雪の芸術を追ってwith GFX100Sll
冬は本当にたくさんの被写体で溢れていて、外に出れば何かしらに出会う。
今年は早い冬の訪れで順調に降雪もあり、例年より山の積雪量はかなり多い。
と思ったら再び10年に一度あるかどうかの高温注意報でがんがん融雪が進んでいる。
やっぱり温暖化の中に私たちはいるのだなと改めて気付かされる。
今回はここ最近で撮影した写真を出しながらボソボソしゃべってみる。
動物の足跡
グリーンシーズンには気づかない動物の気配を目にすることができる。
アニマルトラッキングは冬ならではの楽しみだ。
色々な動物の足跡があって、夜のうちにとぼとぼ歩いたのかなとか、走り回っていたのかななどその姿を想像できるので見ていると面白い。
時に雪を掘り返して餌を探した痕跡や、複数匹で追いかけ合った様子もわかる。
この動物の足跡が風景の中に一生に入るととてもよく馴染む。
その動物が実際に歩く姿もいいが、実物が見えないからこそその姿を想像し感じる楽しみがある。
どんな動物が、どんな風に歩いていったのか。
そのはっきりしない曖昧さがどこか心をほっとさせてくれたり、幼い頃に読んだ日本昔話のような懐かしいものを感じさせてくれる。
霧氷
よく冷えた朝は木々たちも凍りつき見事な霧氷を見せる。
光が差した途端、木々たちが声を上げて一気に踊り出す。
そして次第にその光はみるみるうちに枝先の霧氷を溶かし、砕き、パラパラ音を立てて落ちしてゆく。
一時間もあれば再び黒い枝先だけが残る。
ずっと付いてくれれば綺麗でいいのに。
と思うこともあるが、風に打たれ散って行く霧氷の姿もまたとても綺麗だ。
まるで桜吹雪を見ているような気分。
ありがたいことに、寒気が入りまた条件が整えばもうしばらくこれを楽しむことができる。
次はいつになるのだろうか。
雪山の木々
山の急斜面で生きる木々たち。
斜度40度近くの斜面で重力に逆らい垂直に生えている。
高い山で暮らす木々は特に好きだ。
生きるフィールド環境も、天候も優しさのかけらも無いような環境で彼らは当たり前のように生きる。
強がるわけでもなく、ごく当たり前のように。
今回は猛吹雪の中ではなく青空バックに爽やかに彼らを撮ってみた。
急斜面に生える一本のカラマツ。
さらさら流れるような光の流れにすっぽりおさまっていた。
この一本のカラマツはお気に入りで毎年撮影をしている。
今年もいるなあと。
夏は笹の海に飲み込まれているが冬は彼がよーく見えるのでとても嬉しい。
今年は雪が多く、特に湿気を帯びているので重い。
雪崩もいっそうパワフルになることが予測されるので、頑張って生き延びてほしいところだ。
樹氷
ここ数年は樹氷の形成が非常に悪かった記憶している。
形成後は直後に晴天日が続き骨がむき出しになるような姿になっていた。
今年は日本海の海水温が高く湿気った空気がいつもより多く運ばれてくるためかぐんぐん成長していった。
考えてみれば今シーズン平野の雪は毎回湿雪で除雪が大変だ。
この日の早朝は分厚い雲に飲まれ若干吹雪いていたが、次第に薄れ朝日が入り込んできた。
雲が抜ける間際の光は本当にムーディで色気がある。
まだ標高が低いゾーンに漆黒の気配が残り、トップだけが照らされる瞬間に撮影した。
凍えるような寒さであったが、彼らの姿は本当に逞しい。
樹氷となって自らの体に鎧を纏ってしまった方が、この極寒を生きるにはむしろ都合がいいのかもしれない。
と考えると樹氷が形成されないと彼らは困るのかも。
樹氷の中に頭を突っ込んでみた。
少し静かになり居心地がいい。
ちょうどアイスケーブのような空間があり奥に青空が見えた。
頭上に広がった青空はあまりにも見慣れているが、この洞窟のような空間から見る青空は不思議と安堵感を覚える。
時折強風で舞い上がった樹氷の破片が降ってくるので、それに合わせ撮影をした。
木漏れ日
冬の夕暮れ、原生林の中で見る木漏れ日はとにかく美しい。
そこらじゅうに蝋燭の火が灯ったようで、冬は太陽の動きは早いので森の中ではあっという間にその光が消えてゆく。
コーティングしていた雪が溶け葉っぱが顕になったコメツガ。
今年も松ぼっくりが豊作で可愛いデコレーションとなってくれた。
これといったオブジェクトはないが、夕暮れの光は斜めとなり雪面に長い影を作る。
その影に囲まれたところに光の道ができる。
この日は風が強い一日だった。
この道の先を眺めながらゆっくりと山を下った。
おわりに
暖かい日々が少し続くもきっとまた大寒波が来るはずなので、それを楽しみに過ごしたい。
夜になっても今日はぬるい。
雪解けの匂いと雨が混じったような匂いは3月のようだがそれも楽しみながら過ごそうと思う。