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SIGGRAPH ASIA 2024 TOKYO Houdini HIVE のまとめ

本記事では、2024年12月に東京国際フォーラムで開催されたSIGGRAPH Asia 2024で行われたHoudini Hiveについて紹介しています。


1. Houdini Hiveとは

Houdini Hiveは、SideFXが主催するHoudiniユーザー向けのイベントで、映画やゲーム、アニメーション、VRなどの制作現場での最新のHoudini活用事例やテクニックを共有する場です。プロのアーティストやスタジオが登壇し、実際のプロジェクトや効率的なワークフローを紹介します。Houdiniの学習や新技術の習得、業界内のネットワーキングを目的としたイベントで、ライブ開催やオンライン配信を通じて世界中の参加者にアクセス可能です。制作のヒントやインスピレーションを得る貴重な機会を提供しています。
近年のプロジェクトの制作秘話や、質の高い作品を作るうえで Houdini のプロシージャルなテクニックがどのように力を発揮しうるかなどについて紹介されました。

次の章から、実際に行われた講演内容をいくつか紹介します。

2. Houdini Labs for Games and Realtime FX (ゲームとリアルタイム FX における Houdini Labs の活用)

インディーズレベルから AAA タイトル級まで、ゲーム制作における開発の現場で Houdini Labs がいかに力を発揮するか解説されました。講演は、アジアおよびヨーロッパのゲームおよび VFX 業界で10年の経歴を持ち、Meta Meow社にて、ツール開発とリサーチの部門を率いている Michal Rutkowski 氏によって行われました。
Unreal Engine 5 の機能を使った流体や海のシミュレーションのリアルな Houdini レンダリング結果が公開され、複雑な海洋波、ホワイトウォーターエフェクトなど、Houdini Labs のツールは高度なシミュレーションを可能にすることが紹介されました。
さらにHoudini Labsは、各種2Dおよび3Dテクスチャ、スタティックメッシュ、頂点アニメーションテクスチャ (VAT)、スケルタルメッシュ、ジオメトリキャッシュなど、多様なUnreal Engine 5 と互換性があるデータタイプのエクスポートが可能となり、流体表現だけでなく、建物、ケーブル、雪、汚れなどのプロシージャルコンテンツを作成するためにも有効活用することができます。

3. 様々な手法によるゲーム用岩石の作成(Different ways to deal with Rock Formations for Games)

Jerome氏はGertrude Groupで10年以上勤務し、プロシージャルソリューションを活用してゲーム開発向けに効率的な環境制作を手掛けています。彼の講演では、岩の形成や自然な地形のプロシージャル生成プロセスについて詳述されました。
岩の形状は、堆積層、降水量、地殻変動など多様な要因で変化します。Unreal Engine 5のNanite技術により、高ポリゴンモデルを効率的にレンダリング可能となり、リアリズムと高品質を実現。一方で、スタイライズされた表現では重要な形状を強調し、ノイズを排除する簡潔なビジュアルが重視されます。
Jerome氏はマクロからミクロへと段階的に制作を進め、地形解析によるマスキングやQuixelライブラリの活用で効率化を図ります。また、独自ツール「3PanR」でテクスチャを自動分類・適用し、生産性を向上させています。ポリッシュフェーズではトポロジー整理やエッジ強調を行い、雪や苔などのディテールを加えることで完成度を高めます。
AI技術も導入し、深度画像を活用したディスプレイスメントマップやカラーマップ生成を効率化。Stable DiffusionやControlNetを使用したリアリズム表現の試みも紹介されました。これらのプロセスを通じて、柔軟でスケーラブルな環境を効率的に実現し、ゲームエンジンでのビジュアル向上を達成しています。

4. Houdini によるキャラクタアニメーション - APEX の基礎 (Character Animation with Houdini - Introduction to APEX )

講演では、Houdini初心者や基礎を知りたい人向けに、Apexの概要とそのキャラクターアニメーションへの応用が解説されました。講師は@jyouryuusuiとして活動し、Houdiniの動画制作や技術共有に力を入れ、Houdini Advent Calendarの主催者としても知られています。
Apexは「All-Purpose Execution」の略で、Houdini 20で登場した新機能です。KineFXの進化系と見られるものの、異なるコンセプトで設計されており、リギングやアニメーションの評価を一つのApexグラフで統合的に管理できます。この機能により、従来の分散型評価システムや操作性の煩雑さといったKineFXの課題を解消し、アニメーションデータをジオメトリに埋め込むことで一貫性のあるネットワーク評価が可能になります。
Apex導入により、評価システムの統一や自動リギングコンポーネントを利用した効率向上が期待されます。特に、手付けアニメーションの負担軽減とプロシージャルアプローチの統合が注目されています。ただし、Apexはまだベータ版であり、初心者には理解が難しい部分も残ります。今後の機能追加や改良により、さらに利便性が向上すると期待されています。
Houdiniの進化に合わせ、Apexがどのようにアニメーション制作を効率化し、将来的に業界標準となるか注目されています。

5. USD/Solaris Workflow Evolution, Houdini Tools and Axiom Efficiency

Megalisは2017年に設立され、日本拠点のエフェクト制作に特化したスタジオで、「Oni」など大規模アニメプロジェクトを手がけています。チームは少人数ながら2,200以上のショットを作成し、HoudiniのSolarisとUSD(Universal Scene Description)を導入し、アセット管理やシーンアセンブリを効率化しています。USDへの完全移行により、膨大なアセットやショットデータの統一管理が可能になり、デバッグや品質管理の効率も向上。テンプレートシステムやRendermanとの連携により、視覚的に分かりやすい設計と迅速なルックデブ・レンダリングが可能となりました。
また、Axiomの採用でPyroシミュレーションを強化し、スパースグリッドを用いた高速・省メモリの計算を実現。GPUを活用した処理は特にM1 Maxチップで高性能を発揮。効率的なシミュレーションにより短い納期にも対応可能で、複数バージョンの反復作業が迅速化されました。新機能としてハイトフィールドやソースシェイプが追加され、煙や火のリアルな表現を直感的に行えるように改善されたことが紹介されました。Megalisの先進的なHoudiniワークフローと統合システムは、デザインと制作のプロセス全般において高い生産性と柔軟性を提供しています。

6. Houdini によるデジタルファブリケーション (Digital Fabrication with Houdini)

Houdiniを活用したデジタルファブリケーションの幅広い応用例が堀川淳一郎氏による講演で紹介されました。同氏は建築やファッション、グラフィックデザインなど多岐にわたる分野で活動するデザイナーで、Houdiniをプロシージャルデザインの重要ツールとして活用しています。デジタルファブリケーションは、Houdiniで設計したデータを3DプリントやCNC加工などで物理オブジェクトに変換するプロセスです。特に3Dプリント可能なモデルでは、Houdiniのブーリアン演算やVDB操作を用いて水密性と交差のないジオメトリを実現可能です。実例として、複雑形状の金属鋳造用ワックス型をHoudiniで生成し、3Dプリントするプロセスや、最適なモールド分割設計を行うモールドシミュレーションが挙げられました。
また、「Comfort Day」プロジェクトではHoudiniとRhinoを組み合わせ、効率を考慮したセラミック花瓶の設計が紹介され、粘土の注入から焼成までの工程も説明されました。ファッション分野ではHoudiniのVellumソルバーを使い、布の収縮やしわをシミュレーションしてゼロウェイストデザインに活用。また、Houdiniを使ったGCODE生成で3Dプリンターを直接制御する方法も紹介されました。本講演は、Houdiniが仮想空間にとどまらず、物理的アート制作にも応用可能な強力なツールであることを示し、製造から仕上げまでの新たな手法を提案しました。

7. まとめ

特に聴講者が多かった講演、Houdini20.5の新機能を取り上げた講演を中心に紹介しました。全体的にはゲーム分野におけるHoudiniの活用事例の紹介が活発な印象です。Houdini Labsといったツールセットを用いることで、低解像度メッシュに対してベイクされたマップを適応することで疑似的に高精細なディテール表現できます。この時に機械学習やCopernicusといった画像生成や解析アプローチを組み合わせて用いることで、ワークフローの効率化が期待できます。またHoudini20.0の新機能であるAPEXも現在はベータ版としての提供ですが、今後の進化や活用に期待されます。

過去のHoudini Hive含む講演はこちらから視聴できますので、ぜひチェックしてみてください。


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