病院薬剤師が語るアンサングシンデレラの舞台裏(第4巻)
皆さん、こんにちわ。病院薬剤師だまさんと申します。
本ブログ(note)にアクセスしていただき、ありがとうございます。
本ブログは、2020年4月よりフジテレビ系でスタートする木曜劇場「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」を10倍楽しむためのブログです。
Rp.15 「無防備」な飲み合わせ~薬物相互作用は薬剤師の独壇場!?~
(あらすじ)
ひどい生理痛に悩むOL・遠野は、薬局で婦人科受診を勧められる。みどりの病院を受診した遠野は低用量ピルを処方されるが、症状は一向に改善しなかった。ある日、窓口前でうずくまる遠野を発見したみどりは・・・。
今回のテーマは「薬物相互作用マネジメント」です。
薬に「相互作用」、つまり飲み合わせの善し悪しがあることはご存知の方も多いと思いますが、その「マネジメント」とは一体・・・?
実は薬剤師には、複数の薬を見せられて、それで「どの薬」が「どの薬」に対して「どの程度の影響」を与えるかを予測できるスキルがあるのです。
「代替薬を提案して相互作用を回避する」といったことも造作ありません。
それと「似たこと」は医師でも可能ですが、あくまで「善し悪し」がわかる程度であって、薬剤師からは数段レベルが落ちてしまいます。
格差の理由を端的に言えば、「理論的な予測」ができるか否かの違いです。
このように「薬物相互作用マネジメント」は薬剤師の独壇場なのです。
さて、産婦人科で医師から「低用量ピル」の服用を勧められた遠野。
「え?ピルって避妊の薬じゃないの?」
実はそれだけではありません。
昼休憩中にもみどりたちが話題にしていましたが、一口に「ピル」と言ってもその種類は多く、混乱や誤解があることと思います。
薬品毎に若干の成分の違いはありますが、ピルとは「卵胞ホルモン」と「黄体ホルモン」という2種類の女性ホルモンを配合した薬のことです。
違うのは、それに含まれるホルモン量と用途だけ。
高用量ピル
機能性子宮出血・月経困難症・卵巣機能不全による不妊症などの治療を目的する薬で、経口避妊薬としても転用されていました。しかし、血栓症・頭痛・吐き気などの副作用が問題となり、現在では発売されていません。
(例)ドオルトン、ソフィア ※ともに発売中止
中用量ピル
高用量ピルと同様、月経異常や不妊症の治療に用いられます。ただ、より副作用の少ない低用量ピルの登場により、緊急避妊する際のアフターピルとして、あるいは生理日をずらす目的で使用されることが増えています。
(例)プラノバール他
※アフターピル(緊急避妊薬)とは
性行為後、望まない妊娠を避ける目的で服用するピルのこと。避妊成功率は約80%ですが、近年は1回の服用でより成功率の高い薬も登場しています。
低用量ピル
避妊目的や軽度の月経異常であれば、副作用の少ない低用量ピルで対応可能です。経口避妊薬(OC)では、よりホルモン量を減らしたタイプ(三相性)が主流となっています。
(例)避妊用:トリキュラー他、月経困難症等の治療用:ヤーズ他
ちなみに、ヤーズ無効のために変更された「ディナゲスト」は黄体ホルモン製剤であり、鎮痛剤の効果が不十分な場合の第一選択とされている薬です。
詳しくは下記サイトもご覧ください。
それにしても、久保山先生が言いかけた「だいたいそっちだって男の——」って、一体何だったんでしょうね?(男の私もわかりません。Viagra?)
冒頭で「独壇場」と評した薬剤師による「薬物相互作用マネジメント」。
しかし、下記のようなケースは少し厄介です。
❶他院の薬を服用している場合
❷サプリメント・健康食品を摂取している場合
❸摂取してはダメな食品・嗜好品を摂取した場合
❶の場合は、「薬情(薬剤情報提供書)」「お薬手帳」など薬の内容がわかるもの、最低でも薬の実物がないと相互作用を調べることはできません。
❷のサプリメント・健康食品は、情報不足のため評価不能の場合もありますし、患者からの申告がなければ把握のしようがありません。
❸のように、食品・嗜好品(アルコール飲料・タバコなど)の摂取を避けなければならない薬も僅かながら存在します。そういった情報が患者に伝わっていない、あるいはついうっかりして摂取してしまうことは起こり得ます。
※Rp.3の古賀さんも、タバコが喘息の薬(テオフィリン)の作用を弱めることを知らず、勝手に禁煙して大変なこと(中毒)になってしまいました。
今回遠野にヤーズ(低用量ピル)が効かなかった原因は❷だった訳です。
サプリの服用をやめた遠野は、生理痛や生理前後の肌荒れの改善等、ピルの効果を次第に実感できるようになりました。
そして————
「あなたの生活を支えるお手伝いを、薬剤師にもさせてください」
みどりのこの言葉を思い出した遠野は、これからもわからないことがあればネットだけではなく、薬剤師も拠り所にしようと決意するのでした。
今回の舞台裏は「セント・ジョーンズ・ワート」。
そう、今回遠野が振り回される原因となったサプリメントです。
実はこのサプリ、薬剤師泣かせの「ラスボス」級の強敵なのです。
セント・ジョーンズ・ワート(St. John's wort)とは
ヨーロッパや中央アジアに広く分布するオトギリソウ科の多年草のセイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)という植物種を指す。ハーブとして、抑うつ症、不安、無感動、睡眠障害、不眠症、食欲不振、自信喪失など多くの精神的症状に効果があるとされる。
ひと口に相互作用と言っても、そのメカニズムは多種多様、セント・ジョーンズ・ワートの場合、こんな感じです(※専門的な内容を含みます)。
セント・ジョーンズ・ワートが薬物相互作用を起こす機序(抜粋)
①MAO(モノアミン酸化酵素)の阻害
②CYP1A1,1A2,3A4の誘導
③CYP1A2,3A4,2C9,2C19,2D6の阻害
④P-糖蛋白の阻害または誘導
メカニズムが複雑で、しかも「超」強力(効果が0~十数倍にも変化)。
さしもの薬剤師でも、薬の作用にどんな影響を及ぼすか予想もつきません(まるでドラクエの呪文「パルプンテ」です)。
結論としては「触らぬ神に祟りなし」。
皆さん、悪い事は言いません、このサプリだけは避けた方が無難ですぜ。
今回はここまで。
次回(Rp.16)からは「薬薬連携」編に突入します。
Rp.16 チーム医療の「中」と「外」を結ぶ線~健全なコンセッション(譲歩)とは~
(あらすじ)
救急搬送されたパニック障害患者・若月が転棟してきた。捉えどころがなく、OD(薬の過量内服)の常習患者で重複診療の疑いもある若月にどう対処したらよいか考えあぐむみどりたち。その時、瀬野が伝えたこととは?
第17~20話は「薬薬連携」編となります。
第17話「越えられぬ線」
第18話「与えられた「役割」」
第19話「私の"精一杯"」
第20話「長く「看る」こと」
これまでのお話とは違い、登場人物も多いし、病院薬剤師としては馴染みの薄い薬局薬剤師の実情も描かれているし、しかも長編ときた(笑)。
自分自身、勉強のつもりでじっくり書かせてもらいました。
今回はチーム医療に関して病院の「中」と「外」に焦点を当てたお話です。
ご都合主義なんでしょうねぇ、みどりの病棟(小児科病棟)にパニック障害の患者で、ODとしては4度目の入院となる若月が転棟してきました。
パニック障害とは
予期しないパニック発作が繰り返し起こっており、1か月以上にわたりパニック発作について心配したり、行動を変えているという特徴を持つ不安障害に分類される精神障害(Wikipediaより)。
内科病棟で関わっていたみどりの同期の内科医・庄司、それと後輩の薬剤師・くるみ(相原)と共に若月を担当することとなったみどり。
入退院を繰り返すものの、専門施設への入院は拒否。
発言もどこまでが本音でどこからが嘘なのかわからず、捉えどころのない若月を前に、みどりたちは困惑します。
持参薬の内容から重複診療を疑ったくるみは、「かかりつけ薬剤師制度」(後述)を紹介しますが、これに若月は関心を示さないばかりか・・・。
「なんか病院にいると落ち着くっていうか、ちゃんと眠れるし」
退院延期を希望、しかも主治医も夫も同意していると言うのです。
若月の退院延期の許可を下した庄司にみどりは異議を唱えます。
みどりの主張:「入院長期化は若月のためにならない」
庄司の主張:「希望があれば病床稼働率UPのため受け入れる」
患者のことを優先するみどりと病院経営を優先する庄司は衝突し・・・
「それを葵さんが言う権利は無いんじゃないかな・・・」
庄司のこの一言でバトルは終了するのですが、その後の飲み会でみどりは瀬野からまさかのダメ出しを喰らいます。
「俺たちはより良いと思うものを提案することはできるけど、治療方針を決めるのはあくまで医師だ」
「もちろん対等に意見することは重要だし、どんどん関わっていくべきだけど、自分の主義主張を押し通そうとしたらチームは機能しなくなる」
瀬野は(その後の病院経営の話も含め)重要な視点を教えてくれています。
それに関連して、今回の舞台裏は「健全なコンセッション(譲歩)」です。
私はASTの一員なので、抗菌薬の変更を提案することがよくあります。
その際私が大切にしている信条が「健全なコンセッション」です。
「譲歩」と聞くとネガティブな印象を受けるかもしれませんが、こちらの主義主張を無理強いして100%拒否られては元も子もないのです。
ならば、今回はたとえ70%でも提案さえ通れば、薬剤師への信頼度は積み上がり、次回へと繋がっていく訳です。
そうした医師を支える姿勢とエビデンス(科学的根拠)が大切です。
ちなみに私はこの概念を「コンサルテーション・スキル」(岩田健太郎著;南江堂)という本で学びました。
なかなか本音を聞き出せない若月へのアプローチの必要性を感じつつも、入院中にできることの限界を痛感するみどりたち。
そこで瀬野が口を開きます。
「病院の「中」と「外」を切り離して考えすぎじゃないか?」
「俺たち薬剤師は、病院の中でも普段の生活に戻った後でも患者と接することができるんだから」(クローズアップされる薬局薬剤師・小野塚の姿)
チーム医療の「中」と「外」を結ぶ線。
それが薬剤師にもあることを忘れてはいけません。
今回はここまで。
次回(Rp.17)ではこれまで傍観者に過ぎなかったくるみに変化が・・・。
Rp.17 点数がつかない「働き」~医療従事者と職員のジレンマ~
(あらすじ)
意欲的に患者の問題に向き合おうとするみどりの姿に、くるみは自分の無力さを痛感していた。そして若月のつぶやいた「自分てなんなのか忘れそう」という言葉に自分を重ね苦悩するのだった。一方、みどりは「かかりつけ薬剤師」について小野塚に教えを乞うのだが・・・。
第18・19話の主人公は、みどりの後輩・くるみちゃんです。
険悪だった庄司との関係を「瞬速」で修復するみどり。
ムッとされながらも庄司に再考を促す臨床心理士・成田。
それに比べて、患者の問題に向き合うことができない傍観者の自分。
「私は病院にいる意味のある薬剤師なんだろうか?」
自分の「役割」を見失いそうになるくるみでした。
今回の物語の中で「意味深」なテロップ(!?)が流れます。
私たちは医療従事者であり、そしてあくまで病院の職員だ。その働きは診療報酬という「点数」で評価され、コストに見合わない働きは見直しを要求される。けれど、「点数がつかない働き」は現場に無数に存在していて、誰かの助けになっていることは、きっと気づかれないままなのだろう。
これをあえて挿入した作者の意図を考えてみました。
私が薬剤師になったばかりの頃は病棟業務の黎明期で、病院薬剤師の稼ぎ口といったら調剤技術料か薬価差益くらいしかありませんでした。
実際、当時は朝から晩までただひたすら調剤する毎日でした(迅速かつ正確に調剤できることが優秀な薬剤師の条件でした)。
ところが、薬剤管理指導料、更には病棟薬剤業務実施加算が認められるに至り、薬剤師は否が応でも臨床の世界へと進出することとなります。
この30年余り、薬剤師は道なき道を「点数」の誘導で歩んできたのです。
・・・それはそれで仕方のないことだったのかもしれません。
しかし、私には一つだけ危惧することがあります。
それは「医療従事者としての薬剤師」と「職員(企業戦士)としての薬剤師」の境界が曖昧になっていないか、という危惧です。
「点数」がつく働きをしない ⇒ 職員としての資質が問われる
「点数」のつかない働きをしない ⇒ 医療従事者としての資質が問われる
本作品でもみどり度々発揮してきた「根性」もまた「点数」のつかない働き、「すまい」と思えば避けられた働きですよね?
ただ、この「根性」を「点数」基準で捉えてしまうと、「1円にもならない時間の無駄遣い」という話に飛躍してしまいかねません。
問題提起?それとも諦観?
もしかしたら、そういったことを作者は訴えたかったのかもしれません。
同じ頃、今回の件で「退院時カンファレンス」「かかりつけ薬剤師」の必要性を感じたみどりは、意を決して小野塚に相談します。
「かかりつけ薬剤師ね・・・、まぁ地獄のような制度ですよね」(バッサリ)
そのメリットは理解しつつも、毎日オンコール状態の過酷さや制度化(「点数」による誘導)を疑問視する小野塚。
しかし、近隣の薬局仲間との飲み会にみどりを誘うのでした。
≪飲み会のメンバー≫
・坪井(進々堂薬局)
・仁科・金平(笹の葉薬局)
・小野塚(ナカノドラッグ)
・みどり・くるみ(萬津総合病院)
≪飲み会での話題≫
・病院や薬局の評判
・特定の保険薬局への誘導禁止
・薬薬連携やかかりつけ薬剤師制度の足枷(環境整備の遅れ)
・退院時指導への薬局薬剤師の同席の可否(店舗によりけり)
またも傍観者になっていることに気づいたくるみが口を開きます。
「あ・・・、や・・・、私は・・・、存在感ゼロというか・・・」
すると、これに小野塚が反応します。
「・・・俺も患者さんにとってそういう存在だったと思います」
はっとして小野塚の発言に聞き耳を立てるくるみ。
そしてこの言葉がくるみの心に刺さります。
「ひとりの薬剤師との関りが、その後にも影響するってのはあると思う」
笹の葉薬局(在宅に特化した薬局)を後日小野塚と共に見学させてもらう約束をしたみどりたち。
そして、小野塚より新田の近況を聞かされ、みどりは安堵します。
あれれ、この二人、随分といい雰囲気になりましたなぁ(笑)。
薬局仲間から評判の良かった医院への紹介も決まり、退院時指導を前にくるみは手作りの「薬局マップ」を若月にプレゼントします。
「(薬局マップは)あれが私なりの精一杯です」
これもまた「点数」のつかない仕事。
無意味な仕事かもしれない。
でも何か変わるかもしれない。
ほんの少しずつでも。
庄司の働きかけもあり、夫同席で退院時指導を終えることができたくるみ。
薬剤師との出逢いが、患者に小さな一歩を踏み出させることがある。
患者との出逢いも、薬剤師に小さな一歩を踏み出させることがある。
「思ったようにいかなくても、そのときはまた全力で向き合おう」
そう決意したくるみでした。
今回の舞台裏は「かかりつけ薬剤師」です。
2016年度調剤報酬改定で「かかりつけ薬剤師指導料」が新設されました。
その意図は、厚労省が2015年に公表した「患者のための薬局ビジョン」に基づき、処方箋調剤に依存する現状からの転換を促すことにありました。
ただ、「かかりつけ薬剤師」では服薬管理の一元化によるメリットはあるものの、患者に下記のような煩雑さやコストを負担させることとなります。
≪患者側の負担≫
・薬局薬剤師に疾病のことを細かく話さなければならない
・病院で話したことを薬局でまた話さなければならない
・1回の算定につき73点(730円)
当然ながら本制度は患者のためのものですので、作中で小野塚も言っているように、まず優先されるべきは「患者側への周知」です。
ところが、実際には曖昧な説明(例えば「国の方針ですから」)で合意を取り、うやむやに算定してしまっている事例も漏れ聞きます。
かと思えば、(これまた小野塚談ですが)元々「かかりつけ」機能を果たしているにもかかわらず、今更算定することに二の足を踏んでいる「バカ正直」な薬局も存在する訳です。
そもそも日本型医薬分業は「点数」による誘導、いわば国の敷いたレールに沿って、乗客(患者)の目線を意識しないまま突っ走ってきました。
その証拠に、別の制度「健康サポート薬局」に「点数」は付きませんが、届出があるのは大手チェーン薬局が過半数であり、中小薬局はごく僅かです。
以上の事実と先述の「テロップ」論を総合すると、(ちょっと厳しいかもしれませんが・・・)こんな仮説が立てられてしまいます。
薬局によっては「点数」のつかない働きを(意図的に?)避けている
↓
医療従事者としてのアイデンティティが乏しい(と取られても仕方がない)
↓
薬局の評価が高まらない(バッシングを受けやすい)
「点数」による誘導の弊害とも言えますが・・・(なら薬局は悪くない?)。
また「病院の外でも理想振りかざしてんじゃねーよ」って言われますかね?
今回はここまで。
次回(Rp.18)では笹の葉薬局の見学を通じて、みどりたちは目から鱗を「何枚も」落とします。
主題歌『YES AND NO』と原作漫画のスペシャルコラボが実現したMMV(MANGA MUSIC VIDEO)のティザーが公開されました!
Rp.18 薬剤師の「顔」の見せ方~薬剤師としてのこれから~
(あらすじ)
在宅特化薬局「笹の葉薬局」を見学することになったみどりたち。病院薬剤師の限界を感じ、在宅医療を目指すこととなった仁科。地域医療を担う矜持と使命感に溢れる仁科の話に、みどりたちは釘付けとなるのだった・・・。
医療原案の富野浩充さんの取材力と漫画家の荒井ママレさんの(画力はもちろん)構成力には、いつもながら感嘆させられます。
とりわけ今回は、まるで実際に薬局を見学したようなダイナミズムを感じさせる「質」の高いお話でした。
終盤でみどりたちも言ってましたが、病院薬剤師とて在宅医療のことを知る機会はほとんどありません。
そういった意味でも、是非現役の病院薬剤師にも読んでもらいたい回です。
まず最初に笹の葉薬局※の概要とヒストリーの話を聞くみどりたち。
※モデルとなった竹の葉薬局三鷹新川店のHPはこちら
病院の目的 ⇒ 退院すること
在宅医療の目的 ⇒ 長く看る(×診る)こと(=最期まで看ること)
「病院にいた頃より患者や他職種との距離が近くなった」
「家の中で病院のような環境を作り出している」
「地域社会に必要な薬局だと胸を張って言える」
「病院よりは確実に給料アップする」
仁科の話は、みどりたちにはどれも新鮮なことばかりでした。
終末期医療に関わることへの不安を吐露する小野塚に、仁科は「知識」や「経験」よりも、患者の生活に寄り添う「覚悟」の重要性を強調します。
小野塚「・・・それも薬剤師の役割ですか」
仁科「もちろん、全医療者の役割だよ」
仁科はある終末期患者との関わりの一部始終を紹介します。
果てには、その患者宅まで押し掛けることになったみどりたち。
薬剤師としてできることを、懸命に追究している自分たち
家の中に入り、街の人の生活にごく自然に存在している仁科
みどり「すごく不思議な光景だった」
くるみ「薬剤師としてのすごく大きな選択肢を知ることができて良かった」
「薬剤師としてのこれから」を考える良い機会となった一日でした。
今回の舞台裏はど真ん中のテーマ、「薬薬連携」です。
笹の葉薬局・仁科はみどりとは違った薬剤師の「顔」を見せてくれました。
しかし、薬局薬剤師だけでなく、病院薬剤師もまた30年がかりで「対物業務(のみ)」から「対人業務(も)」への転換が図られてきました。
※私もその「ビフォーアフター」を垣間見た薬剤師の一人です(笑)。
「薬あるところに薬剤師あり!」(全田浩氏)
病院薬剤師の業務は、その程度の差こそあれ、病院全体への浸透を達成したため、次なる課題は「在宅医療」ということになります。
医療資源(人材)がほとんどない「生活の場」で唯一可能な医療が薬物療法である以上、入院と在宅をつなぐ薬剤師が必要不可欠だからです。
なので、病院薬剤師も実は目から鱗を落としている場合ではなくて、「薬薬連携」に向け、とっくの昔に動き出していなければならないのですが・・・。
返す返すも本県の薬剤師不足は深刻です。
聞けば、地域を担う中小病院の薬剤師も高齢化が顕著で(大半が後期高齢者)、絶滅危惧種(!?)となっています。
このことがますます将来に影を落としています。
「もし本県に薬学部があったなら」
・・・と思った時期もありましたが、当院に実習に来ている大学の看護実習生の何と8割が県外出身者だと聞き————
「あれ?もし薬学部があったとしても、今と状況は変わらんのかも」
と思ったことでした(号泣)。
うわ、いつの間にか愚痴になってましたね。
この辺にしときましょう。
第6話の感想
希望に沿うだけでは、患者を救えないこともあります。
#6 「病気に大きいも小さいもない」のあらすじ
葵みどり(石原さとみ)は小野塚綾(成田凌)も誘い、相原くるみ(西野七瀬)たちと区民センターで高齢者を対象とした服薬指導教室を行う。指導を終えたみどりたちが廊下に出ると、目の前で高齢の女性、小川早苗(高林由紀子)が倒れた。早苗は萬津総合病院救急センターで豊中瑠衣(臼田あさ美)の治療を受けるが、体調不良の原因がハッキリしないため入院することに。みどりが現在服用している薬を尋ねると、早苗は飲んでいないと答えた。
翌日、刈谷奈緒子(桜井ユキ)が外来患者に服薬指導。的確な指導を行う刈谷を見ていたくるみは、どこからあの自信が来るのかと不思議がる。すると、工藤虹子(金澤美穂)は、刈谷がかつて大手の調剤薬局で働き、幹部候補にもなる優秀な人材だったとくるみに話す。しかし、優秀な刈谷がなぜ病院薬剤師に転職したのかは謎。くるみはみどりにも聞くが知らない様子だ。戻って来た刈谷は、くるみには初めてとなる一人での服薬指導に行くよう告げ、みどりも了承する。くるみが任されたのは月経困難症と診断された遠野倫(山谷花純)。上手く服薬指導が出来たと調剤室に帰って来たくるみに、みどりは何かあったら必ず自分に相談するよう告げる。
七尾拓(池田鉄洋)は早苗が多剤耐性菌の保菌者ではないかと疑った。みどりは多剤耐性菌について調べていると瀬野章吾(田中圭)に患者を見ろと言われ、早苗が本当に服薬していなかったかを調べることに。一方、くるみは遠野から薬が効いていないとの電話を受けるが、みどりに伝えず…。
今回は、生理痛に関するエピソードを描いた原作第16話「月の裏」と独居老人の薬のトラブルを描いたオリジナルストーリーが同時進行します。
耐性化・菌交代症・相互作用・過量投与等、薬の弊害のオンパレードです。
第6話は
✩患者の嘘が意味するものとは
✩くるみ、初めて任された患者に悪戦苦闘
✩荒神さんはテクニシャン
の三本立てです
・・・公式Twitterより
❶多剤耐性菌@七尾
(本来効く筈の)抗菌薬が効かない細菌のことを「耐性菌」と言います。
そのような場合は薬の種類(系統)を変えて治療するのですが、「多剤耐性菌」とは、文字通り多数の薬に耐性を持ってしまった困った細菌です。
「耐性菌」は不要な抗菌薬の使い過ぎで発生すると考えられています。
そもそも抗菌薬は感染症を起こす細菌を退治するためのものです。
しかし、その抗菌薬が効きにくい菌だけが生き残ってしまい、長期間抗菌薬に晒されているうちに耐性を獲得してしまうことがあるのです。
もし「多剤耐性菌」が外部から持ち込まれて院内に広がってしまったら、感染症の治療は非常に難しくなってしまいます。
※現在新型コロナウイルスにも特効薬がありません。それと同じ状況です。
七尾はそんな「最悪の事態」を懸念していました。
よって、今回の小川のような不必要な抗菌薬の服用は論外だったのです。
❷菌交代症@みどり
みどりは小川の病状を見て「クロストリジウム(CD)腸炎」を疑います。
下記の動画は、元々De-escalationの説明用に作ったので多少論点がズレますが、辛抱して最後まで見てください。
ギラペネム = (小川が飲んでいた抗菌薬)スルタミシリン
ドラゴン = クロストリジウム(腸炎の原因菌)
メラシリン = (救急科で点滴が開始された抗菌薬)メトロニダゾール
・・・という訳です(昔作ったこの動画が役に立って良かった~)
❶でも述べた通り、不必要な抗菌薬の長期使用がもとで、「ドラゴン」のような難敵を育ててしまったかもしれないのです。
❸相互作用@くるみ
月経困難症治療薬を服用しても、一向に生理痛が改善しない遠野。
「原因はサプリメントにあるのでは?」
遠野のインスタグラムを見たくるみは、そんな疑念を持ちます(やるねぇ。おじさんには思いつかんかったわ~(笑))。
果たして遠野はセント・ジョーンズ・ワートを服用していたのでした。
※冒頭の記事で詳しく解説していますので、ご覧になってください。
みどりが憑依した(!?)ようなくるみちゃん、主役奪取の日も近い?
❹過量投与@刈谷
「その医者は患者を安心させてはいたけど、本当に助けてはいない」
そう分析する刈谷は、酸化マグネシウムの長期処方で患者を高マグネシウム血症(過量症状)を遭わせてしまった自らの過去を明かすのでした。
※酸化マグネシウムの添付文書より
高齢者への投与
高齢者では、高マグネシウム血症を起こし、重篤な転帰をたどる例が報告されているので、投与量を減量するとともに定期的に血清マグネシウム濃度を測定するなど観察を十分に行い、慎重に投与すること。
「患者が喜んで店も儲かればいい=顧客第一主義」って何かヘンですよね。
独居老人の悲哀を薬害と絡めて描いてみせた今回のエピソード。
「経口抗菌薬(スルタミシリン)でCD腸炎?」(めっちゃレア!?)
「1枚の処方箋には医者のモラルが試されてる筈です」(一生言えんわ)
「お守り代わりなら抗菌薬でなくてもよくない?」(安い薬じゃダメ?)
薬剤師としてはツッコミ所満載でしたが・・・まあ、止めときましょう。
それにしても、CMのような冒頭シーンに、本編のようなCM。
まぎらわすぃです(笑)。
第7話の感想
厚労省が求める薬剤師像ってどっちなんだい?
#7 「やれる治療があるだけマシだから」のあらすじ
葵みどり(石原さとみ)たちが朝の準備運動をしていると、販田聡子(真矢ミキ)が薬剤部の人員不足を解消するため作業ロボットの導入を話す。販田は院長と交渉して高額な導入予算を勝ち取るため、問題を起こさないようにとみどりに釘を刺した。そんなみどりに、瀬野章吾(田中圭)が検査結果が出たと伝えに来る。結果が出たのは急性骨髄性白血病で入院中の簑島心春(穂志もえか)。心春は新人の頃のみどりが瀬野に任された患者で、一度は寛解したものの再発、再入院していた。検査結果は良好で退院出来ることになり、みどりと心春は喜び合う。そんな二人の前を病院長の案内で特別室に入る患者が通りかかる。
特別室に入った患者は議員の古賀万奈美(渡辺真起子)。左尺骨のヒビでの入院だ。だが、元秘書へのパワハラ疑惑でマスコミに追われる古賀には良い隠れみの。みどりは相原くるみ(西野七瀬)と古賀の病室へ。みどりたちの問いかけに、古賀は答えず、秘書の鴨居健介(モロ師岡)が代わりに応答する。みどりは喘息の持病を持つ古賀の容態も聞きたかったが、古賀がそのような態度なので答えは得られない。
翌日、心春が手紙を書いていると古賀が現れた。しばらく話をしていると、古賀が胸を抑えてしゃがみ込んでしまう。助けを求めに走る心春は、出くわしたみどりとくるみに報告。みどりたちは古賀のもとへ向かう。その時、心春は体調の異変を感じていた。
今回は、テオフィリン中毒の原因をみどりが究明する原作第1話「「普通」のために」と心春の門出を描いたオリジナルストーリーが同時進行します。
ラストには原作にはなかった衝撃の展開が!(ネタバレぇぇぇ)
第7話は
✩''ただ者じゃない"患者に波乱
✩試される薬剤師の信念とは
✩人員不足を解消する策があった
の三本立てでお届けします
・・・公式Twitterより
❶患者は生きた教材
「薬剤師は顔が見えない」
そんな風に批判を浴びる薬剤師ですが、そこには大きな誤解があります。
薬の知識だけでは薬剤師は務まらないのです。
その知識を臨床に応用できて初めて「使いこなせた」と言えるのです。
そのためには「患者を理解できる」薬剤師にならなければなりません。
今回、「頭のいいおばさん」こと古賀は、「病院の主」こと心春と接することで多くの学びを得ることができました。
古賀がもし薬剤師だったらどうだったでしょうか?
患者は生きた教材。
「顔の見える」薬剤師になるためには、みどりのような薬剤師がもっともっと増えなくてはいけません。
薬剤師不足をいかに解決するかが鍵なのですが・・・(やっぱロボッツ?)
❷どの口が言う?
「覚醒前」だから仕方ないとはいえ、古賀の物言いは我慢なりませんな。
「病院薬剤師が患者に口出しする必要なんてない」
「薬剤師は専門業務に集中できているかどうかが重要」
「今の病棟薬剤師は業務が多岐に渡り過ぎている」
「他職種でもできる薬品管理や受発注業務が負担になってるし、外来の処方も院外で対応した方が効率的」
「何より患者への対応は看護師や医師に任せるべき」
「それ(チーム医療ができるから)は綺麗事」
「調剤と病棟業務で休み時間が減ったり残業が増える」
「処方箋が捌ききれず、病棟業務や化学療法の事前チェックが時間外にズレ込んでるわよね」
「あなたみたいに患者に関わり過ぎるやり方は間違ってる!」
は~い、長台詞、ご苦労様(笑)。
気に入らないと院長を通じて圧力を掛けて来る辺りも、もろ政治家ですな。
誤解のないように申し上げておくと、みどりがやっていることは(やり過ぎ感はあるものの)全て厚労省が推奨していることなのです。
ある意味、このドラマは病院薬剤師の理想像を描いた広報動画です。
「もし何もやってなかったら、特定共同指導で注意するくせに」
※うちなんか、厚労省の指導官に「この規模でこの薬剤師数でよく回せますね」と感心されたくらいですぜ。
ただ、さすがは「頭のいいおばさん」、深みのある発言もありました。
「国会議員の仕事はね、翻訳みたいなもんなの」
「国民の声を制度や法律という形に変換するのが仕事」
「それには作る力と聴く力が求められる」
「私は・・・作る力にこだわり過ぎて聴く力を軽視したかもしれない」
「でもね、作るには少々強引でも突破する力が必要なの」
「だから私は今の自分のままでいく」
古賀はみどりを通じて今の自分に足りない点を学習したのです(さすが)。
❸クライマックスに向けて!?
終盤、そして次回予告で明らかとなった瀬野の体調の異変。
吐血?ならば母親と同じ胃がんに?
原作(第26話の時点)で瀬野は(出番は減りましたが)ピンピンしてます。
師匠がみどりに淡々と遺言を伝えて最終回へ、という展開なのでしょうか?
次回では終末期医療が描かれるようですし、それとリンクするのかも。
さてどうなっていくのか?
そういえば、OPでそれまでいなかった七尾が加わりましたね。
同じ副部長としてホッ!(笑)。
第8話の感想
薬剤師に求められる「覚悟」とは?
#8 「最後まで看る」のあらすじ
葵みどり(石原さとみ)たちが“調剤の魔術師”と称える荒神寛治(でんでん)が、休暇を取る事になった。手品を練習するためと言う販田聡子(真矢ミキ)に、みどりたちは納得出来ない。ただでさえ忙しい薬剤部に人員の余裕はないのだ。販田は荒神の仕事は自分が兼務すると言うが、薬剤部から一名を調剤薬局の研修に出す事になったとも伝える。みどりが名乗り出るが、刈谷奈緒子(桜井ユキ)は猛反対。だが、みどりの代わりに瀬野章吾(田中圭)が薬剤部に張り付き、救急センターへは必要な時に行くよう販田は手配していた。
みどりが研修するのは在宅医療に特化した『笹の葉薬局』。みどりが笹の葉薬局を探していると小野塚綾(成田凌)に声をかけられる。小野塚も在宅医療を学ぶよう『ナカノドラッグ』の店長に指示されていた。笹の葉薬局代表の仁科敦夫(東根作寿英)は様々な患者の家を回りながら、みどりたちに仕事を説明。高齢者の患者が多いため、仁科たちは薬の管理の他に、食べ物や副作用のチェックなども行っていた。そんな時、末期がん患者の家へ行ったみどりたちを荒神が出迎える。患者は荒神の妻、泰子(大塚良重)だった。
一方、相原くるみ(西野七瀬)はアレルギー性鼻炎の増田航平(田中幸太朗)に服薬指導。くるみは服薬量が多い事が気になるが、増田は意に介さず帰ってしまう。そんなやり取りを見ていた瀬野は、航平と一緒に来ていた息子の翔太(川原瑛都)が気にかかる。
今回は、終末期の在宅医療を描いた原作第20話「長く「看る」こと」と、処方薬を他人に譲る危険性を説いた第21話「巨人の肩」が同時進行します。
第8話は
✩みどりと小野塚が初タッグ
✩瀬野に病魔の影が忍び寄る
✩販田部長の策略
の三本立てでお届けします
・・・公式Twitterより
❶ベールを脱ぐ!?荒神
長期休暇を取ることになった荒神。
「でも、荒神さんいなくてもそんなに関係ないですかね?」
無神経にそう言い放つくるみに販田はこう反論します。
≪荒神が貢献している仕事≫
1)輸液の期限チェック
2)発注伝票の確認
3)厚労省への副作用報告
4)製薬メーカーとの面談
これに工藤と羽倉も同調します。
工藤「DI業務は実は大変なの」
羽倉「そう、DI室のレベルがその病院の薬剤部のレベルを決定すると言われるほど重要なポジション」
ううう・・・(涙)、ようやくDI業務が陽の目を見た~。
※あ、ハクは別にうちの薬剤部のレベルが高いとは言ってないか・・・。
嬉しいけどぉ、ちょっとだけ突っ込ましてぇ。
1)はDIの仕事ちゃうからね(緑色のユニフォームのSPDさんがする)
2)もそう(本来なら刈谷の仕事)
まあ、念願叶い、最終回までにDIがクローズアップされてよかった。
❷超高齢社会の受け皿
超高齢社会となったわが国では、全患者を最期まで病院で看ることは物理的に不可能となりました。
そこで編み出された代案が地域包括ケアシステムです。
このうち医療に関しては「在宅医療」が、その中の薬物療法に関しては笹の葉薬局のような在宅特化型薬局、そして「薬薬連携」(薬局薬剤師と病院薬剤師が連携すること)が重要な役割を占める訳です。
ただ、話し相手になったり、家事を手伝ったり、「薬のことだけ見ていればいい訳でない」ということは、ドラマでも描写されてましたよね?
在宅医療は超高齢社会の受け皿
「(最期まで長く看る)覚悟」がなければできない仕事
ただ、迷いと苦悩の中、薬剤師も患者や家族から学んで成長していく。
大変ですが、それも薬剤師としてのやりがいではないでしょうか?
やっぱり、薬剤師って素晴らしい!
❸処方薬はオーダメイド
セレスタミンの件は上述しているのでここでは触れませんが、病院で処方してもらう薬はその患者さんのためだけのものです。
市販薬 ≒ 既製服
処方薬 ≒ オーダーメイド
「ある人には妙薬でも、別の人には猛毒」という場合もあるのです。
まして自分の薬を小児・妊婦・授乳婦・高齢者にあげる「暴挙」は厳に慎みましょう(医薬品副作用被害救済制度も利用できません)。
さて、次回予告で瀬野の病名は非小細胞肺がん(ステージⅣ)と判明しました(毎年検診もしてただろうにありえへん!てか、原作では壮健やが)。
瀬野「俺の治療と薬のことは、薬剤師の葵みどりに任せる」
みどり「はい!」
瀬野はみどりに何を伝えるのか?
次回以降も見逃せません。
第9話の感想
引き継がれる薬剤師の精神。
#9 「自分が生きていた証」のあらすじ
瀬野章吾(田中圭)が葵みどり(石原さとみ)の目の前で倒れた。救急センターに運ばれ豊中瑠衣(臼田あさ美)の治療を受けた瀬野は、すぐに意識を取り戻す。詳しい検査を受ける事になった瀬野は付き添って来たみどりに、仕事に戻るよう指示した。
翌朝、萬津総合病院には瀬野が倒れたという噂が広がり、調剤室にも伝わる。が、いつものように顔を出した瀬野は逆流性食道炎だったと仲間たちを安心させる。そんな瀬野に刈谷奈緒子(桜井ユキ)は静養した方が良いと忠告。同意した瀬野は、みどりに救急センターの手伝いを頼む。その後、瀬野は販田聡子(真矢ミキ)に,瑠衣から肺に腫瘍の疑いがあると指摘されたため精密検査を受けると報告。そんな時、瀬野に救急センターから急患の呼び出しが入る。
搬送されて来たのは若月陽菜(徳永えり)。みどりと陽菜の所持品から薬を探した瀬野は抗不安定薬の大量の殻を見つけ、オーバードーズ(薬の多量摂取)を疑う。処置にあたっていた瑠衣は、みどりに薬袋の調剤薬局に連絡して陽菜への処方歴を確認するよう頼んだ。すると、やはり陽菜は複数の医療機関から同じ病気の処方箋を受け取り、大量に薬を手に入れていた事が判明。みどりは相原くるみ(西野七瀬)と病室へ服薬指導に行くが陽菜は反抗的。みどりは陽菜にからかわれてしまう。
瀬野は精密検査の結果を消化器内科の畑中聡(長谷川朝晴)から知らされる。それは瀬野にとって受け入れ難いものだった。一方、みどりは小野塚綾(成田凌)から、意外なことを頼まれる。
今回は、OD(薬の過量内服)がテーマの原作第17話「越えられぬ線」・第18話「与えられた「役割」・第19話「私の"精一杯"」と、瀬野の決意を描いたオリジナルストーリーが同時進行します。
第9話は
✩薬を過剰摂取する患者に何が
✩瀬野、迫る命のタイムリミット
✩夢に目覚めた小野塚の覚悟とは
の三本立てでお届けします
・・・公式Twitterより
❶重複がんと遺伝
●●さん、▲▲さん、みんなそれぞれの大切な日常があって、これからもそれぞれの未来が続いていく。それを守っていくのが私たち薬剤師の仕事だ。
OPでみどりが語るこのナレーションに、まさか瀬野の名前が入るなんて!
「がんは遺伝しますか?」
患者や家族の方からよく訊かれる質問ですが、一概には答えられません。
ただ、遺伝するがんが多いのは事実です。
特に瀬野とその母親のような「重複がん」の場合、その理由は明快です。
遺伝子に自然発生する突然変異を修正するDNA修復能力が低いために、遺伝子にエラーが蓄積され、あらゆる臓器でがんになりやすい
近年では遺伝子検査によって、家族にがんの素因が引き継がれているかどうかを調べることが可能となっています。
ただ、遺伝子検査には、遺伝に関わる悩みや不安、疑問などがつきもの。
検査に際しては「遺伝カウンセリング」を受けていただくのが普通です。
かくいうこの私も重複がんの一種、HNPCC(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)の疑い患者(※遺伝子検査はまだだが基準には合致)で、大腸⇒胸腺⇒皮膚と様々ながんと付き合ってきました(亡母は卵巣⇒大腸⇒肺の順でした)。
※もしよければ、私の闘病記の動画もご覧ください(皮膚がん編です)。
ただ、勤務先が総合病院だったこともあり、常に早期発見できており、(放射線療法は経験したけど)抗がん剤はただの一度も使用したことがないのが自慢です(それが自慢かぁ?)。
そして、命を救ってくれた病院に薬剤師として(通常ならできない)恩返しできていることが、患者としての幸運・幸福でもあります。
おお、瀬野に共感するなぁ。
ただねぇ、瀬野く~ん(ここからは【お説教モード】)。
あなたも医療従事者なんだから、お母さんの遺伝子を引き継いでるかもしれないと疑って遺伝子検査、それが嫌なら定期的な検診は必須だった筈。
お母さんが折角ヒントを与えてくれたのに、あの世で泣いてますぜ。
❷オーバードーズ
オーバードーズ(OD)とは、今回の若月のように、身体あるいは精神に急性の有害な作用が生じる量で薬物が使用されることです。
今回の若月の奇行(徳永えりの怪演)をご覧になって、ODの怖さを感じられた方は多いとは思いますが、私は少し別の角度から見ていました。
「これって、ロラゼパムだからこの程度で済む話だよね」
そう、あんなODを他の薬でやってたら命が幾つあっても足りないのです。
ロラゼパム(商品名:ワイパックスなど)はベンゾジアゼピン系薬の一種で、神経症・心身症における不安・緊張・抑うつなどに用いられています。
※パロキセチンによる「セロトニン症候群」で搬送された患者のけいれんを止めた注射(ジアゼパム)もベンゾジアゼピン系薬なんですよ(ふふ!)。
この系統の薬は安全域が広い(服薬自殺が困難)のがウリなのですが、軽いとはいえ依存性があるためODが絶えません。
問題の深刻さに気づいた国は、様々な規制をかけて「脱ベンゾジアゼピン」に躍起ですが、かえって重複診療や処方箋の偽造(カラーコピーなど)で応酬されたりと、OD患者とのいたちごっこは尽きません。
この件に関しては下記のブログで詳しく解説していますのでご覧ください。
❸プラセボ(偽薬)
プラセボとは本物そっくりに作られた偽の薬のことで、「これは薬だ」と信じて飲めば、乳糖やメリケン粉のようなものでも結構効くそうです。
プラセボがなぜ効くのかは、意外にもはっきりしていません。
心理効果のため?
でも、暗示にかかりやすい人にプラセボは効きにくいそうです。
むしろ患者の不安を取り除くことで、生まれつき体に備わっている治癒力が十分発揮されるようになるからだと考えられています。
ちなみに、プラセボの語源は「喜ばせる」というラテン語です。
私が以前勤めていた病院にも「ネルボン」や「セルシン」(ともにベンゾジアゼピン系薬)のプラセボがありましたが、「患者を騙すのは良くない」という理由から、やがて廃止されました。
今回の若月のように「ネタバレ」で飲ませるのはアリかもしれませんが、それでどんな意味があるかは不明です。
現在、プラセボは治験の「必須アイテム」として使用されています。
「二重盲検法」と呼ばれる方法では、本物と本物そっくり作られたプラセボを使って、どちらがより効果があったかを確かめる試験をしています。
要は「プラセボを上回る効果がなければ薬として認めない」という訳です。
それにしても瀬野は死ぬし(←「まだ死んどらんわっ!」)、小野塚は在宅医療ではなく救急医療に目覚めるし、原作逸脱もいいとこ。
原作者の荒井ママレ先生もこんなツイートしてるよん(知らんかったの?)
まるで「ラヂオの時間」ですがな。ハインリッヒィ~(笑)。
来週は七尾が怪しい笑みで瀬野に治験薬を勧める展開(あんま治験のイメージを悪くせんで欲しいわぁ)。
最終回に向け、ここからどうまとめる?
第4巻はここまで。
これ以降は、このブログ共々「第5巻」へと移ります。
病院薬剤師って素晴らしい!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。