おじいさんが美しい
博多駅でエスカレーターに乗っていたら、
階段を登るおじいさんに目を奪われました。
ユリ・ゲラーが渾身の一撃で曲げたスプーンのような腰曲がり。
小柄な体と比べるととても大きなリュックを背負うその姿は、
ランドセルにまだ慣れてない小学一年生のよう。
そして手には「じゃがいも」と書かれたダンボールを抱えていました。
70代くらいの方なのか。
その状態もわりとインパクトだったのに、
足腰しっかり、重心をぐらつかせずにずんずんずんずん…
と歩いていました。
すごい。
あんなに色んなところに荷物抱えて…。
そんなにしっかり歩けない・・・!
負けた・・・!
・・・そう思いました。
大きなリュックはかなり年季が入っていて、
登山用みたいな感じだったので、
日ごろから体を鍛えているのかな、と分析しました。
そして、私が一番気になったのは、
それぞれの重さの絶妙なバランス加減。
おじいちゃんの腰が前に曲がっているから…
それを引っ張る感じでリュックが後ろに…
そして両手ででしっかりと抱えたダンボールで重心を固定し、
安定の念押し。
いや、物理学で言うとどうなのかわからないのだけれど、
ナントカの法則とか知らないけれど、
なんかこう、見ていてとても美しい…と言うか。
調和してる。
そうだ、調和だ。
やじろべえとか、アメリカンクラッカーとか、
あれってなぜか永遠に眺められる。
あの感覚と似ていて。
荷物の絶妙なポジショニングと強靭な足腰によって
物理法則を受け入れ、地球とひとつになったおじいさんは、
うーん、とても美しかった!
ダンボールの中には何が入っていたのか。
おじいさんは人が行き交う駅にてどこからきて
どこへ向かっていったのか。
それも非常に気になりましたが、
今となってはその答えは闇の中です。