第5章 投資って、危険なの!? 〜リスクとリターンのおはなし|資産運用の図解教室
投資で資産が増えることがあるというカラクリが、なんとなくわかったモネ。
でも、「投資にはリスクもある」という先生の言葉が、心にズッシリとのしかかっていた。
「リスク」とひと口にいっても、大なり小なりある……。
モネは、「リスク」という言葉が気にかかり、ブルベア先生に聞いてみるのだった。
さて、どんな答えが返ってくるのか?
投資には、リスクがつきものと言うけれど……
M:
ブルベア先生は、「投機だけでなく投資にもリスクはある」って言ってたよなぁ。
リスクかー、嫌な言葉だなぁ。
せっかく貯めたお金も、投資をしたらスッカラカンになっちゃうなんて…やっぱりやめようかなぁ。
ブルベア先生、今日は、投資のリスクについて、詳しく教えてくれませんか?
B:
うむうむ。
いよいよ投資の核心に触れるときがきたようだな。
たしかに投資にはリスクがある。この話は前にもしたな。それはまったくその通り。
しかし、ここは冷静に考えてみたいところだ。
誰でも、生きていく上で、多かれ少なかれ、すでにリスクを背負って生きている。
これについては、わかるかい?
M:
え? どういう意味だろう?
B:
たとえば、ベランダに目立つように植木鉢がズラリと並べて置いてあるマンションの下を歩いてたとしよう。
植木鉢が絶対落ちてこない、と言い切れるだろうか?
M:
いや〜、それは言い切れませんよね。
嵐の日だったなら、
「植木鉢落ちてこないかなぁ、大丈夫かな〜」
って思って上を見ながら歩くかも。
B:
そうなるだろ。じゃあ別のたとえ話をしよう。
夜道を歩いていて、後ろから車にひかれない、って言い切れるかな?
はたまた、自転車で走っていて、パンクしないって言い切れるかな?
試験勉強をしているなら、その試験に100%受かるって言い切れるかな?
仕事なら、絶対失敗しないって言い切れるかな?
M:
夜道は怖いから、夜は目立つ色の帽子をかぶって歩くようにしているます。
パンクは困るからパンク修理セットは常に携帯しているし、試験は落ちたくないからポイントを下調べして勉強しますよね。
そして仕事なら、先輩に怒られたくないから、慎重に前に進めると思います。
ジブンは結構、気が小さいからなぁ。
B:
人は良からぬことが起きては困るから、対策を取ったり、準備をしたり、調べたり勉強したりするね。
投資も同じで、リスクを回避できるように、基本的なことを知っておくことが大切なんだ。
つまり、投資は確かにリスクはある。
しかし投資について知れば、リスクを避けられる可能性も増えるってわけだ。
「リスク」と「リターン」〜切っても切り離せぬ関係〜
B:
さて、ここで問題だ!
「リスク」と一緒に用いられる単語に「リターン」というものがあるのだが、この2つの単語の意味はわかるかな?
M:
う〜ん、なんとなくだけど、「リスク」って、「危ない」とか「損をする」みたいなイメージ?
「リターン」は、なんだろう、「戻ってくる」とか、「得をする」みたいなイメージかなぁ。
B:
イイ線はいっているな。
リスクは一般的に言うと、「危険性」という意味になる。
だが、お金の用語としては「損をする」という意味のほかにも、「予想通りにいかない」「不確実性」という意味があるんだ。
この「リスク」と「リターン」には、切っても切り離せない関係があるんだ。
それは、次のような関係だ。
・リスクが低ければ、リターンも低い = ローリスク・ローリターン
・リスクが高ければ、リターンも高い = ハイリスク・ハイリターン
M:
「ハイリスク・ハイリターン」はよく耳にしますよね。
B:
具体的に説明しよう。ここに一本の川があるとしよう。
この川は幅がデコボコしていて、2つの橋がかかっている。
岸と岸の間隔が短いところには、細い綱の橋がかかっている。逆に岸と岸の間隔が長〜いところには、頑丈な橋がかかっているとしよう。これを見てどう思うだろうか?
M:
う〜ん。細い綱の橋を渡れば、短時間で向こう岸に行けますよね。
でも川に落ちちゃう危険性は高いですよね。
逆に大きな橋を渡って行けば、綱の橋に比べて時間がかかりそうだけど、落ちる危険性はうんと減りますよね。
B:
つまり、綱の橋を使えば、短い時間で向こう岸に行ける(=リターン)けれど、川に落ちちゃう予期せぬことが起こる可能性(=リスク)も高くなる。
逆に大きな橋を使えば、向こう岸に行くのに時間がかかっちゃうけど(=リターン)、川に落ちちゃう可能性(=リスク)も低くなる、ってことだね。
リスクにもいろいろある? 「リスクの種類」の話
B:
リスクとリターンの関係をおさらいすると、大きな利益(大きなリターン)を求めようとすると、大きな不確実性(大きなリスク)を背負わなければならなくなる。
その反対で、小さなリターンを求めるならば、小さな不確実性で済む」ってことになるんだ。
ここで大切なのが、「リスク」に注目して、いろいろなリスクについて知ることなんだ。
M:
え! リスクってそんなに種類があるの?理解できるのかなぁ……。
B:
大丈夫 基本はそんなに難しい話じゃないからね。
信用リスク
まず1つ目のリスクが「信用リスク」だ。前に出てきたポンポコ株式会社のことは覚えてる?
M:
はい、絶品タヌキ汁の素が大好評で、株の値段が上がったっていう話ですよね。
B:
実はあのタヌキ汁、中に入っている肉がクマの肉だったことがバレちゃって、返品の嵐!
従業員もソッポを向いて、ついにポンポコ株式会社は倒産しちゃった〜! なんてことになったら、お金を払って買った株の価値はなくなっちゃう。
これが信用リスクだ。だから、「自分が投資している投資先はつぶれないかな?」と見極めることが必要になってくる。
為替変動リスク
次が「為替変動リスク」だ。
実は株式会社の株っていうのは、日本の会社だけでなくて、海外の会社の株も買える。
たとえば、1ドル100円の時に、アメリカにある、ポンポコ・インターナショナルという会社の株を100ドル分買ったとしよう。
すると、
100円×100ドル=10,000円(買ったときの値段)
で買ったことになるだろ。
ところが数ヶ月後、円高ドル安になり、なんと1ドル80円になってしまった。
すると、100ドル分買ってあったその株は、円に換算すると
80円×100ドル=8,000円(売ったときの値段)
になってしまったってことになるね。これが「為替リスク」ってやつだ。
M:
わ〜!ショック〜!2,000円損じゃないですかぁ〜。それは困っちゃいますね。
10000円-8000円=2000円 → 為替リスクにより2000円のマイナス
でも1ドルが110円になったら、逆に110円×100ドル=11,000円ってことで、1,000円利益が出るってことですね!?
他にもリスクってあるんですか?
B:
その通りだ。その他にも、国の政治情勢に左右されるリスク(カントリーリスク)や、自分が売りたいタイミングで売れないリスク(流動性リスク)など、いろいろなリスクがあるが、これはまた追って詳しく説明しよう。
カントリーリスク
流動性リスク
少しずつでいいから、
「投資にはいろいろなリスクがある。そのリスクについて知ることが大切なんだな」
ってことを覚えておいて欲しいんだ。
どのぐらいのリスクを取ればいいんだろう?「リスク許容度」の話
M:
「リスクのない投資はない」、そして「リスクにも種類がある」ってことはわかりました。
じゃあ、具体的に、どのぐらいのリスクを考えたり、覚悟すればいいんですかね?
B:
ほほう、「リスク」についての知識が少し身についたようだな。
リスクのことをおさらいすると、
・リスクのない投資はない。
・リスクにも大小がある。
・いろいろなことが原因でリスクは生まれる。
という話をした。
次に知ってもらいたいのが「リスク許容度」の話だ。
「許容度」というのを言い換えると、「受け入れられる度合い」と言ってもいいかもしれない。つまり平たく言うと、
・損をしても、どのぐらいの額なら自分の生活に影響がないか?
・損をしても、どのぐらいの額なら精神的に耐えられるか?
これを考えることが大切なんだ。
毎日の生活が苦しくなるような状況に追い込まれるほど、投資にのめり込んだり、「投資に失敗して心はボロボロだわ!」なんて気持ちを抱えながら毎日暮らさないといけない状況になったら、本末転倒だからな。
投資は自分の「リスク許容度」と向き合いながら進めていくことがとても大切なことなんだ。
M:
なるほど〜、つまり「リスクをどのぐらい受け入れられるか=リスク許容度」って、人によって違うってことなの?
だってたとえば、年収100万円の人と、年収1,000万円の人では、1,000万円の人の方が失敗しても立ち直りやすそうな気が…。
B:
うむ、100%とはいえないが、それは正しい考えだな。
「リスク許容度」を測るのに見るポイントはいろいろある。だが、以下がその一部だよ。
年収
稼ぎが多ければ、「もし失敗しても稼げばリカバーできるよね」となるので、リスクの許容度が大きくなる。
年齢
投資を始める年齢が若ければ若いほど、もし失敗しても将来損失をカバーできる時間が多いので、リスクの許容度は大きくなる。
家族構成
家族が多ければ多いほど、支出が増える=投資に回せる額が少なくなる。つまり、子どもや親など扶養家族が多いとリスク許容度は小さくなる。
逆に独身や結婚して共働きで子どもがいない、という家庭はリスク許容度が大きくなる。年収によるリスク許容度にも通じる話。
M:
自分の「リスク許容度」を知りながら投資をするってことが大切なんですね〜。
「リスク」についての話を聞き、リスクへの対策をし、リスクをどこまで受け入れられるか? その心構えをすることの重要性を学んだモネ。
「よし、リスクをよく考えて投資をするぞ!」と意気込みながらも、一難去ってまた一難。やはりモネの不安は消しきれないのであった。
「だけど、リスクの少ない銀行預金の方が、実はジブンにはいいのかなぁ…」
つづく
【 資産運用の図解教室 の 目次 】
第0章 お金を増やす、ということ 。
第1章 「投資」による「資産運用」って、なんだ?
第2章 投資で得られる未来?ー前編
第3章 投資で得られる未来?―後編
第4章 投資をすればお金は増えるの?
第5章 投資って、危険なの!? 〜リスクとリターンのお話
第6章 今の時代を考えると、預金?それとも投資?
第7章 投資の種類のお話 〜前編〜 投資のいろいろ
第8章 投資の種類のお話 〜後編〜 投資のいろいろ
第9章 投資に使うお金? 余裕資金って、なんだ?
第10章 投資で「人生のお金」を設計する?
第11章ー前編 テーマを見据えて投資をする? テーマ投資・テーマ株に挑むには?
第11章ー後編 テーマを見据えて投資をする? テーマ投資・テーマ株に挑むには?
第12章 ロボットが投資のお手伝いだって?〜ロボアドのお話〜
第13章 株式投資ライフをはじめよう
第14章 株を買う・売るってどうやるのかな?
第15章 株式の銘柄とチャートってなんだろう?
第16章 自分の株式投資のスタイルについて考える
第17章 株価以外の「株の価値」?その良し悪しを見極められる指標って?
第18章 誰かの一言で、株価が動くの?
第19章 株の分散投資って、どういうこと?
第20章 資産運用って、結局のところ、まとめるとなに?