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病院薬剤師が語るアンサングシンデレラの舞台裏(第10巻)
皆さん、こんにちわ。病院薬剤師だまさんと申します。
本ブログ(note)にアクセスしていただき、ありがとうございます。
このコンテンツは月刊コミックゼノンで連載中の「アンサングシンデレラ 病院薬剤師葵みどり」を10倍楽しむためのブログです。
最新刊(10巻)が絶賛予約受付中です。
Rp.44 薬剤師にできること・薬剤師だからできること~特殊な取り扱いを要する薬~
(あらすじ)
柳夫妻の胎児が子宮内で死亡していると聞かされた室井は、厳しい現実を受け止めきれずにいた。一方、丸井は「素の自分」で接することで飯島の抱える問題を解決へと導いていく。
さて、「実習編」もいよいよ佳境です。
序盤は楽勝だと思っていた産科病棟での実習中の室井。
ところが知人夫婦の不幸(子宮内胎児死亡)に遭遇してしまったのです。
こんなときどうすればいいか教わっていない
心の中でそうつぶやく室井。
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・・・その答え、私にはわかります。
そう、それは患者さんから学ぶしかないのです。
これこそが、患者さんから逃げてはいけない理由でもあります。
医療の場は決してハッピーエンドばかりではありません。
私も柳夫妻と同じく子宮内胎児死亡で人工流産予定のカップルに薬の説明をしたことがありますが、最初はふざけ合って笑っていた二人が説明を聞くうちにみるみる表情が強張っていった様子が今も忘れられません。
一方、丸川は「プライスレスな出逢い」に恵まれましたね。
日に日に弱気になっていく飯島を見た丸川の心の中に「何とかしたい」という気持ちが芽生えたのです。
飯島さんが早く仕事に復帰できるよう
私にも手伝えることがあるかもしれない
だから自分から動かなくちゃて思えて・・・!
丸川の言葉に心打たれた飯島もまた隠していた心の内を明かします。
そんな時、丸川にある気づきが!
さあ、そこから先は以前ご紹介した「3つの資質」の発動です。
・目眩やだるさの原因に注目し続ける「感性」
・文献やサプリメントの成分を調べて裏付けを取る「知性」
・飯島に仕事を続けてもらうために粘る「根性」
サプリの成分から飯島が更年期障害であることを突き止めたのです。
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これは薬剤師にしかできなかったこと、お手柄です。
まるで初期のみどりを見ているようですよね。
その境地(!?)に実習生の身で、しかも独力でたどり着けた丸川って凄い!
剣持おじさんの温かい眼差しがそれを裏付けています。
※この物語はフィクションです(←言うな)。なお、意味不明だった方は「Rp.3 AIにできない仕事 ~感性と知性と根性と~」をご覧ください。
今回の「舞台裏」は「特殊な取り扱いを要する薬」です。
今回登場したプレグランディン膣坐剤のように扱いが特殊な薬。
その数は年々膨らみ続けているのです。
そう、もはや薬剤師でも覚え切れぬ程に(おいおい)。
一例を挙げるとこんな感じ。
・ボトックス(ペイン・泌尿器科領域で使用。猛毒なので失活処理が必須)
・コンサータ(AD/HD治療薬。依存性があり厳密な管理が必要)
・レブラミド(血液疾患の治療薬。催奇形性があり残薬確認が義務付け)
そんなややこしい薬、私が薬剤師になった頃は麻薬くらいでした。
医学の進歩の裏では、バックヤードがどんどん複雑化していることをこの機会に皆さんにも知っていただきたいものです。
複雑なプログラムが支えているIT技術もよく似ています。
やるせない気持ちを持て余す室井は患者対応でも精彩を欠き、みどりと衝突することとなります。
自分がわからないからって、行動しないのは逃げだよ
この言葉が決定打となり、次の日から室井は病院に来なくなるのでした。
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今回はここまで。
次回(Rp.45)は「実習編」がまさかの急展開です(笑)。
Rp.45 みどりの年越しドタバタ当直回~アセトアミノフェンとて薬は薬~
(あらすじ)
突如音信不通となった室井。心配するみどりたちだったが、年末年始を迎え実務実習はいったん中断となった。大晦日の当直を担当することとなったみどりだったが、そこは主人公の宿命。ただでは済む筈もなかった・・・。
無事教育入院を終えた飯島を送り出した丸川に対し、室井はみどりと衝突した「あの日」以降、実習に来なくなってしまいました。
しかし、気がつけば年の瀬。
「室井問題」は年明けまで持ち越されることとなりました。
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ん~、今回で「実習編」は完結と思いきや、そう来たか(笑)。
作者の荒井ママレ先生も「第48話=みどりの年越しドタバタ当直回」とツイートしてて、変だなと思ってたんだけど、そっか~。
コミックゼノン9月号発売中です。アンサングシンデレラ48話も掲載されております🌽
— 荒井ママレ💊9巻発売中 (@ma_ma_re) July 25, 2022
暑い日が続いてますが作中では大晦日を迎えまして、みどりの年越しドタバタ当直回となっております。
よろしくお願いいたします〜 pic.twitter.com/XyhvxPdwom
確かにドタバタですが、年末は空いてる病院が少ないこともあり、どこもこんな感じですねぇ(ちょっと投げやり)。
まあ、初めてご覧になる分には新鮮かもしれませぬ(こらこら)。
私自身、年越し当直は32年間の薬剤師人生の中でニ度経験しています。
一度目は昔過ぎてあまり覚えていませんが、平和だった記憶があります。
二度目は紅白で「DJ OZMA事件」が起きたアゲアゲ日でした(爆)。
今回の「舞台裏」は「アセトアミノフェン」です。
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アセトアミノフェンは、コロナウイルス感染症やコロナウイルスワクチン接種後の発熱の治療薬として一躍脚光を浴びた薬です。
数多くの市販の解熱鎮痛薬や風邪薬に配合されており、小児・妊婦・授乳婦にも使用でき、空腹時の服用も可能(胃薬不要)。
よって「安全な薬」の代表格として語られることの多い薬です。
しかし、完璧に安全な薬など存在しません。
入手しやすい分、過量服用もされやすく、中毒量(150mg/kg;成人で約7.5g)を超えるとアセトアミノフェン中毒をきたします。
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作中で登場した「アセチルシステイン」(商品名:アセチルシステイン内用液17.6%「あゆみ」)はアセトアミノフェン中毒の解毒剤として有名な薬。
瀬野の弟子であるみどりがこの時期まで知らなかった筈がない(・・・とツッコミを入れる私は嫌なヤツ)。
ちなみに、当院ではこの期に及んでも同成分の「ムコフィリン吸入液20%」で代用してます(他人のこと言えんやんか)。
※「これじゃいかん」と、昨年めでたく採用されました(^^♪
あ、SNSでも話題になりましたが、「カロナール」は後発品ですからね!
「なら先発品は?」という質問は愚問です(発売されてません)。
もっと言えば、来年の今頃、カロナールは後発品ですらなくなっているかもしれませんよ(詳しくは長くなるので別の機会に)
市販薬では「タイレノール」、海外では「パラセタモール」が有名ですね。
年の瀬を共に戦い抜いた看護師(豊中・大河内)との絆を深めたみどり。
豊中の機転で、無事年越しそばにもありつけたのでした。
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めでたし、めでたし。
今回はここまで。
次回(Rp.46)は「実習編」がついに完結?室井の兄が登場します。
Rp.46 医療者としての歩み~姿勢と技術と行動と覚悟と~
(あらすじ)
実家で兄・冬唯と邂逅した室井。兄に憧れて医師を目指すに至った経緯を回想し、初心に戻った室井は医療者としての再スタートを切るのだった。
全6話に渡る「実習編」もこれで完結(…なのかな?)。
塩見夫婦の一件がもとで「闇落ち」していた室井は、医師を目指すきっかけとなった兄との対話で我に帰ることができました。
にしても・・・いやぁ、お兄ちゃんの人格、すんばらすぃわ(そこ?)。
適度に抜けてて合理的で逞しくて、こういう心持ちなら競争にも強い筈。
弟が憧れ、そして僻む理由もよく理解できました(見事な伏線回収!?)。
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久々に萬津病院に顔を出した室井。
刈谷と瀬野に別室に連れ込まれ(←言い方!)、「実習の目的」について相互に確認し合うのでした。
刈谷と瀬野の見解
・【目的1】薬剤師の仕事を経験してもらうため▶薬剤師の要請
・【目的2】日程をこなすため▶病院や薬局の理解
室井の見解
・薬剤師の仕事に向き合うため▶自分と向き合うため
刈谷「未来につなげる機会だと思って取り組んでいます」
瀬野「そもそも学生がなんか役に立つと期待していないしさ」
心残りだった塩見夫妻にも謝罪し、新たな一歩を踏み出した室井でした。
今回の「舞台裏」は「薬への不安」です。
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今回のエピソードで個人的に注目したシーンがありました。
それは、みどりと室井が謝罪のため塩見夫妻宅を訪れた時のこと。
亮太の妻・晶子が睡眠導入剤マイスリーが死産の原因だったのではないかと後悔して号泣するシーンがそれです。
周りがどんなに「(マイスリーは)無関係だ」と説いたとしても、失った命が帰って来る訳でもなく、恐らくトラウマになってしまうことでしょう。
本人の心情としては仕方がないことであり、みどりが助言した通り、当面は本人の心と体を最優先に考えるしかありません。
その後、みどりはこう続けました。
「薬についての不安はこれから一緒に取り除きましょう」
突然ですが質問です(←久しぶりですなぁ)。
この後みどりはどうやって晶子の不安を取り除くつもりなのでしょうか?
なぐさめ?ねぎらい?でも、それは薬剤師でなくてもできることです。
そう、エビデンスを示すことなのです。
もちろん妊婦に対する薬の安全性に関する情報量は少なく、それを収集する労力は並大抵のものではないでしょう。
それでも患者のために精一杯「根性」を発揮する。
ほら、薬剤師の資質は「感性・知性・根性」だったでしょ?(第1巻参照)
蛇足になるかもですが、念のために申し上げておきます。
・世の中には「人知」の及ばぬことがある(YES)
・人間には「真理」を欲する本能がある(YES)
・そのギャップを「宗教」が埋めることがある(YES)
いきなり「宗教」という言葉が登場して驚かれたかもしれません。
「生と死」「運命」「未来」など、人生にはわからないことばかり。
かと言って「わからないから」のひと言で済ませられないのが人間。
だからこそ人は信仰をするのだし、その自由も法律で認められています。
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しかし、宗教はしばしば現実社会とバッティングすることがあります。
その例が第6巻で描写された「反ワクチン」であり、件の某教会です。
もちろん支持するしないは個人の自由ですが、薬剤師を名乗る以上、エビデンスに基づいた行動と発言を心掛けねばなりません。
「したり顔」で無闇に人を導くことは無責任で傲慢な行為というものです。
「悪用」「洗脳」と呼ばれても仕方がないと私は考えます。
Rp.48 お薬が不足しています~供給不足を招くメカニズム~
(あらすじ)
製薬工場の火災に端を発した医薬品供給不足の対応に追われる萬津総合病院薬剤部。情報発信が後手後手に回っている現状に業を煮やした羽倉はDI室のヘルプを薬剤部長に直訴するのだった。
き、記念すべき神回です(私には、ですが・・・)。
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連載開始から51回目にしてようやくDI業務に脚光が当たりました。
※むしろ「引きずり出された」という表現が適切かもしれません。
この感動をそのまま文字にすると1万字位書きそうな勢い(←読者が逃げてまうわ!)なので、ひとまず抑えて先に進みます(笑)。
さて、医薬品の供給不足の話、読者の皆さんはどの程度ご承知でしょうか?
マスコミでも時々は取り上げられますが、医療現場ではず~とこんな感じ。
「良くも悪くもなっていない(やや悪?)」という肌感覚です。
まあ、それは私の勤務先が県屈指の基幹病院だから言えることで、他の病院や保険薬局はもっともっと酷い状況かもしれません。
≪作中で描写されている状況≫
・他社製品への変更
・別規格への変更
・日数制限
・同効薬への変更
・先発品への変更
・患者への説明・説得 ・・・などが必要に!
みどりも嘆いているように、在庫の確保や代替薬の調達、処方医や患者への説明、保険薬局とのやり取りなど、薬剤師の業務負担は激増しました。
これらは、本来ならば一切やる必要のない業務ですものね(はぁ~)。
医薬品の供給不足はどうして生じてしまったのでしょう?
今回の場合は製薬工場の火災というアクシデントでしたが、「火種」はそれ以外にも沢山あります。
≪作中で紹介されている要因≫
・感染症などの流行による特定の薬の大量消費
・事故や天災
・製薬メーカーの不祥事
・原薬の海外依存 など
以前私が書き下ろしたショート記事もご紹介しておきますね。
くるみ「薬の供給不足って、薬剤師がどうにかできる問題じゃないのに」
ここで声を大にしたのが、今回の主人公ハク(羽倉)でした。
ハク「そう、国の問題です」
詳しくは作中のハクを解説を読んでいただくとして、私からは以下の「寸劇」をご披露しようと思います。
国「医療費削減だ。どんどん薬価を下げるぞ。おい、ジェネリックメーカー、後押しするから先発メーカーのシェアを奪え!」
ジェネリックメーカー「は~い、頑張ります」
医療施設「おい、ジェネリック買ってやるから値引きしろ」
ジェネリックメーカー「は~い、何とか頑張ります」
***ただ、分子標的薬の台頭に加え、海外から黒船(超高額医薬品)が次々と襲来し、医療費高騰に拍車が掛かったのでした。
国「おい、もっと薬価を下げるぞ」
ジェネリックメーカー「もう限界です。製造中止するしかありません」
国「値引きする余力があるくせに、そんな言い訳は通らんぞ」
ジェネリックメーカー「ふへ~、そんな~」
***かくして追い詰められたジェネリックメーカーは、粗悪な海外の原薬に手を出したり、製造工程で不正を働いたりと破滅の道を歩むのでした。
結局、外部環境の変化や企業努力の限界を見極められず、対策が後手に回った国の政策に問題あり、という訳です(あくまで個人の意見です)。
今回の「舞台裏」は「DI業務が重要視されない理由」です。
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ふう~、お待たせしました(←誰も待ってない?)。
「なぜアンサングシンデレラはDI業務を取り上げないのか?」
私が本作に抱いていた不満が51話にしてようやく解消されました。
2020年に放映されたTVドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」では一応DI担当者(荒神)は登場しましたが、DI業務の描写は一切ありませんでした(あったのは手品とコーヒーと末期患者の家族役のみ)。
ただ、これは原作者(富野浩充先生)の、DI業務に対する偽らざるメッセージだったのかもしれません。
そう、余程規模の大きい病院でもない限り、DI業務に注力できる病院は少ないからです(萬津総合病院も薬剤師不足に悩んでいました)。
ただ、DI業務はあらゆる薬剤師業務の基盤となる重要な業務です。
もちろん行政レベルでは20年以上も前からDI業務の強化を呼び掛けていますし、薬剤管理指導料や病棟薬剤師業務実施加算の要件にもなっています。
そんなDI業務が重要視されない理由は一体どこにあるのでしょうか?
先日私は理由の一つを見つけました。
きっかけは実習生が持参した市販の実務実習テキストでした。
何と、ないのです、DI実習の頁が丸ごと!(あるのはSBOのみ)
昔のテキストには25頁程割かれていた筈なのに、これって・・・。
実は私は実習生が来る度に「大学でDI業務を習うか?」という質問をするのですが、皆口を揃えて「ほとんど習っていない」と言います。
※もちろん「添付文書の読み方」や「文献検索の方法」は学ぶそうですが。
この一件は、私にとって根が深過ぎてゾッとする出来事でした。
「DI業務に無知な薬剤師を増やしてたら、活躍できる筈がないやろ」
これも医薬品供給と同様、国の問題だと強く感じました。
≪今流行りのChatGPTに訊いてみたら・・・≫
「厚労省ではDI業務を重視するように言ってくるのに、大学教育で重視していない理由は?」
厚労省は、医薬品情報業務に関する知識やスキルの習得を推奨しており、その一環としてDI(Drug Information)業務にも言及しています。DI業務は、医薬品情報の収集・分析・提供を通じて、医療現場での医薬品適正使用の支援を行う重要な業務であり、厚労省が重視している理由は明確です。
ただし、大学でDI業務をカリキュラムに組み込むかどうかは、大学ごとに異なる判断基準が存在するため、一概には言えません。薬学部においては、DI業務を含め、多岐にわたる知識やスキルを学生に身に付けさせることが求められますが、それぞれの大学の教育方針やカリキュラム編成、教員の専門分野や教育経験などが影響して、その重視度合いは異なる場合があります。
また、DI業務に必要な知識やスキルは、医療現場での実務経験や、企業などでの研修を通じても習得できるため、大学で学ぶ必要性があるかどうかは、一定の議論があるところでもあります。しかし、現代の医療現場においては、DI業務を担う専門家の需要が高まっていることから、大学教育として取り入れることが望ましいとされることもあります。
今回はここまで。
次回(Rp.48)は医薬品の欠品が過敏性腸症候群の患者を追い詰めます。
Rp.49 孤独な山根くん~プラセボと信頼感~
(あらすじ)
過敏性腸症候群に悩む名波は、常用薬(メペンゾラート)が欠品となったことで追い詰められていた。「気の持ちようだよ」。周りに理解されず、腹痛に怯えながら毎日やり過ごすだけの人生に救いの目は?
今回は過敏性腸症候群(IBS)患者のお話です。
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そう、ちびまる子ちゃんで登場する「胃腸の弱い山根くん」ですね。
非常に丁寧に描写されていて、周りから理解されぬままIBSがみるみる仕事や結婚の障壁となっていく描写は、彼の孤独を理解をするに十分でした。
さて、IBSに理解のあった彼女との結婚が叶わないと悟った名波は、やけ酒をあおったあげく激しい腹痛に襲われ救急搬送となります。
頼みの綱のメペンゾラート(トランコロン)が入手できないという手詰まりの状況を打破したのは、ほかならぬDI担当の穂上でした。
整腸剤「ラックビー」のプラセボ(偽薬)効果を期待する。
理詰めのハクには思いもよらぬ提案でした。
しかし、そもそもIBSは精神的要因の強い疾患であり、名波が絶大な信頼を置いている本間先生からの処方であれば納得の選択肢でした。
「先入観をもって視野を狭めていたんだろうか・・・」
ハクにとって医薬品情報のあるべき姿を考え直す機会となったようですね。
それでは今回活躍した穂上先生の金言を書き記しておきましょう。
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添付文書から最新の論文や文献のような「文字の情報」
そして現場の「生の情報」も網羅する
そんなDI室が理想的だよね
今回は「舞台裏」も「過敏性腸症候群の治療薬」で行きますね。
読者の中にも悩んでいる方がいるし、さぞ深刻かと思いますので。
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こういった疾患に対峙する時、薬剤師は「診療ガイドラインを読む」というメタ知識を発動させます。
恐らくこの作品でも参考にされている筈です。
推奨度とエビデンスがともに最高ランクAの治療薬は下記の通りです。
・高分子重合体(ポリフル/コロネル)
・5-HT3拮抗薬(イリボー)
・粘膜上皮機能変容薬(アミティーザ・リンゼス)
・抗アレルギー薬 ※保険適用なし
・食物繊維
・プロバイオティクス
ちなみに、作中に登場したメペンゾラートやトリメブチンは、弱い推奨度でエビデンスレベルBの薬です。
※ハク提案のトリメブチン(セレキノン)も出荷停止中なんですけど…。。
抗アレルギー薬ってのは、薬剤師的にも意外でした(使えないですけど)。
もちろん、これ以外の薬が効果がない訳ではなく個人差もあります。
上記の薬は比較的高価なものが多く、精神的要素の多いIBSにすぐさま使うべきかは意見の分かれるところです(だからこそプラセボもあり)。
今回はここまで。
「答えを出すのはまだ早いんじゃないか?」
一時は萬津総合病院を辞めることも考えたハク。
しかし、瀬野の言葉を思い出し、引き続きここで学び続けようと決意したのでした(めでたしめでたし)。
次回(Rp.50)は
第10巻はここまで。
これ以降は、このブログ共々「第11巻」へと移ります。
病院薬剤師って素晴らしい!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。