2009年、下北沢駅で Patti Smith 『twelve』
パティ・スミスという人は、パンク・ロッカーとしての強いイメージがある一方で、ロック/ポップ好きな女の子がそのまま大人になったようなところがあって、そこが僕にとって彼女の大きな魅力の一つなのだ。本当に彼女は音楽そのものを心から愛していて、だからこそ彼女の放つ言葉や叫びの一つひとつが、胸を躍らせてくれ、勇気づけてくれ、うしろを振り返るなと背中を押してくれるのだろう。
2007年作の『twelve』は、そんな彼女が愛する楽曲のカヴァーを収めたもので、長年彼女を支えてきたレニー・ケイらがバックを務めている。山上の雷鳴のような力強さと、繊細さとを併せ持った彼女のヴォーカルにただただ聴き入ってしまう。
ジミ・ヘンドリックス「Are You Experienced?」、ポール・サイモン「The Boy In The Bubble」、ビートルズ「Within You Without You」、ローリング・ストーンズ「Gimme Shelter」、ニール・ヤング「Helpless」、ボブ・ディラン「Changing Of The Guards」(渋い選曲)といった楽曲が並ぶなか、白眉はニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」。
重厚なアップライトベースにバンジョーやフィドルが絡み、原曲とは正反対のゆっくりとしたアレンジが施されたこの素晴らしいカヴァーが、僕は原曲と同じくらい大好きだ。
僕にとっての「パンク」とは、パティ・スミスであり、テレヴィジョンであり、町田康(町田町蔵)であり、戸川純である。2009年の夏頃だったと思うが、とある店で弾き語りをするために下北沢の駅に降りたとき、通路にパティ・スミスのドキュメンタリー映画、『ドリーム・オブ・ライフ』のポスターが貼ってあって 、ギターを持ちながらしばし見入ってしまった。「下北」って感じがしたなあ。
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