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はんのう森林みらい塾 Session1実施レポート
2023年10月14日(土)〜15日(日)の2日間、「はんのう森林みらい塾」のSession1 「森を知る weekend」が開催されました。
2023年度、秋から冬にかけての3週末、計6日間にわたって開催される塾の初回となるSession。埼玉県・東京都を中心に、遠くは静岡県や栃木県から集まった15名の受講生が、講師やボランティアメンバーと共に学びを深めました。
本稿では、当日の模様をダイジェストでレポートします。
開校式は、天覧山の麓の緑の中で
開校式は「NPO法人 天覧山・多峯主山の自然を守る会」が活動拠点としているフィールド「ホトケドジョウの里」をお借りし、特設の舞台を設置。受講生たちを迎えました。飯能市街地から目と鼻差の先に豊かな山林がある飯能の地理的な魅力もお伝えできたと思います。
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午前中は10:00~オリエンテーションをスタート。
はじめに、本塾の塾長で地元の私立中高一貫校「自由の森学園」の理事長で林業プログラムも実施している鬼沢真之さん、事務局を担うNPO法人埼玉ハンノウ大学を代表して小野まりさんからご挨拶をさせていただきました。
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つづいて、自然と人をつなぐインタープリター長谷川幸子さんによるアイスブレイクを行いました。長谷川さんは東京都奥多摩町「奥多摩湖畔山のふるさと村ビジターセンター」で長年勤務されたのち、現在は「自然あそび企画舎」を主宰。ハンノウ大学「おやこのキャンパス:もくもくらぶ」の講師も担当しています。
アイスブレイクの内容は誕生日順に大きな人の円を作ったり、「山」「川」「まち」などのキーワードでグループ分けをしてみたりするもの。お互いの共通項があると話が弾みますし、自然の中で少し動いただけで気持ちがほぐれます。
初めての人同士、初めての場所での森林みらい塾。ちょっと緊張もありましたが、長谷川さんの進行でだいぶ打ち解けた雰囲気になりました。
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飯能の低山「天覧山」を歩いて学ぶ
アイスブレイクの後は、阿部浩志さん(森のフィールド学舎)にバトンタッチ。書籍編集・執筆を行う傍ら、環境学習プログラム作成や学校の講師を務める阿部さんの案内で、飯能の身近な低山「天覧山」を歩きました。
森に生える樹種の解説や、動物の通り道の解説など、一人で歩いていては気づかずに通り過ぎてしまうことも、ガイドと巡ると学びに変わります。
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30分ほどの山歩きを終えてホトケドジョウの里に戻ると、グループに別れての振り返り。焚き火を囲みながら、森で見つけたこと、感じたことをシェアしました。
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阿部さんのセッションの後は、お待ちかねのランチタイムです。今回は飯能の山間にある吾野地区でケータリング業を営む惣菜工房「お飯“菜”」にご協力いただき、地元の食材をふんだんに使った料理をご用意しました。
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森林活用のケーススタディ「きたもっく」
午後は会場を市民会館の会議室に移して、ゲストの土屋慶一郎さん(有限会社きたもっく)から北軽井沢の“地域未来創造企業”きたもっくの取り組みについてお話を聞きました。
原野を切り開きキャンプ場を作り、キャンプ場の薪を作るために山を買い、山の材を使った家具や養蜂も展開するという多角経営っぷり。飯能の山はスギ・ヒノキの材木の産地ですが、きたもっくを参考に、視点を変え工夫を重ねれば従来の製材以外の活用法も見出せるかもしれません。
質疑応答では受講生から具体的な質問が上がり、本気度の高さを感じました。
(きたもっくの現地視察レポートはこちら↓)
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西川材と街の繋がりをみて歩く「まちあるき」
この日の最後は、西川材で栄えた飯能市内の街歩き。講師は地元の建築家・浅野正敏さん。浅野さんは長年にわたって歴史的建築物の記録や保全活動に携わってきた方で、埼玉ハンノウ大学で「歴史まちづくりゼミ」も担当されています。
飯能を含む埼玉県西部は明治大正期に養蚕と繊維業で栄えた歴史があり、飯能では大店が西川材を使って蔵や家屋敷を建て、同じく西川材で建てられた料亭で町外の取引先をもてなしたそうです。他の町ではすでに取り壊された当時の建物を、飯能では比較的多く見ることができます。
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西川材フェアー見学
二日目の10月15日(日)は、あいにく雨の中のスタート。飯能市役所に集合し、市役所の駐車場で開催されている「西川材フェアー」を見学しました。
飯能商工会議所・飯能市が主催し、西川材に関わる企業・団体が一堂に集まる年に1回のイベント。木挽きの実演や木組みのジャングルジム、西川材製品マーケットが並んでいました。
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森林活用のケーススタディ「飛騨の森でクマは踊る」
つづいて、西川材フェアー会場のお隣、市役所別館の大会議室にて、この日のメインコンテンツのひとつ「株式会社飛騨の森でクマは踊る」(通称:Hidakuma) 松本剛さんの講演を聞きました。このパートは飯能市森林文化都市記念講演会として開催され、広く飯能の市民の方も参加されていました。年配の方が多い中で、森林みらい塾の若い受講生がいるだけで、飯能にとってはインパクトありです。
松本さんの講演は、「森と街とのあいだにあるたくさんの可能性」というタイトル。岐阜県飛騨市の広葉樹の森の活用を目的に設立された同社の取り組みについてご紹介いただきました。家具産業が伝統的に栄えている飛騨ですが、材料の多くは外材なのだとか。同社は地域の森を生かして、家具や内装、果てはクレヨンまで、様々なプロダクトをコーディネートし、木材の新しい流通を生み出しています。ポイントは大都市や海外の建築家やデザイナーと繋がること。彼らが飛騨の山を視察して、専門的でオリジナリティあふれる視点で「こういうことできたらいいんじゃない?」を実現する実例を生み出してきました。
Hidakumaのように、地域の内と外とをつなぐ地域商社の存在があると、飯能の森林活用も進むかもしれません。
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飯能とフィンランドの交流 トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園
土砂降りだった雨も午後には上がり、市役所を後にして郊外の「トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園」を訪問しました。
「ムーミンバレーパーク」で知られる飯能ですが、この公園は、北欧の童話作家として有名なトーベ・ヤンソンとの手紙のやり取りから生まれました。ムーミンバレーパークが誕生した背景にも、飯能とフィンランドの30年近く続く絆があります。
ここでは西川材をふんだんに使った園内の施設を見てまわりました。
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製材工場を見学「フォレスト西川」
Session1 森を知る weekend 最後の訪問地が、製材業を営む「株式会社フォレスト西川」さんの阿須工場です。平成5年創業の同社は、飯能で産出される木材を板や柱材に加工するプレカットと、材木同士を圧着させて作る集成材の製造を行っています。若き社長の新井銀平さんにご案内をいただきました。
普段は見ることのできない製材設備や工程に、受講生一堂興味津々。工場隣のショールームでは、西川材を使った家具なども見学しました。
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日も傾いてきました。インタープリターの長谷川さんが、飯能市で取り組む木育プロジェクトをご紹介。そして、今回のセッションのまとめをしました。
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Session1を振り返って
最後に受講生の受講後アンケートの回答から、感想をいくつかご紹介します。
最初はとっても緊張しましたが、アイスブレイクでとても和やかな雰囲気になってよかったです!阿部先生の「森を正しく恐れる」、土屋先生の「森づくりは道作り」とっても共感しました。土屋先生の35km圏経済圏の考えはこれからの地域経済の基となるような考えだと思いました。縦割り行政でなく地域の皆がチームとして機能し、それぞれの地域に合った形で横展開していければと思います。
ガイド・講師の方々から、森林業・新規事業の具体的で生々しいお話しを伺えて理解が深まった。また飯能の街の成り立ちも現地を巡りながらインプットし、森と街、双方併せた飯能を、知る事が出来ました。
地域循環に着目されて活動されている飛騨の森でクマは踊るの松本さんの講義では、事例をたくさん紹介して下さって、通常では使えない木材を個性を活かして利用するという方針に目から鱗でした。おがくず等も余すことなく利用され、地域で循環していくというのは簡単なようで実際とても難しく困難なことであると思います。将来自分も地域との連携を考えていたので、とても貴重でためになるお話を聞けて良かったです。
やっぱり、工場見学は楽しいです。木が加工して使えるようになるまではとても大変なんだと感じました。新製品開発に若い人が自発的・内生的に動いているのがとてもいいなぁと感じました。見習って頑張りたいと思いました。
11月のSession2では、林業の歴史も学びながら、森林活用の新しい取り組みを考えます。そして、2月のSession3では森を生活の中に位置付けるライフスタイルを学びます。
講座の模様は随時レポートして参りますので、どうぞお楽しみに!
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(レポート担当:大竹 悠介)