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夏こそ冷えに要注意

今回から、漢方・薬膳のコラムを寄稿させていただくことになりました古橋智子と申します。FORME note読者のみなさま、どうぞよろしくお願いいたします。
ヘアサロンのブログなのに、なぜ漢方??? と不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私たちの日々の健康や美容と、漢方はとても深い結びつきがあるのです。

漢方の基本的な考え方に
「扶正祛邪(ふせいきょじゃ)」という言葉があります。

これは、「正気(健康な状態)を扶(たす)け、邪気(体調不良の原因となるもの)を祛(とりさ)る」という意味で、わたしたち自身の身体のベースを整えておくことで、多少悪いものがやってきても立て直すことができるようにしましょう、という考え方です。
昨今関心を集めている「免疫力」「自然治癒力」といったキーワードは、まさにこの「扶正祛邪」とつながります。

これはまた、病気にかかりにくいという意味での健康だけでなく、髪や肌の美しさ、アンチエイジングなどにもつながることではないでしょうか。

このように、一見あまり関係のなさそうな「漢方」というものを、皆さまが日々健康で美しくいられるための一つのヒントとして取り入れていただけるよう、親しみやすいテーマで色々とご紹介していけたら、と思っております。

夏でも基本は「からだを温める」

蒸し暑い毎日、冷たいドリンクや見た目にもかわいいかき氷などが美味しく感じられる方も多いかと思います。

けれど、ちょっと待ってくださいね。

この時期に沢山とってしまった冷たい飲食が、秋以降の身体に影響を及ぼし、さらには婦人科系の慢性的なお悩みにつながっていく可能性がある、ということを知っておいていただければと思います。

漢方・薬膳では、食べ物・飲み物を冷たい状態でとることは殆どありません。たまにお刺身やフレッシュフルーツを食べる場合でも、前後に温める作用のある薬味や飲み物を添えるなど、必ずバランスをとって身体が冷えてしまわないように心がけます。
中国のビールが常温で飲まれているのも、同じ考え方ですね(実際、中国ビールは冷やして飲むよりも常温で飲む方が美味しいのです)。

冷たいものを摂取すると、身体にはどのような影響が出るのでしょうか。

まず、物理的に胃が冷えることで消化に負担がかかり、消化不良や下痢の原因となります。また、女性の場合は胃の近くにある子宮も冷えるので、不正出血、生理不順を引き起こしやすくなりますし、慢性的に子宮が冷えると妊娠が困難になる要因となります。

「秋ナスは嫁に食わせるな」という言葉がありますね。
秋ナスは美味しいから嫁には食べさせない、という意地悪な意味……も、もしかしたらあるかもしれませんが、ナスは身体を冷やす作用があるため、子どもを産むこともお嫁さんの大切な仕事という考え(昔の考え方で、現代にはそぐわないですが)からすると、身体が冷えて妊娠出産に影響が出てはいけない、という意味での言い伝えとも受け取ることができます。

それだけ、冷えは女性の身体には大きな影響がありますので、今すぐでないとしても将来的に妊娠を希望する女性は冷やさないように心がける必要があります。妊活を始めてから慌てて冷やさないようにしても、それまでに蓄積した慢性的な冷えを解消するのは簡単なことではないのです。

また妊娠出産を別としても、他にも様々な婦人科系トラブルはありますし、更年期の悩みも起こります。
婦人科系の問題以外でも、体内の冷えは血流を悪くしますので、頭痛や肩こりなどの原因にもなります。慢性的な頭痛に悩む方もいらっしゃるかと思いますが、実は冷えが原因だった……ということも少なくないと思われます。

婦人科系とつながるツボ「三陰交」

問題は体内だけではありません。

暑いとどうしても薄着になり、露出も多くなりがちですが、外は暑くても今や建物内はどこもエアコンが効いて寒いほど。この寒暖差のせいで、身体はバランスを崩しがちです。
また肌の露出、特に首元の露出は、そこから冷えが体内に入り込んでしまいますので、エアコンの効いた室内では首元を覆えるよう、羽織ものやストールなど、調節のきくものを持ち歩くよう心がけましょう。

同様に、足元を冷やさないようにすることも大切です。
特に足首の冷えは、むくみの原因にもなりますし、足首付近には「三陰交(さんいんこう)」という、婦人科系とつながるツボがあります。

下のイラストをご参照ください。ここを冷やさないように覆うことを心がけましょう。

三陰交画像

夏の生足は魅力的ですが、冷えは大敵ですので、足首がむき出しにならないよう、スカートの時はストッキングや靴下を履くようにしてください。

さらに、身体の中に入り込んだ冷えを解消しないままで秋を迎えると、空気の乾燥や気温低下にともなって風邪を引きやすい状態を助長してしまいます。免疫力が低下して、ウイルスへの感染リスクや回復力にも不安が生じます。

このように、「冷えは万病のもと」といいますが、身体を冷やすことは百害あって一利なしと認識していただければと思います。

冷たくて美味しいものを我慢するのは辛いですし、夏にホットドリンクなんて無理! と思う方もいらっしゃるかと思いますが、冷えている状態に慣れてしまうことが一番危険です。
日常的に冷たいものをとっていて、特に寒くもないし冷えは感じないという方ほど、身体の中は冷え切っている可能性が高いです。

今からでも冷たいものを控えて、いきなりホットドリンクは無理でも、せめて常温の飲み物から始めて、徐々に冷たい飲食を避けていけるよう、心がけてみてください。慣れてしまえば、真夏でもホットドリンクが当たり前になるものです。

たまのお楽しみで、美味しい生野菜のサラダやお刺身、デザートなどを召し上がる時には、ドレッシングや薬味にネギ・生姜・ニンニクなどの温め食材を用いたり消化にやさしいスープを一緒に召し上がる、次のお食事では温かく消化に良いものをとる、などバランスをとっていただければと思います。

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この記事を書いてくれた人:古橋 智子(漢方・薬膳・保存食講師)
漢方上級スタイリスト、養生薬膳アドバイザー、中国茶アドバイザー、かんぶつマエストロ。薬日本堂漢方スクール、長谷園東京店イガモノなどで講座を担当。20代より保存食作りに親しみ、数々のレシピを考案。素材の旬だけでなく、一人ひとりの体質や体調に合った保存食を提案したいという思いから漢方、薬膳を学ぶ。

インスタグラム
https://www.instagram.com/yakuzen_everyday/




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