オーストラリア不動産投資( 税制改正)
昨今オーストラリアで流行りのBuild-to-Rent(BTR。不動産開発会社が開発後も保有・賃貸するためのマンション)
B u i l d - t o - R e n tに対する投資促進のための税制改正
2023 年4月28 日、オーストラリア連邦政府は、新しく建築されるBuild-to-Rent(BTR。不動産開発会社が開発後も保有・賃貸するためのマンション)プロジェクトの管理投資信託(Managed InvestmentTrust、MIT)の源泉徴収税率を2024 年7月1日から引き下げることを発表しました。また、2023 年5月9日には、当該改正も含めた2023/24 年度予算案が発表されました。 改正後は、適格法域(日本、シンガポール、カナダ、ドイツ、英国、米国等)の外国投資家は、オーストラリアのBTRプロジェクトに関する分配金への源泉徴収について、15%の軽減税率の適用を受けることができるようになります。
現行税制における他の資産との比較
オーストラリアの不動産に対する長期投資においては、長年にわたり管理投資信託(MIT)が投資ヴィークルとして利用されてきました。管理投資信託は、外国投資家にとって好ましいものですが、その税優遇措置は、BTRには適用されません。たとえば、オフィス、物流、ホテル、学生寮等の資産は、15%の軽減税率を享受しているのに対し、BTRの管理投資信託の源泉徴収税率は30%であるため、オーストラリアのBTRは他の資産と比べて税務面で魅力がないものとなっています。 オーストラリア全土における住宅供給への懸念が深まる中、今回の改正により、BTRセクターに外国投資を呼び込むことが期待されています。
諸外国との比較
不動産業界団体のProperty Council of Australiaによる近時の調査によると、オーストラリアのBTRセクターは、住居セクターの0.2%を占めるにすぎず、英国の5.4%や米国の12%と比べて極めて低い割合にとどまっています。
改正の内容
改正後に優遇措置の対象となる適格BTRプロジェクトは、
(1)賃貸用の50 戸以上の住居からなり、
(2)売却が可能となる前に最低10 年間は単一の所有権で保持され、
(3)オーナーは各住居につき最短でも3年間の賃貸期間を提供しなければならない、
等という特徴を有します。
ですので、BTRプロジェクトにおいては、とりわけ出口戦略を検討しておくことが重要です。たとえば、最低保有期間後の潜在的処分価値を最大化するために分譲対応(strata-ready)プロジェクトが設計されている場合、MITの優遇措置の対象となるかどうかを検討しておく必要があります。
改正後の制度の実施に当たって必要となる詳細については、更なる協議によるとされています。
なお、連邦政府は、BTRの建設が2023 年5月9日以降に開始する場合に減価償却率を2.5%から4%へ引き上げる措置も公表しており、ホテル等と同様の扱いとなります。
州税におけるBTRの優遇措置
州税に関しては、ニューサウスウェールズ州とビクトリア州では、適格BTRプロジェクトに利用される土地の課税価格を50%減額する土地税優遇措置がとられており、また、一定の基準を満たした外国投資家は、外国人を対象とする追加印紙税(surcharge stampduty)および追加土地税(surcharge land tax)が免除されます。西オーストラリア州、クイーンズランド州、南オーストラリア州も、同種の優遇措置を設けることを予定していますが、今後すべての州・準州が同様の優遇措置を採用して公平な条件下で国内外からのBTR開発への投資を誘致することになるかが注目されるところです。