病院薬剤師が語るアンサングシンデレラの舞台裏(第2巻)
皆さん、こんにちわ。病院薬剤師だまさんと申します。
本ブログ(note)にアクセスしていただき、ありがとうございます。
本ブログは、2020年4月よりフジテレビ系でスタートする木曜劇場「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」を10倍楽しむためのブログです。
Rp.8 働く理由 ~君たちはどう生きるか~
(あらすじ)
みどりは棚卸しでペアとなったベテラン薬剤師・刈谷の在庫管理の徹底ぶりに圧倒される。大手調剤薬局グループで店長だったキャリアを持ちながら、あえて年収の低い病院に刈谷が転職してきた理由を量りかねるみどり。ある日、みどりは術後抗菌薬の処方に関して口腔外科の医師と衝突する。その時、刈谷が医師に表明した強い信念とは?
※本稿では「抗生剤」を「抗菌薬」に読み替えて表記しています。
今回のテーマは「働く理由」。
冒頭ではみどりと大学時代の友人との飲み会の様子が描かれています。
黒須佑子(製薬会社勤務;MR) 推定年収590万円
柿崎彩乃(調剤薬局勤務) 推定年収440万円
青木千尋(ドラッグストア勤務) 推定年収480万円
葵みどり(総合病院勤務) 推定年収380万円
4名の「働く理由」の違いは、会話からもうかがい知ることができます。
黒崎 ⇒ 年収(5年以内に年収1千万)
柿崎 ⇒ 定時で帰れること(体力に自信なし)
青木 ⇒ 産休制度
葵 ⇒ やりがい
病院薬剤師の魅力を精一杯アピールしようとするみどり。
しかし、そこはやはり「アンサングシンデレラ」。
最も年収の低いみどりは、3人から同情され、「かわいそうな奴」扱いされてしまうのでした(笑)。
この世の中、「お金が全てじゃない」と言いながら、お金と無縁ではいられないのもまた事実。
少し横道にそれますが、本県の薬剤師事情についてお話しようと思います。
第1巻でご紹介した通り、私は地方の中核病院に勤務しているのですが、この数年間というもの深刻な薬剤師不足に喘ぎ続けています。
嘘のような「二桁欠員」にも、これまで何度もリーチしました(号泣)。
理由はシンプル、本県には薬学部がないからです。
つい最近、第105回薬剤師国家試験の合格発表がありましたが、都道府県別合格者数を見るとその差は歴然としています。
≪ 合格者数ベスト3 ≫
1位:東京都(1020名) 2位:大阪府(846名) 3位:神奈川県(721名)
≪ 合格者数ワースト3 ≫
1位:島根県(37名) 2位:鳥取県(39名) 3位:福井県(41名)
念のためお断りしておきますが、薬剤師数が少ない県ほど医療施設数が少ないということはありません(むしろ本県の病院数は全国屈指の多さです)。
県内に薬学部がなければ、必然的に県外の大学に進学することとなります。
交通の便が良い県ならば通学も可能でしょうが、本県の場合、隣県の大学に通うことは絶望的です(片道で3時間以上かかりますので(涙))。
となれば当然下宿生活、大半は私学、しかも6年間(ズシーン!)。
余程裕福でなくてはそれだけの教育費を捻出できる家庭はなく、これまた必然的に奨学金を利用することとなります。
ところが、当然ながら借りたお金は返さねばなりません。
とすると、病院薬剤師の薄給では奨学金の返済が負担となり、貯金も結婚も遠のいてしまう(で、より高給の調剤薬局に流れる)。
現実に、このような悪循環が生じているのです(一体どこの県よ?)。
・・・もうこれ以上は愚痴になりますので止めておきます。
ただ、「聞いてやろうじゃないか」という奇特な方がもしおられましたら、メインブログの下記の記事もご覧くださると嬉しいです。
本題に戻ります。
みどりは、苦手な刈谷とペアで棚卸しを行うこととなってしまいました。
自分とは明らかに価値観の違う刈谷。
「出世コースを捨ててまで、なぜ病院に?」
しかし、この時点では彼女の「働く理由」が思い当たらないみどりでした。
ところで皆さん(また横道?)、棚卸しをする目的ってご存知ですか?
もしご存知なければ、日商簿記検定2級(※1級は2浪中)の「変人」薬剤師の私が解説いたしましょう(エヘン!)。
目的1:利益の確定のため
売上総利益は「売上高-売上原価」で計算されます。そして売上原価は「期首棚卸資産額+期中仕入額-期末棚卸資産額」で計算されます。従って、棚卸しによって期末棚卸資産額を確定しなければ利益が計算できません。棚卸しは、利益を確定するために必要不可欠な手続きなのです。
目的2:棚卸資産管理のため
棚卸しは棚卸資産(薬剤)の数量を把握することが主たる目的ですが、現物をチェックすることで不良在庫や滞留在庫の有無が把握できます。不良在庫や滞留在庫は、薬の保管方法や発注方法に原因がある可能性があるため、その発生原因を分析することで、棚卸資産管理の改善につなげます。
数日後、棚卸し結果を分析した刈谷は、目的2の棚卸資産管理の一環として、「術後抗菌薬の処方量削減」を提案します。
これを受け、口腔外科で抜歯後に投与された抗菌薬(セフゾン)の中止を処方医に打診するみどりでしたが、けんもほろろに断られてしまいます。
「患者さんの安全のためなんですよ」
それが理由でした。
ここで素朴な疑問が生じます。
ガイドラインでも推奨されていない抗菌薬の使用を、医師はなぜ止めようとしないのでしょうか?
最大の理由は(医師と患者の)「抗菌薬への過信」です。
一般の方は意外に思われるかもしれませんが、大学教育において抗菌薬の使用法を学ぶ機会は、感染症医でもない限りほぼありません(現在はともかく、今回登場した口腔外科医の学生時代では皆無だったと思います)。
そういった知識がないにもかかわらず、医師が「患者さんのため」と強弁する背景には、「患者からの要望」があるからにほかなりません。
(NHKニュース(2018.7.1)より転載)
「かぜ」には無効な筈の抗菌薬ですら、患者・家族が希望したら処方すると回答した医師が6割超もいたことが実態調査で明らかとなっています。
そもそも今回問題となった「セフゾン」という抗菌薬は、第3世代セフェム系といって幅広い菌に効果のある点、つまり「外れ」が少ないことがメリットであり、小児科を中心に幅広く使用されてきました。
しかし、いかんせん吸収率が30%と乏しく、移行性の優れた臓器(尿路など)以外での治療効果は望めません(飲み抜かしがあればなおさらです)。
そればかりか、耐性菌の増加にもつながります(不十分な量での抗菌薬投与は耐性化の原因となることが知られています)。
刈谷の後押しもありましたが、事態が収拾したか否かは描かれていません。
今回のように、薬剤師は数々のエビデンスを根拠に医師を日々説得している訳ですが、「患者からの要望」という牙城は想像以上に強固で、医師の洗脳(!?)を解くのに時間を要している、というのが実情なのです(「経営悪化」のくだりはいささか論理の飛躍があると感じましたが・・・)。
しかし、いつも冷静沈着で合理的な判断をする刈谷が、信念に基づき「損な役回り」をあえて選択していることに気付いたみどりは、自分の「働く理由」を再認識するのでした。
ここで薬学生さんや若手の薬剤師さんに質問です。
・(合理性より信念を優先するので)損な役回りも辞さない。
・(信念よりも合理性を優先するので)損な役回りはしたくない。
君たちはどう生きますか?
では、最後に「舞台裏」のコーナーです(え、いつから?)。
今回は「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」です。
AMR対策アクションプランとは
概要:WHOの「薬剤耐性に関する国際行動規格」を踏まえ、関係省庁・関係機関等がワンヘルス・アプローチの視野に立ち、協働して集中的に取り組むべき対策をまとめたもの(厚生労働省)
計画期間:5年間(2016~2020年)
本アクションプランは薬剤耐性の発生・拡大を抑制する取り組みであり、2016年に開催された「G7伊勢志摩サミット」を契機に策定されました。
スバリ、日本の耐性菌対策への遅れを他の先進諸国から指摘され、「外圧」がかかった末の産物なのです。
中でも問題視されたのが、今回のお話でも触れられている経口抗菌薬です。
日本で使用される抗菌薬のうち、実に約90%が外来診療で処方される経口薬であることが知られており、中には今回の「セフゾン」のように不適正使用されている事例も少なからずあります。
国はこの経口抗菌薬(経口セファロスポリン・フルオロキノロン・マクロライド系薬)の使用量を2020年までに50%減とすることを目標に掲げていますが、先述の通り処方医の判断に任せていては埒があきません。
目標を達成するには、どう考えても薬剤師の力が必須です。
そこで医療機関では「抗菌薬適正使用支援チーム(AST)」を結成。
薬剤師を中心として、文字通り抗菌薬適正使用の推進のため日々奮闘しているのです(私もその一員です)。
今回はここまで。
次回(Rp.9)では、屈折した薬局薬剤師の一言にみどりが・・・落ち込みます。
第1話(STORY#01)のあらすじがついに公開されました。
初回15分拡大版ということもありますが、何話分ものエピソードを詰め込んでいて、「こんなペースでエピソードが枯渇しない?」と心配も(笑)。
原作ではちょい役に過ぎない新人薬剤師のくるみ(西野七瀬)や、次回より登場する薬局薬剤師の小野塚(清原翔)が、どうやらこのドラマではアクセントとなっているようですね。
4/9のオンエアが楽しみです。
Rp.9 そっちの理想・こっちの現実 ~病院てなんかエラソー!?~
(あらすじ)
みどりは入院時の面談で透析患者・新田と出会う。新田の持参した薬の管理状態は劣悪極まりなく、調剤薬局のフォローにも疑問を抱いたみどりは調剤を担当した薬剤師・小野塚に電話、更には直接に会いに行くのだが・・・。
今回のテーマは「薬局薬剤師」です。
正直な話、病院薬剤師も薬局薬剤師も相互理解は十分とは言えません。
「協力すべき相手、ただ病院と薬局に溝があるのも事実」
それが現実なのです。
今回のお話から、相手方をどのように捉えているかをまとめてみました。
病院薬剤師(みどり)から見た薬局薬剤師(小野塚)
・必要な疑義照会をしない(キックリンの用法誤りを放置)
・患者のフォローが不十分(新田の自己管理が滅茶苦茶)
・勝手な錠剤半割(アダラートCR錠は本来半割不可)
・患者のことを全然気にかけてない感じ(あ~むかつく!)
・「なんだアイツは-っ!!」(怒)
薬局薬剤師(小野塚)から見た病院薬剤師(みどり・瀬野)
・薬局の事情がわかっていない(こちらはあらゆる仕事をワンオペしてる)
・患者に向き合う時間を作ってる(うちにはムリ)
・熱血薬剤師の自分に酔ってんのかな?(昔は自分もそうだったけど・・・)
・俺のこと、何もやらないダメ薬剤師扱いしたいのかよ(余裕ないんだよ)
・「なんなんすか、意識高い系ってやつですか?」
いや~、隣の芝生って青く見えるんだなって、あらためて感じました。
先述の通り、当院は何度も「二桁欠員」にリーチする程の薬剤師不足です。
よって、新人が加入したら「促成栽培」で医療の最前線(病棟)に投入され、他職種に揉まれて(泣きながら)自己成長するしかない環境です。
しかも病棟薬剤師は1名で2病棟を担当し、かつ調剤のヘルプのため1日の半分を調剤室で過ごすのです(特定共同指導の指導官にも驚かれました)。
潤沢に薬剤師がいる病院に比べ、(理論的な)成長スピードは実に1/4。
それに比べ、門前薬局は勤続30年超の私でもグラつく(笑)程の高給で、研修制度も充実していると聞いていたので、羨ましく思っていた位でした。
今回のお話を通じ、薬局薬剤師もまた「アンサングヒーロー」なんだなということを思い知らされました。
さて、みどりはいつものように「感性」を発揮して患者・新田の心に寄り添うのですが、そうするとなおさら調剤薬局の対応が気がかりでなりません。
「大丈夫。やれることはやったよ。うん」
そう自分に言い聞かせながらも、気付けば薬局の前に来ていたみどりでした(またしても「根性」が発動しています)。
「なんで来た~~~~!?来てどうすんだよ~~~~!?」
ためらいつつも店内に潜入し、小野塚と遭遇するみどり。
しかし文句を言いに来たと感じた小野塚は、みどりにこう言い放ちます。
「病院の外でも理想振りかざしてんじゃねーよ」
みどりは何も言い返せず、その場を立ち去るしかありませんでした・・・。
※日本薬剤師会からクレームが来てもおかしくない「イメージの悪さ」。ただ、後半にフォローの描写もあるし、そもそも下手に「忖度」した物語なんて何の魅力もありませんよね(だったら最初からやらなければいい)。
突然ですが質問です。
当初は、杜撰で投げやりで「最後の砦」としての役割を果たしていない小野塚に怒りを露わにしていたみどり。
が、小野塚のこの一言で、なぜここまで凹んでしまったのでしょうか?
≪小野塚の夜間業務≫
・透析患者の薬(薬の種類が多く複雑)の調剤 ※しかも旧式の分包機で
・第1類医薬品(薬剤師不在だと販売できない市販薬)の販売
・翌朝の予約分の投薬準備・監査
・未入力の薬歴の記載
・レジ締め
・レセコンのバックアップ
・自己負担金未納の患者宅への集金
・レセプト
(病院薬剤師としての「率直」な感想)
これをワンオペでやるってマジ?週3ペースで夜勤しても許してくれないって・・・。コンビニより多い約6万店もある調剤薬局が差別化を図ろうとすると、こんなブラックな職場になるんだ(ま、うちも似たようなものかぁ)。
それは、薬局薬剤師の厳しい立場や境遇を全く理解していなかった自分を恥じたからにほかなりません(帰宅後反省した、恥ずかしさとやるせなさで転げまわったと、後に本人も告白しています)。
「寄り添う心」をモットーとする、みどりらしい「感性」です。
これに対し、さすがは年の功。
瀬野は薬局薬剤師に関して、当初よりこんな理解的な発言をしていました。
≪瀬野の発言≫
・「薬剤師だっていろんな人間がいるさ」
・「個人だけじゃなく、その職場全体が問題を抱えていることも多いしな」
・「協力すべき相手だってことを忘れたらだめだ」
・「(問い合わせの対応が悪い者が部内にいると知り)誰だそいつ、言え」
「(小野塚の件は)自分には関わりのない話」
しかし、新田の退院後の服薬管理のために、ハク(羽倉)と力を合わせて奮闘するみどりの姿を見て、瀬野は動きます。
面識もない小野塚の元に出向き、薬局と合同の症例報告会に誘うのです。
あの面倒臭さがり屋の瀬野が(←「おい!」)。
思わぬ誘いに、情けを掛けられたと思い、反発する小野塚。
しかし、瀬野は冷静に返します。
「いやソレ勘違い」
勉強会へ誘うのはあくまで後輩のためだと告げ、こう続けます。
「きみが何に不安持ってるか知らないけど
自分で動くしかないんじゃないの?」
なかなか「ニクい」こと言いますね~。
そのフレーズ、いつか誰かに使おうっと(←「コラ!」)。
(描写はありませんが)散々迷った末でのことでしょう。
勉強会に現れ、みどりの発表の終盤に何とか間に合った小野塚。
「すぐに変えられるものじゃない。そんな事はわかってる」
そう思いつつも、見失っていた目標に向け、再度舵を切る小野塚でした。
最後に「舞台裏」のコーナー。
物語の中でも登場した専門用語、「アドヒアランス」です。
アドヒアランス(adherence)
納得して自分の意思で行うこと。従来より用いられてきた「コンプライアンス」という言葉は、患者が医療提供者の決定に従ってその指示に従った行動を取ることに対し、「アドヒアランス」は患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って自ら行動することを指す。
小野塚の影で霞んでしまいましたが、新田も問題が山積の患者でした。
新田は仕事への意気込みは人一倍ありますが、ルーズな性分であり、薬の飲み忘れの多さが目立ちました(今回の骨折の一因だったかもしれません)。
ひと言で言えば、「アドヒアランス」に問題のある患者だったのです。
そもそも透析患者の薬は種類も多く服用方法も複雑で(例えば食前に飲む薬とか透析/非透析日で量が異なる薬とか)、これを完璧に服用するのははっきり言ってウルトラCの難易度です。
アドヒアランス低下の原因は人それぞれで、答えは一つではありません。
今回改善策として担当のハクが考えたのが「お薬カレンダー」の活用です。
※YouTuberのおゆさんが、「お薬カレンダー」を用いた薬の管理方法を、患者の立場から丁寧に解説してくれている動画です。
ただ、これを渡すだけで「アドヒアランス」が向上する保証はありません。
モヤモヤした懸念を抱えたまま小児科病棟に戻ったみどり。
その時目に留まったのが、吸入薬管理のために導入した「お薬カレンダー」のカスタマイズ(お絵描き)で盛り上がる子供たちの姿でした。
みどりはこんな仮説を立てます。
「新田の生徒たちにお薬カレンダーをカスタマイズ(お絵描き)してもらえば、愛着が湧いて飲み忘れが減るのでは?」
効果は絶大でした(生徒の寄せ書きにも感激して泣く位ですからねぇ)。
「僕・・・、これ宝物にしますっ・・・」(感涙)
またしても、みどりの「感性」と「根性」の賜物です。
それにしても、新田の言葉、薬剤師冥利に尽きますね。
今回はここまで。
次回(Rp.10)では、みどりと熱血ナースのバトルが勃発します。
新型コロナ禍でついに放映延期となってしまいましたが、主題歌『YES AND NO』(DREAMS COME TRUE)が挿入された本編映像が公開されました。
撮影再開を心待ちにしましょう。
Rp.10 見えない顔と見られる服装 ~5Sが最強の組織をつくる~
(あらすじ)
病棟全体に緊張が走った。職員の身だしなみに厳しいことで知られる「チーム伊吹」による接遇委員会のラウンドの日だったからだ。伊吹にはみどりと同期の熱血看護師・松永が随行していた。みどりは松永のマニュアル一辺倒で執拗な指摘に反発。やがて火花を散らすバトルにまで発展する・・・。
今回は「身だしなみ」、少し拡大解釈して「5S」に関する話です。
5S
【整理】【整頓】【清掃】【清潔】【しつけ】の頭文字のSをとったもの
【整理】
必要な物と不要な物を分け、不要な物を捨てること
【整頓】
必要な物がすぐ取り出せるように、置き場所・置き方・表示を徹底すること
【清掃】
掃除をしてゴミ・汚れのないきれいな状態にし、細部まで点検すること
【清潔】
整理・整頓・清掃を徹底し、汚れのないきれいな状態を維持すること
【しつけ】
決められたことを決められた通りに実行できるよう、習慣付けること
「5S」と言えば、この動画のようにトヨタ自動車が有名ですね。
「5S」に対する考え方は、正直な話、病院によりけりです。
「無意識に疎かにしてることにも気づかされたりするしね・・・」
「こういう緊張感、私はアリだと思うな」
私とて趣旨自体は理解できるのですが、今回の「チーム伊吹」みたく根掘り葉掘りあら探しされるのは御免被りたいというのが本音。
まして「顔」が見えない筈の薬剤師が、機能評価や特定共同指導のガサ入れ(!?)時に限って「服装」をくまなくチェックされるなんて・・・。
「(薬剤師は)患者さんには認知されにくい存在なんです」
「見た目で覚えてもらって緊張をとくのが一番早い」
そう力説して死守した、みどりのトレードマーク「お団子」ヘア。
今回は伊吹委員長のとりなしで事なきを得ましたが、もし松永との論戦に負けていたら、次回からは坊主頭になっていたかもしれません(ないない)。
ちなみに当院では、幸か不幸か、接遇委員会のラウンドも猫娘(!?)に噛みつかれることもありません(えがったぁぁぁ~)。
締め括りとして、伊吹委員長の「訓示」をご紹介しておきます。
院内は常に慌ただしく目の前の仕事に追われてしまう
どうしても様々な面で疎かになる部分が出てくる
それを放置してしまうと水が低きに流れてしまうように
組織全体の意識が低下しかねません
私たち委員会が存在するのは患者さんのためであり
ここで働くスタッフのためでもあるのです
ははぁ-(平伏)。
ただ、「完全な正解はないことですから」というスタンスに、少し安堵しただまさんでした(それに引き換え松永はまだ修行が足らんな)。
さて、今回の「舞台裏」は薬剤師の「ユニフォーム」です。
葵みどり役の石原さとみさんは「スクラブ」というスタイリッシュなタイプのユニフォームですが、当院は「ケーシー」か「ドクターコート」です。
ユニフォームは3年に一度更新され、スタッフの総意で決まります。
なので、その時ばかりは(女性中心に、ですが)カタログやサンプルを元に妥協のない議論(とファッションショー)が交わさます。
※ちなみに「虎党」の私は毎回「縦ジマの白衣」(んなもん、あるかい!)を要望しているのですが・・・皆からは無視され続けています(涙)。
今回はここまで。
次回(Rp.11)では、医療費の負担に苦悩する患者を前に、チーム医療の一員としての薬剤師・みどりの真価が問われます。
新型コロナの影響で、やはり放送延期になっちゃいましたね~(涙)。
まあ、このご時世ですから仕方ないですかね。
一日も早い撮影再開とキャスト・スタッフさんのご無事を祈ります。
Rp.11 薬剤師にもできるお金の話 ~米国薬剤師の信頼度が高い理由~
(あらすじ)
売れない漫画家・丸岡は妻の出産を控え、体力的にも精神的にも経済的にも追い込まれていた。そんなある日、狭心症を発症した丸岡はみどりの勤務先の病院に救急搬送される。丸岡が自らの治療に積極的でなく、かつその理由が費用面の負担にあることを知ったみどりは、主治医と丸岡夫妻に「ある提案」をするのだった。
今回のテーマは「ジェネリック(後発)医薬品」です。
テレビCMが頻繁に流れていますので、ご存知の方も多いと思います。
突然ですが質問です。
米国での話ですが、国民から最も信頼される職業が何かご存知でしょうか?
私はそれを某ドラッグストアの薬剤師募集の店内放送で知ったのですが…
何と薬剤師は看護師に次ぐ2位なのです(医師より上!)。
あれ?おかしいですね。
「薬剤師ってアンサングな(称賛されない)職業じゃなかったっけ?」「『顔』の見えない薬剤師じゃなかったっけ?」
そう首を傾げる方も多いかと思います。
これには米国特有の事情が背景にあります。
実は米国の保険制度は、掛け金の額によって受けられる医療のレベルが厳格に定められているのです。
処方薬も同様で、次のようなことを薬局薬剤師から言われます。
「あなたはこのランクの保険だから先発品は出せません」
「ジェネリックなら、ここから下のランクの薬の中から選べます」
すると、必然的に会話の流れはこうなりますよね?
患者「私の保険で出せるジェネリックの中で、どれが一番マシですか?」
薬剤師「これがオススメですよ(先発品とほぼ一緒ですから)」
患者「じゃ、それでお願いします」
つまり米国の国民は、薬剤師のサポートのおかげで、最小限のコストで最大限の薬物治療を受けることができる。
だから信頼されているのです。
・・・と、ここで新たな疑問が生まれたかもしれません。
「ジェネリックって、先発品と同じじゃないの?」
「ジェネリックの中にも優劣があるの?」
物語の中では触れられていませんが、実は衝撃的な事実があります。
「先発品 = ジェネリック」は薬剤師以外が言っていいセリフなのです。
つまり、薬剤師が言ったら「失格」ということ。
第一、先程の会話だって「先発品 ≠ ジェネリック」が前提でしたよね?
現役の薬剤師がこんなこと言うのも気が引けますが、ジェネリック医薬品に関する厚労省の主張には少なからず「欺瞞(ズル)」があるのです。
この件に関しては「舞台裏」のコーナーでもお話します。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、丸岡の担当となったみどりは、薬の説明の過程で患者が治療に乗り気ではないことに気付きます。
そのことを主治医である循環器内科医師・六谷に報告したところ、予期せぬ答えが返ってきました。
・・・で?葵さんの意見は?
説明したらこう言われましたって、きみの仕事は伝達係じゃないでしょ?
そこに自分の意見がないとチームとして議論できないよ
ん~、六谷先生、鋭いですねぇ。
当院でも救命救急科では、チーム医療を重要視する分、こんな風に言う先生が多いですね(S坂先生とキャラがダブりました)。
反省し、丸岡の病室を再訪するみどり。
しかし、今回ばかりは伝家の宝刀「寄り添う心」を以てしても、頑なな丸岡から本音を聞き出すことはできませんでした。
唯一、みどりの「感性」がキャッチできたのは「お金」の問題だという点。
・・・でも、ここまで来れば、もうこっちのものです。
なぜなら、みどりには「知性」と「根性」があるから。
【感性】丸岡の低モチベの原因が経済的な理由からだと気付く
【知性】循環器に強い同僚・剣持と相談し、一番「安い処方」を設計
【根性】医師と協議の上、丸岡に処方変更と治療継続を説得
みどりの熱意に促され、丸岡は提案を承諾、無事退院となりました。
不安を克服できた丸岡は、妻に頑張ることを誓い、前を向いたのでした。
今回の「舞台裏」はジェネリック医薬品に関連して「基礎的医薬品」です。
実は近年、医薬品の供給停止や回収が「明らかに」増えています。
主な理由は、海外における製造工程での不備や原材料の不足。
国内で製造すると高いため、安い輸入品に依存し過ぎたことが元凶です。
特に昨年はセファゾリンという「定番」抗菌薬が突如供給停止となり、その煽りから代替薬までもが品薄になってしまい、全国の医療機関は非常に困った状況に陥りました(コロナ禍の今年も心配です)。
これを受け、感染症関連4学会は令和元年8月30日付で厚生労働大臣に対し「抗菌薬の安定供給に向けた4学会の提言-生命を守る薬剤を安心して使えるように-」を提出しました。
その中に「基礎的医薬品」という言葉が登場します。
3.既存の抗菌薬の薬価の見直し
(中略)「基礎的医薬品」については、新たな設備投資等により採算割れとなった場合には即座に薬価を引き上げる制度とするとともに、採算割れの品目を有する企業が制限なく申請できる制度への変更を提案する。
そもそも「基礎的医薬品」とは、治療上欠かせない医薬品が不採算に陥り、販売中止になってしまうことを防ぐために設けられた制度です。
「基礎的医薬品」として承認されると、製薬企業には安定供給(品切れは原則✖)が義務付けられますが、薬価は下支え(据え置きまたは値上げ)され、かつ保険診療上、先発・後発の区分が外されます。
お断りしておきますが、私は何も医療費削減や医薬品の安定供給の必要性に異議を唱えている訳ではありません。
しかし、「お薬代が安くなる」と甘い言葉で患者にジェネリック医薬品を選択させておきながら、その後で製薬企業と結託して薬価を操作するなんて、どう見ても不誠実な姿勢と言わざるを得ません。
「品質」と「値段」に隠された二重の欺瞞
なので、ジェネリック医薬品に理解のある患者であればあるほど、薬剤師は「No」とは言えなくなる、嘘をつかねばならなくなるのです。
≪ジェネリックが基礎的医薬品に変わると困る患者からの質問≫
患者「この薬はジェネリックですよね?」
薬剤師「まあそうですね(実はもう違う)」
患者「国が推奨してるんですよね?」
薬剤師「まあそうですね(実は推奨しているのはジェネリックのみ)」
患者「医療費が削減できるし、お薬代も安くなるんですよね?」
薬剤師「まあそうですね(実は先発品と同じ値段になることも)」
そこにどんな「思惑」や「忖度」が働いているのかはわかりませんが(ジェネリックメーカーを潰したくないから?)、全てをさらけ出した「米国」方式の方が余程誠実だ(嘘をついて信頼される訳がない)と感じた次第です。
第3話の感想
「理想を取るか?現実を取るか?」、選択肢はその2つだけでしょうか?
#3 「俺はあんた達とは違う 」のあらすじ
葵みどり(石原さとみ)と相原くるみ(西野七瀬)は救急センターの処置室にいた瀬野章吾(田中圭)から呼ばれ、搬送された小学校教師、新田奏佑(浅利陽介)の処置を手伝っていた。意識を取り戻し、医師から入院を告げられたが拒否する新田をみどりが落ち着かせる。
調剤室に戻る途中、病院薬剤師の忙しさに辟易するくるみに、みどりは産休育休を取っていた先輩が戻ってくると告げる。しかし、その先輩はドラッグストアに転職することになってしまった。このままでは忙しくなりすぎて、みんな辞めてしまうと嘆く刈谷奈緒子(桜井ユキ)を販田聡子(真矢ミキ)がなだめる。
みどりとくるみが、新田に服用している薬について尋ねると紙袋から大量の薬が出てきた。なかには日付の古い薬がある。また、くるみは半分に割られて処方された錠剤に気付くが、みどりが制した。錠剤を割る処方は、その薬剤で行なってはいけないもの。みどりから話を聞いた刈谷たちも憤る。みどりはドラッグストアに電話して、新田の薬を出した薬剤師に問い合わせるが、白けた対応に腹が立つだけ。それならばと、みどりは直接ドラッグストアに赴く。躊躇しながら店内に入り、薬剤師を探すみどりが声をかけた店員は『娘娘亭』で顔見知りの小野塚綾(成田凌)だった。小野塚が薬剤師だということを隠していた事、新田の薬について電話で応対していたのも小野塚であった事に憤るみどり。どうやら、小野塚は病院薬剤師を嫌っている様子で・・・。
今回のエピソードは、原作の第7話「病院の外」と第8話「ひとりよがり」がベースとなってはいるのですが、ストーリー構成はいつも「三本立て」。
それは公式Twitterでも認めているようですね。
✩薬剤師にとって本当に大切な事とは!?
✩薬剤部、解散のピンチ!?
✩小野塚の正体が明らかに!?
❶「求人難」の図式
このドラマを通じて薬剤師の印象が変わった方は多いと思います。
しかし、現実には「患者の未来に灯をともす」ような仕事のできる薬剤師なんてほんの一握りに過ぎません(※このお話はフィクションです)。
これまでも描写されていたように、薬剤師は不足しているからです。
「こんな素晴らしい体験ができるのになぜ?」
今回のエピソードで、その理由の一端が明かされましたね。
薬剤師免許を取るためには6年制大学を卒業する必要がある。
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費用負担が重いため、奨学金を利用する学生が多い。
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奨学金を返済するためには病院は(薄給なので)敬遠される。
「就職説明会で2名しか学生が来なかった」という描写もありましたが、埼玉県みたいな都会(!?・・・本県よりははるかに、です)でコレでは・・・。
ちなみに私も昨年、2つの大学の就職説明会(下記動画参照)に参加したのですが、誰一人採用にたどり着くことはありませんでした(号泣)。
※販田部長、ストライキじゃなくて良かったですね~(プレゼントされたポーチは「お前も調剤入れや」ってメッセージですよん)。
一方、調剤薬局グループのブースは客足が絶えることはありませんでした。
ならば、調剤薬局の薬剤師が不足していないのかと言うと、今回の話を見る限り、そうでもないようですね(週3で夜通しワンオペってマジ?)。
※それにしても、そんな小野塚に「それはあなた次第じゃないんですか?」とシレッと言うみどりも非情やなぁ(※このお話はフィクションです)。
何せわが国にはコンビニを上回る数の薬局が存在しています。
※平成30年度末現在59,613施設
つまり、薬局にはコンビニのバイト以上の薬剤師数が必要なのです。
余程待遇を良くしなければ薬剤師は集まらない。
ただ、そうやって集めた薬剤師にはフル稼働してもらわないと経営が成り立たないのですから、こんなブラックな勤務形態になりがちなのです。
はぁ~(病院の方がまだましなのかも)。
薬学生の皆さん、よくよく考えないと、ですよ。
ついでに、こんな背筋の凍る動画も紹介しときます(フフフ・・・必見)。
❷知識と経験
今回のエピソードでは様々な専門知識が登場しました。
・レナジェルは食直前服用(食後だと効果減弱の可能性あり)
・アダラートCRは半割不可(成分の溶出速度が変わるため)
・フェロ・グラデュメット⇒フェロミアへの変更提案
(後者は胃腸粘膜を刺激する鉄イオンを遊離しにくい)
・「割ったらあかんのもあるけど、これは割ってもいいやつや」
(Twitterで大反響だった西野七瀬の関西弁)
・「心不全があるのでジルチアゼムの方がコントロールしやすいかと」
(ベラパミルを指示した医師に、瀬野が即座に薬剤変更を提案)
・トローチに穴が開いている理由(喉に詰まらせた時窒息しないため)
ここで一つ強調しておきたいことがあります。
薬剤師だからといって、全ての薬の知識がある訳ではありません。
医薬品情報を調べ、それを臨床応用できるスキルがあるだけです。
少しひねくれたことを書くと、医師や看護師だって(そして素人だって)書籍やネットで調べれば、薬剤師と同じく医薬品情報を入手できますが、それを臨床応用できるスキルは現場で経験を重ねた薬剤師にしかありません(スキルがないのに「それはあなた次第じゃないんですか?」って言えます?)。弁護士が「六法全書」を丸暗記している訳ではないのと同じです。ただ、スキルを磨く時間を捻出するためには、迅速に情報を検索できるデータベースを整備する必要がある。それを日々コツコツやってくれているのが、かのDI担当・荒神大先生なのです(おおっ、そうだったのか!)。
「全然駄目だった・・・。俺はあんたたちとは違う」
そう言って劣等感を膨らませる薬局薬剤師・小野塚ですが、いくら本で勉強したところで場数を踏まなければ、使い物になる薬剤師にはなれません。
薬剤師には「知識」とそれを活かせるだけの「経験」が必要なのです。
❸第三の選択肢
今回最も印象に残ったシーンがこれです。
小野塚「病院の外でもそっちの理想振りかざしてんじゃねぇよ」
新田「会ったばかりの人に生き方までとやかく言われたくりません」
「私のやり方って間違ってるんですかね・・・」
今後の服薬管理に向け話し合いを試みるも、小野塚にも新田にも拒絶され落ち込むみどりに瀬野はこう返します。
「お前のやり方なんかどうだっていいだろ?
お前がしたいことじゃなくて、患者がして欲しいことをやれよ」
とても的を得たアドバイスです。
当事者は往々にして余裕がないため、「理想か現実か」という狭い視野に陥ってしまっています(新田は理想を、小野塚は現実を選択していました)。
しかし薬剤師ならば、相手を理解し「知識」と「経験」をフル稼働させれば、「第三の選択肢」を見つけ出すことも不可能ではありません。
それこそが薬剤師に求められている役割ではないでしょうか?
❹七尾に同情
(マナブさん風に)先日私はこんなツイートをしました。
ヒールな役回りの副部長・七尾。
同じ副部長の私には共感できる部分もある。
「こんなに薬剤師不足なのに、対物業務すら十分とは言えないのに、一握りの患者に注力するってどうよ?」
対人業務への道のりは険しい。
毎回ネチネチ言って嫌われ感ハンパない副部長の七尾ですが、今回は期せずして刈谷のみならず彼の笑顔まで拝むことができました。
そも、スタンドプレーを戒めるのは管理職の務め。
「和」を尊ぶからこそ、部長勤続20年のサプライズにも参加したのです。
OPから外すなんてあんまりやろ?(部外者の小野塚まで出てるのに)
あと、その他大勢の薬剤師(男性1名・女性3名)や何度も言うけど緑色のユニフォームの面々にもスポットを、最終回までには当ててな~。
第10話の感想
治る見込みの薄い患者に薬剤師ができることとは?
#10 「薬剤部はバラバラになった 」のあらすじ
葵みどり(石原さとみ)は瀬野章吾(田中圭)の担当薬剤師となる。瀬野の担当医師は消化器内科の畑中聡(長谷川朝晴)だ。瀬野の重複がんで問題となるのは、標準治療が確立されていない副腎がん。効果が期待できる既存薬の投与が始まるが、数週間後も改善しなかった。
みどりは副腎がんを調べるが有効な手立てが見つからない。そんなみどりに、七尾拓(池田鉄洋)が海外に副腎がんへの有効性が認められる薬があると教える。しかし、治験薬を萬津総合病院で使用するには問題が多い。七尾は治験薬の承認を得るための3つの関門を伝える。畑中に治験責任医師になってもらうこと、病院内の治験審査委員会の承認を得ること、何より瀬野の同意を取得すること。その全てをみどりの責任でクリアすることを条件とした。
そんな時、瀬野は救急搬送される患者を見かけて後を追う。患者は心筋梗塞で倒れた丸岡はじめ(近藤公園)。瀬野は付き添って来た妻の彩乃(宮澤佐江)に丸岡の常用薬を医師か看護師に伝えるようアドバイス。彩乃がすぐに看護師に教えたため丸岡は難を逃れた。そして、丸岡は瀬野の隣のベッドに入院する。
みどりは瀬野への治験薬投与について薬剤部の仲間に話す。相原くるみ(西野七瀬)は希望を抱くが、刈谷奈緒子(桜井ユキ)たちは承認へのハードルの高さに難色を示す。それでも治験の実現を目指したいと言うみどりに、刈谷は他の患者へ迷惑をかけるようなことは許さないと釘をさした。
今回は、薬の経済性がテーマの原作第10話「夢と懐」と、治験薬の使用プロセスを描いたオリジナルストーリーが同時進行します。
第10話は
✩くるみの処方変更
✩ハードルだらけの治験薬
✩ 紡ぐ願い…瀬野の運命は…
の三本立てでお届けします
・・・公式Twitterより
❶ジェネリック「裏」事情
アスピリン、クロピトグレル、ビソプロロール、ベリンドプリルエルブミン
⇒ 心筋梗塞の再発を防ぐ薬(前2剤は抗血栓薬、後2剤は降圧薬)
ランソプラゾールOD
⇒ アスピリンによる胃潰瘍を防ぐ薬
ロスバスタチン、ニコランジル
⇒ 元々服用していた薬(脂質代謝異常・狭心症の薬)
心筋梗塞を発症した丸岡は、薬が一気に2⇒7種類に増えてしまいました。
経済的な負担を危惧する丸岡に対し、くるみ(そして瀬野)はジェネリック医薬品や合剤への処方変更を検討するのでした。
たった97円/日のコストダウン。
しかし、それでも患者の未来に灯をともすことはできました。
・・・ここから先は、現役の薬剤師ならではのツッコミです(笑)。
くるみの提案はありえない!?
今のご時勢、ジェネリック医薬品を採用している病院が大半です。なので、今回のように先発医薬品⇒ジェネリック医薬品に変更してコストダウンを図ることは現実には不可能だった筈です(※このお話はフィクションです)。
ドラマゆえの事情
先発医薬品の名称は大半がブランド名を使用しています。ただ、ドラマでそれを出すと宣伝になってしまうので一般名で出さざるを得なかったのでしょう。瀬野が服用していたミトタン(先発品名:オペプリム)やヒドロモルフォン(先発品名:ナルラピド)も、ほんの一瞬のシーンのためにわざわざPTPシートを作ったのですね。スタッフのご苦労がうかがえます。
❷治験薬の光と影
医薬品が承認されるには事前に治験(第Ⅰ相・第Ⅱ相・第Ⅲ相試験)を行い、その有効性・安全性が実証されねばなりません。
治験は、製薬会社の依頼により医療機関で行われますが、製薬会社に代わって開発業務を行うCRO(開発業務受託機関)や、医療機関の治験業務を支援するSMO(治験施設支援機関)、第三者的な立場から治験を審査するIRB(治験審査委員会)等、様々な機関が関わりながら進められていきます。
通常ならば、SMOに委託して治験に関わる医師や看護師、事務局の業務を支援してもらうところなのですが、今回は治験に関しては素人同然の薬剤部スタッフが一丸となって行った訳です(※このお話はフィクションです)。
ちょっと難しかったですかね?
治験がなぜ必要なのかは、劇中で七尾副部長が熱弁を振るったところですが、私からも少し補足しておきますね(要はwin-win-winの関係です)。
≪治験に参加するメリット・デメリット≫
患者
まだ実用化されていない薬を使用することができ、諸費用も免除されるが、想定外の副作用が生じる可能性もある。治験データが集まり、晴れて実用化となれば、多くの患者が恩恵を受けることとなる。
製薬会社
治験データが集まれば製造承認・市販化へ近づくが、なかなか集まらないこともある。また、芳しい結果が出なければ多額の投資が水泡と帰す。
医療機関
治験協力機関として製薬会社から報酬が得られる。ただ、治験管理センターを設置する必要があり、人的・経済的な負担が必要。
今回「あれっ?」と思ったのが、「第Ⅰ相の治験」という点。
第Ⅰ相試験とは、少数の健康な成人に対し初めてヒトにお薬を投与する段階の試験です。第Ⅰ相試験は主に安全性を確認するために行う試験で、一般的には治療効果を見ることを目的とはしていません。また、併せてお薬の吸収・代謝・排泄に関する情報を収集します。
※東京大学医学部附属病院臨床研究促進センターホームページより
「ありえへんやろ!」と思ったら、癌などの特別な病気の治療薬は、第Ⅰ相試験から患者さんを対象に行うそうですね(初めて知りました)。
瀬野「抗がん剤の第Ⅰ相試験は国立か大学病院でやるのが通例だ」
さすがに瀬野はわかってますね。
治験との関わりは1回で終わりではありません。
計画変更・他施設も含めた有害事象・計画逸脱など、頻繁に治験審査委員会で報告を行い、継続の可否について審査を受ける必要が生じるのです。
治験審査委員会の直前、「情報通」の工藤がみどりに助言していたように、委員には「一般人」が含まれています。
■治験審査委員の構成
「専門委員」「非専門委員」「外部委員」らが5名以上集まったグループで構成されている。
・専門委員…医学などの専門知識を持った人(医師、看護師、薬剤師など)
・非専門委員…医学などの専門知識を持っていない人(弁護士など)
・外部委員…医療機関との利害関係が一切生まれない人(一般人)
■治験審査委員の業務内容
主に、下記の視点からの調査・審議を行う。
・治験が被験者にとって、倫理的・科学的な側面から安全なものか
・治験内容が、該当する医療機関で行う治験として適切か
・治験を継続することは可能か
一般人を委員に入れる理由は、治験関係者(製薬会社・実施医療機関)から独立した第三者的な立場からの公平な審査を実施するためです。
将来、あなたも治験審査委員会の席に着いているかもしれません。
❸想いをつなぐ
今回のエピソードで様々な「つながり」が明らかになりました。
・瀬野の母親(佐織里)は萬津総合病院の薬剤師で販田部長の先輩だった。
・七尾は10年前に先輩である佐織里の治験に関わったが救えなかった。
・佐織里は白血病で入院中だったみどりの妹の担当薬剤師だった。
・みどりが病院薬剤師を目指したきっかけは佐織里だった。
みどりは佐織里に掛けもらった言葉をその息子に掛けることになりました。
どんなに悲観的な状況でも患者から逃げず、その気持ちを受け止める覚悟を薬剤師として忘れてはなりません(患者の立場からもお願いします)。
さて2年後、臨床研修のため調剤室に訪れた心春がこうたずねます。
心春「あの・・・葵さんと瀬野さんは?」
くるみ「・・・」
刈谷「いない」
心春「え?」
刈谷「あの2人はもういない。薬剤部はばらばらになったの」
瀬野は永眠したとして(←「おい、決めつけるな!」)としてみどりは・・・。
第2巻はここまで。
これ以降は、このブログ共々「第3巻」へと移ります。
次回(Rp.12)は新型コロナ・・・じゃなくて、インフルエンザのお話です。
マスコミに振り回される患者を前に、ハクが・・・苛立ちます(笑)。
病院薬剤師って素晴らしい!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。