ICELAND・撮影旅作品とストーリー
初めに
皆さんこんにちはfotoshinです。
二週間のアイスランド撮影旅より帰国し早くも10日が経ちます。
少しは余韻に浸りたかったのですが、思いの外桜の進行が早く連日早朝から撮影していたため、時差ぼけも抜けきらず今に至ります。
当たり前ですが、日本は本当に植物が多くてこの春の季節はその変化が連日目まぐるしくびっくりしました。
苔と岩と氷の世界にいたのでそのギャップを露骨に感じます。
さて今回はアイスランドで撮影した写真たちを少しお見せしながらそれらのバックグランドストーリーをお話しいたします。
Instagramで投稿したものも一部含みます。
それでは早速一枚目から。
1.氷河のかけらに混じる黒い砂
アイスランド南部のヨークルスアゥルロゥン氷河湖で撮影した一枚です。
今回東アイスランドのフィヨルドへ向かう際に通過するポイントです。観光スポットであり人がとても多いため今回は長居するつもりはなかったのですが、ふらりと海岸を歩きながら氷河のかけらを覗き込みました。
ブラックサンドとは火山岩の玄武岩が細かく砕かれたものです。
風速30m/hを超える強風時にはそれらが舞い上がり容赦なく吹き付けます。
その砂が氷河のカケラの内部に付着し、その後溶けた氷が再び凍りつき砂は内部へと閉じ込められます。
氷の美しい青と漆黒の砂は見事に混ざり合い美しい模様を成します。
「氷宇宙」
とでも名付けようかと思うほどそこは宇宙を感じます。
外界は人で溢れかえりますが穴を覗き込んだ時は不思議な世界を味わいました。
今回LAOWAさんからこの旅用としてGFX用の広角レンズ 19mm F2.8を借りていたのでダイナミックに表現する上で重宝しました。
2.火山と氷の島を覗く
海岸に転がる氷たちには無数の穴が空いています。どこをのぞいてもそれぞれの面白さがあり、1枚目のようなダイナミックな模様を見せるものもあります。
ここでは少し視点を変えてみます。
ぽっかりと穴の空いた氷河のかけらから氷の塊を発見しました。
こちらの黒い砂もまさにブラックサンドですがアイスランドの島の形状にとてもよく似ていました。
火山でできたこの島はブラックサンド、この島を覆う氷河をこの小さな氷のかけらで表現しました。
氷河の額縁を通し今自分が旅をしているこの島を俯瞰で眺めているような気持ちです。
アイスランドは国土の11%が氷河に覆われています。(令和1年時点)
旅を続ける中でも多くの氷河を目にすることができ、また実際にその上や内部を歩くことができます。しかし近年の温暖化の影響で氷河はどんどん溶け、氷河湖に面している氷河の先端部はみるみる後退しています。
1890年代の氷河の先端部の位置から2016年の先端部の位置を確認すると6-8Kmほどは後退していることがわかります。
ものの30年やそこらでこのスピード、近年は温暖化の変化がより激化しているようにも感じますし今後さらに加速することでしょう。
私が死ぬまでになくなることはないでしょうが、いつか氷河が消えてしまう可能性も当然あります。ビーチに転がるこの美しい氷の塊ももしかしたら今だけなのかもしれません。
このマップはこれから私たちが何を大切にして生きていかなければならないのかということを示しています。
こういうデータがあるのは重要ですね。
3.氷山
氷の山が聳え立ちます。
まるで険しいヒマラヤの山々のような姿です。
氷河の中心部付近は真っ白な雪で滑らかな見た目ですが、先端部は流れる過程で次第に裂け荒々しい姿になります。氷河が流れることにより周辺の山々や地表を削り土砂を堆積させモレーンを形成します。
その砂が強風で舞い上がり氷河に付着し独特な模様を生みます。
「綺麗」
ではないでしょうが、私は不思議とこの土まみれな氷河が大好きです。
そして土まみれの方がより美しく見えます。
氷河の終着地点の環境をよりなまなましく、溜め込んだ凄まじいエネルギーが放出されるのを感じさせてくれるからです。
氷河の青く見えるには光の存在が必要です。
曇り空の隙間から入り込んだ一瞬の光が先端部を照らし美しい青さを見せます
手前から奥にかけての土と氷の美しいグラデーション。
その姿は氷の山脈そのものでした。
氷のレイヤリング、山脈のピークポイントも意識しながら構図を整えます。背景には光が入り込まず暗部となったためより際立つ形となりました。
氷河の脚の先端部の様子。
4.風化が生むアート
南アイスランドから東アイスランドへ移る位置にあるベストラホーン(445m)を訪れました。ここもまた近年は多くのSNSで見かける人気スポットになっています。
8年前同じ時期にこの場所を訪れましたが、その際は私一人でした。ゲートの料金を払う際、店主であるお爺さが優しくご案内してくれたのを懐かしく思い出します。今はすっかり観光地と化しておしゃれなカフェが作られ、お爺さんの姿はありませんでした。
少し寂しい気がしましたが、時間は進むのですね。
しかし山の形は変わることなく勇ましい姿を見せていました。
鉄とマグネシウムを含む斑れい岩(マグマが地表に出ず地中深くでゆっくり固まったもの)で形成されており、硬く侵食の影響を受けにくい部分が残存して残っています。
たった標高445mの山で、自分の家の裏山より低い山ですが、海に北アルプスの槍ヶ岳が聳え立つ様な光景には異世界を感じずにはいられません。
海岸の足元に目をやるとこの山が風化で削られた斑れい岩の細い砂があたり一面を覆っています。
海沿いということもあり、いつ訪れても爆風です。そしてこの細かい砂は磁力をもつため三脚やカメラの隙間に入ってくっつき未だクリーニングに難儀しています。
風によって非常に面白い砂の造形ができていました。
海を連想させる波模様と氷河湖の流氷をイメージさせます。
それこそ先日グリーンランド上空のフライトで海に浮かぶ流氷はこんな姿でした。スケールも物質も場所も異なる中で共通するものがあることに感動を覚えます。
この砂たちもかつてあの大きく勇ましいベストラホーンの体の一部だったのに今はこうして別の形を創っています。
毎日、毎時、瞬間、瞬間、その姿を変えながら。
5.Light decoration
東アイスランド、海岸沿いからぐっと内部に入った山の麓にポツンと一軒家がありました。
ちょうど夕方の撮影を終えて次の場所へ向かう途中でこの綺麗にデコレーションされた家が目に入りました。
何故私がこの瞬間を撮影したのか。
決してオシャレで洋風チックな家に魅了されたというわけではありません。
こんな山奥で周辺に住宅も無く、人がほとんど来ない環境で、この綺麗なデコレーションを付けた住民の心に惹かれました。
もし自分が山奥で暮らしていたらこんなことするだろうかと考えましたが、多分しないだろう。ひもじく暗い外観でせめて室内は明るくするかもしれない。
この住民がデコレーションを付ける理由で考えられるのはおそらく2つ。
1:住民自身のため
2:まれに来る私の様な通行人を喜ばせるため
私は1だと思いました。
山奥のこの自宅に向かって暗い道を運転する自分を想像してみました。暗闇に明るいライトに照らされた家が見えてきたらどんなにホッとするだろうか。
自宅につき、暗い住居に入るのと、ピカピカとクリスマスのイベントが行われているかのような自宅に入るのでは大違いでしょう。
私の憶測にすぎませんが、このデコレーションはここの住民にとってこの奥まった孤独な環境で生活する上でとても大切な光なのだと感じます。
ただ、クリスマス後に撤収するのがめんどくさくなってそのままだったり、電気代は安いからそのままのケースもある様です。
その可能性もありますね。
6.沈む大地
フィヨルドの山々の姿はとても面白いです。
パイシートのように溶岩大地のレイヤーが幾重にも積み重なっています。
シート状溶岩、溶岩シーケンスと呼ばれたりしますが毎度この光景には感動します。
このレイヤーの数だけ噴火があり溶岩が流れたということ、そして各レイヤーごとにとてつもなく長い期間が空いていたりします。
通常噴火した溶岩は基本的に水平に広がりますが、ここでみられるレイヤーのほとんどは斜めになり海の底に向かって沈んでいます。
つまり大きな力が加わり、大地の変動によりこのように斜めになったこともわかります。
きっと潜ればその続きを見ることができるのでしょう。
東アイスランドのフィヨルドはダイナミックなジオグラフィックを楽しませてくれるだけでなく、ここに流れたとてつもない時間の経過を目で見て感じることができます。この体感ができただけでもここへ来て良かったと感じました。
東アイスランドのフィヨルドの街、セイジスフィヨルズルSeyðisfjörðurの上空より撮影。期間中ほとんど閉鎖だったが、この日は奇跡的に開通していくことができました。
7.命の線
アイスランドの電力は水力発電、地熱発電がほとんどでほぼ100%自然エネルギーで賄われています。そこまで人口も多くないので十分1つの国の人口を賄える電力となっています。
日本はもちろん様々な発電方法を持っていますが、とにかく人口も多いためなかなか難しいところですね。
日本でも送電線がどこにでもありますが、アイスランドの送電線は少しユニークな姿をしています。レトロというか、アイスランディックな風景にとてもよく溶け込んでいるためついつい撮影してしまいます。
北極圏に位置するアイスランドはとにか過酷な環境下にあるため電力がなければ生活することはとても難しいです。そのため内陸部やフィヨルドなどの遠地の村にもこの送電線が走っています。
そこで生活する人にとってみれば
「命の線」
の様な存在でしょう。
「あんな山を越えるの?」
なんて光景もしばし見かけますが、それはよく考えれば私たち日本の送電線もそうですね。
送電線はあまりにも私たちの生活に溶け込みすぎて意識することもないかもしれませんが、実は自然風景として奥深さを持っている気もします。
7.トナカイとの朝
東アイスランドで見た野生のトナカイの一枚です。
トナカイは18世紀にアイスランドに連れてこられた動物で当初は飼育されていたのですが、その後定着せず野生化するものが多くなったようです。
彼らにとって東アイスランドの環境が生きる上で適応しやすく、現在は東アイスランドで多く見られます。
夏は高地、冬は低地に来るので今回季節の移行期でしたがギリギリタイミングを合わせることができました。
私は動物写真家ではないので正直彼らの正しい撮影の方法を知りません。
ただ、彼らのありのままの姿を撮影したかったので、できる限り自身の存在が影響しない距離で撮影することにしました。
ちょうど東の海から日が昇り牧草を食べるトナカイにバックライトを照らします。その姿はなんとも神々しく神秘的な光景でした。
そのためあえてその全貌を明らかにせずシルエットとして表現することにしました。
人間の勝手な都合で連れてこられこの地で生きることになった彼らですが、今はこうして自由に暮らしています。この先も長くこの場所で子孫を残し生き続けてほしいと純粋に感じます。
その後も見れるかなと思いましたが、途中一頭見ただけで群れを見ることはありませんでした。
この旅で最も思い出に残った光景の1つです。
8.緑のカーテン
最後はアイスランドのオーロラの一枚です。
この旅は約二週間ほどありましたがオーロラの撮影には難儀した気がします。特に前半は夜間の曇りが多く、オーロラレベルも弱く後半の撮影が増えました。
ただ、前半夜の撮影をしなくて済みその他の撮影に集中できたのは良かったとも言えます。オーロラを追い始めると夜間の撮影が加わり体への負担も一気に増えるため、体調管理が困難になります。
実際、最後寝不足が原因で風邪ひきましたし・・・・
今回はアイスランドでのオーロラ撮影の方法を少しご紹介します。
アイスランドでのオーロラ情報の予測はオーロラフォーキャストを主に参考にします。
Aurora foecastでアクティブレベルを確認します。
撮影地の雲の分布を確認します(白が雲が無い)
基本的には以上です。
それに合わせてWindyを活用したり、フィンランドのオーロラライブカメラを参考にして撮影に挑みます。
またオーロラだけを撮るのであればどこでもいいのですが、ある程度組み合わせる被写体を選んだり、光害のないロケーションを選ぶとなると難易度は上がっていきます。
星を撮影するような感覚とさほど変わりはないかと思いますが、とにかくオーロラは気まぐれで予測不可能な点も多いです。
過去同シーズンに訪れた際は比較的高頻度で見られたのですが、今回はレベル4のアクティブ、晴天の日(ベストなオーロラ撮影条件)でも現れず、このまま見れないまま終わるのではと思っていました。
10日間訪れて一度も見れなかったという話もよく聞きますので不思議な話ではありません。
しかし、帰国日3日前にしてやっとしっかりとしたオーロラを撮影することができました。
この日のオーロラレベルはLow(つまり弱い)
多分出ないだろうと思いながらこの日は少し別のアプローチとしました。
広いエリアでチェックし確認できたらそちらへ突っ込む作戦
今日はレベルのLowだし多分ないだろう、一応1時間ごとに目覚ましをセットし休もう・・・(この目覚まし期間は正直拷問でした)
ただ念の為休む前に撮ってみるかと北の空をパシャリ。
既にいらっしゃるではありませんか。
「今日Lowですよ・・・」
ただでさえ旅の後半で疲れが溜まっていたのですが、ここから怒涛の戦いが始まります。
オーロラの太い部分が北寄りに位置しているのと、左側の空に見える街の光害も避けたいのでここから約200km移動しました。
北向きに生活圏のないエリアのシンクヴィトリル国立公園に移動し無事素晴らしいオーロラのカーテンを撮ることができました。
Lowなんてとんでもない、レベル4くらいの肉眼でも明るく見える素晴らしいオーロラでした。
その後無事に風邪を引き、早めのパブロンに救われたのです。
またYoutubeでも動画を出しますが、この旅の良い締めになった撮影だったと思います。
オーロラは何度見てもいいものです。
まとめ
今回はアイスランドで撮影した作品のごくごく一部ですがその撮影背景・ストーリーをお話しいたしました。
本当はもっと紹介したいところではありますが、今後BOOKを作成する中で充実させていこうと思います。
完成した際には是非手に取っていただけると非常に嬉しいです。
またYoutubeでも動画を出す予定ですので是非楽しみにしていただければと思います。
今回の内容はアイスランドについての話ではありますが、私自身この旅は国内で撮影する上で考えが変わる、視点が変わる貴重な機会となりました。
少しでも皆さんの写真に対する向き合い方に参考になることがあれば嬉しいです。
それでは今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次のViewtoryでお会いいたしましょう。
fotoshin
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