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2020年 年間ベスト映画TOP5
新作をあまり見ていないため、TOP10ではなく5にします。すごく偏ったランキングになる点、ご了承ください。
2020年 年間ベスト映画TOP5
1. フォードvsフェラーリ
2. TENET テネット
3. パラサイト 半地下の家族
4. SKIN/スキン
5. ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密
『フォードvsフェラーリ』は去年公開の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』同様、1960年代の質感が最高。フォードとフェラーリの対立軸の映画と思わせてそうではない脚本も秀逸。台詞もいい。
「7000回転の世界
そこではすべてが消えてゆく
マシンは重さを失い
肉体だけが残り
時間と空間を移動する
その時 重要なことを問いかける
お前は誰だ」
…引用を書いているだけで失禁しそうだ。
『TENET テネット』は、このサイトが生まれるきっかけになった映画。1回しか見ていないのでいまだに頭の中で整理できていないが疾風怒濤の映画体験だった。
『パラサイト 半地下の家族』。これだけ話題になるとハードルを高くして見てしまうのだがそれでも面白かった。ポン・ジュノだから毎回このくらいの面白さはあるのだが、世界がついに気づいた、といったところか。格差社会の描き方に世界が共感した、ということかもしれない。
『SKIN/スキン』はアメリカの闇(極右)を描いた作品。『リトル・ダンサー』で主人公ビリー・エリオットを演じたジェイミー・ベルが主役。全身タトゥーのヤバい男が更生する話。
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』はアガサ・クリスティー風邪のミステリーだが、あの『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のライアン・ジョンソン監督ということで単なるアガサ・クリスティー風に終わらずクセがすごくて面白かった。ダニエル・クレイグを始め俳優陣がいい。
2020年 今さら初めて見て印象に残った12本
『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』 森崎東監督
『洲崎パラダイス 赤信号』 川島雄三監督
『深夜の告白』 ビリー・ワイルダー監督
『マディソン郡の橋』 クリント・イーストウッド監督
『有頂天時代(スイング・タイム)』 フレッド・アステア&ジンジャー・ロジャース
『プレステージ』 クリストファー・ノーラン監督
『僕のビアンカ』 ナンニ・モレッティ監督
『アニエスの浜辺』 アニエス・ヴァルダ監督
『愛に関する短いフィルム』 クシシュトフ・キェシロフスキ監督
『奇跡にあずかった男』 ジャン=ピエール・モッキー監督
『アマンダと僕』ミカエル・アース監督
『トウキョウソナタ』黒沢清監督
『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』 みたいなハチャメチャな映画は今じゃ撮れないだろう。1980年代の日本は森崎東とか相米慎二とか森田芳光とか、もうすごい。勉強不足であまり見ていないが…。
『洲崎パラダイス 赤信号』は傑作中の傑作。コロナ禍の緊急宣言期間中、日活がYouTubeで無料公開してくれて出会えたことに感謝。
三橋達也はアルバイト先で出会った芦川いづみとくっつけばいいものを、元カノというか元情婦の新珠三千代に後ろ髪を引かれ続けるんですね。男ってバカですね。あと、この映画の小沢昭一は本当に面白い。全体的なテンポが速くて気持ちよかった。
『深夜の告白』はエドワード・G・ロビンソンの中でも一番いいと思った作品。同時期に見た『キー・ラーゴ』もよかったけど。
『マディソン郡の橋』はメリル・ストリープもクリント・イーストウッドも切ない。
『有頂天時代(スイング・タイム)』は、映画って最高ですね。フレッド・アステアみたいに踊りたい。
『プレステージ』はクリストファー・ノーラン監督作だけど遅ればせながら初見。19世紀の雰囲気がいい。一番面白いかも。デヴィッド・ボウイがニコラ・テスラ役で出ていて、この配役もすばらしかった。
『僕のビアンカ』はとんでもない傑作。ナンニ・モレッティなので、例によってイタリアのウディ・アレンみたいで、脱力系のコミカルな私小説みたいな感じで進むが、実は至高のミステリーであり悲劇でもあるという、ナンニ・モレッティの真骨頂を見た。
『アニエスの浜辺』は過去作を振り返りつつ、ブリコラージュのようなアニエス・ヴァルダの遊び心あふれる映画術を堪能できる。
『愛に関する短いフィルム』もすごかったですねえ。ストーカーの若い男が向かいのアパートに住む女性を覗き見する映画、と思いきや、後半は意外な展開を見せるんですね。現実にいたら「キモい」の一言で済まされそうな若者の描き方が素晴らしいですね。ものすごくピュアなんですね。『デカローグ』(全10話)の一篇として撮ったとのことで、残り9作を見たくなった。
『奇跡にあずかった男』はアンスティチュ・フランセで上映された作品。聖地ルルド巡礼を茶化す感じが最高だった。
『トウキョウソナタ』はなぜ今まで見なかったんだろうと反省。2020年は『スパイの妻』がヴェネツィアの銀獅子賞を獲って注目を集めたが、今の社会はむしろトウキョウソナタ的な方向へ一気に進んだ1年でもあった。
『アマンダと僕』はエリック・ロメールにも通じる部分があった。ミカエル・アース最高。ヴァンサン・ラコストも少女役も最高。
「Elvis has left the building.」(「エルヴィス・プレスリーはもうこの建物を出ました」→「ショーはもう終わり」「もうアンコールはありません」)という慣用句が効果的に使われている。これを見て以降、事あるごとに「Elvis has left the building.」と心の中で反芻している。