病院薬剤師が語るアンサングシンデレラの舞台裏(第8巻)
皆さん、こんにちわ。病院薬剤師だまさんと申します。
本ブログ(note)にアクセスしていただき、ありがとうございます。
このコンテンツは月刊コミックゼノンで連載中の「アンサングシンデレラ 病院薬剤師葵みどり」を10倍楽しむためのブログです。
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Rp.33 学校へ行こう!~学校薬剤師・葵みどり~
今回の舞台は小学校、テーマは学校薬剤師です。
唐突に感じられたかもしれませんが、ちゃんと過去に伏線がありました。
みどりは密かに学校薬剤師に憧れていて、「子供や若者に薬剤師を身近に感じてもらう布教活動をする」という目標を掲げていたのです。
※経緯については下記の記事をご覧ください。
正直な話、病院薬剤師にとって学校薬剤師との接点はほとんどありません。
中高生が病院見学に訪れた際、業務内容を説明することはありますが、こちらから学校に赴く機会は、薬理学(看護科)の講義以外ありません。
私自身、「学校薬剤師は一部の薬局薬剤師の仕事」という認識でした。
あ・・・今思い出しました。
実は私、学生時代には環境衛生学教室に所属してまして、環境衛生の仕事を目指していた時期もありました(そんな大事なこと、何で忘れんねん)。
まあ、紆余曲折あって最終的には病院薬剤師となりましたが、環境衛生の維持・管理も立派な薬剤師の役割なのです。
業務内容は丁寧に描かれているので触れません(第一補足できないし)。
ただ、アンサングな病院薬剤師よりも更に数段地味な学校薬剤師の仕事にみどりが惹かれた理由には補足が必要かもしれません。
数々の患者との出逢いから、病院薬剤師という職業の認知度の低さを痛感したみどりは、学校教育に関わる(布教)ことを思いついたのです。
・・・と言っているそばから、頻繁に鼻血が抜ける生徒が保健室に護送されて来ました。
さあ、次回は病院薬剤師・みどりの腕の見せ所です。
今回の舞台裏は「学校薬剤師のルーツ」です。
校医はともかく、学校薬剤師は学校と結びつかないかもしれませんが、きっちりと法律(学校保健安全法)で設置が義務付けられています。
学校薬剤師制度が始まったのは、医薬品管理体制の不備によるある痛ましい事故がきっかけでした・・・。
また、学習指導要領の改訂に伴い、2012(平成24)年度から中学校保健体育で「医薬品の正しい使い方」の学習が組み込まれました。
学校薬剤師は危険ドラッグや違法薬物乱用などの防止活動も行っています。
今回はここまで。
再度訪れた本作フィナーレの危機(既にネタ切れなん?)。
病院薬剤師の経験を活かしつつ、学校薬剤師に転身していく流れとなっていくのでしょうか?
今後の展開に目が離せません。
Rp.34 ゼリーの秘密~出血の原因~
結局「学校薬剤師編」は1話完結となり(納得)、舞台は萬津総合病院へ。
頻繁な鼻血と広範な内出血、しかし血友病は否定的。
原因不明の出血傾向にみどりは首を傾げます。
入院後も一向に安定しない検査値(PT-INR)・・・。
そんな中、父親が燈真に持参した「手作りのゼリー」にみどりのアンテナ(感性)が反応します。
「少し気になることが・・・」
みどりのたどり着いた仮説、皆さんは一体何だと推測しますか?
今回の舞台裏は「出血の原因」です。
出血の原因は我々の想像以上に多岐に渡ります。
しかし、これらはいずれも局所性の出血です。
今回のように全身性、しかも小児の出血の場合、真っ先に疑うのは下記のような疾患です。
しかし、検査結果から紫斑病や血友病は否定され、ビタミンK剤(カチーフN)を服用しても検査値は改善しませんでした。
となれば、小児では通常あり得ない(!?)原因がここで急浮上してきます。
そう、抗血栓薬(血をサラサラにする薬)の服用です。
今回はここまで。
次回、事態はまさかの急展開に唖然!
Rp.35 仮面を被った児童虐待~小さなことでも疑え~
燈真の出血傾向は、あろうことか父親手作りのゼリーに混入された抗血栓薬が原因でした。
みどりの申し出がなければ、あのまま見過ごされていたか、著しく発見が遅れ、燈真はただでは済まなかったかもしれません。
いかがですか?
今回はレアケースかもですが、薬剤師にもできることありますよね?ね?
いつもは「おちゃらけ」ている久保山先生の指示は的確でした。
加えてみどりは、おやつの味について燈真への聞き取りを提案します。
これに関する看護師(ゴメン、誰だっけ?)の解説も有料級(!?)でした。
なるほど、聞き取りとはいえ、本人から自発的に話してもらえる雰囲気作りの方が大切なんですね。
それからこの言葉も。
現場にいないと言えないことです。
あと、せっせと血液さらさらゼリーを作っては味見するみどり。
現場にいないとできないことです(←何構文?笑)。
今回の舞台裏は「児童虐待」です。
作中でも様々な虐待のパターンが紹介されていました。
今回の代理ミュンヒハウゼン症候群はレアケースではあるものの、「医療者とつながること」「医療者を出し抜くこと」が目的化する性質があるため、医療者がきちんと介入しなければ不幸な結果を招いてしまいます。
最後に流れたこのナレーション
18歳未満の推計人口は約1900万人(2016年度データより)。
実に100人に1人が虐待を受けている計算となります。
※重複もあるでしょうがカウントされない事例もあるでしょう。
「小さなことでも疑え」
これは小児に関わる医療従事者が持つべき共通認識のようです。
今回はここまで。
次回はいよいよ「学会編」。
みどりがお祭り騒ぎです(!?)。
Rp.36 学会に行こう!~学会を10倍楽しむ方法~
まだ学会に参加したことのない方のためにこんなタイトルにしてみました。
今回はまず「桃李の蹊(とうりのみち)」という謎タイトルの意味から。
これは諺(ことわざ)の一種ですね。
そう、学会は普段会うことのない薬剤師と出会える貴重な場なんですよね。
近年はコロナ禍のため会場に足を運ぶこともなくなってしまって・・・。
※今回の舞台裏はお休みします。
今回はここまで。
次回はグローバル化する薬剤師業務にみどりが奮闘します。
Rp.37 Apoteker みどり~インドネシアから来た家族~
作中でも登場しますが、Apotekerとはインドネシア語で薬剤師の意味です。
薬剤師とて外国人の患者を担当することは十分にあり得ますよね。
・・・と、どこか他人事のように書いてしまいましたが、仕方ないんです。
私の住んでいる所は、全国で2番目に外国人が少ない県(1位は秋田)。
薬剤師歴30年超の私でも数える位しか担当したことがありません。
今回はイスラム教徒ということで気を遣うポイントが盛り沢山でした。
度々見舞いに訪れ、絆の深そうな家族でしたが・・・あれ?
それぞれに隠し事があるみたいですね。
そして、息子を心配しつつ、ワユニは倒れてしまうのでした。
今回の舞台裏は「外国人に対する服薬指導」です。
もし私が外国人の患者を担当することになったら、上記のような本や英語版「くすりのしおり」を活用することでしょう。
※あとスマホに替えたら(←まだ替えとらんのっ)、みどりのようにアプリも使うかもしれません。
ただ、私が最も印象に残っている外国人患者は中国人の結核患者でした。
だいぶ前(四半世紀以上前!)の話ですから、スマホはおろかインターネットもない時代、自前で中国語辞典を購入して勉強しました。
小学校の頃にハマッていたBCL(短波による国際放送を受信して楽しむ趣味)で聴いていた「自由中国の声」(現在の台湾国際放送)の中国語学習講座の記憶をたどりながら発音の練習もしました。
すると、何という幸運でしょう。
当時のボスが日中友好協会に知り合いがいて通訳を依頼してくれたのです。
更に日本語が堪能な大学生の娘さんも同席してくれることとなりました。
一発勝負の服薬指導となりましたが、通訳の方と娘さんのお陰で、予定以上にきめ細かい説明をすることができたのでした。
説明終了後、患者さんの感情が一気に噴出しました。
言葉が通じない異国の地で罹ってしまった重病。
家族とも離れ、孤独な長期療養がよほど堪えていたのでしょう。
一時期は捨て鉢になっていたことまで打ち明けてくれました。
その方は無事退院され、薬局の窓口で明るい笑顔でお礼を言ってくれた時はこちらもジワッと来てしまいました。
「ヤオチーシー(薬剤師の意)」、私の好きな言葉です(笑)。
今回はここまで。
次回ではワユニが病気を隠した事情が明らかとなります。
Rp.38 寄り添う気持ち~心の壁をなくす方法~
さて、「外国人患者編」も後編になります。
勝手な「思い込み」がトラブルを生むことはよくあることです。
今回の作品で言えば・・・
しかし、実は寄り添う気持ちがあれば、「なぁんだそうなんだ」と思えることの方が圧倒的に多いのだと思います。
みどりもサリからイスムラ教徒の暮らしぶりを学んだことで、目から幾つも(!?)鱗が落ちたに違いありません。
これは外国人に限ったことではなく、どの患者にも言えることですよね?
最終的には、親身に向き合ってくれた医療スタッフへの信頼感とファジャルの懇願が決め手となり、ワユニは婦人科受診を決断したのでした。
しかも入院中はみどりが担当するみたいですね(便利やなぁ)。
今回の舞台裏は「海外の薬の調べ方」です。
薬剤師にとって持参薬鑑別(入院時に患者が持ち込んだ薬の内容を調べること)は日常茶飯事の業務ですが、ごく希に海外の薬の鑑別依頼が飛び込むことがあり・・・大慌てします(そりゃそうだ)。
これまた四半世紀以上の話になりますが(老齢なのですんません)、米国人の男性が数種類の薬を持参され、鑑別に挑んだことがありました。
インターネット普及前の時代。
頼みの綱はDI室の本棚で埃をかぶっていたPDR(Physician's Desk Reference;米国医師用卓上参考書)だけでした。
幸い冒頭にカラー写真も掲載されていたため、鑑別はすぐに完了しました。
なお、PDRは現在はネット上でも閲覧可能(無料)です。
第8巻はここまで。
これ以降は、このブログ共々「第9巻」へと移ります。
病院薬剤師って素晴らしい!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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