Unstoppable Emotion/高知遠征三日目
「──ゴール!」
照りつける太陽と風の中を、2つの砂煙が目の前を通り過ぎてゆく。額の汗を拭いながら、私は今日5度目のストップウォッチを止めた。
遠征三日目になると、ウララは高知の気候と砂に完璧に順応した。徐々にコースの勘も戻り、今では私が考えるよりも早く、走りの改善点を模索しているようだった。
「いや〜、負けちゃった!うーちゃんに練習で負ける日が来るとは!」
そう言って悔しげに、しかし爽やかに笑うのはイブキライズアップである。芦毛の目立つボーイッシュな女の子で、背格好はウララとさほどの差はないが、学年は一つ下らしい。デビューはかなり早かったようだが、体調や仕上がりに波があり、調子を出しきれないレースが続いているようで、未だに勝ち星がないという。
「トレーナー!わたし、イブキちゃんに今日は一回も負けてないよ!」
「よしよし、確かに調子はいいみたいね」
イブキよりも一足先にゴールしたウララが、はしゃぐように飛び跳ねている。私はそれを見ることもなく、全5回分の並走練習の記録に目を落とし、顎を撫でた。
ウララが速いのではない。
イブキの走りが遅いのだ。
「ナルビーさん。どうかウチのイブキをよろしくお願いします」
昨日会ったイブキのトレーナーは、そう言ってイブキに関する直近の記録を私に預けてきた。その内容によると、イブキはもっと速く走れる筈なのだ。直近の練習記録に間違いがないのなら、イブキは掲示板に届くどころか、とっくの昔に2馬身以上の差で勝ち星を手にしていてもおかしくない、そんな数字なのである。
昨日の午後から始めた2人でのトレーニングだが、ウララが本調子となった今、イブキの調子はなかなか上がらなかった。昨日は慣らしの意味もあって2人にはあえて全力を控えるようにと伝えてはいたが、今日は違う。
「イブキさん、今日は調子悪いのかな?」
私はウララから少し離れたところにイブキを呼び出し、聞いてみた。するとイブキは、芦毛のショートカットをぐしゃぐしゃと掻き乱し、少し離れた場所にいるウララを見つめながら言った。
「えっと、その、体調はいいんですけど、なんか......苦手で。変ですよね」
「苦手って?」
「その、競争が」
──競争が苦手。
新人のレーサーによく見られるスランプ状態だ。私はそう思った。若いウマ娘なら尚更であるが、トレセン以前、特に小学生の時代にレースを意識せず、かつそれなりに脚が速かった生徒に顕著に見られる症状である。他人と争うことを意識しなかった分、闘争心や、駆け引きという技術面で未発達であるため、同一レベルでの集団の中になると、どうしても遅れをとってしまうのだ。
「ウララ!」
私はウララを呼び寄せた。
「どうしたの?」
「ちょっと休憩よ。食堂で一休みがてら、少しイブキちゃんとお話ししてみましょう」
「え......お説教?」
「あはは。違う違う......作戦会議よ」
買い出しに行ったテイオーは、まだ戻りそうにない。
そんな訳で、私たちは一旦食堂へと引き上げることにした。
「抜かなきゃ、抜かなきゃって思ってるうちに、正解がわかんなくなっちゃうんですよ」
「わたしも!」
私たちは扇風機に一番近いテーブルに腰を落ち着けると、イブキとウララの話を交互に聞いた。まずイブキに現状の不安点や悩みを聞き、同じ事をウララが感じているかどうかを確認する。差異があれば、どのように違うのかを更に掘り下げる。そんな作業が続いた。
「今あなたの記録を見てるんだけど、あなたのベストタイムは、正直言ってかなり速い方なのよ。この数字がレースで再現出来るとしたら、それだけで勝てるわ」
私はイブキに、私の感想を正直に伝えた。しかしイブキは私の言葉に眉を寄せ、大きく首を捻るのだった。
「それは......私のトレーナーさんもそうは言ってくれているんです。でもなんか、レースとなると、体が前に出なくて」
「イブキちゃん、授業の記録会なんかは速いのにね」
「うん。1人だと平気なんだけど......」
集団が苦手で、単独走は平気。
「なるほどね」
ここがウララとは明確に違う特徴であることを、私はその時発見した。
ならば、意外に簡単に覆るかもしれない。私は過去のトレーニング経験からそう考えた。
「──閃いたわ」
「えっ?」
「実験的にはなるけど、試してみたい事があるの。他のウマ娘と走っても、あなたが速く走れる事を証明してあげる」
「すごい!よかったね、イブキちゃん!」
食堂に2人の驚きの声が響き、2本の尻尾が天を突いた。私は各々に頷くと、確認するように言った。
「そのかわり、本数と距離はかなり走ってもらうからね?充分に水分補給して、もう一度ストレッチしてから走りましょう」
「は、はい!わかりました」
イブキは椅子から立ち上がると、飲みかけの麦茶のグラスを握り、ぐいと天を仰いだ。
「イブキちゃん、わたし、今日は調子いいんだから!この後の練習でも負けないからね!」
立ち上がったウララがそのように戦線布告すると、イブキもまた、ガッツポーズでそれに答えた。
「もちろん!本気でやるよ!勝負だからね!」
その後2人は互いの意志を確認するかのようにバンバンと肩を叩き合い、熱い火花を散らすのだった。
私が2人に提案したのは、単純なタイムアタックである。そのルールは、2人のスタートに5秒の差を置き、ウララを先行、イブキを後追いとしてレースを始め、4秒以内まで差が縮んだ時点でイブキの勝ち、5秒の差を維持しながらコースを2周走りきれたらウララの勝ちとした。もし、1秒以上差を縮められなかったら、勝負なしでもう1周である。
「イブキさん、今は無理に抜こうと考えなくていいわ。とにかく、差を詰めるのよ。それだけを意識して」
「わかりました」
私はホイッスルを吹いた。同時にストップウォッチをスタートさせ、数字を数える。ウララが勢いよく飛び出し、イブキの背中が緊張で固くなるのがわかった。
1
2
3
4
5
6
「Go!」
私はイブキの背中を叩き、2個目のストップウォッチをスタートさせた。イブキが差を詰めようと懸命に走り出す。1秒余計に加算したのだから無理もない。
差は第一コーナーを過ぎても、埋まる気配はなかった。動きが出てきたのは第三コーナーからである。徐々にイブキが距離を縮め、一周目が終わる頃には、ウララに与えられていた1秒のアドバンテージは完全になくなっていた。「さあ、2周目よ!集中集中!」私はコースを行く2人に向い、そう叫んだ。
彼女たちが参加するスプリントレースであれば、1秒という差は致命的だ。展開によっては掲示板にさえ届かなくなるだろう。しかし技術によってその1秒をリカバリー出来るのであれば、イブキの走りの幅は相当に広がる。言い換えるなら、それが自在に出来るのであれば、デビュー以降の闘い方が俄然楽になる。そしてそれが出来ないとなると、たとえ主戦場が地方であったとしても、レーサーとしてはお話にならない。
1秒の加算には理由がある。あえてウララとの距離を広く開ける事で、イブキの抱える「競争」という苦手意識から彼女自身を文字通り遠ざけたのだ。と同時に、「おやおや意外と離されてるぞ」と感じさせる事で、脚の配分の組み立てを改めて意識させ、距離を詰める技術──即ち「加速」「減速」「再加速」のイメージを掴ませる。それ私の狙いだった。
あとは落ち着いてウララの後ろを走る事が出来れば、自ずとウララの欠点、そこに付け入るポイントにも気づく事が出来るだろう。地頭の良さそうな娘だ。それくらいはやり遂げてくれるに違いない。
「お、やってるな。タイムアタックか」
私の隣にテイオーが立っていた。身につけているトレーニングウェアは昨日手に入れたもので、まだ畳皺が残っていた。昨日から買い出しを続けていた彼女は、今日がトレーニング初戦となる。
「おかえり。今日の買い物も上手くいったのかしら」
「ああ、あの商店街は小さいが出来はいいみたいだ。それと、例の蹄鉄も手に入る事になったよ」
例の蹄鉄というのは、政宗マークIIの事だろうか。私もウララからその話を聞いてからというもの、東京都内の在庫とネットをかなり探したが、未だに見つけられずにいたので、私は驚いた。
「よく手に入ったわね?」
「ああ」
テイオーはニカッと笑った。
「やっぱりアイツには運命が味方してるよ。あの蹄鉄な、製造元がここの隣町らしいんだ。そこの倉庫で死蔵品がつい最近になって見つかったらしくてさ。県内のウマ娘競技用品店に卸したそうなんだ。それを今、商店街の店にかき集めて貰ってる。3日後には充分な数が揃うよ」
「それって、どれくらい?」
「ん?わからん。まあ、ウララが学園を卒業するまでは保つだろうさ」
私は思わずテイオーを見た。
「だから......それって、どれくらいなのよ」
朗報だが、流石にやりすぎだ。エアグルーヴに何て言えばいい。経費が降りる訳がない。購買部は買い取ってくれるだろうか。
そのように言おうとした時、2周目の第4コーナーからウララが飛び出して来た。
「おい、来たぞ!」
テイオーが呑気に叫ぶ。私はテイオーの悪行の事は一旦忘れ、ストップウォッチに集中した。ウララの調子は変わりないようで、速いペースでコーナーを回り、最後のストレートで更に脚を使おうとしている。
イブキはどうだろう?テイオーと話したおかげで、少し目を離してしまった。ウララとの差は、果たして縮んだのだろうか。
「へぇ、あの芦毛ちゃん、なかなかやるじゃないか」
テイオーがそう口に出す程、イブキの末脚は冴えを見せていた。ウララとは少し外側のラインを、砂煙を上げながら懸命に追走している。距離は、間隔は、タイムラグはと私は目を凝らしたが、虚を突かれたので目測が追いつかない。数字を見た方が早そうだ。
「テイオー!こっちお願い!イブキの方!」
「任せろ!」
私は慌ててイブキを計測している方のストップウォッチをテイオーに投げ渡した。
「──ッゴール!」
タイムアタックが終わった。ウララが、まるでゴールテープを切るかのように胸を突き出した格好で目の前を通り過ぎる。その後を、更に走り続けるかののような勢いで、イブキが追った。
「どう?」
私はテイオーの前に自分のストップウォッチ、ウララの計測タイムを突き出した。テイオーはそれに顔を近づけ、次にイブキのタイムを覗き込むと、小さく首を傾げた。
「すまない。ハンデを聞き忘れたよ。実際どうなんだ?」
そういえばそうだった。
私はテイオーの手首を返すように掴み取ると、握られたストップウォッチのタイムを見た。
3秒差。
3秒差だ。
「イブキの勝ち!文句なしよ!」
私はゴールの向こう側に立っている2人に向い、そう叫んだ。
「すごいね!イブキちゃん!2人で走っても速く走れたんだよ!よかったね!」
ウララがまるで自分の事のように喜び、一方のイブキはというと、自分が速く走れたという結果が信じられないという様子で、呆然とこちらを見ていた。
「それで、この3秒差ってのは、実際何秒縮んだんだよ?」
「6秒ハンデからの3秒差よ。でも、本人は5秒ハンデだと思っているわ」
「なんだそれ」
「5秒ハンデのはずなのに、目の前には6秒ハンデ分の差が広がっている。それをなんとかしようと、彼女は懸命に挽回を画策したに違いないわ。印象を変えた事によって、イブキは集中力を取り戻したのよ」
「ええとそれは......アレじゃないのか。出来る人理論とは、何か違うのか?」
そう戸惑うテイオーに、私は強く頷いた。
「ええ。今の彼女はね、競争する事自体に苦手意識が生まれていて、自分の速さを活かせないでいたのよ。並走だと必ず負けてしまう。でもね、今、タイムアタックという別の勝負の型はモノに出来た。ステップアップには繋がったはずよ」
私はストップウォッチをリセットすると、2人を呼び寄せた。
「さあ、どんどん次の練習にかかるわよ。ウララとテイオーは、コースの上にパイロンを並べて。次は私たちも走るわよ!」
「よし!ウララ、倉庫はどっちなんだ?」
「あっち!」
倉庫に向かって走っていく2人の背中を見ながら、私はイブキに話しかけた。
「出来たじゃない?」
「はい。えへへ。単独走に近い形だったからかな」
少し謙遜するようにイブキは言った。確かにそれもあるだろう。しかし私はあえてそれを肯定も否定もしなかった。実際には6秒ハンデだった事も、今は伏せた。
「ウララを後ろから見ていて、何か感じた?」
私が尋ねると、イブキは言った。
「うーちゃんはですね、昔からなんですけど、コーナーの処理が上手くないんですよ。特にここみたいな小さなコーナーになると、必ず膨らむんです。だから、自分はそうならないように気をつけた上で、コーナーの抜けがけから少し早めに加速してみました。結果的にうーちゃんの真後ろからはポジションが外にはなりましたけど、これは、よかったですかね?」
イブキの回答は私を満足させた。思った通り、この娘は頭がいい。おそらく勘も鋭いに違いない。だがそれ故に、直感的に捉えている場面で一度躓いてしまうと、原因を追及し、立ち直るまでに時間がかかる。今日までの彼女がそうだったように。だったら、そのきっかけを与えてやればいい。彼女はそれだけで自分から立ち直る事が出来るのだ。
しばらくすると、テイオーとウララが台車に大量のパイロンを乗せて帰ってきたので、私たちは全員でそれらをコース上に点在させた。
「えっと、『とーかんかく』でいいのかな?」
「そうね。一旦均等に置いた後、所々にランダムな感じで足してみて」
「なあ、パイロンの位置は揃えるのか?同一円周上じゃなくてもいいよな?」
「ええ。その辺はラフでいいわよ」
ほぼ全てのパイロンを使い、私たちは新しい練習コースを作り上げた。
さあ。
ここからが今日の本番である。
「次にやるのは『追い抜き走』よ」
準備を終えた私たちは、涼を取るために一旦木陰に下がり、今から私がやろうとしているトレーニング方法について、2人とテイオーに話した。
「追い抜き走は、知ってるわよね」
「一列に並んで走って、一番後ろの人がスピードを上げながら一番前の人を追い抜くっていう、アレですよね?」
私の問いかけに、イブキが100点の答えを出した。
「今回はそれに、スラロームを加えていくわ」
「どんな風やるの?」
「まずはテイオー、ウララ、イブキ、私の順で一列縦隊を作るわ。そして私のホイッスルの合図で追い抜きをかけていくけど、前走者との間にパイロンがある場合、パイロンと前走者との間をスラロームしてクリアするの。その繰り返しで4周を目指す。いいわね?」
その内容を聞いたテイオーが、腕組みをしながら言った。
「けっこう進路の予測がキツそうだな。パイロンは等間隔じゃないし、前走者は移動し続ける訳だろ?」
「そこを瞬間的に掴むことが出来るかどうか。そこがこのトレーニングのキモね」
私は続けた。
「そして、皆に意識してもらいたいのは、スラロームの時に『追い抜く!』と口に出す事。これは忘れないで。その相手が前走者パイロンであっても、必ず言うように」
すると全員が、頭の上に疑問符を浮かべた。私はそれに苛立ち、喝を入れる。
「返事!」
「はいっ!」
真っ先に返事をしたのはウララだった。
「なんか、面白そう!言ってみるし、やってみるよ!」
そして両肘を曲げ、力こぶをアピールする。顔は自信満々だ。
それを見たテイオーが、やれやれといった様子で首を振った。
「その自信はどこからくるんだよ」
「うーちゃんは、いつだって相変わらずだね」
イブキも笑い、ウララも笑った。いつの間にか、私たちは4人で笑い合っていた。
そしてもう一度身体をほぐし、木陰から出る。
「じゃあ、開始!」
かくして始まった追い抜き走スラロームだが、実はこの内容は、私の現役時代に私のトレーナーから教えてもらったものだ。当時の私は、放課後や昼休みになると、チームメイトたちやクラスメイトたちと列を作り、毎日グランドを駆け回ったものである。だが今日になっていざ走り出してみると、そんな懐かしさよりも、この練習の難しさを久しぶりに思い知らされた。
「うわ、うわ!うわわ!」
「ウララ!掛け声!忘れないで!」
「えぇっ!?お、追い抜くおいぬくー!」
走行と同じスピードで近づいてくるパイロンと、やもすれば遠ざかる前走者を、同様かつ同時に判断するには、コース取りとテンポコントロールの技術とセンス、そして相当の集中力が必要となる。私は各々にアドバイスを繰り返しながら走っているのだが、私自身の走りにも充分意識していないと、たちまちモタついてしまいそうで、序盤は酷く緊張してしまった。
「最短距離に囚われ過ぎないで。それが常に正解とは限らないわよ!一つ一つを見るのも大事だけど、全体を一つの物として見るのもアリだからね!やりやすい方を試して!次、テイオー!」
私はホイッスルを鳴らす。テイオーはすぐさま反応し、私の後で足音が加速していった。
「追い抜く!追い抜く追い抜く追い抜く!オラァ!」
私の左を掠めるようにテイオーが前に回ると、力強いサイドステップで進路をすぐさま逆にとった。続け様に2つのパイロンをクリアし、尚も加速を続け、イブキを抜きさった。流石はG1レーサー、といったところか。
「いい?パイロンはただの障害物じゃないの。仮想敵で、対戦相手なのよ!追い抜く気持ちを自分自身に意識させるの!いいわね!」
私の番だ。自らホイッスルを鳴らし、前へと踏み込んだ。
パイロン、イブキ、パイロン、パイロン、ウララ......そしてテイオー。
私は全員を滑らかにクリアする事に成功した。
「は、速い!?」
遠く後ろからウララが驚く声がする。私は少しだけ振り返りながら、言った。
「上手くクリアするコツはね、トップスピードで走る事よ!そうすればパイロンの数が減らせるわ。難しいと思うかもしれないけど、逆にそうする事で難易度が下がるの!やってみなさい!次、イブキ!」
「はいっ!追い抜く、追い抜く!」
遠くからイブキの足音が近づいてくる。しかし、それは少し重く、リズムも悪かった。細かいペースコントロールを身につける必要があるようだ。
(......?)
その時、背後の足音が突如乱れたかと思うと、その直後にイブキとウララの声が飛び交った。接触でもしたのかなと思っていると、ようやく目の前に姿を現したイブキが、案の定、困ったような表情で首を後ろに回してきた。
「すみません!パイロン蹴飛ばして倒しちゃいました!どうしましょう!?」
私は答えた。
「三個までは放っておきなさい!でも、四個目になったら即中止するからね!周回も最初からやり直しよ!」
真夏の空に3本の悲鳴が舞い上がった。私は尚も喝を入れる。
「それを攻略したかったら!トップスピードと集中力!みんな、気合い入れて!次、ウララ!」
「よーし!ウラ!ウラウラ!ウララララー!」
「ちょっと!掛け声が違うわよ!」
「ウララー!追い抜いたー!」
4人の掛け声が響き、その所々に笑い声が混ざって、グランドを埋めた。
結局、その掛け声は夕暮れまで続いた。
未勝利戦は、三日後である。