薬物を患者に「処方」する事は許されておらず、大麻が合法な州ではあくまで大麻を「推奨」する事しかできません。

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Schedule の分類(Psychedelic Science Review

【参照:NCSLLeafly

大麻がSchedule 変更されたらどうなるのか

バイデン政権は連邦での大麻の非犯罪化とSchedule 変更を支持しています。大麻が仮にSchedule 1 から Schedule 2 に変更された場合、連邦が大麻の「医学的価値を認めた」事になり、これはある種、連邦の「医療大麻の合法化」と捉える事ができます。

Schedule 変更の具体的なインパクトを図るのは、出てくる法案の内容次第になりますが、大きな影響を与えそうなところは税金、移民政策、雇用、流通、研究の5つだと考えています。

1. 税金

税金については説明するまでも無いですが、連邦が医療大麻を合法化する事で、各州で販売されてる大麻に何らかの税金が掛かってくると思います。Uncle Sam(政府)は税金を取れるところはとことん取ってくるでしょう。連邦の大麻合法化法案のMORE Act(2019年) や 最近のThe Cannabis Administration and Opportunity Act(2021年)も合法州から大麻の税金を徴収する事になっています。

【参照:Marijuana MomentMarijuana Moment

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コロナの財政改善として大麻の税収は期待されてる(Sharon Mccutcheon)

2. 移民政策

外国人がアメリカでビザを取得しようとする際、仮に合法州で医療用途で大麻を服用してる事が判明したら悪影響があります。連邦政府がビザを発行してるので、その連邦のルールを破る事でビザが降りなかったり、最悪のケースではアメリカに再入国さえできなくなってしまいます。大麻がSchedule 変更されれば、ビザ取得の悪影響が緩和されると考えられます。

*余談ですが、アメリカでビザを取得しようとされてる方は、顔出しや実名で大麻を使用してるような内容をSNSにアップする事は大きなリスクがある事を移民弁護士の団体が警戒を呼びかけていますのでご注意ください。

【参照:IIRCNational Immigrant Justice Center

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大麻の使用歴でアメリカのビザが取れなくなる恐れがある(Nitish Meena)

3. 雇用

未だに大麻が合法な州で医療用途で服用しても、それを理由に解雇される事もあります。しかも州によっては解雇された時に失業保険ももらえない事もあります。大麻が合法な州で生活していても、多くのアメリカ人は仕事場で大麻の使用を同僚にカミングアウトしない理由はそれによって解雇されるリスクがあるからです*。大麻がSchedule 変更されれば、制約緩和されると考えられます。

*合法州の地域自治体レベルで医療用途の大麻使用歴を解雇利用として禁じる法律がありますが、全ての地域でそうなっていません。さらに連邦職員(役人、軍、など)は、どこに住んでても大麻使用で解雇される事があります。

【参照:Lawyers.comUnemployment Tracker

4. 流通

大麻の管理はとても厳しく、州を跨ぐ流通は禁じられています。隣接してる合法州同士でも大麻の移送は禁止されています(実際は禁止されてますが、必ずしも取締りされてません)。大麻がSchedule 変更されれば、管理体制も緩和されると考えられます。少なくとも合法州同士の移送は緩和される方向になる可能性が高くなるので、医療大麻を必要とする患者にとっては供給が安定する事でより自分にあった大麻を選択できるようになります。

【参照:HG.orgRoad AffairLeafly

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大麻を運ぶトラック(Margaret Siegien)

5. 研究

現在大麻を研究する際は、NIDA(アメリカ国立薬物乱用研究所)を経由してミシシッピ大学が提供する長期保存による劣悪な品質の大麻しか使用できません(大麻にカビが生えていたと証言する研究者もいる程です)。この体制は1968年から半世紀以上もずっと続いており、アメリカで大麻の研究が中々進まない大きな要因です。Schedule 変更される事で、Schedule 1 の厳しい管理体制から解放され、大麻の研究が大きく進むと考えられます。これらの詳細については以前記事にしていますので、ご参照頂ければと思います。

Schedule 変更されても医療大麻は認められない?

大麻が単純にSchedule 変更されただけでは、今の枠組みで作られた各州の医療大麻の制度が連邦では認められない可能性は十分にあります。これはどういうことのなのか。

Schedule 2 ~ Schedule 5 に指定されている薬物は全て医者が「処方」する事が前提になっています。しかし、今のアメリカの医療大麻の制度はSchedule 規制を度外視した枠組みで運用されてます。医療大麻ができた当初はコンパショネットユース(人道的使用)としての活用であり、それが今の代替医療・補完医療としての枠組みの礎になっています。
合法州のディスペンサリー(大麻ショップ)で販売されてる大麻(フラワー、オイル、エディブル、など)は、FDA(アメリカ食品医薬品局)が承認したような「処方薬」のような大麻(CBD製品含め)ではありません。大麻をSchedule 変更する事で、大麻製剤の処方や開発は進むかもしれませんが、単純にそれだけでは代替医療・補完医療の一環である今のアメリカの医療大麻制度が連邦で認められることにはなりません。今の医療大麻が標準医療として認められるにはFDAに承認されるほど良い結果を臨床試験で出さないといけないので、それは何年・何十年もかかります。アメリカの医療大麻はそもそもそこを目指すべきなのかは別の議論ですが、大麻のSchedule 変更の法案が出た時にどういう構成で今の枠組みに当てはめられるのか注視する必要があります。

また、Schedule 2 の薬物であるコカインから作られるクラックは2010年まではMandatory Minimum Sentence(一定期間の拘禁刑を科す必要的(強制的)最低量刑)などの厳しい刑罰がありました。Schedule 1 から Schedule 2 の薬物になったからといって刑罰が軽くなるとは限りません。

【参照:Charles V. Preuss; Arun Kalava; Kevin C. King.The Sentencing ProjectFair Sentencing Act

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大麻ショップで販売されてる商品はFDAの承認が無い(Jan Zwarthoed)

Schedule 変更だけでは足りない

大麻のSchedule 変更は連邦の管理下から離れないし、既存の合法州の医療大麻の枠組みを網羅できません。もう一歩踏み込んた「Schedule 規制から除外」する事で各州の医療大麻の枠組みと合致した運用ができると考えています。アルコールやタバコのような薬物はSchedule 規制の対象外であり、それらと同じような管理体制にする事を意味してます。アルコールやタバコは、各州政府が管理しており、今の大麻の法整備と非常に似ています。

【参照:Leafly

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州政府が管理するアルコール(Eduardo Soaresより)

アメリカの大麻法案はどうなるのか

与党・民主党は大麻の法改正を求めてる政党ですが、大麻に関しては今のところ「Schedule 除外」する事を前提にしてる法案(前述のMORE Act、The Cannabis Administration and Opportunity Act)を中心で勝負しています。しかし、今のままだと共和党の反対を押しのけるほどの圧倒的多数派では無いし、何よりバイデン大統領や民主党内でも反対する議員が出てるので今の法案を通す事は不可能に近い状況です。以前、アメリカの大麻合法化の障壁になりえるフィリバスター制度について記載しましたのでこ参照頂ければと思います。

さらにアフガニスタンのタリバン制圧で支持を落としたバイデン政権は来年の中間選挙で民主党が苦戦するであろう要因さえ作られてしまいました。そのため、少しでも今の状況を改善するためには「Schedule 変更」という超党派な手段も出てくる可能性があると考えています。その際は法案の内容をしっかり分析して行きたいと思います。

アフガニスタン撤退でバイデンの支持率が大統領任期中で最低となった

大麻のSchedule 変更は物足りないところは多々ありますが、何も前進させないよりは良いです。また、形はどうであれアメリカ連邦法で医療大麻が解禁される事は日本をはじめ、国際社会にとても大きな影響を与えるので是非進めて欲しいです。

本日はアメリカの医療大麻がどうなっていくかの考察を紹介しました。

また次回のノートをお楽しみに!

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