#0.DI業務は「瀕死」の状態!?
(このブログは2024年8月13日に更新しました)
メンバーシップ立ち上げにあたって
私は昨年(2023年)個人事業「医薬品集制作の大学堂」を開業しています。
弊社は、クラウドサービスkintone(サイボウズ社)を用いた院内医薬品集(フォーミュラリー4.0)のメンテナンス作業に特化した代行業者です。
薬剤師のための情報インフラであるフォーミュラリー4.0を広めることで、薬剤師不足に喘ぐ近隣施設を支援することが弊社の目標です。
ただ、弊社には大々的に広告を打つ経済力などなく、持てる武器としては薬剤師人生の半分以上を捧げたDI業務に関する知見と経験、そして20年超に及ぶブロガーとしての文章力くらいしかありません(贅沢?)。
今回、noteクリエイターサポートさんより後押しをいただいたこともあり、さる5/30にメンバーシップ「薬剤師力を飛躍的に伸ばす!メタ知識道場」を開設しました。
本稿では、本道場(!?)を開くにあたり、入門者にまず知っておいていただきたい予備知識を紹介していきます。
時代遅れの医療業界
薬剤師業務に医薬品情報が欠かせないことに異存はないと思います。
なぜなら情報(=使用法)次第で薬は「毒」にもなる得るからです。
「適正な使用法に則って薬が使用されていることを監視する」
これこそが我々薬剤師にとって最も重要なミッションの一つ。
そもそも医薬品情報が絡まない薬剤師業務は存在しないのですから。
ただ、時代のトレンド(IT・AI・DX・Web4.0(メタバース)など)に照らして、DI業務(医薬品情報業務)が進歩しているとは思えません。
試しにNバクさんの次の動画をご覧になってみてください。
「ゆとり世代」の量産化
むしろ、現行のDI業務は「瀕死の状態」と言っても過言ではありません。
その原因は、システム整備の遅れだけでなく薬剤師の側にもあります。
そのことは、次の事実を知れば納得できる筈です。
いやいや、わずか6年で説明のつく問題ではないかもしれません。
私は前の職場で10年以上DI実習を担当してきたのですが、実習生に「大学でDI業務は習った?」とたずねても誰一人手が挙がりませんでした。
コアカリからDI業務が削除された主因は「教え手の不足」とも漏れ聞きます(生成AIに質問してもそう答えます)。
しかし、薬剤師業務の基盤であるDI業務がたったそれだけの理由で抹消されるなんて、どう考えても無茶な話です(急遽復活したのもその証?)。
結果として薬科大学は「ゆとり世代」を大量に世に輩出してしまいました。
コアカリ削除の「後遺症」
一度、近年の学会発表や原著論文を注意深く眺めてみてください。
DI業務に関する研究・発表が以前に比べ激減していることがわかります。
例えば、2023年に開催された第62回日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会 中国四国支部学術大会において、DI業務に関する一般演題はたったの3題(うち2題は私の演題ww)しかありませんでした。
DI業務に対する興味の低下がうかがわれますが、それも無理からぬこと。
何しろ受けるべき「教育」を受けていないのですから。
「だって習ってもないのに、DI業務に興味が持てる筈ないでしょ!」
そう反論する若手に、我々はどんな言葉を掛ければよいのでしょうか?
医療現場が苦境に陥るとも知らず、文科省は罪深いことをしたものです。
3次資料の乱立という「有難迷惑」
DI業務のコアカリ削除に伴い、急増したのが「3次資料」です。
文科省は「3次資料があればDI業務を教育しなくても大丈夫」とでも考えたのでしょうか?(安直過ぎます)
果たして現場の薬剤師は「三重苦」に喘ぐこととなります。
3番目の「読みたがらない」はともかく、1番目の「知らない」は教育、2番目の「たどり着けない」は情報アクセスの不備が元凶です。
厚労省はメーカーに3次資料の作成を指示しただけで、教育や情報アクセスの問題は全て医療現場に丸投げしたのです(ひどい話です)。
肝心の資料が活用できなければ、最初から存在していないのも同然。
DI歴の長い私からすれば、ホント有難迷惑な話です。
DI教育の打ち切り後に起きたこと
もう少し詳細を述べておきましょう。
文科省がコアカリからDI業務を削除したのとほぼ同時期に、厚労省は製薬メーカーに大量の3次資料の作成を指示し始めました。
すると新たな業務が急増し、医療現場は混乱に陥りました。
当初は目新しさや緊張感から精力的だった我々でしたが、際限なく積み上がっていく資料の山に直面し、ある重要な認識に至りました。
「こんな複雑なDI業務は、組織的に対応しなければ成り立たない」
※これを痛感したのは、新型コロナウイルス感染症治療薬の導入時でした。
ただ、それが容易に実現できるのは薬剤師が豊富にいる施設だけの話。
一人で何役もこなさねばならない施設では業務の属人化は回避不能です。
何しろ中堅以下は「ゆとり世代」で形成されているのですから。
唐突なDI教育の打ち切りと3次資料の急増は切実な問題となったのです。
「ゆとり世代」を救う唯一の手立て
「ゆとり世代」にDI業務を委ねるにはどうすればいいのでしょうか?
私の考えるアクションプランは至ってシンプルです。
ついに本道場のテーマ「メタ知識」というワードが登場しました(^^♪
DI業務を一切学んで来なかった(もとい、学びたくとも教えてもらえなかった)「ゆとり世代」の薬剤師を救う唯一のカギがこれです。
「メタ知識」は勉強を通じて習得できる場合もありますが、さほど効率が良いとは言えず、むしろ「成功体験」を通して身に付けるべきスキルです。
例えば、皆さんが「粉砕ハンドブック」や「注射薬配合変化表」を初めて利用した時の記憶を思い出してください。
きっとそんな風に感じた筈です。
ここまで来れば皆さんは次のようにレベルアップしています。
この状態が「メタ知識を習得した」という境地です。
ね、勉強とは別次元の話ですよね?
でも、全然難しい話ではありません。
「ゆとり世代」でも「メタ知識」ならば楽に習得できそうです。
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薬剤師向けの情報インフラは存在しない!?
「薬剤師向けの情報インフラがない」というのは本当の話でしょうか?
本道場のテーマからは外れますが、もう一つのアクションプラン「情報インフラの整備」も大切なことなので少し触れておきます。
DI業務における基本的な情報源が添付文書やインタビューフォームであることは異論のないところだと思います。
しかし、これらの資料だけでは業務を完結させることができないということを、我々は多くの場面で実感している筈です。
なぜなら、添付文書やインタビューフォームは「薬剤師による情報補完」を前提に作られているからです(記載要領にもそう書かれています)。
従って、我々薬剤師はこれらの資料以外からも情報を得なければなりませんが、いざそう考えると、薬剤師業務に特化した情報網が極めて貧弱であることに気づかされます。
薬剤師向けの医薬品集も情報インフラもありません(全て医師向けです)。
厚労省からすれば、そのための解決策が3次資料だと言いたいのでしょうが、薬剤師に寄り添ったアクセスの便は図られていません。
※その理由は話すと長くなるので、また別の機会で。
「メタ知識×情報インフラ」が薬剤師を救う
残念なことですが、薬剤師界隈で「メタ知識を育もう」とか「薬剤師のための情報インフラを整備しよう」という機運はあまり感じられません。
もしこのまま放置すれば、どのような未来が待ち受けているのでしょうか?
「AIが全て解決してくれる」
それはそれで正解なのかもしれませんが、多分その頃には薬剤師はお払い箱になっていると私は思います。
今しているのは「薬剤師はそれまでどうするか?」という話です。
薬剤師が生き残るには、「強さ」(政治力)でもなく、「賢さ」(勉強)でもなく、自らの意思で「変化」するほかありません。
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3通りの未来
最後に皆さんを3通りの未来をご紹介して、今回の話を締めます。
1.「メタ知識」も「情報インフラ」もない未来
→ 薬剤師業務の基盤が弱いため、チーム医療への貢献度が低下
2.「メタ知識」はあるが「情報インフラ」はない未来
→ 薬剤師個々のスキルは強化されるも、全体としての力量は不安定
3.「メタ知識」も「情報インフラ」もある未来
→ スペシャリストとジェネラリストの協働で、持続可能な業務提供を実現
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何が何でも、まず「メタ知識」の習得から!
・・・という訳で、次回から「メタ知識」の鬼修行(!?)が始まります。
以下にメンバーシップの概要を記します。
今後の配信スケジュールは次のようなイメージです。
今回の記事を繰り返して読んでから、颯爽と門をくぐってください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
病院薬剤師って素晴らしい!(←メインブログのタイトルです)
ではまた次回にお目にかかりましょう。
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