病院薬剤師が語るアンサングシンデレラの舞台裏(第9巻)
皆さん、こんにちわ。病院薬剤師だまさんと申します。
本ブログ(note)にアクセスしていただき、ありがとうございます。
このコンテンツは月刊コミックゼノンで連載中の「アンサングシンデレラ 病院薬剤師葵みどり」を10倍楽しむためのブログです。
最新刊(9巻)が絶賛発売中です。
Rp.40 実務実習のリアル~調剤監査の進化~
今回より「実習編」が始まります。
冒頭から刈谷の発言に大爆笑でしたね。
そりゃあ、長年薬剤師不足に喘いでいる中で4年ぶりの実務実習ともなれば力も入る筈ですわ(当院も以前はそうでしたから、わかる~)。
一方、学生たちにとって憧れの薬剤師たらんと使命感に燃えるミドリン。
それがまさかあんな事態になるとは・・・(ザワザワ)。
実習は内服調剤からスタート(当院も同じです)。
理由は薬局実習でも経験済みの業務なのでハードルが低いからです。
ただ、薬局と病院とでは異なる点があり、それを刈谷が解説しています。
ま、これらは施設によりけりなので学生さんはご注意を。
・・・てなとこで、さっそく学生2名の個性が出てきましたね。
おっ、Rp.11(第10話)でチョイ役(←「おいっ!」)として一度だけ登場した剣持が、ここに来て室川の指導役として再登場してますねぇ。
確か循環器に強い「おじさん薬剤師」でしたよねぇ?(←「こらっ!」)
※思い出せない方はこちらよりどうぞ。
さて、その剣持と我らがミドリン、実は初日からやらかしていました。
「浮かれ過ぎだった」と反省する二人でした(チーン)。
今回の「舞台裏」は「調剤監査の今昔」です。
要するに「薬やその数を間違ごうたらアカン」ということ。
私が薬剤師になった頃(=はるか昔)には、処方箋相手に下記のような「超」アナログな確認方法が用いられていました。
ん~、「人は誰でも間違える」と言われる中、当時の苦労が偲ばれます。
一方、現在では各社がテクノロジーを駆使して「調剤監査システム」を開発しています。
少し前までは、作品中にも登場した「バーコード認証システム」や当院でも導入されている「画像監査システム」などが主流でした。
しかし今では更に進化して「調剤ロボット」の時代ですからねぇ。
もはや対物業務は終焉間近なのでしょうねぇ(しみじみ)。
一方、実習生の二人も病院実習1日目を振り返ります。
室井に膝枕されてもらいつつボヤく丸川(つきおうとるやん!)。
二人の会話を聞いていると、実習の評価は気にするものの、どちらも病院志望ではない様子(「最後の担当患者さん」って?)。
「ほどほどに頑張ろ」
室井のこの一言が波乱を予感させます。
今回はここまで。
次回(Rp.41)では、室井の態度が周りを愕然とさせます。
Rp.41 対物業務と対人業務~薬剤師業務の変貌~
「実習編」第2話の舞台は、製剤室と外来化学療法室へと移ります。
今回はドラマチックな展開となりました(描写が冴えてます)。
今回のタイトルの意味がわからない方もいると思うので少し解説を…。
まず「対物業務」。
文字通り「物相手」、つまり「薬相手」の業務のことです。
荒神同様、ドラマのオリジナルキャラ七尾副薬剤部長がよく「薬剤師は薬だけを見てればいい」と語っていました。
つまり、薬剤師は「薬の専門家」として薬物療法をサポートしていればよいという、古来の価値観です。
次に「対人業務」。
これも文字通り「人相手」、つまり「患者相手」の業務のことです。
これまでのみどりの活躍をご覧になってきた皆さんには今更解説するまでもないですよね?(師匠である瀬野の教え「患者を見ろ」ですよね)。
これは比較的新しい(薬剤師法第25条の2改正後の)考え方なので、過渡期である現在では新旧の価値観が対立することがしばしばあるのです。
さて、その「対物業務」の代表格、院内製剤を体験した実習生たち。
※今回の表紙では、みどりがドライヤー片手にボトルの蓋をヒートシールしている様子が描かれていますが、これも製剤業務の一つです。
指導した剣持の目に留まったのが、普段は「緊張しい」の丸川でした。
剣持「ガスバーナーの扱いが手際いい」
あれ?室井の表情が少し不服そう…!?
次に二人が向かったのが外来化学療法室。
ここで薬剤師は抗がん剤の調製(対物業務)を行う一方で、副作用やその対処法(支持療法)の説明など(対人業務)も行います。
「対人業務」メインの病棟業務の前哨戦とも言えますね。
指導者は久々の登場。
「エバさん」こと、がん薬物療法認定薬剤師・江林です。
物怖じする丸川に対し、服薬指導を志願する室井。
が、室井は患者・柚木を怒らせてしまいます。
柚木は一体何が気に障ったのでしょうか?
察するに、室井の説明が「一方的」過ぎたのでしょう。
前立腺がんが治癒することを目指した3年の闘病生活。
手術(前立腺全摘)・ホルモン療法・抗がん剤・・・。
副作用(しびれ・脱毛等)をも耐え忍び、一縷の望みをかけて臨んだ新たな抗がん剤(ジェブタナ)を指して「有効な治療法がない前立腺がんの薬」はいくら何でも配慮を欠く説明でした。
後に刈谷が指導したように、自分のペースではなく患者の反応を見ながら話すべきところ。
とは言え、室井はまだ学生の身。
最初からそこまでのレベルを求めるのは酷な話です。
失敗して当然、そのための実習期間なのです。
今回の「舞台裏」は「院内製剤」です。
既製品に押され衰退の一途の感がある院内製剤。
一切手を引いた施設もある中、作品中で剣持も言及しているように依然として「薬剤師の専門分野」であることも確かです。
丸川が頭角を現した「滅菌墨汁のアンプル詰め」は当院でも行っています。
※他には軟膏・点眼薬・消毒液なども作っています。
実は私も以前の勤務先で最後の1年間製剤担当だったのですが、製剤室に墨と硯が用意されていて最初は驚きました(笑)。
もう一つ驚いたことは、アンプルがとても高価だったこと。
楽天で調べてみたら10mLアンプルが何と1本8,092円 (税込)でした。
1本でも失敗したら大損害です。
これを時給2000円以上の薬剤師が1~2時間かけて手作りし、大量の電力を消費する滅菌装置にかけて製造するのです。
決してケチッてやってる訳じゃないことをご理解ください。
さて、刈谷に別室に連れ込まれ(怖っ)今日の出来事を聴取された室井。
元々優秀な分、本来ならば落ち込んでいてもおかしくない場面。
しかし、それよりも自分の評価が下がることのみを懸念し、明るく振舞う室井に、刈谷は違和感を覚え絶句します。
一方、室井に突然連絡を絶たれた丸川も孤独感を持て余し・・・。
今回はここまで。
次回(Rp.42)では、いよいよ病棟実習が始まります。
Rp.42 薬で解決できること・できないこと~糖尿病だけ「療養指導」が必要な理由~
実習生・室井と患者のトラブルを受け、協議する瀬野・刈谷・江林。
事なきを得た以上、失敗の経験を次に活かしてもらうしかないとの考えを述べる瀬野に対し、刈谷は自らが覚えた違和感をこう分析します。
「能力は関係ない。ここにいる間はひとりの医療人だってこと忘れるな」
この後室井の病棟実習を受け持つみどりは、瀬野たちから監視役を押し付けられるのでした(笑)。
さて、ついに病棟実習がスタート。
室井はみどりの担当する産科病棟を担当することとなりました。
刈谷のアドバイスに従い、患者背景のかなり「深い」部分まで解説するみどりに、室井は驚いたように「なるほど」と反応します。
その後、入院患者と初対面する室井。
話題豊富でイケメン。
「つかみ」はばっちりでした(みどりが何となく敗北感…)。
「よ、よろしくお願いします」
一方、「緊張しい」の丸川は剣持・相原の指導のもと、内科病棟へ。
担当するのは教育入院の2型糖尿病患者・飯島。
今回よりインスリンを導入する予定なのですが、グルメ雑誌の編集長のため生活が不規則で病識が乏しい点が問題のようです。
お、丸川がHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)をメモしてますね。
糖尿病の診断指標の一つで、この値が高いほど重症と言えます。
主治医から薬剤師へは、SMBG(自己血糖測定)とインスリンの手技説明が指示されました。
「まぁ今の生活は変えられないんで!」
「2週間で健康になるなら注射もバンバンやりますよ!」
治療には協力的で、サプリ・健康食品を愛用して健康への気遣いはしている飯島ですが・・・メチャ前途多難な感じです(剣持、絶句)。
今回の「舞台裏」は「療養指導」です。
意味は何となくわかりますかね?
ところで、療養指導という言葉は9割方は糖尿病に用いられます。
試しに検索してみてください。ほぼ頭に「糖尿病」が付きますから。
糖尿病は知らない者がいないくらい「超」有名な病気です。
しかし、私は糖尿病ほど理解されていない(「血糖値が高い病気」程度の認識)、それゆえにこれほど治療が難しい病気はないと考えています。
糖尿病を治すには生活習慣を徹底的に改善する必要があるのですが、自覚症状が出た頃には手遅れとなっていることが多いからです。
作中でこんなナレーション(!?)が流れました。
私も長らく糖尿病療養指導に関わっていた薬剤師です。
もし糖尿病が薬やインスリンだけで治る病気ならば、「食事療法」も「運動療法」も「サポートチーム」も必要ない筈ですよね?
話せば長くなってしまうのでこの辺にしますが・・・忘れないでください。
さて、実習生たちのその後。
妊娠悪阻(おそ)で入院中の柳の夫が中学時代の同級生だとわかり、トントン拍子に事態が好転する室井に対し、クセの強い飯島を担当することとなり不安だらけの丸川。
明暗分けた二人の行方は?
今回はここまで。
次回(Rp.43)では、実習生二人に転機が。
そして・・・剣持おじさん(←「おい!」)が金言を披露します。
Rp.43 患者との出逢いが薬剤師を育てる~一歩踏み出すために~
亮太(柳の夫)との再会を機に中学の同級生との飲み会に参加する室井。
室井の抱える「闇」がだいぶ明らかになりました。
一方、丸川は不安を抱えつつ飯島のインスリン自己注射の説明に臨みます。
まず最初に剣持がインスリンの使用目的を説明しますが、突っ込み所満載(!?)の飯島に・・・脂汗をかきます。
次いで丸川が自己注射の説明。
自宅での練習のかいもあって、恙なく説明を終えることができました。
今回の「舞台裏」は「成長のカギ」です。
・・・さて、「その時」が訪れました。
そう、前回予告した剣持の金言です。
そうなんですよね。
薬剤師の仕事にはそんな側面があります。
事なかれ主義
つまり「薬を提供したら終わり」「説明をしたら終わり」にすることだって可能なのです(というか大半はそんな感じです)。
室井が丸川に話したように、「それで治療うまくいかなかったら自業自得じゃない?」と割り切ることだって可能なのです。
ただ、丸川には今回「ある気づき」がありました。
この後、剣持の言葉が後押しして丸川は一歩踏み出すことになります。
金言にはまだ続きがあります。
当たり前のことのように聞こえますが、個人的には刺さりましたね~。
かねてより私はこんな信念を持っています。
なぜなら私自身、患者さんに育てられてきたという実感があるからです。
面倒臭さやしんどさすらチャラにしてくれる「プライスレスな出逢い」が、知らぬ間に薬剤師を成長させていることに、私は気づいてしまいました。
賛否両論ある見解だということは承知のうえです。
無限に時間がある訳ではないし、ほかの患者、ほかの業務も待っています。
なればこそ、「フル活用しないともったいない」と言っているのです。
他職種の記録を読んで反省した丸川は、飯島の病室を訪ねたり専門書を読んだりして、めまいとだるさの原因を突き止めようとします。
一方、室井はみどりに治療的流産薬の使用患者が亮太の妻・晶子だと明かされ・・・。
今回はここまで。
次回(Rp.44)では、丸川に続き室井にも転機が訪れます。
第9巻はここまで。
これ以降は、このブログ共々「第10巻」へと移ります。
病院薬剤師って素晴らしい!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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