【フォレスト出版チャンネル#5】出版の裏側|編集者が「本を売る」ためにやっていること
このnoteは2020年11月20日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どこの出版社もやっている販促
渡部:フォレスト出版パーソナリティの渡部洋平です。今回は“編集者が「本を売る」ためにやっていること”をテーマにお伝えしていきたいと思います。今日も2人の編集者に来ていただいています。フォレスト出版編集長の森上さんと副編集長の寺崎さんです。よろしくお願いします。
森上•寺崎:よろしくお願いします。
渡部:さっそくなのですが、「本を売る」と考えたときに、今聞いているリスナーの皆さんはあまりイメージがないと思うので、簡単に概要を教えて欲しいんですけれども。
森上:そうですね。本の流通についてざっくり言うと、まず本ができあがったら、製本所から倉庫に入ります。倉庫から、トーハンさんとか日販さんとか大手2社がありますが、「取次」というところに入って、そこから書店さんに配本されるという流れです。出版社の営業は、取次さんへの営業もするし、各書店さんへの事前受注、本が出てからは、それを補充する提案だったり、新たな展開提案をするといった流れです。
渡部:いまご説明いただいたのが、いわゆる書店営業さんがやることですよね。
森上:そうです。
渡部:逆に編集が売るというと……。編集は本を作る仕事と思われる方もいると思うのですが、その編集が売るためにやっていることってどんなことがあるんですか?
森上:そうですね。会社によるのかな。うちの場合だと、パネルとかポップの作成もやりますよね。
寺崎:営業部が作る会社も多いみたいですけど、うちの場合は編集者本人が作ったり、デザイナーさんに作ってもらったりしてますね。
森上:パネルとは、書店店頭で本が並んでいて、そのそばに置いてあるパネルですね。
渡部:「〇〇さんも大絶賛!」とか。
森上:そうそう。そういった推薦文を入れたり、訴求力のあるコピーを考えたポップやパネルをつくっています。
寺崎:あと、力を入れているアイテムだと、新聞広告の原稿をつくるとか、各メディアさんに毎月出た本を届けるといったようなことをやっていますね。
森上:あと、最近だと、東洋経済オンラインさんなどネットメディアさんで有力なところに新刊関連の原稿を作成(著者作成依頼含む)して、お渡ししたりします。あと、プレスリリースですね。オフィシャルにそれを新刊が出るたびに配信する原稿を作成して配信したり。
寺崎:あとは書店イベント。これも各社やっていると思うんですけど。加えて、書店ではないところでやるイベントもあり、それに合わせて、チラシを作ったりとか。結構そう言った地道なことをやったりしていますね。
森上:だいたいそんな感じで、他の出版社さんでもやっているようなことはやっていますね。
フォレスト出版ならではの販促
渡部:なるほど。やっぱりネットでの販促って今の時代多いみたいですが、ネットだけではなく、書店さんでやるようなことも編集者がフォレストではやっているということですね。他には、「ならでは」みたいなことは何かあるんですか?
森上:うちの会社ならではと言っていいのかどうかわかりませんが、「メルマガ」をやっていますね。そこに新刊の案内をします。その「メルマガ」の原稿を書いたりとか。あと、寺崎さんがよくやっているのは……。
寺崎:書籍の単体のLP(ランディングページ)をつくって、そこからアマゾンに飛ばしたりとか。場合によっては、Facebookの広告とかInstagramの広告とかを連動させてアマゾンさんや楽天さんに飛ばすというようなことをやっています。
森上:メルマガから直接アマゾンに飛ばすよりも、1回ワンクッション、LPを置いて。そのLPの作成も編集がやるって感じですよね。社内デザイナーさんがいるので、デザイナーさんと一緒にやっているという感じですね。あと、たまにやるのですが、動画をつけたり、広告やったりして、特典をつけたキャンペーンですよね。
寺崎:『なぜかうまくいく人のすごい無意識』という本で、新聞広告を出すことになったのですが、カテゴリーのランキング1位に堀江(ホリエモン)さんがいてずっと2位だったんですよ。広告に「アマゾン1位!」っていうのを入れたかったので、「3日間限定キャンペーン」っていうのをやって、それでアマゾン1位を取って広告に載せたなんていう、そんなキャンペーンのやり方をしたりしています。
渡部:「アマゾンで買ってくださいね」っていう広告をやるってことですよね?
寺崎:そうですね。
森上:そのあたりはうちならではの施策かもしれません。他社さんでも一部やっているところもあるみたいですけど。それはうちの特長ですよね。あとは、これは本の宣伝だけではないですが、(2020年)4月下旬くらいから「note」をオフィシャルで始めました。
寺崎:日替わりで毎日。土日も含めて毎日書いています。
森上:編集部、我々も含めて5人なんですけど、5人で土日含めて毎日回して書いていますね。それで少しでも認知というか、広がってくれればというところがありますよね。あとはそれに合わせてSNSの発信。渡部さんがSNSチームをいろいろ管理してくれているんだけど、どういったものがありましたっけ?
渡部:今だとTwitter、Facebook、Instagram、LINE、その辺はやっていますね。そこまで効果的に今発信ができているかっていうと、まだまだこれからかなっていうところなんですが、各種SNSをやっております。
森上:そうですね。それがありますよね。それを渡部さんたちと一緒にやったりとか。あとは、「Voicy」を始めたのも、直接的には売り上げにつながらなくてもいいけど、少しでも知っていただきたいなっていうのがあって。
寺崎:タッチポイントね! タッチポイントを増やすっていう目的。
森上:そうだよね。そういった意味でもこういう音声メディアを始めて、少しでも本の存在をね。本って、結局、知ってもらわなければダメですもんね……。存在しないのと一緒ですからね。そういう意味でも少しでも知っていただく機会を増やそうかなという感じですね。あとは、出版イベントって、先ほどチラッと言いましたが、書店でのイベントというよりも大きな会場を借りてやるイベントもありますよね。
寺崎:本田健さんの『一瞬で人生を変える お金の秘密 happy money』のときね。
森上:あれもそうですね。規模によっては1000人規模とかね。渡部さんも、昔すごいイベントやったんじゃない?
渡部:出版イベントだと、そこまでは……。うち主催ではないですが、本田さんが北海道行ってやられたりとか、沖縄行ってやったりだとか、本当にいろいろやってらっしゃいますよね。
森上:そういうものも、本の販売につながりますもんね。
自社の本を海外に売る
寺崎:あと編集者が本を売るうえで、営業的なことで言いますと、海外版権がそうですよね?
森上:そうですね。今、日本で売られている自社本を他の言語に売る。海外の出版社の自社本の版権を売っていくってことなんですが。台湾、韓国、中国、欧米、ベトナム。その辺の言語ですね。編集者が基本的には行く感じですね。ただ、今年(2020年)は行けなかったですね、新型コロナで。
寺崎:今年はコロナで行けなかったけれど、原価ゼロで、結構成果が出たっていう(笑)。
森上:あれはよかったよね。毎年各国のブックフェアがあるので、そのブックフェアに各編集者が持ち回りで行ってるんですよ。エージェントさん通して版権を紹介して、その翻訳権を売るっていう仕事なんですけど。
寺崎:それこそスーツケースに本40冊ぐらい詰め込んで、ガタガタと引きずりながら行商人のようにあっちの出版社に行って、こっちのエージェント行ってなんて感じで。
森上:今では、ライツセンター(版権商談専用ブース)がちゃんと取れるようになったので変わりましたが……。当初はそんな感じだったね。
寺崎:今年はコロナで開催なしだったので、全部zoomでオンライン商談。中国はzoomが調子悪くて、テンセントのVooVを使って。
森上:あれすごかったよね。いわゆるオンライン商談ができるツールなんですが、zoomより使いやすい。オンライン商談でも成約できたので、今後、海外版権とかどうなるんだって話だよね。現地に行かなくてもできちゃいますよね。
寺崎:現地に行ったら行ったで、人脈が広がるし、現地の人たちと食事したりとか、そういうのは得難いんですけどね。
森上:そういったメリットはあるにせよ、両方だよね。オンラインだったら、ブックフェア関係なくできちゃいますからね。信頼関係を築くためには現地に行くのは重要ですけどね。いつ行けるのか……。
渡部:コロナで変わった、よかった点でもあるんですね。
森上:そうですね。見えたっていうか、新たな道がね。それはあるかもしれないですね。ちなみに、海外版権の商談は、他社さんだと結構編集者じゃなく、ちゃんとした専門部署が行なっているケースが多いかも。
寺崎:専任の方がいらっしゃるケースが多い。
森上:我々のような編集者が行なっている出版社は珍しいかもしれないですね。
渡部:みなさんは語学が堪能なので、できるってことですかね。
寺崎:いや、もうグーグル翻訳があるからね(笑)。
森上:我々はまったくしゃべれないよね(笑)。
最後は結局、コレ!?
渡部:あとは本を売るために編集者がやっていることといえば、どんなことがあるんでしょう。
寺崎:あとは神頼み?
森上:それしかないねー。それはもう各編集者がやっている神頼みだよね。
寺崎:なにかやってます? 森上さん、神頼み?
森上:願掛けはやっていないですけど、ごみが目に付いたら拾っておくとか、そういう感じ(笑)
寺崎:それ、新刊を売るのとあまり関係なくない?(笑)
森上:販促とは関係ない、まったく関係ない(笑)! 神様見ていてくれるんじゃないかみたいな。なにかそういういいことをしようというのは、やっているかな。
寺崎:会社のトイレのペーパータオル切れていたら補充するとか? トイレットペーパー補充するとか?(笑)
森上:トイレットペーパー補充したことはないけど(笑)。ペーパータオルは補充したことはある(笑)。
渡部:補充した結果、売れているんですか?
森上:いや、それは関係なかった(笑)。でも、いいんだよ、それは自分が気持ちよくなるから。
寺崎:僕は新刊を家に持ち帰ると、必ず娘に手にもってもらって、写真を撮って、それをうちの親が見ている写真共有サイトにあげて、1冊はうちの親父が買うっていうね。
森上:なるほど! 1冊の売り上げがあがる! 1冊はちゃんと売るっていう。
渡部:やれることをやったらあとは祈るのみっていうところが出版のドキドキするところというか。
森上:そうですね。そこはありますね。1回出しちゃうと基本的には直せないからね。「ああしておけばよかった」とか「タイトル変えておけばよかった」とかね。それはできないから。毎回、ギャンブルと言えばギャンブルですけど。
渡部:そうですよね。日々、編集者ということで本を作るということも、もちろんメインだと思うのですが。それ以外に本をより多くの人に届けるということで、いろいろやっているということを今日はお伺いすることができました。それでは、また次回も出版社ならではの情報をみなさんにお伝えしていきたいとおもいます。ぜひ楽しみにしていただければと思います。森上さん、寺崎さんありがとうございました。
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)