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テリー・トンプソン氏が語る、愛され続けるハンバーガーショップの秘密
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肉厚なパテに野菜がたっぷり入ったハンバーガー。
日本におけるボリューミーなグルメハンバーガーの先駆けと言っても過言ではないクア・アイナはハワイで誕生しました。
そんなクア・アイナは2022年11月に日本上陸25周年。それを記念して、創業者であるテリー・トンプソン氏が4年ぶりに来日しました。
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クア・アイナ青山本店でのインタビュー後、note編集部にもお時間をいただくことができました。様々なエピソードを伺う中で見えてきたのは、飽くなきこだわりと探究心でしたーーー
まず最初にピザーラのピザでおもてなし。
振る舞ったのは王道のテリヤキチキン味です。
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日本生まれのピザーラを食されているテリー氏、貴重な一幕。「美味しいね」と食べてくださいました。
クア・アイナ誕生秘話
テリー氏 私はロサンゼルス出身ですが、ハワイに旅行して以来いつかここに住みたいと思っていました。その後同じ思いを持つ妻と出会い、1972年にハワイに移住することに。ハワイでの初めての仕事はステーキハウスの店員で、私が外食産業に携わった始まりです。
食事を楽しむお客様の姿を見ているうちに自分のお店を持ちたいという思いが湧き、1975年にノースショアのハレイワに小さなサンドイッチショップをオープンしました。元々ハンバーガーはサンドイッチショップの中のメニューの1つでしたが、ハンバーガーの評判がよかったことからメインメニューへとなっていったのです。
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ハンバーガーの原点
テリー氏 私が生まれ育ったロサンゼルスの町には小さなハンバーガー店がありました。そこでは150gほどの重さのハンバーガーを提供していて、アイスクリームをすくうようなスクープで生肉を取り、グリルの上で焼いていたのが印象的です。
あのお気に入りの場所が頭の片隅にあり、自分でハンバーガーを作ろうと決心した時もアイデアの元になりました。
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クア・アイナの味ができるまで
テリー氏 当時ハンバーガーといえば、ステーキハウスが提供する高価格で非常に大きいサイズ(1/2ポンドほど)が主流でした。しかし私は、注文をもらってから作るというステーキハウスのクオリティーはそのままで、よりカジュアルに楽しんでもらえるハンバーガーを作りたいと考えました。
私が目指したのは、150gほどの食べやすい大きさで、かつ肉が主役になるようなハンバーガーです。実際ハワイでこのサイズ感のハンバーガーは珍しく、それがクア・アイナの個性に繋がったのではないでしょうか。
作るにあたって特に意識したことの1つはパティの焼き方です。
グリルの下に溶岩石を置き、その下から火で熱して焼くのがクア・アイナ流です。熱せられた溶岩石から出る遠赤外線で、厚いパティもしっかり火が通るようにじっくり焼くことでジューシーな食感に。
また、流れ出た肉汁が溶岩石に当たることで生まれる煙を利用してスモーキーな風味も楽しめる様にしました。
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もう1点は味付けです。ソースは人によって好みがあります。多くの人に愛してもらう味付けを考えると、シンプルにまとめることが必要だと考えました。そこでクア・アイナのパティに合うシーズニングソルトを配合することにしたのです。
シンプルな味付けは、こだわって焼き上げた肉の味を引き立ててくれます。シンプルだからこそ、ソルトの配合は時間をかけて工夫しました。
店内にケチャップとマスタードが設置してあるのは、よりお客様の好みの味にカスタムしてもらうためでもあります。
こだわりの末、完成した商品のクオリティを一貫して提供することは大きな課題でした。特にハワイは太平洋の真ん中にあるので、良い食材を入手することが困難です。
理想の味を作り出せる素材を見つけ、更にそれを継続して手に入れられるようパイプラインを作ることが、ハンバーガー作りにおいて最も苦労したことと言えるかもしれません。
フォーシーズ・淺野会長との出会い
テリー氏 クア・アイナを日本に出店しないかと、いろんな人からオファーを受けてきました。しかし、自分の目指すクオリティーを、遠い海外で実現できるはずがないと断っていたんです。そんな中、出会った当初から友好的で正直な淺野会長には安心感がありました。
何より彼は、私の大事にしている『クオリティー』や『一貫性』というものが何かを理解し、我々の店の味をできる限り再現したいという熱意を伝えてくれました。
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常に笑顔、常にポジティブ、そしていつも周りを楽しませる、まるでミッキーマウスのような人。それが淺野会長に抱く印象です。
彼の優しい笑顔の中にある強い気持ちや想いを知る中で、彼や、彼の仲間たちなら信頼できると直感で思えました。
それが、クア・アイナ日本出店の決め手です。
ハワイと変わらない味を届けたい
テリー氏 「ハワイの味をそのまま日本に届けたい」という思いは、私と淺野会長共通の目標でした。とにかく味を守る。ハワイで使っているものを日本にそのまま送るにはどうしたらいいかは、試行錯誤の連続でした。
だからこそ、日本に訪れた際に店舗で食べるハンバーガーは最もベーシックなチーズバーガーです。25年も日本のお客様にお届けしているお店の味を確認することも、大事な仕事です。今日も青山店でチーズバーガーを食べてきました。
日本25周年への想い
テリー氏 25年前、表参道店がオープンした時のことは今でも覚えています。青山通りを進むにつれ見えてくる3階建ての立派な店舗に、胸がいっぱいになりました。かつて12席の小さな店から始まったクア・アイナが、このように大きくなるとは想像もしていませんでしたから。
現在、日本では34店舗にも広がりました。まるで魔法の絨毯に乗ってここまで連れてきてもらったような感覚です。
ここまで支え続けてくれたお客様には感謝しかありません。
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ハワイで47年、日本で25年続けてこられたのは、「美味しいものをお客様に届ける」という自分たちのポリシーを大事に守り貫いてきたからだと思っています。
新しいものや流行は常に生まれています。しかしそこに流されず、自分たちは自分たちだと、これまで信じてきたものを変わらず守ることが今後も愛してもらう鍵なのではと思います。
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ユーモアあふれるお人柄で終始和やかにインタビューに答えてくださったテリー氏。
一方で、「美味しい」にかける思いには一切の妥協がなく、お客様第一で商品と向き合ってこられたこれまでの歴史をほんの少し垣間見ることができました。
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