【接客】お客さまをほめていいシーン、ダメなシーン――ほめる練習のポイント付き
こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
飲食店、アパレル、美容院、ジムなど、リアルの接客において、お客さまとのコミュニケーションは、次の来店につなげる、いわゆるリピーター獲得のうえで重要であることは誰もが認めるところでしょう。
そのなかで、お客さまをほめることで、目の前の商品の販売につなげたり、モチベーションを上げたり、それが次の来店につながる可能性が高まるわけです。
ただ、「お客さまをほめていいシーンもあれば、逆効果となってしまうダメなシーンがある」と、自身で複数のジム経営をしながら、スモールビジネス専門集客コンサルタントとしても人気を博している日野原大輔さんは言います。
では、どんなシーンでお客さまをほめて良くて、ほめてはいけないのか?
日野原さんは新刊『神・リピート集客術』の中で、その具体的な事例を交えながら解説しながら、ほめるときの重要ポイントを提示しています。そこで今回は、同書の中から該当箇所を全文公開します。
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お客さまに対して「お世辞になっていないか」と思ったら……
自分にも、お客さまにも、ウソをつかない。これはほめるシーンにおいても同じことが言えます。
どんなお店でも、接客する際、お客さまをほめるのは商売の基本です。
「このアイテムを着こなせる方はそういません」
「お肌がとてもきれいですね。何かやってらっしゃるんですか?」
「実においしそうに召し上がりますね!」
「すごくかわいいです!」
などなど。
しかし、これってお世辞っぽく聞こえていないかな?
買ってほしいと思う本音が透けていないかな?
裏がありそうな印象を与えていないかな?
と思いながらほめてはいませんか?
自分でそう感じたときは、商売のためにテクニックでほめるのではなく、自分の気持ちに正直になって、感動を伝えてみてください。
すると、お客さまはあなたからのほめ言葉を素直に受け取ってくれるはずです。
その理由は、どこかで聞いたような借り物の言葉でいくらほめても、相手に信用されないからです。
逆に言うと、本心で伝えたほめ言葉であれば、多少不完全な言葉であっても、笑顔で言い切ることができ、相手の心に刺さるものです。すると、ボンドがくっつき、お客さまが積極的にリピートしてくれる状態をつくることができます。
ほめ上手のコミュニケーション術
たとえば、パーソナルトレーニングはマンツーマンで行なうので、人と比べないのがいいところですが、一方で、お客さまは自分がどれだけ成長しているのかわかりません。
そのため、「〇〇さん、ここまでできるようになりましたよ。よくがんばりましたね!」と本気でほめてあげることが、お客さまが「そうか、だったらもっと上を目指そう」「もっと変わろう」と変容するためのとても重要なファクターになります。
パーソナルトレーナーとは、努力して高度な専門技術を取得するのと同じくらい、ほめ上手になる努力が必要な職業なのです。
もっと言えば、美しくなるために来ている場所で、美しくなった自分をほめてもらえなかったとしたら、お客さまもやる気が半減してしまいます。個人的には、お客さま(特に女性)はほめられればほめられるほど美しくなると思っています。
ところが、ほめるのが上手な人はそう多くありません。なぜかと言えば、トレーナーに限らず、人は日頃、誰かをほめることがほとんどないからです。
しかし、成長しているのにほめないとしたら、それはお客さまより自分のポジションが上だと暗に言っているのに等しい行為です。
特にトレーナーは、「このポーズは難しいでしょう?」「僕ほどの柔軟性はないでしょう?」と自分の優位性をアピールする人が多いのです。
そこで、パーソナルトレーナー養成コースでは、コミュニケーション・スキルを学ぶ第1フェーズに「相手をほめるクセづけ」を置いています。
ほめる練習のポイント
子育て経験のある方はわかると思いますが、「ご飯を食べるときはテレビを見ないで!」「机を汚さないで!」「支度はできたの? ぐずぐずしないで!」など、親は子どもに対してつい口やかましく言ってしまうものです。
しかし、人間の行動は、否定的な言葉だけでは変わっていきません。そうではなく、「机を片づけてくれてありがとう」「自分からテレビを消して、えらいね」「もう歯を磨いたの? よくできたね」と、できたことを肯定してあげてこそ、子どもたちもやる気のスイッチが入り、成長していきます。そのときの親御さんは、「この子は本当にえらい」と思っているはずです。
トレーナーを養成するときも同じで、「小さいことでいいので、心から思うことをほめましょう」と指導しています。
「トレーニングがんばっていますね」「今日もレッスンに来てくれてありがとうございます」「ウエアの色が素敵ですね」など、ちょっとしたことからほめる練習をしてもらいます。
それがある程度できてくると、だんだん大事なところをほめられるようになってきます。「股関節の屈曲がしっかり取れていますね」「呼吸が大きくなってきましたね」「手首がしっかり安定していますね」など、身体のより細かいところをほめられるようになります。そうなればしめたものです。
それでも、お客さまのなかにはほめられたことをご機嫌取りと受け取り、疑心暗鬼になる人もいます。
そんなとき、私なら
「僕はプロとして、身体のことについては決してウソをつきません。〇〇さんよりもっと身体が動く人はいます。でも、〇〇さんは以前より確実にうまくなっています。そうでなければ、僕はあなたのことをほめません。なので、自信を持ってくださいね」
と言い切ります。すると、お客さまも信用してくれ、心からの笑顔を見せてくれます。
ここで大事なのは2点です。
①本当に、心から自分が思ったことだけをほめること。
②真剣にほめること。
皆さんがご自身の商売でどうほめていいか迷ったときは、自分の気持ちに正直になってください。きっとお客さまに伝わるはずです。
ほめテクニック(上級編)
先日、こんなことがありました。加圧トレーニングの効果として、お客さまの髪のツヤが良くなることが多々あるのですが、「髪のツヤが出てきましたね」とお伝えしたところ、「本当ですか? 実は昨日、美容院に行ったら、美容師さんにも髪にツヤがあるってほめられたんです」と、うれしそうに話してくれました。
自分が扱っている商品に対する、こうした二次的効果(副次効果)も大事なほめ要素です。プロの目線でお客さまを見たとき、自分が届けた商品、サービス以外にも納得できる効果を感じたら、ぜひほめてあげてください。
それから、どうしても言わなければいけないことは、ネガティブな意見も正直に言ってあげてください。
あるメイクアップアーティストさんは、「あなたにこのアイシャドウは似合わない」など、ズバッと辛口コメントを言うのですが、裏を返せば、プロとしてその商品をしっかり理解しているからこそ、自信を持って相手に伝えられるわけです。その人に教わらなければ、結局、誰からも「似合わない」と言ってもらえず、見た目で損をしてしまうケースは非常に多いと思います。
しかし、逆にそれで相手の信用を得られます。
私も、たまたま入ったお店で、「お客さまは首回りが太いから、同じT シャツでも、こちらの首回りが広いほうがお似合いになりますよ」とはっきり教えてもらい、そのインパクトが大きくて、しばらくその販売スタッフさんがいるお店に通った経験があります。
いいことも、そうでないことも、言うからには自分に自信を持って本気で伝える。それがきちんと相手に届いたとき、ボンドがピタッとくっつきます。ボンドが同じ圧力でくっついていれば、そう簡単にはがれることはありません。
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いかがでしたか?
「新規客の獲得」コストは、「リピート客の確保」コストの5倍かかるといわれています。スモールビジネスの経営を安定させるのに必要なのは、100人の新規顧客より1人100回の予約――。
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