デザイナーズブックリスト -kogaが選ぶ3冊-
" You kiss by the book. "
本といえば、思い出すのはシェイクスピアの悲劇『ロミオとジュリエット』のこの一節。
「お手本通りにキスなさるのね。」と訳されますが、かつて本は希少かつ高尚で芸術品と等しく美しいものとされていたことから、この"book"は2人のキスのロマンティックな美しさを象徴的に伝える表現なのだそう。
上記は大学で受けた講義の記憶ですが、私にとっての本はなんだろう?と考えると、知識の源泉であり、他者の靴を履く道具であり、子供時代の思い出であり、一人でゆっくり過ごす余暇を象徴するものでもあるなと思います。学生時代は文学部だったので研究の対象でもありました。
そんな私が選ぶ3冊をマガジンの企画に沿ってご紹介したいと思います。
▼ 企画主旨 ▼
1.【一目惚れ】デザインが好きな本
『バムとケロのさむいあさ』島田ゆか
ハイソな書き出しの割に1冊目が絵本なのですが…
本棚を見渡してみて作品として一番好きだなと思ったのが、言わずと知れたバムケロシリーズです。
特筆すべきはキャラクターデザインと細部の描き込み。
現実にはいそうでいない、絶妙な可愛くなさのバムとケロ。そしてあまりにもラブリーな小さいサブキャラたち。3つ耳うさぎのおじぎちゃんやちび犬のヤメピが探せばいつも画面の隅にいて、ストーリーとは全く関係のないところでいたずらしていたり、お茶していたり。隅々まで読者を楽しませようという遊び心あふれる描き込みが大好きです。
2.【私のバイブル】何度も読み返してる本
『センスは知識からはじまる』水野学
美術やデザインを専攻せずにデザイナーになった畑違い人間としては、この表題こそが救いでした。
知ることから始まり、精度を磨いていく。思い込みを捨て「旅」をする。知識の蓄積がセンスを形作っていく。
クリエイティブ職の面接で文系の学生はお呼びでないとボロクソ言われた時や自分の作ったものがゴミにしか見えなくて辞めたくなった時、太刀打ちできないような素晴らしいデザインを見て打ちひしがれた時、なかなか努力が評価に繋がらない惨めな日々。。それでも学び続けようと奮い立たせてくれる一冊です。
3. 【プレゼントに】 誰かに贈りたい本
『愛するということ』エーリッヒ・フロム
真っ白装丁が続いてしまいました。
「愛」というと若干の胡散臭さが漂いますが、恋愛指南書ではありません笑
著者のエーリッヒ・フロムはドイツの社会心理学者です。
原題は"the Art of Loving"、すなわち「愛する技術」。
「愛」を受け取るもの・自然発生する感情ではなく、技術を磨いていくべき能動の行為と捉え、他者を愛するとはどういうことかという本質を説く内容です。
相手を知ろうとし、尊重し、思いやり、相手の幸せに責任を持つことが愛の基本要素だとフロムは言います。
私に「相手の幸せに責任を持つ」ことの大切さを教えてくれたのは猫でした。人間のエゴで飼っているのだから責任が生じるのは当然といえば当然ですが、ちゃんとご飯を食べたか?いつもと違うところはないか?今どんな気持ち?ストレスなく過ごせてる?と言葉の通じない生き物に対して気づかいお世話していく。これがまさに愛でした。
こんなふうに、パートナーはもちろん家族愛、隣人愛、自己愛、全ての人間関係(ときには人間以外との関係🐱)に当てはまるヒントがたくさん詰まった一冊です。悩める全人類に一読をおすすめします。
おわりに
いざ書こうと思うと紹介したい本がたくさん出てきて、3つだけ選ぶのはなかなか難しかったのですが、比較的手に取りやすいものを選んだつもりです。
文学作品が紹介できなかったので、そのうち書けたらいいなと思います。シェイクスピア作品の芸術性とか、日本語訳が出ていない黒人文学とか、興味のある人は少ないかもしれませんが…
では今回はこのあたりで。読んでいただきありがとうございます!
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