「大丈夫」について考えてみた
先日処方箋薬局で薬を処方してもらった時のことです。
病院の近くの薬局に処方箋を出すと、こう言われました。
「薬代とは別に、容器代が30円かかりますが、大丈夫ですか?」
「はい」と答えましたが、なんだか違和感が。
違和感の正体は「大丈夫ですか?」という言葉でした。
薬は容器に入れる必要があるのだから、シンプルに
「薬代とは別に、容器代が30円かかります」
で、いいのではないかと思ったのです。
30円取られるなら薬はいらない、という選択をする人もいるのでしょうか。
この「大丈夫」という言葉、ここ10年くらいで市民権を得てきた言葉のような気がします。
というのも、私自身がかつては使っていなかったのに、あるときうっかり使ってしまい嗜められた経験があったからです。
1. よろしい、OKという意味の「大丈夫」
薬局で聞かれたのはおそらく承認の意味の「大丈夫」だと推察します。
先ほど私が書いたような紋切方だとちょっと強い印象を与えてしまうので、柔らかくするための大丈夫なのだろうと思いました。
別の言葉に言い換えると「ご了承ください」あたりでしょうか。
2. いいえ、No、の意味を持つ「大丈夫」
一方、反対の意味の大丈夫もありますよね。
私が何年か前に嗜められたのはこちらの方でした。
職場のおじさんにヨットに乗せてもらった時のこと。
船の上でお酒を楽しんでいた時、一人の方が「もういっぱいどう?」と、グラスにワインをつごうとしてくれました。
そのとき私は、咄嗟に「大丈夫です」と言ってしまいました。
「もういりません。結構です」という意味で使い、相手の方もすぐに理解してくださったのですが
近くにいたクルージングのリーダーであるおじさま(一回り位年上の方)に
「大丈夫じゃないだろう。いらないなら結構です、いるならいただきます、でしょう」と言われました。
おっしゃる通りで、「すみません。もう結構です」と言い直しました。
その時、自分も以前は使っていなかったこの言葉が出てきたことに、我ながらちょっと驚いたのでした。
日本語って曖昧で、一つの言葉がいろいろな意味を持つことがある不思議な言語だと思うのですが
「大丈夫」の使い方はよく考えないとならないと思った出来事がありました。
3. 「大丈夫?」と聞いてはいけない
先日私が雨の日に点字ブロックで滑って転んだ時の話です。
親切な方が「大丈夫ですか?」と声をかけてくださいました。
私はほぼ反射的に「大丈夫です」と言っていました。
その話を昨日友人に話したところ
「そういう時は、大丈夫?と聞いてはいけないんだって」
「どこか痛いところはないですか?、って聞くのが正しいんだって」と教えてくれました。
人は大丈夫かときかれると、全然大丈夫じゃなくても、反射的に大丈夫と答えてしまうのだそうです。
言われてみたら本当にそうだなぁと、妙に納得したのでした。
これから自分がそういう場面に遭遇したときは、迂闊に「大丈夫ですか?」といってしまわないように気をつけようと思いました。
4. 言葉は変化する
言葉って不思議です。
時代時代に流行り言葉があり、かつて頻繁に使われていた言葉が消えていったり、同じ言葉が反対の意味で使われるようになったりします。
「やばい」なんて言葉はその典型ではないでしょうか。
この言葉が生まれた時は、どちらかというと都合が悪いとか危険というような悪い意味で使われていました。
やばい!遅刻しそうだ!
というときは、大変だ、どうしよう、という状況を表現しています。
しかし、今では最高というような良い意味で使うこともありますよね。
この店の料理はやばいね!
というときは、もし笑顔だったら、ものすごく美味しいという意味ですよね。
でも、しかめ面だったらまずいという意味になるかもしれません。
どちらの意味なのかは、その時々の文脈やニュアンスで決まるような感じでしょうか。
「大丈夫」も徐々にそういう曖昧な言葉になってきているのかもしれません。
ただ、事故などの際は使わない方が良いということを、今回友達の話を聞いて思いました。
「やばい」もそうですが、便利な言葉はついつい気軽に使ってしまいがちです。
でも、それに代わる言い方を考えてみると全然思い浮かばないことがあります。
便利さやニュアンスに頼ってばかりいると、ボキャブラリーが貧しくなっていくのかもしれません。
歳をとってきたからこそ、綺麗な言葉を正しく使えるように気をつけようと思った出来事でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
noterのみなさまの記事を読ませていただくと、とても美しい言葉を使われる方や、語彙力が豊富でこんな言い方があるのかと感心させられる文章に遭遇します。
私がいつも感嘆してしまうお二人がいますので、紹介させていただきます。
お二人とも教育に携わる方ですが、美しい言葉や豊富な語彙力で、こんな表現方法があるのかといつも感動してしまいます。
その陰には膨大な量のインプットがあるのだろうと思いますし、どんな言葉を使うのかを常に考えながら選んでいるのだろうなと思わせられます。
一方私はといえば、最近は覚えるより忘れる方が早くなり、ますますボキャブラリーが貧困になってきましたが、言葉遣いは今からでも心がけ次第でよくすることはできるかもしれません。
3連休最終日は、久しぶりに購入した本を読んで過ごそうと思います。
明日が平和な日でありますように。