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SNSをフル活用する、八王子・中西ファームの挑戦(2)
他の農家を凌駕するほど、SNSに力を入れている中西ファーム。
特にインスタグラムでは、多くの固定ファンを獲得しており、現在(7/25時点)のフォロワー数は、なんと4,600以上!
投稿数も900以上と、いずれもイチ農家集団とは思えない数字である。
なぜ彼らはこれほどまでに、SNSに注力しているのだろうか。
前回に続き、伊藤さん(34)へのインタビューを通し、中西ファームの全容を紐解いていく。
※TOP画像:中西ファーマーズの皆さん(写真左から、タカマツさん、イイダさん、マサキさん、ナカさん、伊藤さん)
■7代目の加入が起爆剤に
「インスタグラムは2016年に開設したんですけど、力を入れ始めたのは、マサキが中西ファームに戻ってきた2018年頃ですね」
“戻ってきたとは。 元々中西ファームで働いていたメンバーだったのか”
記者の質問に伊藤さんは笑いながら答える。
「いやいや、違います。マサキは中西ファームの6代目代表の長男です。僕が中西ファームに入った2012年、彼はまだ大学生で、卒業して一度お笑い芸人になったんです。ただ、芸人は途中で見切りをつけて、実家に戻ってきたと。それが2018年の話です」
2018年当時、伊藤さん、タカマツさん、ナカさん、イイダさんは、農業漬けの日々を過ごしており、今後の事業拡大に向け、“そろそろ、農業とは別の新しいなにか”を考えなくてはと、思い悩んでいたのだそう。
「マサキの加入は、タイミング的にぴったりでした。毎日の農作業は4人で回せるようになっていたので、マサキには農業とは別のことに取り組んでもらおうと。それがSNSでした」
SNSの運用に向け、彼らは最初にルールを作った。
*インスタグラムに的を絞り、毎日投稿
*内容が面白くなければ、投稿NG
「『野菜だけの投稿は、マジでつまらないから止めよう』と、メンバー間ですぐに意見が一致しました。ほかの農家さんと同じことをやってもしょうがない。せっかくSNSをやるなら、読み物として面白い投稿をしよう! 中西ファームのことを好きになってくれるファンを増やそう! と」
※とある日の中西ファームのインスタグラム
SNSの運用をマサキさんに一任したことで、元芸人らしさ全開の投稿内容へと変化。徐々に、フォロワー数が増えていったのだという。
「一昨年ぐらいからですかね。土日マルシェの時に、お客さんから『インスタ見てますよ! 』っていう声をもらえるようになったのは。はじめて声をかけてもらえた時は、マジで嬉しかったです。隣にいたタカマツ君に、『いまの聞いた!?』って感じで、キャッキャしちゃいましたから(笑)。全国各地の農家さんも、僕たちのインスタをフォローしてくれていて、インスタライブを開くと参加者がたくさん集まるんですよ」
■ストーリーの力
「インスタを見てくれているフォロワーさんは、僕たちのことを応援してくれます。それがストーリーの力です」と伊藤さん。
「中西ファームはこれから野菜だけじゃなく、果物の栽培にも力を入れようと思っています。なぜかって?単純に面白そうだからっていうのと、収穫体験を今後の新事業の一つとしてはじめたいと思っているから。その第一弾がシャインマスカットで、インスタでは途中経過をいつもの感じでアップしています(笑)。盗難の心配をしてくださるフォロワーさんも中にはいて、ドキドキしながら一緒に育てている感覚に近いですね」
中西ファームのインスタグラムは、成功だけでなく、失敗体験なども隠すことなく公開している。ストーリーの共有から中西ファームとの一体感が生まれ、ファンの存在は事業を強く後押しする。
「中西ファームのコアなファンが100人いれば、どんな事業も成功すると思っているんです。それをこれから証明したいですね」
■農業は0か100じゃない
“これから農業をはじめたい方に向け、なにか伊藤さんからメッセージがあれば伝えてほしい”
記者の要望に、伊藤さんは身を乗り出す。
「農業を、0か100で考えている人がまだまだ多い。いまの会社を辞めて、農業を専業にするみたいな。その考えがよくないと僕は思っています。失敗したら後戻りできないっていう考えが根本にあると、挑戦するのが怖くなりますから」
そこで伊藤さんがおススメするのが、“副業農業”だ。
「もっとライトに、気軽な気持ちで農業に取り組んでほしいと思っています。休日を活用した副業なら、失敗しても人生を棒に振るリスクはありません」
実際、中西ファームの事業の一つである、農業研修サービス『ふらっとファーム』の参加者の多くは、専業ではなく副業農家を希望しているという。
「いまウチには、5名の研修生が参加しているんですけど、話すと皆さん、農業をプラスαのビジネスにしたいという思いがあるみたいです。リモートワークが主流になって、働き方が大きく変わったことも影響していると思います。もし、これから農業を仕事にしたいのであれば、ウチの研修サービスは実践的なのでおススメです。ぜひチェックしてみてください」
■企業と連携したスマートアグリの導入
イスラエル式農法をはじめ、昨今トレンドのスマートアグリを積極的に導入しているのも中西ファームの特徴だ。
現代表の中西一弘さんが拓殖大学の臨時講師であり、講義を受けた卒業生が農業資材の商社「サンホープ」に就職したのが縁で、2017年頃から一気に導入が進んだのだとか。
「元々拓殖大学とサンホープさんは関係性があり、大学内に実験用の畑があったんですけど、もっと大きな畑が必要になり、ウチの代表に声がかかったんです。サンホープさんはイスラエルの農業資材メーカーと強いパイプを持っていたことから海外視察の機会をもらえまして。まあ、行ったのはウチの代表なんですけど(笑)」
帰国した代表は、若手メンバーを集め、海外視察の結果を写真付きで紹介したという。
「話を聞いて、“やべーな、日本”ってなりました。“このままじゃ、日本の農業は終わるぞ”と。それぐらいイスラエル式農法は、日本と比べて、はるか先をいっていました」
“まずは知ることから、はじめよう”、そんな思いで中西ファームはサンホープと連携し、最先端の農業システム・資材を次々に導入していった。以下はその一例だ。
トマトのビニールハウス栽培にて『クラウド型かん水コントローラー』を使用中。インターネット経由で灌水量を遠隔操作・管理できる、最先端システム。
畑の観測データ(天候・気温・湿度・風速等)から作物に最適な潅水量を自動で算出し、灌水時間も自動制御できる農業クラウドサービス『スマート君』。現在、オリーブとレモン栽培向けに使用中。
“導入効果はどれくらいあるのか”
伊藤さんの答えは意外なものだった。
「正直、ウチぐらいの規模だとそこまで効率化の恩恵はないです。ご紹介したものは、大規模農家向けのシステムなんで。でもウチは、ゆくゆくは小比企町とは別に、大規模農地を持ちたいと考えているんです。『中西ファーム@山梨』『中西ファーム@千葉』といったように。その時にここで蓄積したデータは、最大限活用できると思っています」
“すごい先の未来まで見ているんですね”
驚きを示すと、伊藤さんはニコッと笑う。
「実はいま、他にもいろいろ新しい取り組みを考えながら、事業化を進めています。やさいフェスと一泊二日のグランピング、直営居酒屋店のオープンです」
(3)へ続く。
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■中西ファーム Instagram
https://www.instagram.com/nakanishi_farm/
■毎週土日(11~13時)、畑でマルシェを開催中!
住所:東京都八王子市小比企町2706
アクセス:山田駅徒歩13分/八王子みなみ野駅徒歩20分
※詳細は、中西ファーム 公式HPをご参照
https://nakanishifarm.jp/
■中西ファームの野菜を購入できるスーパーはこちら!
イトー ヨーカドー(八王子店、多摩センター店)