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10歳ではじめて七五三をした女の子と家族の話
10歳になった女の子が言いました。
「七五三ってなあに? わたし、お祝いしてもらったことない」
それを知って「今からでも、写真だけでも」と思い、応募させていただきました。
これは、わたしたち出張撮影「fotowa」が、衣装レンタル「RENCA」様の協力を得て実施している、児童養護施設に贈る「七五三応援プロジェクト2023」に届いたメッセージです。
応募してくれたのは、ファミリーホームを営むご夫婦でした。
わたしたちは、この「家族」にfotowaの出張撮影とRENCAさんの衣装をプレゼントすることにしました。
5歳の男の子と、10歳の女の子、そして一緒に暮らす4人の子どもたち。
フォトグラファーとともに、家族みんなで、晴れ着姿で地元の神社にお参りした、寒い日の温かな想い出の一日のことを、お話させてください。
震災をきっかけに「里親」を考えたご夫婦
「ファミリーホーム」とは、小規模住居型児童養育事業のこと。
なんらかの理由で家庭環境を失った子どもを、家庭の中に迎え入れて養育しています。
今回のご夫婦が、現在、迎え入れている子どもたちは4人。
思春期を迎えた2名の実子と合わせて6人の子どもたちを、ご夫婦と1〜2名のスタッフさんで育てています。
なぜ、里親になろうと思ったんですか? と尋ねると、
「きっかけは、東日本大震災です。何かできないかなと考えて、里親になることを考えはじめました。」
とのこと。
2017年から里親制度に登録して子どもたちを迎えはじめ、ファミリーホームの開所を目指して建てた家が完成したのが2021年。そして昨年、正式にファミリーホームとしてスタートしたそうです。
コロナ禍に考案された家は、外に出かけられなくても幼い子どもたちが充分に遊べるよう様々な工夫がなされています。
「里親として子どもたちと苦楽をともにし、寄り添っていきたい」
というご夫婦が、5歳の男の子と七五三のお祝いについて話していた時のこと。
今夏、児童相談所職員から「家庭のぬくもりを知る機会を」と勧められ、新たに迎え入れた10歳の女の子が言った言葉が、冒頭の「七五三ってなあに? わたし、お祝いしてもらったことない」だったのです。
個性あふれる子どもたちとワイワイ撮影!
その日、ご夫婦が撮影を依頼したのは、fotowaの登録フォトグラファー・吉竹惠介さんでした。
決め手は、柔らかで温かみのある写真に惹かれたこと、養育している4人の子どもたちのうち3人に発達特性があり、吉竹さんに『発達凸凹相談歓迎』アイコン表示があったことでした。
吉竹さんは依頼の際に、ご夫婦から、女の子が10歳で初めて七五三のお祝いをすると聞き、
毎年、何十人もの七五三のお祝いを撮影している私としては、胸が締めつけられる思いでした。
ちょっと感傷的になってしまったので、当日は先入観抜きで一人ひとりのお子さんと直接向き合い、いつもどおり撮影を楽しんでもらおうと思いました。
短い時間でしたが一人ひとりの個性が見えてとても楽しかったです。
と、振り返ります。
待ち合わせ時間になると、ご夫婦と6人の子どもたちが賑やかにやってきました。
挨拶を済ませ、ご祈祷の手続きをしている間も、子どもたちは自由奔放。
てんやわんやの中、撮影はゆるりと自然にスタートしました。
袴姿で険しい石段を軽快に駆け上がっていく5歳の男の子の後ろ姿も、カメラを向けるとにっこり笑ってピースサインをする10歳の女の子も、写真に収めていきました。
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優しい願いに溢れた「愛し子」たちの七五三
この日の気温は、最低気温1度という寒さ。
お天気は良かったものの、太陽が隠れてしまうと、とたんに身体が凍えます。
「寒い〜!」
という子どもたちの声に応えて、パパが全員分の上着に取りに行っている間、寒そうに身を縮こませる女の子を見かねて、吉竹さんはサッと自分が着ていたダウンジャケットを脱ぎ、羽織らせました。
「あったかい?」
「ううん」
「えっ、あったかくない? でもよかった、くさいって言われなくて(笑)」
そう言って軽快に笑い、女の子が「あったまった」と言うまで上着を貸してくれていた吉竹さん。
その女の子が着た薄紫とピンクの淡く華やかな着物は、RENCAの担当スタッフさんが
「10歳の女の子なら、大人っぽい7歳用の着物の方がいいかなと思うんですが、身長を考えると大きすぎてしまうかもしれないので、5歳用のこっちの方が良いのではと考えましたが、いかがでしょうか?」
と、悩みながら選んだものです。
七五三繁忙期の中での無料提供につき、着物を選ばせてあげることはできないけれど、少しでも喜んでもらいたいと、顔も知らない女の子のことを考えてのこと。
寒そうにしながらも、時折、華やかな袖を翻して、女の子は終始嬉しそうにニコニコしていました。
ご祈祷の時間。
神社様にはご祈祷中の撮影も快くご許可いただき、社で祝詞をきく子どもたちの神妙な横顔も写真に収めていきました。
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神主様の祝詞では、ご夫婦の「愛し子」として子どもたちの名前が述べられ、守護と祝福、そして健やかな成長が祈られました。
七五三のお祝いをしたいと考えたご夫婦、
喜んでもらいたいと衣装に悩んだRENCAさん、
楽しんでもらいたいと考えたフォトグラファー、
神様に子どもたちを「ご夫婦の愛し子」と呼んで祝詞を奉じた神主様。
そして、このプロジェクトを立ち上げた、わたしたちfotowaのスタッフ一同。
名も知らぬ大人たちのささやかな願い。
そんなこと知らなくても良いけれど、あなたたちは確かに愛されて今ここにいて、きっとこれからもたくさんの愛情に見守られて育っていく「愛し子」なのだということ。
いつか写真を見返した時に、みんなでお祝いしたこの日の想い出が、あたたかな記憶と共に心を照らしてくれたらと、fotowaとして願わずにはいられませんでした。
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撮影を終えてご家族の感想
大騒ぎの撮影日から、程なくして届いた写真を拝見して思いましたこと……。
寒さに震えて文句たらたらだったり、自分が主役じゃないことが気に入らず泣きっぱなしだったり、子どもたちの勝手気ままが入り乱れる中で、「いい顔」の瞬間をよくぞ切り取っていただけたものです。
朝から、いや前日から準備と時間に追われて駆け込むように神社へ行って帰ってきた、そんな慌ただしい一日でしたが、写真を見て初めてしみじみと喜びを味わうことができました。
その「いい顔」達に、口から思わず笑みがこぼれていると子どもたちが集まって来て、写真一枚一枚にあーでもない、こーでもない……結局また大騒ぎになりました。
皆、自分が写っている所を指さしては、なぜだかゲラゲラと笑う。主役だった子もそうじゃなかった子も、自分こそが主役な思い出の姿が写真にあり、皆にとって本当に素敵な時間をいただけたと改めて思います。
写真に映し出された晴れやかな姿。将来、子どもたちがそれを見返して、愛され祝福された日を思い出して欲しいのはもちろんですが、その写真は当面、私共親にとっての宝物です。
やっぱり節目となるお祝いは、最高の姿で残したい!
そんな願いを叶えて下さって心より感謝いたします。
次こそは自分が主役で撮ってもらう気満々な子がおりますが、またご縁をいただけたら幸いです!
撮影したフォトグラファー
吉竹 惠介さん
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今回、素敵な撮影の機会を頂けたことに、感謝しています。
私は常々、七五三撮影をカメラマンに依頼して撮って貰える子どもたちは凄く恵まれていると感じています。
もちろん子どもたちはそんな事は考えないでしょう。
だからその子たちが大きくなった時に、それが伝わる事を願っていつも写真を撮っています。
「あなたはこんなに大きな愛に包まれて生まれて来たのですよ」と伝えたくて。
七五三の撮影をしていると、七五三をこうして祝うことや撮影することが当たり前のような感覚になってしまうんですよね。
でもそれは全然当たり前の事じゃないという事を、今回改めて思い、胸が痛みました。
昨年白血病の治療の為に、抜けていた髪の毛がやっと生え揃って来たので4歳で七五三の撮影をしたご家族がいました。
その話を聞いたのは納品後でしたが、物静かな大人しいお子さんなのに、ずっとニコニコ嬉しそうだったので、そういう事だったんだなとしみじみ思い、改めて「七五三」や「お宮参り」の意味を思いました。
今回撮影した写真も、ご夫婦にとって「外からみた家族の姿」を少しでも感じられるものになっていれば良いなと思います。
これからも、ひとつひとつの撮影を「今しかない瞬間」だと肝に銘じて大切にしていきたいと思っています。
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何度でも見返したくなる写真を
あなたに、子どもに、家族に。「fotowa」